痴呆の母親を
自分が住むベトナムに連れてきて一緒に暮らす物語。
周囲はみんな当たり前のように反対するけれど、
辛く苦しかった半生を取り戻すかのように
少女のようにニコニコ過ごす母親の顔が印象的だ。
もちろん子にとっては
こんなもんじゃない大変さはあったのだろうが、
かつての日本(田舎にはまだ残ってるけど)のような
ハノイの人たちの暖かく優しい目が見守っている。
なんか懐かしいような、心が暖かくなる物語。
痴呆の介護に関する本2冊を読んだ後なので
より興味深く見ることができた。
こういうコミュニティーのあり方が
介護の環境を考えるのに一つのヒントになる気がする。
日本とベトナムとは複雑な歴史がある。
戦時中の日本軍統治も、ベトナム戦争時の反戦運動も。
そういう記憶や感情も織り込みながら、
全体が多層的なストーリーとなっているのは
大森一樹監督の世代ならではの視点ではなかろうか。
だから隣席の人がつぶやいていたような
「なんだか色々なシーンがあって散漫な感じ」
という鑑賞後の言葉は当たっていない。
私たちはもっと他国のことを知る必要がある。