夜、繁殖牝馬の疝痛の来院。
この馬は日中放牧されていて、収牧したあと飼いを食べたら疝痛が始まって、フルニキシン無効。
直腸検査で腸紐が張っているとのこと。
来院したら、痛くて立っていられない。
採血してPCVが50%と上昇していることを確認だけしてopeを決断する。
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開腹したら結腸の色はかなり悪い。これはダメかな、と思うほど。
結腸を術創外へ引き出す前に、輸液管を刺してガス抜きして減圧したいが、ほとんどが内容物であまり減圧できない。
仕方がないので、術創を臍より尾側へ延ばす。
それでも膨満した背側結腸がもっと尾側にあり、引っ張り出せない。
無理をすると破裂させる恐れがある。
腹腔内の背側結腸の内容を少しずつ術創外へ揉み出して、右背側結腸を減圧していく。
腸内容は深緑のドロドロ粥状物で、水道ホースで水を入れなくても掻き出し、押し出せた。
(写真は別症例)
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最終的には水で結腸内を洗って、完全に空にした。
結腸の色調もかなり良くなった。
しかし、まだ盲腸が頭側にあり、盲腸と結腸が入れ替わるように捻転しているようだ。
大結腸を一度腹腔内へ戻すことで整復を試みるが、盲腸底部にも内容がかなりあり、盲腸と結腸の位置は入れ替わってくれない。
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おまけに小腸もおかしな位置にあり、盲腸を引き出したり、結腸との位置を直そうとするのを小腸が邪魔をする。
小腸の最後、回腸は盲腸につながっているので、盲腸を移動させようとすると小腸まで引きずられる。
さんざん食べているので胃も膨満している。ガス抜きしたが、固形物がいっぱいでそれほど凹まない。
小腸の内容を盲腸へ送り込む。
盲腸が膨満してしまうが、小腸は身軽になるだろう。
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盲腸底部を腹腔内で触る。
盲腸が固定されている部分がわかる。
だから、あとは結腸を正しい位置へ動かすしかないのだ。
しかし、内容を抜いたとは言え、ひどく浮腫を起こして腫れ上がった大結腸5mはかなりの重さと長さがある。
おまけに厚くて、脆くて、柔らかくて、扱いづらい。
なんとか、盲腸結腸ヒダを確認し、そこから結腸を正しい位置へしまうように腹腔内へ入れ、また位置を確認するために腹腔外へ引き出す。
何度かその作業をして、やっと結腸を正しい位置に戻し、それを確認することができた。
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そして、colopexy 結腸固定術を行う。
終わったら夜10時を回っていた。
2時間以上かかってしまった。
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40代の頃は、夜中に結腸捻転を2頭続けてやることもあった。
何頭でもやるぞ、と思っていた。
確かにたいへんな手術だが、ひどい重労働だとは思っていなかった。
でも、
やっぱり結腸捻転の開腹手術はたいへんな重労働だ。
2時間以上、腕力と背筋を使い、手作業で何十センチも縫い、それを腸破裂させないようにやらなければならない。
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馬の状態も良好とは言えない。
麻酔から醒めて立ち上がり、入院厩舎へ歩いて行ったのは11時だった。
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ピンクが先に咲くのは植えた土や日当たりのせい?
品種によるもの?
植え替えて株分けした方がいいか?
きれいに咲いているうちは放っておくか?
開腹しないことが多かった時期を思うと恐ろしい。hig先生方の重労働による功績はすばらしいことですね。
生卵なら2か所開けた穴の片方から空気を入れて中身を出すことも可能ですが、応用できないですね。
それだけ膨満して捻転しているのにクラッシュ症候群のようにならないのもすごいなぁと思ったりも。
ハナショウブも見事ですね。
遅咲き、早咲きはなかったように思いますが、最近はあるのでしょうか?日照?
お店で花が付いた苗を売っているのは植え替え適期だからなのかも。
粘膜から壊死し、高カリウムで心臓は止まりかけ、腹圧で窒息死しそうになっています。発症後数時間で死んでしまう馬もいます。朝死んで見つかって、解剖すると結腸捻転だった馬も居ますから。
ハナショウブはうまく宿根してくれました。気候にあっているのかもしれませんね。いずれアヤメ、ハナショウブは株分けして増やしたいと思います。
助かる馬が増えれば素因が遺伝していくリスクが上がっていくわけですが、逆に無頓着になっているのかも知れませんね。
よく食べさせる牧場の、よく食べる馬が、よく食べる時季に、よく疝痛を起こします。
私たちの救命が自然淘汰に逆らうことで、遺伝素因としての不良形質の残存にまで影響するかどうか。よく走る馬(競走成績)だけで選抜されて増やされるのがサラブレッドですから。
骨折すら遺伝要因だと思ってますが、それ以前に骨折させるような牧場は淘汰されているわけですよね。
馬が残れるとか、農場が残れるとか、地域が残れるってそういうことだと思います。
そこにお金が入るか入れるかどうかになってくると社会淘汰の話になって来ますよね。