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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

不適応子馬症候群

2016-03-14 | 新生児学・小児科

引き続きUC DavisのHPから

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新生子馬で、新生子不適応症候群 neonatal maladjustment syndrome あるいはダミーフォールとして知られている障害が起こるのは生きて生まれた子馬の3から5%だけである。

しかし、そうなったときには、あるサラブレッド生産者は”悪夢だ”と言った。

獣医病院での、時間ごとの哺乳ビンあるいは管からの哺乳に加えて、集中的な看護・介護を含めた、継続的な治療により子馬の80%は回復する。

しかし、そのレベルの看護--1週間から10日におよぶ--はへとへとになり、費用もかかる。

長年、この症候群は低酸素血症によるとされてきた--分娩経過中の不充分な酸素によると。

典型的には、子馬の脳が酸素を奪われると、精神障害、異常な行動、盲目そして発作さえ結果として起こりうる。

そして、ヒトの赤ちゃんでは、障害の多くが重篤で永続的である。

(つづく)

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この像はとても近代的で西洋的だ。

和風のこのような像って想像できないでしょう?

 

 

 


(不適応症候群の新生子馬を)自閉症のこどもになぞらえる

2016-03-14 | 新生児学・小児科

UC DavisのMadigan教授の新生子馬の行動異常の研究について、UC DavisのHPから

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「(新生子不適応症候群の)これらの子馬の行動上の異常は自閉症のこどものいくつかの症状と類似しているように思われます。」

とUC Davisの獣医学教授のJohn Madiganと馬新生仔学の専門家は述べている。

「自閉症を引き起こす可能性がある原因は数多くありますが、自閉症児に普通にあるのは彼らが孤立しているということです。」

UC Davis獣医学部分子生物学教授であり、UC Davis精神研究所の職員でもあるIsaac Pessahは述べた。彼は、こどもに自閉症を起こす役割を果たす環境要因を研究している。

Pessah, Madiganそして獣医学と人医分野の他の研究者は最近、共同研究グループを立ち上げ、異常な神経ステロイド--認知を調節する化学物質--がこれらの障害に役割を果たしているかもしれないことを研究するための予算を獲得した。

彼らは、彼らの研究が子馬の障害を予防したり治療する助けになり、自閉症の原因探求を進めることにつながることを望んでいる。自閉症はUSで3百万人以上に発症している。

(つづく)

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バイソンの頭はデカイ。

シカの多くの種類は頭より大きな角を持っている。

彼らの脳は大きくはないが、それでも「頭脳」が精神と行動をつかさどる最も重要な器官であることはまちがいない。

ぶつけ合って優劣を決める習性はやめた方がイイと思うけどな~


UC DavisのMadigan先生の新知見

2016-03-10 | 新生児学・小児科

 もう20年以上前、1ヶ月のUSA研修に出してもらった。

選んだ研修先は、カリフォルニア州立大とフロリダ大学。

どちらも馬の診療件数が多く、学術報告が多く、新生仔学で成果をあげていた。

カリフォルニア大学Davis校ではMadigan准教授はその週の診療当番ではなかった。

しかし、何度か彼の診察の様子を観ることができた。

その後、Madigan先生は教授に成られ、馬新生仔学の教科書を出版しておられる。

  Equine Neonatal Medicine and Surgery: Medicine and Surgery, 1e
Derek C. Knottenbelt OBE BVM&S DVM&S Dip ECEIM MRCVS,Nicola Holdstock MA VetMB CertEM(StudMed) PhD MRCVS,John E. Madigan DVM MS Diplomate ACVIM

Saunders Ltd.

UC.DavisのHPにMadigan先生の最近の研究が紹介されているので紹介したい。

馬生産地のわれわれにはとても興味深い。

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新生子馬が自閉症の手がかりを与えてくれる

生まれて数時間後、肢の長い、栗毛の子馬は馬房の中で立ち上がり、一見健康でたくましく元気に見えた。

しかし、この子馬は何かがとても間違っていた。

この子馬は超然としていて、人の方へつまづいて来て、母馬を気にせず、乳を飲みに行こうとしなかった。

隅のエサカゴを登ろうとさえした。

この奇怪な徴候は、長い間、馬の飼い主や獣医師を悩ませてきた症候群に特徴的なものである。

しかし、最近、UC Davisの研究者たちがこの症候群と、そして類似する人の子どもの自閉症への驚くべき手がかりを発見した。

(つづく)

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今日は、競走馬の腕節の関節鏡手術。

午後は私は血液検査。

1歳馬の副鼻腔蓄膿の再発?

2歳馬の橈骨の骨軟骨腫の摘出。

まあ~きれいな馬だった。


分娩徴候がない帝王切開仔はなぜ助からないか?

2016-03-09 | 新生児学・小児科

十二指腸破裂の母馬から緊急帝王切開して引っ張り出した子馬。

すでに予定日を1ヶ月ほど過ぎていたので可能性はあるかと考えた。

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帝王切開してもすぐには臍帯を切らず、母馬にオキシトシンを投与して、子宮が収縮するのを待った。

臍帯を切り離し、気道内を吸引して羊水を排泄させた。

気管チューブを挿管して酸素吸入した。

感染予防に抗生物質も投与する。

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カロリーと電解質が入った輸液をした。

経鼻胃管を入れて、初乳を1時間に50mlずつ、全量では1リットル以上給与した。

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USAカリフォルニア州立大学のMadigan教授はfoal squeezingなる方法を提唱している。

それもやってみた。

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Madigan先生はある種のneurosteroid 神経ステロイドが、胎仔が子宮内で激しく運動しないように、目覚めないように働いていること。

そして、その神経ステロイドを抑えて目覚めさせるためにはallopregnanoloneアロプレグノンが有効だと言っている。

だから、加齢性脱毛症の薬プロペシアも投与した。

2.5mgずつ朝晩、ということなので、1mg×3錠ずつ朝晩、ミルクに混ぜて投与した。

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次の日には、子馬は自分で伏臥するようになり、立ちあがりたいそぶりもみせるようになった。

しかし、お腹が張ってきて、ミルク給与は一旦中止せざるを得なかった。

消化管の機能が充分ではないのだ。

肺の聴診音もまともではなかった。クーとかプーとか聴こえる狭窄音があり、無気肺部が大きいのだろうと思わされた。

心拍はずっと100を超えていた。

何度か立たそうとしてみたが、後肢がまったく力が入らない。

寝ていても後肢は尾方向へ伸びたままで引き寄せることはなかった。

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徐々に弱ってきて、娩出させて3日目の月曜日、状態も悪くなり、あきらめた。

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大結腸内には胎便がかなり残っていた。

腸管が動けないのだ。

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肺は思った以上に含気していた。

しかし、充分ではない。

動脈血の酸素分圧は正常では100近いはずなのに40ほどだったそうだ。

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筋変性らしき所見もあった。

皮下に黄色い膠様浸潤があり、筋肉の色が淡い。

CPKは1000を超えていた。

白筋症と言うほどではないが、骨格筋の酸化的傷害なのだろうか・・・

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生まれてから何度か行った血液検査で白血球数はずっと2000台。

免疫機能も目覚めていないのだ。

生化学検査ではBUNは高くないもののクレアチニンは2.9mg/dlだった。

腎機能も低い。

あれだけ手間をかけて初乳を与えたのに蛋白は3.7g/dlで、低γグロブリンだった。

吸収する能力が低いのだ。

ビリルビンは9mg/dlを超えていた。

肝臓も働きが悪いのだろう。

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生まれる準備ができていない子馬を帝王切開で引張り出して助けるのはとても難しい。

心臓も、肺も、消化器も、腎臓も、免疫系も、目が覚めず、働かないのだ。

そして、体の機能が働かないままだと、感染を受け、栄養を採れず、循環がうまく行かず、呼吸がうまく行かず、排泄がうまく行かず、生きていけない。

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オラは「ゴハン」って聞くといつでも飛び起きるけどナ~

 

 


屈腱弛緩を放置すると蹄関節が亜脱臼する

2015-04-27 | 新生児学・小児科

腱拘縮と呼ばれる球節や腕節が伸びない子馬も多いのだが、

屈筋群が弱いと思われる蹄関節や球節が「ゆるい」子馬も多い。

パドックへ出して運動させるようになるとどんどんしっかりする、と言って気にしない関係者もいる。

が、1-2週間経ってもしっかりしてこないようなら処置が必要だ。

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残念ながらつま先(蹄尖)まで撮影できなかったが、蹄関節が亜脱臼している。

蹄球で負重している。

舠嚢骨が押しつぶされている。

これじゃ痛くないはずがない。

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スリッパのようなプラスチック製の靴を履かせた。

ちゃんと蹄底で負重できるようになった。

その状態で歩くことがリハビリになって蹄関節も形状と機能を取り戻すだろうと思う。

以前、同じような子馬が「予後不良」だと言われたとのことで来院した。

「大丈夫ですよ」と言って、今回と同じ処置をした。数週間かかったが良くなった。

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今日は暖かかった。

山ではコブシが満開。

サクラももうすぐ、かな?

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今日は、繁殖雌馬の結腸捻転。

昨夜からの疝痛。

危ない状態だった。

午後も繁殖雌馬の疝痛。

これも結腸捻転or変位。

どちらも分娩10~15日ほど。