風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

誠山房

2008-06-06 | 風屋日記
学校が引けると部活へと急ぐ級友達を尻目に
私はひとり自転車に乗り、のんびり市街地へと走らせた。

様々な理由により野球部への入部を入学時に諦めていた私は
バンド活動で有名だったS先輩に誘われるまま
元々好きだった歌を歌うために声楽部に入部したのだったが
それなりにアツく練習を楽しんでいた1年が過ぎた頃から
2コ上の先輩方が卒業したこともあり、
練習そのものはせいぜい週に数度顔を出す程度になっていた。
そして音楽室へと向かわない日は
決まってひとり市街地の本屋へと自転車を走らせたのだ。

老舗書店の誠山房は当時一番の目抜き通りである上町にあった。
いつ行っても店の前にはたくさんの自転車が並び、
店内は高校生から一般の人達までたくさんの人で混雑していた。
店に入ると左側には文具類、ここには女の子達が多い。
かわいいキャラクターの小物に集まるのは今も昔も変わらない。
左側の奥はレコード売り場。
私の場合、まずはまっ先にここへ向かうことになる。

邦楽、洋楽、フォーク、ロック、ポピュラー・・・
ほぼ毎日見ているから品揃えはほとんど変わらないのだが、
それでも順繰りに1枚ずつLPレコードをめくって見て行く。
エリック・クラプトンもドュービー・ブラザースもイーグルスも、
MJQもV.S.O.Pもスタン・ゲッツもオスカー・ピーターソンも、
そしてシュガーベイブやティン・パン・アレイ、庄野真代も
みんなここで知った。
このコーナーから店内中に、流行のレコードが常に流れており、
当時の思い出はすべてそれらの曲とともにある。
太田裕美「9月の雨」、イルカ「雨の物語」、渡邊真知子「迷い道」、
紙ふうせん「冬が来る前に」、河島英五「酒と泪と男と女」、
山口百恵「秋桜」、大橋純子「たそがれマイラブ」
そしてジグソー「スカイ・ハイ」、アバ「ダンシング・クイーン」。
1977年~78年にかけての思い出の光景は
すべてこれらの曲がBGMになっている。

レコードの後は文庫本コーナーへ。
その間に大学受験の赤本が並んだ書棚があり
同級生の誰かしらが必ず何人かその棚の前でダベっている。
当然彼らにひと声かけ、時には文庫本棚へ行き着く前に
彼らと2階にある喫茶店「サントス」へと向かうこともあったが、
まぁ大概はひとりで文庫本棚に並ぶ背表紙を隅から隅まで眺めることになる。
これまたレコード同様、毎日行っても特に代わり映えはしないのだが、
それでも好きだったカミュ、ドーデ、ボードレール、ランボーなど・・・
が揃っている新潮文庫を中心としたコーナーを熱心に眺める。
手ぶらで帰ることはまずなかった。
2~3冊、多い時で4~5冊買っても、当時は2千円もしなかったと思う。
そしてそのままいつもの喫茶店「ぐがーん」やJAZZ喫茶「エル・グレコ」。
1杯のコーヒーで粘りながら暗くなるまで本を読んだものだ。

bikkiさんの「雨の物語」からここまで思い出が脹らみました(笑)
今日は朝から雨。
思い出話の終りにこんな雨の日似合い過ぎてる(^-^)
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11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (tamaki)
2008-06-06 10:44:52
ランボーに引っかかりました。

サントリーのコマーシャル、米倉斉加年のナレーションで砂漠を放浪するイメージのランボーの映像が強烈に印象に残っています。

シリーズもので、写楽、空也とランボーだったと思います。

多分、信じられないほど短期間にものすごいことをやった人物として登場したのだと思います。

「~なのか、(だったのか、)ランボーよ」のようなナレーションで終わりました。

覚えていませんか?

ランボーのことが知りたくて伝記のような本を探した時期もありますが、謎のままです。

詩集だけはあります。

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部活をさぼってふけ込んださわや書店 (bikki)
2008-06-06 11:04:23
サボリ系部活少女(←こんな言い方ある?)だった私は
さわや書店の一番上の階にあった(確か記憶では・・・・)
美術全集のあるコーナーに入り浸っていました。
ここまでくるとあまり人もいなくて
柔らかな座り心地の良いスツールまで置いてあって
美術全集を手当たりしだい、見たい放題でした。
店員さんにぜったい顔覚えられていたと思います。
あ~あ、またいるって感じで。

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Unknown (tamaki)
2008-06-06 14:00:49
前に書いたコメント、記憶違いです。
確かにサントリーのランボーのコマーシャルはありましたが、米倉斉加年のナレーションではありませんでした。

写楽と空也のコマーシャルは何のコマーシャルなんでしょうか。
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誠山房 (まつたけ)
2008-06-06 14:29:50
レコードを買っていたところは誠山房にマルカン5階、花巻デパート4階。子供でもふらっと入っていけましたから。
その点ニイタカ楽器や正時堂は子供心に"通な店"という感じがして入り難いと感じてました。
(しかし最後にレコード針買ったのはニイタカ楽器だったような気がする)

高校生までは誠山房でも用が足りたのですが、大学生になると専門書が置いてなくて長期休業中は困ったものでした。盛岡の書店で購入したり県立図書館まで出かけたり。
今でも専門書が必要になることがあるのですが
市内の書店ではまず入手不可。どうしても必要なときネット書店を使うのですが、本当は買う前に1度手にとったり類似のものを見比べてから買いたいんですけど(^_^;)

誠山房が思い切って郊外へ移転、東山堂北上店程度の品揃えの店だったらネット書店に浮気せずに済んだのに…なんて。
本でも何でも地元のお店で買いたいので。
返信する
Unknown (フィーちゃんママ)
2008-06-06 16:37:13
誠山房の社長さんと私の父は、幼馴染で高校もその後進んだ進学先も同級生で、お互い亡くなるまで、仲良しでした。だから、今のあの状況はとっても悲しい。父が先に亡くなったとき、枕元で一言も話さず、呆然としていた社長さんが、二人の絆の深さを物語っているようでした。
返信する
?記憶が曖昧かも (bikki)
2008-06-06 17:35:00
さわや書店だったかな~東山堂だったかな~第一書店だったかな~。
楽器やレコード置いていたのが東山堂・・・・?
花巻にしても盛岡にしても書店は高校生のたまり場だったんですね~。
返信する
雨の歌 (花まき)
2008-06-06 17:35:17
松山千春の「銀の雨」は、あまり想い出ないですか~?
返信する
ローカルな話題にコメントがたくさん(@o@) (風屋)
2008-06-06 18:18:03
>tamaki先生
ランボーお好きでしたか。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%83%BC
↑こんな人生を送ったようで、
私も20歳までに何か残したいと焦ってました(笑)
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%83%BC%E5%85%A8%E9%9B%86-%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%83%BC/dp/4792801540
↑この本は高校時代に買い、今も持ってますが
金子光晴の訳は私的にはイマイチでした。
サントリーのCMは覚えてないですねー。

>bikkiさん
盛岡の高校生もそうでしたか。
レコードも・・・となると東山堂でしょうかね。
そういえば今でも肴町界隈に行くと
盛岡○高の生徒さんをよく見かけるような・・・(笑)
さわや書店よりは近いのではないでしょうか。
あるいはサンビルの方の東山堂でしたか?

>まつたけさん
私は学生時代を東京で過ごしましたから
大学で使う本に苦労をしたことはなかったのですが、
(○大通りの書店にも専門書は揃ってたので)
確かに地元の学生さんは大変だったかも知れません。
正時堂は確かに敷居の高さを感じましたよね。
でもそこで私は赤い鳥のLP買ったことがありますよ。
楽器で言うとニイタカはGRECO、正時堂はYAMAHAでした。

>フィーママ
そうか、ご近所だもんね。御歳も同じでしたか。
考えてみれば娘同士も友人関係ですよね?
(フィーママの妹さんと誠山房の娘さん同級生でしょ?
 うちの妹も一緒だったけど)
うちの親父も元々は大工町で育っているので
大津屋さんや渡嘉の東次郎さんが
やはり幼馴染みで同級生、仲良しでした。
世代も町もどんどん変わっていくんだね、寂しいけど。
それにしても誠山房の最後は衝撃的でした。

>花まきさん
「銀の雨」・・・あの頃ギター練習しましたよ(笑)
3フィンガーピッキングの練習にはもってこいの曲。
さらっと弾きこなすヤツはかっこよかったなぁ。
返信する
追伸 (風屋)
2008-06-06 18:23:17
>tamaki先生
ランボー全集は上に紹介した本の改定前のものでした。
当時の価格で1冊5千円。
思い切ってお年玉をはたいた覚えがあります。
残念ながら訳そのものは金子光晴よりも
新潮文庫版の堀口大學の方が良かったのですが
ランボー全集に載っていた書簡集は
かなり夢中になって読みました。
返信する
Unknown (tamaki)
2008-06-08 19:24:41
私の持っているランボー詩集は、白鳳社の堀口大學訳のものです。
時々読みます。
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