馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

盲腸結腸重積は葉状条虫症 予防するには葉状条虫対策をするしかない

2024-08-27 | 急性腹症

1歳馬の疝痛。

かなりひどくて、発見して2時間ほどで来院し、超音波で重積が確認され即開腹。

盲腸結腸重積だった。

発症してから早いので整復できるかと思ったが、1時間ほどがんばってもほとんど抜けてこなかった。

そのうち右背側結腸が破裂してしまいあきらめた。

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解剖場ではなんとか整復できた。

葉状条虫が大量に寄生している。

それも盲腸全体に。

それで、盲腸が肥厚し、動きがおかしくなって、反転し、結腸に飲み込まれるのだ。

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開腹手術中はあれほどがんばっても整復できなかったのに、死亡後には整復できたのは、麻酔中でも腸壁に収縮があるからかもしれない。

次回はブスコパン(ブチルスコポラミン)パドリン(プリフィニウム)

を投与してやってみよう。

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盲腸結腸重積を救命する外科手技はともかく、

発症させないようにするためには牧場の葉状条虫対策が必要だ。

この1歳馬は1.5ヶ月前にイベルメクチンとプラジクワンテルの合剤を投与していたそうだ。

その前にはイベルメクチンを投与している。

・葉状条虫はプラジクワンテルに耐性を示し始めているのかもしれない。

・濃厚汚染されていると、駆虫してもまたすぐ大量寄生するのかもしれない。

・きちんと駆虫剤を飲み下さなかった可能性もある。

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そして、もう駆虫薬だけに頼った寄生虫対策は無理がある。

放牧地とパドックが、葉状条虫に汚染されないよう対策する必要がある。

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私が退勤する道で側を通る牧場さんは、いつもその時刻に放牧地に軽トラックを止めて、馬糞を拾っている。

偉いな~ と感心して見ている。

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今日は、台風接近で雨と風のようだ。



2 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2024-08-27 21:19:07
1か月半でここまでびっしり付くとはいったいなぜ?と思わざるを得ませんが、この牧場の他の馬が心配。

 馬糞を拾い集めているところは発症が少ないですか?
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>はとぽっけさん (hig)
2024-08-29 04:26:09
1.5ヶ月前の駆虫剤では落ちなかった?プラジクワンテルに耐性ができているのかもしれません。調べてみる必要がありそうです。

落ちてもすぐ再感染した?十分に大きい虫体でした。新しい感染だと虫体は小さいはずです。

駆虫剤を飲み込まなかった?これはしばしば疑われるミスです。

他の馬は駆虫し、1日後に虫卵検査するのが良いですね。葉状条虫はそれが一番検出率が高いです。

馬糞を拾うことでササラダニが居ても、条虫を保有していなければ感染機会は減るはずです。
しばらく使われていなかった牧場は条虫寄生が少ないようです。休牧も効果があります。しかし、それは無理でしょうから、馬糞を拾うしかないと思います。
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