北海道産業動物獣医学会のことを書いていてAAEP American Association of Equine Practitioners のことを考えた。
「アメリカ馬臨床獣医師会」あたりがふさわしい翻訳名だろう。
牛の臨床家には縁のない会だろうし、大学の先生達も、そして研究者の先生達もほとんどの方がご存知ないだろうから紹介しておきたい。
その年次大会は毎年12月にUSA各地で行われるが、昨年のシアトル大会もその年の獣医師の集まりとして世界最大だったそうだ。
学会の抄録集は、論文集としても使えるようなもので、実際に引用文献としても使われることが多い。
数時間にわたる受賞記念講演がある。これは、長年業績を上げてきた大先生の集大成としての講演。
テーマを決めた数人の先生の講演もある。講演者同士のディスカッション、講演者への質問の時間もとられている。
一般公募された演題もテーマによって分けられて行われる。8ヶ月以上前に応募しなければならず、しかも発表できる数の4倍近い申し込みがあるので選抜された演題しか発表できない。
「How to 」と呼ばれるセッションもあり、どうやってあれをやるか。という実際的なテクニックを紹介する発表もある。
ウェットラボと呼ばれる馬を使った実習もあり、これはかなり高額な参加費が必要だが、すぐいっぱいになってしまう。
ドライラボと呼ばれる馬を使わない実習もある。
特筆すべきは薬や器具機材の展示だ。
トラック、内視鏡、本、手術台、骨標本、薬、その他、ありとあらゆるものが展示されている。
販売されているものも多い。見ているだけで厭きない。
AAEPの年会費は高い($2500)。年次大会は年次大会で参加費を取る。会長は大物獣医師が選出されているが、実際には専任スタッフで運営されていて、民間企業に近いのだろうと思う。
できる限りのサービスを提供して、できるだけの金額を集める。そして、世界中で会員を増やし、大会の参加者も増やそうとしている。
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もちろん、社会的な背景からして違う。
あちらの獣医師はほとんどが開業獣医師で、費用は自分もちでやってくる。そして、高額な年会費、大会参加費、研修費を払ってもあれだけの人が集まって来る。
勉強していなければ開業獣医師としてやっていけないし、また勉強に経費をかけても元がとれるのだろう。
雇われている獣医師も、休みを取って費用を負担してきても、それがキャリアアップになるのだ。
年次大会に参加すると、「この人は何年の年次大会に参加しました」という証明書をくれる。
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学会。という堅苦しい固定観念から離れて、参加者が何を求めているか。参加者に何を提供できるかを考えてみてはどうだろうか。
事務局が大学の研究室にあって、大学の先生がボランティアで運営しているようでは難しいだろうか?