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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

獣医科大学新設に反対を

2016-12-03 | How to 馬医者修行

かつては農業高校を卒業して、獣医師になる方法があった。

私が獣医師になった頃、まだ農業高校卒の老齢の獣医さんが働いておられた。

しかし、大学で獣医課程を終えなければ獣医師国家試験を受験できなくなり、

さらに4年制だったのが、6年制になった。

私は、その移行期の「修士積み上げ」と呼ばれる6年制の第二期の卒業生だ。

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それからも、獣医学教育の充実のために、国公立獣医科大学の統合が検討されてきて、

現在は、獣医学教育をさらに充実させるべく、コアカリキュラム(最低限これは教えてくださいよ、というカリキュラム)も示されている。

関係者のたゆまぬ努力は、社会の中で獣医師が責任を果たしていくためにはそれが必要だからだろう。

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しかし、数年前から獣医科大学の新設の要望が出ていて、それには日本獣医師会は反対し続けている。

今の獣医科大学でも多すぎて、各大学の教育が充実させられない。

獣医学科卒業生は、偏在してしまうので不足する分野はあるが、決して総数で不足しているわけではない。

にもかかわらず、「四国には獣医科大学がない」とか、「実験動物を扱う獣医師が不足している」などの理由をあげて、獣医科大学の新設が必要だと要望する地域や学校法人がある。

獣医学科は人気学科なので、”商売”になると考えるのだろう。

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今は、世界レベルで認めてもらえる獣医学教育をすることが重要で、獣医学と獣医師のレベルを落とせば、「日本の獣医師は・・・」と、世界の中で、あるいはアジアの中でさえも蔑視されかねない。

しかし、新設しようとしている獣医科大学は、すでにある獣医科大学ほどの教育をすることも無理だとあきらめているようで、実験動物を扱う獣医師を育成することに特化してスタートしようとしている、とも聞いた。

そんな馬鹿な話があるか?

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四国に獣医科大学を創ったところで、卒業生が四国に残るかどうかは、卒業生にどのような待遇と職務を提示できるかにかかっている。

四国に獣医科大学がなくても、充実した仕事をして、充分な待遇を受けられれば現在でも新卒獣医師は四国へ就職するだろう。

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政府は特区制度を使って獣医科大学の新設を認めたいらしい。

それは安倍首相の意向だとも聞いた。

正当な手続きを経ては認められない大学新設を特例で認めることで、アベノミクスの足しにしたいのだろう。

しかし、教育は経済事情のために軽々しく扱ってよいものではない。

スタートしてしまえば、変更や廃止はとんでもない被害を引き起こす。

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12/17まで内閣府がパブリックコメントを募集している。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=095161090&Mode=0

声をあげて反対すべきだ。

https://form.cao.go.jp/chiiki/opinion-0038.html


Dr.Ducharme講演会 in Shizunai

2016-12-02 | 講習会

何年か前、海外の馬臨床の優秀な先生を招いて講演をしてもらいたい。ついてはどこで講演してもらおうか? という話が出たときに私は希望した。

「日本の馬の半数以上は北海道にいて、だから日本の馬獣医師の半数以上は北海道に居ます」

「しかし、東京での講演に、それほど多くの北海道の獣医師が行けません」

「だから、ぜひ生産地へも来て、講演、実習をやってもらいたい」

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多くの関係者がわれわれの希望をくんでくださり、東京での講演、美浦での実習に加えて、生産地での講演や実習が実現してきた。

獣医師だけでなく、生産牧場や育成牧場など関係者広くを対象として講演してもらうことも意義のあることだと考えている。

獣医師だけが理解していたのでは、いろいろな技術や知識も普及していかないし、向上していけない。

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昨夜は、参加者100名くらいだっただろうか、静内の最も大きなホテルの最も大きな部屋がほぼいっぱいになるくらいの人がDucharne先生の講演を聴きに集まった。

獣医師でない方、あるいは獣医師でも馬の喉の症例を多くは診ない方には、すこし難しい内容だったかもしれない。

通訳が入るので、2時間の講演でも実際には1時間の話になる。

それだけの時間の中でもDucharme先生の講演は、多くの動画や写真が含まれていて、とても価値あるものだった。

大学教授でもあり、上部気道の問題についてはあらゆる文献を把握しておられるので、話される内容には根拠があり、間違いがない。

その世界の頂点であり、最先端を知ることの意義は、スポーツの世界にも似通っているかもしれない。

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実はDucharme先生はJRAとの共同研究のために何度も日本を訪れていて、日高に来られたこともあるのだそうだ。

忙しい中で快く招聘に応えてくださったのも、そのような経緯もあったのかもしれない。

あらためてJRAのすごさを実感するとともに感謝した。

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私は興奮さめやらず、眠れない夜をすごした。

さあ、今日は獣医師向けの講習・実習だ!