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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

走れ外科医

2021-07-10 | 図書室

 

泣くな研修医

逃げるな新人外科医

の続編。

若い外科医の成長物語。

あの美しい先輩外科医のプライベートも披露される。が、類型的。

後半はありえないアウトドアチャレンジもの。

3冊続けて読んできたが、まあもう十分かな;笑

               ////////////////

UKのAnimal Health Trust が今月末で閉鎖されるらしい。

主に、馬と犬と猫を扱っていて、調査、研究、普及、教育、臨床、などを行っていた。

以前から情報があったが、財務改善の過程であって、改革されてまた再スタートするのだろうと思っていた。

競馬の関係団体も、財政支援の用意をしている、と報道されていた。

そう、競走馬に関する調査や研究や、検査機関としても機能していた。しかし・・・

馬の分野でも、さまざまな情報がAnimal Health Trust の名前で発表されるので知っていた。敬意を持って。

あのSue Dyson 先生だって、Animal Health Trust の所属だ。

本当に閉鎖され消えてなくなるのだろうか。

それが資本主義社会における非営利団体のあり方なんだろうか・・・・

 

 

 

 

 


馬疫

2021-07-10 | 図書室

馬の伝染病の流行をテーマにしたミステリー小説が賞をもらって出版された。

もちろん興味があるので読んでみた。

舞台は、小淵沢。乗馬競技の中心地だ。

私は行ったことがないので、それも興味があった。

あとは、馬感染症の研究所。

それなりにリアリティーがあって、最初は真面目に読み始めた・・・・

          ー

SFでもあるので、許されるのだろうが、ウィルス感染の同定や診断や臨床についてはかなり暴走。

例えば、新しい感染では抗体価ではすぐに感染を診断できない。

抗体価が上昇するには日数がかかる。

それは、コロナ禍で、今は多くの人が知っている。

          ー

ミステリー小説だから仕方がないのかもしれないが、感染症流行の中で犯人捜し、感染源特定、責任糾弾になってしまうのはよろしくない。

誰もが被害者で、誰もが加害者になりうること。

だからこそ、責任追及ではなく、どうやって防疫に向けていくかを優先しなければならない。

それが、このコロナ禍で社会が学んでいることではないか。

          ー

研究所や研究者が功名争いをしたり、

関係者が情報を金に換えたり、

個人名を勝手に発表したり、

内部情報を個人的に利用したり、

しまいにはくだらない劣情で・・・・

ヒロインや登場人物の行動に間違いが多過ぎ、安っぽい。

          ー

こういう小説を読ませるかどうかで重要なのは、物語を貫く哲学とか価値観ではないかと思う。

もちろんそれは作者のそれを反映するのだろうし、

登場人物の行動やセリフに現れる。

          ー

登場人物の一人は農業共済出身の獣医師ということになっているのだが、「農業共済」は架空の組織や団体ではないし、

そもそも、そんな人物の経歴を表示する必要があったのか疑問。

ケンカ売ってんの?;笑

          -

まあ、舞台が興味あったので、楽しく読めた。

この小説のどこがSFでどこまでが現代のウィルス学で正しいか、考えたり調べながら読めば獣医さんや獣医科学生さんの勉強になるかも。

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アジサイが咲き始めた。


文献 新生仔牛125頭の長骨骨折の治療

2021-07-07 | 牛、ウシ、丑

不思議なことに、海外でも牛の骨折治療のまとまった数の症例報告は多くない。

これは、ドイツ語の文献、なので要約を読むだけ。

Treatment of long bone fractures in 125 newborn calves.  A retrospective study

125頭の新生子牛の長骨骨折の治療 回顧的調査

Nuss K, Spiess A, Kostlin R

Tierarztl Prax Ausg G Grosstiere Nutztiere, 2011: 39: 15-26

だいたい雑誌の名前の意味さえわからないし・・・・笑

要約

目的

新生子牛の長骨骨折の原因、部位、形態、治療、予後についての回顧的調査

材料および方法

16年間の125頭の子牛の診療記録を調査した。上腕骨の骨折3頭、橈骨尺骨14頭、大腿骨50頭、脛骨58頭であった。

子牛の多く(61.6%)は分娩介助の間に骨折していた。

125頭の子牛のうち、107頭は治療され、18頭は併発症のために安楽殺されていた。

保存療法が16頭で行われ、外科治療が91頭で行われた。

外科治療されたうち4頭は骨折整復を妨げた筋収縮のために安楽殺され、5頭は手術中に死亡した。

結果

保存療法後16頭中10頭で、外科治療では82頭中44頭で、骨折が治癒した。

プレートあるいはクランプロッド内固定で治療された子牛は、髄内ピン(治癒4/16)、あるいは創外固定(治癒3/8)より、結果が良かった(治癒37/58)。

併発症と治療の選択、そして骨折治癒の間には明らかな関係があった(chi検定、p<0.01)。

併発症を起こした67頭の子牛のうち、26頭だけが助かった。

多かった併発症はインプラントのゆるみと不安定であり、しばしば骨髄炎と感染が起こった。

外科治療され6ヶ月以上生存した子牛44頭のうち39頭でインプラントは除去された。

臨床的および再X線撮影(25頭)あるいは電話による質問(29頭)による長期の追跡(手術後6ヶ月以上)で、54頭は健常で本来の飼養に復していた。

結論と臨床的関連

新生子牛の長骨骨折の治療は、併発症の高い発生率のためにいまだに難しい。

分娩中の損傷に属する事故では、不充分な初乳摂取や併発症が最も起こりやすい。

加えて、幼若な骨の特性はインプラントにとっての物理的な強度がない。

それゆえに、”膝がひっかかる”、”ヒップロック”の分娩では特に、介助分娩中の専門的で勤勉な介助が、新生子牛の長骨骨折の発生を減らすために必要である。

ほとんどの症例は、時間がかかり、治療費が高額となり、予後が難しい外科的固定を必要とする。

                  -

10年前の文献で、その前16年間の125頭の新生子牛の長骨骨折の成績をまとめている。

中手骨、中足骨は含んでいない。

結果は決してよろしくない。

プレートあるいはクランプロッドで治療しても、治ったのは37/58。

                  -

本文中には、部位ごとの数字も示されていて、プレート固定に関しては、

脛骨のDCP固定が 12/22  10頭はダメだった

大腿骨DCP固定が 18/27  2/27は跛行が残った

橈骨尺骨DCP固定が 5/6  1頭は術後5日で死亡

上腕骨DCP固定が 0/1  1頭安楽殺

ということになっている。

脛骨に比べて大腿骨が多いが、脛骨は大学病院へ運ばれて来ないで牧場でキャスト固定されているのが多いのかもしれない。

後肢に比べて、前肢が少ないのも特徴的。

                   -

私は、2003年に子牛の骨折のプレート固定を始めた。

半数以上は脛骨骨折で、残りは橈骨尺骨、上腕骨、大腿骨。

ほとんど全部が黒毛和種子牛。

分娩後すぐの親に踏まれたと思われる事故か、生後3ヶ月前後の離乳に伴う事故が多かった。

相談されるのを選択してきたのではなく、キャスト固定で治りそうにない症例は断らずにプレート固定してきたと思う。

最近は、ホルスタイン育成牛や、中足骨にも手を出すようになった。

それで、治せなかったと記憶しているのは、

・脛骨の長斜骨折でLCP固定した症例、整復が不完全で固定方法が今にして思えばまずかった。

・新生子牛の上腕骨粉砕骨折で骨癒合したが、腕節の拘縮が続発し廃用になった。

・新生子牛の脛骨骨折と下顎骨折で、手術後に死亡した。

それと、新生子牛の中足骨開放骨折で発症から数日経っていて、麻酔中に死亡した。

だけだ。

治療するかしないか、どんな手術をするか、も含めて外科医の判断が大きいので、私が居なかったときの症例は記憶に残っていない。

それらの結果から、今はこのZurich大学の成績よりずっと好結果だと思っている。

                -

必要と思われたらプレートを2枚使ったり、LCP/LHSを使うこともある。

われわれの地域では、1頭ずつ子牛が大事に扱われていること。

などが要因だろうか。

Nuss先生たちの成績は、固定方法もクランプロッドや髄内ピンや創外固定が用いられている。

複数の外科医や研修医が居る大学病院では、手技も方法も安定しない、という面もあるのだろう。

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COVID19のワクチン接種後、おとなしくしていたほうが良い、とのことで本を読んですごした。

各短編の主人公は悪いヤツが多くて、ほとんどは死ぬ。馳さんらしい。

そして、最終章・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 


大動物用気管チューブ・大動物用輸液セット  ティアレ

2021-07-06 | technique

パンフレットが届いたので紹介しておこう。

試供品をもらったりしてだいぶお世話になったからね;笑

わたしたちは馬用気管チューブは海外製品を使ってきた。

個人輸入したこともあるし、海外で買って持ち帰ってきたこともある。

日本で業者が扱ってくれるようになったが、注文や修理が思うにまかせないこともある。

国産の良質なものが手に入るなら嬉しい。

牛の獣医さんたちも、気管挿管するようになれば、麻酔中の誤嚥を防げるし、人工呼吸も可能になる。

HPには出ていないが、大動物用のサイズも動物用医療品の認可がとれたらしい。

といっても、もっと太いのも欲しいけど・・・・・

                -

動物用輸液セットもリニューアルされたのだそうだ。

馬だけでなく、牛も持続点滴するようになれば、今まで助からなかった病態でも助けられるようになるのではないだろうか。

私たちは当たり前のように持続点滴するので、たまに「やらなくてもイイかな・・」と思った症例で、持続点滴の効果を思い知らされたりする;笑

輸液は、入れる量も組成も重要だが、それ以上に入れている時間も重要だ。

朝、昼、晩とがんばって3回点滴に通って1時間ずつ輸液したところで24時間のうち1/8しかカバーしていない。

持続点滴できれば、24時間輸液できる。

循環血液量を増やし、利尿が始まり、細胞内液が補正され、各臓器が機能を取り戻し、体は回復していく。

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これは雨ふる前。

ラベンダーの季節。

 

 


covid19 vaccine

2021-07-04 | 人医療と馬医療

予約どおりにコロナのワクチンの1回目をうってもらってきた。

町の接種会場には、たくさんの町職員が受け付け、問診、接種、その後の観察のために働いていた。

効率よく、多くの町民に接種できているようだった。

            ー

ぜんぜん痛くなかった。

数時間後から、筋肉痛のような、打撲のような痛みが三角筋にあるが、腕が上げにくいということもない。

今朝も平熱以下。

もっとも発熱、倦怠感、腕の痛みなどは2回目接種で多いようだ。

            ー

mRNAが私の細胞にcovid19のスパイク蛋白を作らせ、それに対する免疫記憶ができ、抗体を初めとする免疫ができる。

誰もが免疫を持っていない新型コロナウィルスだったから世界中でパンデミックが起きた。

ワクチンで免疫記憶ができれば、感染しにくくなるし、感染しても重症化しにくくなるし、周りの人に感染させにくくなる。

            ー

ワクチンの開発、普及、接種に働いた多くの人に感謝したい。

最先端の医科学にも感謝したい。

mRNAワクチンの開発に功績があった1人はハンガリー出身の女性研究者カタリン・カリコ博士

被害妄想にとらわれたり、デマを流したり、過剰に心配するより、彼女の苦労を想ってみてはどうだろうか。

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どこみてんの。

けはいのもとはあっちだよ。