馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

上腕骨の折れ方

2018-10-15 | 整形外科

今考えているのは、plate固定しなければならないような上腕骨のボッキリ骨折だ。

整形外科的には、「骨幹部完全骨折」。

上腕骨はどういう折れ方をするか?

それを知っていないと内固定方法を想定しづらい。

敵を知って己を知れば、百戦すれども危うからず。 by 孫子

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私の所へ来た症例。

これはたぶん育成馬の調教中の上腕骨骨折だ。

近位側の頭側皮質が長い長斜骨折。

over ride しているが、頭側の皮質が遠位部の凹みに当たることで、これ以上は変位しない。

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今年来た当歳馬の上腕骨骨折。

頭側皮質が遠位で折れた長斜骨折。大きい破片があるのであきらめた。

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Equine Fracture Repair
Alan J. Nixon BVSc MS Diplomate ACVS
Saunders

Nixon先生のEquine Fracture Repair から2枚。

いずれも、頭側皮質が長い斜骨折だ。

ちなみに、Nixon先生は Equine Fracture Repair の新版を出された。

Equine Fracture Repair
Alan J. Nixon
Wiley-Blackwell

私は今、到着するのを楽しみに待っている。

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上腕骨は遠位へ向けて内側へ捻れた形状をしているので、その捻じれに沿って螺旋状に斜骨折するのだ・・・・

と思いがちだが・・・・・・・・

今回の子牛の症例。これは右前肢を頭側から撮影している。

近位側の外側皮質が長い。

上腕骨骨折を、頭-尾方向で撮影できることは少ない。

しかし、どうやら近位側の外側皮質骨が長い斜骨折が多いようだ。

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つまり・・・

これは子馬の左上腕骨。頭側から。

外側から。

内側から。

このように折れることが多いと思われる。

                //////////

今日から、他地区のNOSAIの先生が2名研修。

馬の麻酔について学ぶのが目的。

牧場の獣医さんも今日から研修。

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今日は、

未経産の陰部縫合。尾椎麻酔。

当歳馬の上瞼の裂創。眼窩上孔、耳介眼瞼神経ブロック。

当歳馬のcataract 白内障。眼窩上孔ほか眼周囲ブロック。

午後は筋間膿瘍。

2歳馬のTieback&cordectomy。吸入麻酔。

ついでに、シマウマの麻酔と手術についてヴィデオ学習。

シマウマって毛を刈っても縞があるんだね。知ってたかい?

 

 

 

 

 

 

 



8 コメント

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Unknown (piebald)
2018-10-15 20:06:48
シマウマのシマシマの肌。知ってました。見たことはないですが、JRA総合研究所の「馬学講座」で聞きました。
ところで、シマウマにも疝痛はあるのですか?
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>piebaldさん (hig)
2018-10-16 04:46:36
シマウマの皮膚は白いのか?黒いのか?と、ドキドキして手術の様子を見ましたが、皮膚もシマ模様でした。

ドサンコはほとんど疝痛を起こさないそうです。シマウマも丈夫なんじゃないかと思います。立てない、痛がっている時点で、ライオンのエサになるんじゃないでしょうか。
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Unknown (はとぽっけ)
2018-10-16 06:32:34
Nixon先生の本、楽しみなのは表紙からも想像にたやすい。ジェケ買いもありだろうと。
 むつごろさんが謎解きしてたけど、白黒の皮膚の色と被毛の色が一緒なほうが一般的なら、烏骨鶏はかなり特別なんだなと思うっちゃう。
 4時間の手術に耐えた子牛治ってほしい。
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Unknown (zebra)
2018-10-16 08:02:08
練磨のhig先生だ大手術いう理由がわかりました。
常套アプローチの外側ではなく内側がプレート設置部位として本来望まれるのですね。
骨折のパターンが違うのは事故時の肘の角度にもよるのかも知れませんよ。
脚を曲げとけば捻じょ骨折するでしょうし、伸ばした状態で外力がかかると顆間から骨折が起きるのでしょう。
症例がそうではないとしたら、幸運なのかも知れません。

シマダイみたいになってるんですか。
禿げても気付きにくいですね。
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>はとぽっけさん (hig)
2018-10-18 07:12:51
学術雑誌や専門書も表紙や装訂ってだいじですよね。

手術そのものは2時間あまりだったかな。治ってくれると良いのですが。
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>zebraさん (hig)
2018-10-18 07:15:26
内側ではなく頭側のようです。

シマウマの皮膚のシマは、うっすらと、でした。
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Unknown (zebra)
2018-10-20 07:55:10
子牛の骨折線を見る限り支えうるのは内側かなと思った次第です。
しかし十分な設置面積を確保する都合で頭側になったり、スクリューの向きで骨片を捕まえておこうとなるとLCP使いにくい、となるのもごもっとだろうと思います。
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>zebraさん (hig)
2018-10-21 04:33:45
近位部の外側と頭側皮質が長い斜骨折をしますので、騎乗変位を押さえるためのプレート装着部位としてはやはり頭側か外側です。

LCPには長いドリルガイドを固定してドリリングしなければならないので、深い部位では使いにくいです。しかし、優位性もあるのですが、微妙な判断になります。
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