馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

橈側手根骨盤状骨折のスクリュー固定

2013-08-27 | 整形外科

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2歳、未出走。

腕節を骨折して手術のために競馬場から帰ってきた。

第三手根骨が剥離骨折 chip fracture しているが、

もっとおおごとなのは橈側手根骨が盤状骨折していること。

おまけに掌側関節腔にも骨片がある。

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盤状骨折は第三手根骨に多い。

関節面の辺縁が破片状に割れるのではなく、

手根骨や足根骨の近位側関節面から遠位側関節面まで塊状に割れる骨折を slab fracture

と呼んでいる。

slabとは広い面を持つ大きな塊、あるいは「厚い」板のこと。

薄い「板」ではない。

だから盤状骨折とすべきだと私は思う。

18lag screw 法で内固定した。

第三手根骨盤状骨折とやりかたは同じ。

骨が大きいぶん、やりやすいかもしれない。

が、この症例、骨折してから2週間以上経っている。

完全に圧迫するのは難しい。

あまりスクリューを締めると骨片が割れてしまうかもしれない。

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なんとかうまく固定されたように思う。

掌側関節腔にも関節鏡を入れて観察したが、骨片は見えなかった。

手探りでつかみ出そうとやってみて、管を入れて洗ったが、骨片は完全にはなくならなかった。

関節面から離れていれば悪さはしないだろう。

盤状骨折を癒合させるために、どのみち6ヶ月以上完全休養しなければならない。

                         -

そのあと、当歳馬の橈骨神経麻痺。

X線撮影もしなかった。

前肢にまったく負重できないように見えるが、腕節を押さえつけてやると負重できる。

橈骨神経麻痺で上腕三頭筋が使えないので肘が下垂してしまい、腕節を伸展させられないので負重できないだけだ。

治るかどうかは・・・・経過を観ないとわからない。

                         -

午後は喉頭片麻痺の手術・・・と思っていたら、2日前に退院していった繁殖雌馬がまた疝痛で再来院。

様子を観ていたが、やはりかなり痛いので飛び入りで再開腹手術した。

今度は結腸捻転を起こしていた。

                         -

やれやれ、なんだか疲れてしまった。

と思ったら、1ヶ月前に開腹手術した当歳馬が再来院。

やれやれ。

                      /////////////

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とうちゃんは

もう君のように泳ぐ元気はない

ただ流れに身を任せ

下って行くだけサ;笑

 


13 コメント

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hig先生おつかれさまです (kinako)
2013-08-28 08:51:05
hig先生おつかれさまです

 ハードワーカーな先生が、またなにをおっしゃいます☆

 昔?明治以前?の日本人は労働と遊び心の区別があいまいだった、ということが書かれていましたね(最近の新聞論説でしたか?)人夫役もまず歌を歌って労働したとか。。勝海舟なんかも、なんども蟄居を命じられて、半年とか1年とか、家にこもって休んで(?家で勉強していたのかもしれませんが)いますね。
しゃかりきに働くのがよい、働ける人が偉い、という思想は、勤勉が神様に選ばれた善人の徴というピューリタン思想の影響ではないか、アメリカの行き過ぎた(と思います)セレブ・リッチ・ヒーロー崇拝も、その大きな流れの上にあるのかもと、ダラダラしながら空想しています^^;☆
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この夏は北海道も荒れ模様ですね。 (GUM)
2013-08-28 12:50:41
この夏は北海道も荒れ模様ですね。

これから夏バテで体調を崩す馬も多くなるのでは?
hig先生もバテ無いようにエネルギー充電して頑張ってくださいね。
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>kinakoさん (hig)
2013-08-28 19:11:14
>kinakoさん
 どんどん時間に余裕がなくなっているのが現代なんでしょうね。勝海舟なんて歴史に名を残していても、その偉業はわずかな期間になされており、明治以降は皮肉屋のうるさいじいさんだったのかもしれません。
 
 最近の情報革命はそれに拍車をかけてしまったのでしょう。さっさと引退するに限るのかもしれません。
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>GUMさん (hig)
2013-08-28 19:12:59
>GUMさん
 今日も、雨が降ったり、風が吹いたり、晴れたり、へんな天気でした。

 私も馬も、盛夏より秋に萎える傾向にあるかもしれません;笑。
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 骨折というのは、バキッと太い骨が折れている方... (はとぽっけ)
2013-08-28 22:03:00
 骨折というのは、バキッと太い骨が折れている方がインパクトはありますが、後遺症なく治りやすいかどうかは別なのですね。
 はとぽっけの遊離軟骨は突然の痛みで走ってる途中で転倒したりしてやれやれでやっかいでしたよぉ。昔々の話ですが。
 関節内の骨はあとからでも取り除くことが可能でしょか?時間が経った骨折には、また違った難しさがあるように思いますがおりこうさんにして、回復にむかいますように。
 オラ君、タグボートみたいですね。鮭のために川底が掃除されているのですか?♪どこどこ~ 行くの~♪(沖縄の歌かなぁ?)
 来年はうま年ですね。
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>はとぽっけさん (hig)
2013-08-29 04:40:10
>はとぽっけさん
 太い骨は体重を支えていますから、バキッといくと歩けなくなります。ヒビだけならキャスト固定で治らなくはないでしょう。
 方形骨や種子骨は血行が悪いと言われています。そして関節にあり、不安定なのも治りにくい要因でしょうね。

 関節鼠は、噛み付くこともそのふざけた呼び名の理由なのかもしれませんね。
 時間が経っても取り除くことはできますが、関節包に埋まったりときには関節から飛び出したりして取れなくなることもあります。

 サケがあがってきたら、追いかけるようになるといいな~。つかまえたりしたら、飼い主が逮捕されますかね?!
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日本で難しい馬の手術、スペシャリストとしての道... (kinako)
2013-08-30 06:39:08
日本で難しい馬の手術、スペシャリストとしての道を精進してこられたhig先生は貴重です、そんなことおっしゃらないでくださいm(_ _)m☆
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 骨折というと、骨のことを考えますが、血流も重... (はとぽっけ)
2013-08-30 07:16:15
 骨折というと、骨のことを考えますが、血流も重要なことなのですね。  鮭の詳しいことは水産課の管轄と思いますが。
 サケ釣りの鑑札を犬がもらえるかどうか。もらえても、すごい竿数とおもいますので、オラ君が釣られませんように。(笑)
 秋に鍛えて、雪が降ったら、犬橇も。
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>kinakoさん (hig)
2013-08-30 18:35:25
>kinakoさん
 昔はどうしてのんびりしていられたのか、よく考えることで人間性を取り戻さなければならないとどこかの新聞記事に書いてありました。
 スピードと新しさがエスカレートする世の中ですが、それに逆行するものの価値もあるのではないでしょうか。
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>はとぽっけさん (hig)
2013-08-30 18:36:38
>はとぽっけさん
 ワンコが勝手に川でサケを捕まえても、飼い主は罰せられませんよね。ねっ、ねっ?
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