goo blog サービス終了のお知らせ 

馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

新版「馬の医学書」

2012-12-25 | インポート

朝、除雪。

日中も何度かに分けてけっこうな量が降った。

White Christmas.

                         -

今日は、午前中当歳馬の大腿骨滑車のOCDの関節鏡手術。

午後は1歳馬のTieback&Cordectomy.

当歳馬のOCDも、1歳馬の喉鳴りも、急いで手術するのはお勧めしないが、

やるべき症例はやった方が良い。

                       ///////

Pc243530JRA刊行の「馬の医学書」の新版が出ている。

「オールカラー完全版」となっている。

オールカラーはわかるとして、「完全版」って何だ?

馬の臨床の教科書ではないし、

馬の医学の解説書でもない。

そもそも「医学書」と名乗る医学書ってない。

しかし、内容は非常に多岐にわたり、読み物としても面白い本だ。

このようなオリジナルの本が日本で書かれて出版され市販されていることを評価し感謝する。

JRA、そしてJRA総研あればこそだろう。

                         -

ただ残念なことに、ざっと見ただけでも間違いが散見される。

まあ、本なんてそんなもんだ。

と思えるだけ、オレも大人になったナ~;笑。

                        ---

Pc243524 シカのウンチ食べても良いけどさ。

そのあとでとうちゃんの顔なめるなよな。


朝飯前の一仕事

2011-10-09 | インポート

もう起きていたのだが、朝、呼び出される。

繁殖雌馬の疝痛。おそらく結腸捻転とのこと。

結腸を引っ張り出し、骨盤曲を切開し、内容を抜いて、捻転が整復されているのを確認し、結腸の生存性?虚血性損傷の程度を判断する。

結腸壁の肥厚は++、骨盤曲の切開部での粘膜の色調悪化は++、結腸動脈沿いの膠様浸潤は+++、結腸周囲の出血は+、全体の色調は+、・・・・

結腸を温存しても死にはしないかなと判断した。

しかし、疝痛常習馬で1-2ヶ月に1回は疝痛を起こしていたそうだ。

妊娠末期にも疝痛を起こすとのこと。

結腸捻転は再発防止策として結腸固定 colopexy をしておかないと、20%近い馬が結腸捻転を再発する。

しかし、結腸を腹壁に癒着させる手技なので、疝痛を起こしやすくなる馬がいる。

とくに、結腸が妊娠子宮に圧迫される妊娠末期には何度も疝痛を繰り返すようになる馬もいる。(その率はそれほど高くはないが)

それで、この馬は結腸を亜全摘することを決断した。

111004_082817                     -

切除した結腸。

無理せず、盲腸結腸襞より遠位で切除しているので、結腸の容積の6割くらいだろうか。

切除部位でも結腸粘膜は変色していたが、肥厚はひどくない。

しかし、結腸を切開すると、111004_083109

切除した結腸の粘膜は全体にかなり傷んでいる。

この結腸を温存して馬が生存できたかどうかはわからないが、しばらくはひどい状態が続いたであろうことは間違いない。

壊死した粘膜と、浮腫性に肥厚した結腸に白血球が大量に遊走するので(たぶん)全身の白血球が著しく減少する。

そのことで、術創や静脈カテーテルを入れている部分が化膿しやすい。

粘膜が壊死して剥がれ吸収能を失うので、血便、水様下痢が続く。

粘膜が細菌やトキシンからのバリヤーの機能を果たさないので、エンドトキシン血症あるいはSIRSと呼ぶべき状態が続く。

結腸を切除すると、術後の著しい白血球減少も起こらないし、脱水の程度も軽く済む。

結腸の切除・吻合は、朝飯前の一仕事としてはちょっとたいへんだけど・・・・・Dsc_0786


forward and back

2011-08-10 | インポート

P8310789
午前中は、ゲロゲロ喉鳴りして競走になりそうもないという2歳馬。

喉頭蓋が薄く、弱く見える。

高速運動中にはDDSP(軟口蓋背側変位)を起こしているのだろう。

(写真は別症例)

もう2歳の夏なので、調教を進められないとか、競馬にならないようだと、外科的治療の対象かもしれない。

P1110085_2
Tieforward手術をしたP1110084

甲状軟骨の尾側を舌骨へ(前へ)引っ張る。

喉頭蓋は甲状軟骨の吻側に付いているので、先端が持ち上げられることになる。

                       -

P1220012午後の症例は3歳馬。

(写真は別症例)

左の披裂軟骨はまったく動かない。

完全麻痺GradeⅣだ。

先月未勝利戦を勝ったばかり。

よく勝ったものだ。

P7240434競走成績が良いなら喉の手術はしない方が良いが、完全麻痺だと手術適応だろう。
披裂軟骨筋突起を輪状軟骨の尾側縁(後ろへ)引っ張る手術 Tieback をした。

併せて声嚢声帯切除も行う。

今、私がやっているのは教科書に載っている糸の通し方とは違う。

P7240436使う糸の種類も違う。

まだ成書には載っていない、文献で報告されたばかりの方法を取り入れてきた。

それでも100%治せるというところへはほど遠い。

それが喉の手術の難しさだろうと思う。

                      ///////

夏休み訪ねたのは、

美しい川だった。110804_101033

頭の上をオジロワシが舞っていた。

川が曲がるたびに・・・ヒグマが居るんじゃないかと気になった。

Dsc_06766mの滝(右)はクリアしたが、

4mの滝(左)は、

「落ちた」;笑。

-

-

ちょっとこんな映画 を思い出した。


POIの発生率と危険因子

2009-06-11 | インポート

POI(Postperative Ileus ; 術後イレウス)はどのくらいの率で起こり、起こりやすさの要因は何か?

Veterinary Surgery 38:368-372,2009 に次の論文が載っている。

                        -

Prevalence of and Risk factors for Postoperative Ileus after Small Intestinal Surgery in Two Hundred and Thirty-Three Horses.

   233頭の馬の小腸手術後の術後イレウスの発生率と危険因子

Susan J. Holcombe, Katie M. Rodrigues, Jennifer L. Haupt, James O. Campbell, Kristin P. Chaney, Horry D. Sparks, and Joe G. Hauptman

from the Departments of Large Animal Clinical Sciences and Small Animal Clinical Sciences, Collge of Veterinary Medicine, Michigan State University

目的-小腸手術後の馬におけるPOIの発生率とPOI発生についての多変数の影響を調べる

研究デザイン-症例検討

動物-1995年から2005年の間に、小腸疾患で探査的開腹手術を受けて回復した1歳以上の馬(n=233)

方法-それぞれの馬について診療記録(1995-2005)から68の変数を求めた。POIは経鼻胃液逆流が術後24時間以上の間に20?以上か、あるいは術後いずれかの時点で8リットル以上あった場合とした。

結果-27%(64/233)の馬がPOIを示した。POIを示した馬64頭のうち29頭(46%)は十二指腸炎・近位空腸炎(duodenitis proximal jejunitis ; DPJ)があった。手術で腸管切除が必要ではなかった場合、DPJがあった馬を除けば、15%の馬がPOIを示した。腸管切除した馬では30%の馬がPOIを示した。10%の馬が24時間以上にわたってPOIを示した。DPJがあった馬を除くと、POIの危険を増やす因子は、来院時の高PCV(P=.024)、腸管切除長さ(P=.05)であった。

結論-今回の研究では、腸管切除した馬は腸管切除しなかった馬に比べて危険率が高かったが、POIの危険因子は非特異的であった。

臨床的関連-どのような症例がPOIを起こすか確実に予測するのは難しい。

                          

27%となると、4頭に1頭。かなりの率だ。 

十二指腸炎・近位空腸炎と表現されている状態が多いのにも驚かされる。P4030017

腸管切除した馬では30%が術後イレウスを起こしたとなっていて、非常に多い。

ミシガン州立大からの報告だが、来院するまでの時間が長いのかもしれない。

開腹手術適応の疝痛馬は、できるだけ早く病院へ連れて行って、適応症だと判断したらできるだけ早く開腹手術した方が良い。

                          -

P6100653

今日は、1歳馬の副鼻腔蓄膿。

当歳馬の肢軸異常。

競走馬の腕節剥離骨折の関節鏡手術。


オーマイガッ!

2008-08-08 | インポート

P8080314 夜、照明に集まって、そのまま壁にくっついている蛾。

マイマイガという毒蛾らしい。

異常発生しているそうだ。P8080315

が、が、いまいちどれがそうなのかわからない。

P8080313  P8080311_2 オスとメスは色がちがうそうだ。

右のやつは別な種類だな。

もともと診療センターの周りは蛾が多く、

昆虫が好きな人には楽しいらしい。

もっとも、蛾が好きな人は少ないかもしれない。が。

                             -

今日は、競走馬のTieback & Ventriculocordectomy。

午後は血液検査に1歳馬の跛行診断。

仔馬のようすを診に往診。

雑用いっぱい。

P7260290