前肢帯の筋肉と呼ばれる筋肉はたくさんあって、肩甲骨をはじめ前肢上部を固定している。
(左図は「比較解剖学図説」より)
体重として沈み込もうとする胴体を支えるためには、
胴体を肩甲骨に引揚げる筋肉がなければならない。
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Rooney先生の「馬の跛行」には、その仕組みが説明されている。
どうやら鋸筋というあまり注目されることのない筋肉だけが、ほとんどひとり、この重要な役割を果たしているらしい。
胸筋も胸骨と上腕骨を結んでいるが、これは前肢が広がらないように内転させる(脇を締める)働きの方が大きいように思う。
この鋸(のこぎり)筋。動物の場合は M.serratus ventralis 腹鋸筋。となっている。
肩甲骨の腹側 ventral にあるからだろう。
serra は「鋸(のこぎり)」だそうだ。
人の場合は、serratus anterior 前鋸筋、となる。
肩甲骨の前側にあって、肩甲骨を前へ引っ張るからだろう。
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そして、鋸筋は体重や衝撃を支えるだけでなく、肩甲骨を動かすためにも重要な働きをしている。
肩甲骨から、扇型に広がるように胴体を吊り下げているので、
頚腹鋸筋を緊張させて、胸腹鋸筋を緩めると、肩甲骨は垂直に近くなり、前肢全体は後へ送られる。
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逆に、頚鋸筋を弛緩させ、胸鋸筋を収縮・緊張させると、肩甲骨の角度は寝ることになり、
前肢は前へ振り出される。
馬の(四肢動物の)腹鋸筋は、体を前肢にぶら下げているだけでなく、
衝撃をスプリングのように受けもするし、
振り子のように、前肢を振り出す役割を果たしているわけだ。
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YouTube: 競馬馬の疾走をハイスピードカメラで撮影したスローモーション映像
やはりもっと他の動物と進化についても考えないと「鎖骨問題」は解決しないようです;笑。
四肢動物にとって、鎖骨はない方が都合が良い。鋸筋が柔らかく体を吊り下げている。しかも、振り子のように肢を振ることができる。という機能面を書きましたが、鎖骨の進化についてはまた今度。たぶん。
上肢につながる筋群がスプリングの役割も果たしているのですね。
その為には折れやすい鎖骨は必要ないということで。
進化論の立場、用不要の立場から馬には太古から鎖骨は不要だったのでは?であれば馬の化石にも鎖骨は無いのではと調べてみましたが該当する資料は有りませんでした、退化したのでしょうか。
また馬の橈骨と尺骨は癒合していて内旋、外旋が出来ない構造になっています、これも走るという機能に特化すれば合理的ですが進化したものでしょうか。
馬の上肢の筋肉は肩甲骨から上腕骨と尺骨まで?と思うのですが筋群によって馬体につながっている様に観えます。今回はM.serratus ventralis 腹鋸筋の繋がりと働きについて講義頂いた訳です。馬の前肢は前後に自由度が高く左右に外転、内転は非常に制限されています、外転は遊び程度。内転は胴体の幅程度と認識しています。そのあたりを実証的に計測した論文とかあるのでしょうか?
ともあれ続編を期待しております。有難うございました。
お見舞い申し上げます。私も、もう馬から落ちたら無事では済まないと思います(涙)。
四肢動物が鎖骨を捨てたのは、まさしく揺れる構造を選んだのだと思います。馬の体はけっこう、橋梁、高層建築に共通する構造があると思います。
ケガなどでつかいにくい状態になってはじめて
その部位が考えてもいなかったような動作に使われているのがわかっておもしろがってます
今いちばん困ってるのは化粧するときに眉が描けないこととネコ砂をふるえないこと
大きい動きよりむしろ小刻みな動きの方に支障が出ているのですが
しろうとはまさかこんな動作に肩使ってるとか気づかなかったもんで・・・
骨でつながってると丈夫かもしれませんが、自由度は減ってこわれやすい、というのは建築でも似たようなことがいえるのかな、とNZの地震報道を見ていて感じたのですがいかがでしょう?構造学とか力学の世界ですよね
面白いです。生物の体の作りは興味がつきません。
hig先生のブログ、私にとって、自分の馬を理解するために
とても、ありがたいです。
重い腕を支えるために鎖骨が発達している。なんていうのは、人のことしか知らないことからくる間違いのようです。
それどころか、巨大な体を支えるためには鎖骨は邪魔なようです。
面白いですね。
馬に鎖骨が無い。ということは前肢と胸郭には骨性連結がなく、筋だけで重い身体と頭頸部を支えてる。
このことを知った時の驚きを忘れられません。
人の上肢帯は鎖骨の存在でその自由度が非常に高いものになっています。
生物の必要とする運動と解剖学的比較、本当に興味深いです。