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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

真菌性角膜炎

2006-09-03 | 馬眼科学

Photo_129 創傷性角膜炎も感染が抑えられれば治癒していく。

しかし、抗生物質を点眼しているにもかかわらず良くならないどころか悪くなっていく角膜炎がある。

左の症例も点眼を続けていたのに良くならず、角膜が融けて来たので連れてこられた。

日数が経っているので、角膜に血管新生が起きている。

この馬も結膜フラップ手術をし、結膜下点眼システムをつけて治療した。Photo_130

スワブを培養すると真菌、Aspergillus fumigatus が生えてきた。

それで、真菌用の抗生物質を点眼することになった。

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Photo_131 左が手術から11日目。

結膜が移植され角膜穿孔の危険はなくなった。

このあと数週間、真菌用抗生物質を点眼し徐々に良くなった。

真菌による感染は治るのに時間がかかる。

水虫もそうでしょ?

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 先日の角膜炎も培養の結果、次の日にはAspergillus によるものであることが判明した。

予断は許さないが・・・・・治療方針は立った。


創傷性角膜炎

2006-09-02 | 馬眼科学

 馬は目を傷めることが多い。 角膜は目の表面。馬の目は大きくて可愛いと人気があるが、傷つくことも多い。

競走馬は前を走る馬が飛ばす泥で傷つく。鞭が当たることもあるらしい。

放牧されている馬は草で目を突くこともあるらしいが、これは本当かどうか良く知らない。

馬房の中の事故も多いようだ。ちょっとした突起物にぶつける、こする、ひっかける。

目は特殊な組織で、治療のためには専門的な知識が必要だ。海外では獣医眼科専門医がいて、難しい症例の治療に当たっている。

フロリダ大学では、眼科のチームが診療日を決めて、小動物も馬も診ていた。

 目は光を通し、それを焦点をあわせ、神経で脳へ伝えることで視覚を得ている。血管があっては透明であることができないので、内部や主な部分には血行がない。それで感染や損傷に極めて弱い。

Photo_126左の子馬も目をひっかけたらしい。

かなりの長さ、それも深く切れている。

結膜を剥がして角膜の傷ついた部分にかぶせる手術(結膜フラップ)をし、結膜下点眼システム(チューブを通して薬液を点眼できる)をつけて治療し、良くなった。

Photo_127

右は別な子馬。この子馬も結膜フラップ手術をし点眼システムをつけた。

結膜フラップをすると、角膜の損傷部は乾燥や感染から保護される。

結膜の細胞が角膜に癒着することで、血行がない角膜に血液中の白血球、抗体ほかの免疫物質が届く。

角膜に結膜が移植されたことになり穿孔してしまうことを防ぐ。

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 しかし、創傷性角膜炎をとってみても簡単にはいかないことがある。

日本にも獣医眼科専門医がいて欲しいと思うが・・・・・なかなか馬は診てもらえないか?

人を頼りにせず眼科も勉強するしかないか・・・・・・