馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

R.equiに対してmRNAワクチンは有効か?

2024-06-25 | 学問

2019年に始まり、その後、世界中を席巻したCOVID19。

当初の病原性の強いウィルス株から世界中の人を救ったのはmRNAワクチンだった。

子馬のR.equi感染症でもmRNAワクチンは研究されている。

Intramuscular but not nebulized administration of a mRNA vaccine against Rhodococcus equi stimulated humoral immune responses in neonatal foals

R.equiに対するmRNAワクチンの気管内噴霧ではなく筋肉内接種は、新生子馬に液性免疫応答を引き起こした

これもCohen先生が名を連ねている研究。

Am J Vet Res 2023, 85(2):ajvr.23.09.0208.

Abstract

Objective: Design and evaluate immune responses of neonatal foals to a mRNA vaccine expressing the virulence-associated protein A (VapA) of Rhodococcus equi.

Animals: Cultured primary equine respiratory tract cells; Serum, bronchoalveolar lavage fluid (BALF), and peripheral blood mononuclear cells (PBMCs) from 30 healthy Quarter Horse foals.

Methods: VapA expression was evaluated by western immunoblot in cultured equine bronchial cells transfected with 4 mRNA constructs encoding VapA. The mRNA construct with greatest expression was used to immunize foals at ages 2 and 21 days in 5 groups: (1) 300 μg nebulized mRNA (n = 6); (2) 600 μg nebulized mRNA (n = 4); (3) 300 μg mRNA administered intramuscularly (IM) (n = 5); (4) 300 μg VapA IM (positive controls; n = 6); or (5) nebulized water (negative controls; n = 6). Serum, BALF, and PBMCs were collected at ages 3, 22, and 35 days and tested for relative anti-VapA IgG1, IgG4/7, and IgA activities using ELISA and cell-mediated immunity by ELISpot.

Results: As formulated, nebulized mRNA was not immunogenic. However, a significant increase in anti-VapA IgG4/7 activity (P < .05) was noted exclusively in foals immunized IM with VapA mRNA by age 35 days. The proportion of foals with anti-VapA IgG1 activity > 30% of positive control differed significantly (P = .0441) between negative controls (50%; 3/6), IM mRNA foals (100%; 5/5), and IM VapA (100%; 6/6) groups. Natural exposure to virulent R equi was immunogenic in some negative control foals.

Clinical relevance: Further evaluation of the immunogenicity and efficacy of IM mRNA encoding VapA in foals is warranted.

                                            ー

VapAをコードしたmRNAワクチンは、気管内噴霧ではダメだったけど、筋肉内接種したら、VapAに対する免疫系応答を誘発した。

このワクチンの免疫原性と効果を子馬でさらに評価することが必要だ。と述べている。

期待したいところだが、R.equi肺炎発症牧場の子馬が感染するのはとても早い日齢だろうと考えられている。

それより前に、子馬にVapAに対する免疫をつけさせるのは、このmRNAワクチンでも難しいのではないだろうか・・・・・

           ーーー

COVID19から人々を守ったのはmRNAワクチンだけではなかった。

当初WHOも推奨しなかったマスク装着がとても予防効果を上げた。

手洗いと手指の消毒も有効だった。

街中を消毒して回っている光景がworld news で写っていたが、あれは無意味だっただろう。

隔離や人の行動制限をほとんどしなかった国では初期の死亡者が多かった。

やがて、流行するウィルス株の病原性が弱くなっていった。

そして、もう5年。

           ー

SDGsへの転換とか、CO2削減にとっては大きなチャンスだったかもしれないのに、CO2排出量はほとんど減らなかった。

それより経済の持続性が優先されたためだ。

命に関わらない産業の保護にも莫大な費用が使われた。

           ー

話がそれた;笑

新生子馬に直接ワクチンを投与してR.equi強毒株に対する免疫を賦活して子馬を守ろう、というのはmRNAワクチンを使っても厳しいのではないか、と私は思う。

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シャクナゲ

痙攣毒がある有毒植物だそうだ。



4 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2024-06-25 07:51:00
 時流からこの方向に進むのは当然なのでしょうけど、なんだか、なんというか、肝心なところがあまり見えてこないもやもや感
 これはR.equiniに関するこのチームの次の研究へのステップなのかな?ここで終わるのでしょうか?

 コロナねぇ、5月末からの1週間で17000人。正しい感染症対策は残って欲しいものです。
 シャクナゲ、ゴージャスな和風で存在感ありますね。民間薬として葉を利用する方もいるようですが、摂り過ぎは危険。だそうですね。シャクナゲの葉はシャクナゲのもの。としてあげて欲しいですね。
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>はとぽっけさん (hig)
2024-06-26 04:05:56
現在もっとも洗練された方法で、VapAに対する免疫応答を引き起こすことができた。という結論ですから、次は野外試験なんじゃないでしょうか。

もうCOVID19の感染者数を把握するのは困難になっていますよね。ただ、ふつうの風邪よりは症状が重い人が多いのだろうと思います。

シャクナゲは毒はあるけど薬にはならないみたいですよ。
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Unknown (ふみふみ)
2024-06-26 22:12:05
人間の妊婦ではRSウイルスワクチンを接種すると胎児に抗体が移行して、生まれてからワクチンが打てるようになるまでの間の抗体価を確保できることが認められて接種がかいしされました。同様の予防法が出来る疾患があるかもしれませんね。
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>ふみふみさん (hig)
2024-06-29 06:14:05
牛や馬では抗体が胎盤を通過しませんので、初乳を介して新生仔を守る、ということになります。ロタ腸炎に対しては、妊娠末期の母馬に接種するワクチンが馬で使われています。ロドmRNAワクチンも母馬に接種する方法もあるかもしれません。抗VapA抗体が新生仔馬に有効かどうか、検証してもらいたいです。
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