真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「白衣の妹 無防備なお尻」(2018/制作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/しなりお:筆鬼一/撮影監督:創優和/編集:有馬潜/録音:小林徹哉/音楽:友愛学園音楽部/助監督:小関裕次郎/監督助手:植田浩行/撮影助手:高橋草太/照明助手:赤羽一真/題字・食事:広瀬寛己/スチール:本田あきら/整音:日活スタジオセンター/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:桜木優希音・櫻井拓也・しじみ・松下美織・山本宗介・小林徹哉・小滝正大・広瀬寛巳・鯨屋当兵衛・なかみつせいじ《写真》)。出演者中、なかみつせいじは本篇クレジットのみ。キャスト・スタッフをそれぞれ一緒くた、しかも瞬間的な不親切仕様のクレジットは、サヴァンでもないと読めねえよ。
 川辺をチャリンコが、左から右に走るロング。内科と整形外科を診察する藤村医院、看護師生活をスタートする島崎絵里(桜木)が、イケメン院長の藤村光夫(山本)に御挨拶。今度は右から左に逆走して、多呂プロ感覚の、といふかそのものの子供じみたレタリングによるタイトル・イン。昔から謎だつたヘタクソ経絡図の主が、広瀬寛巳である事実がこの期に判明する。この期にもほどがあるのは兎も角、ところで今作の封切りは、昭和天皇に扮した新作ごと荒木太郎が封殺された事件の四ヶ月後。為にする勘繰りを憚りもなく吹くが、加藤義一なりの、出来る限りのエールであつたのであらうか。
 目下一人住まひの実家に帰宅した絵里が、新生活を報告する亡父の遺影でなかみつせいじが駆け抜け、患者が多くくたびれた藤村の肩を、絵里が揉んであげる一幕。「もつと下を」と乞はれた末にあれよあれよと尺八まで吹かされた挙句、人外に大量な顔射を浴びメガネを汚される。イマジンに絵里が囚はれる、加藤義一が関根和美の向かうを張る微笑ましいプチ見せ場を経て、大体藤村医院と自宅を往復する絵里が帰宅したところ、高校中退後家出、なかみつせいじが死去した際にも帰らなかつた姉の良絵(しじみ)が、不倫男に捨てられたと不意に戻つて来てゐた。
 配役残り松下美織は、藤村と二人分の弁当をチャリンコで買ひに出た絵里と、乗用車で交錯する中学時代の同級生・小笠原亜弓。お嬢様造形、といふか設定である亜弓の綽名はそのまんまお嬢で、夢見がちな絵里がファンタ。終盤桜木優希音の決定力で「悪い!?夢見ることが」なる出し抜けに熱の籠つた台詞も放つものの、妄想癖を夢想に捻じ込むならば別だが、劇中絵里が夢見がちである旨示す描写は特にない。それはさて措き、清々しく御都合、もといタイミングでその場に通りがかる櫻井拓也は、この人も中学の級友・正岡栄太郎。綽名はガリだが当然ガリガリのガリではなく、ガリ勉のガリ。イコール小関裕次郎の鯨屋当兵衛は、ギックリ腰の患者・小村。腰部に注射を打たれる小村の傍ら、絵里が「私も先生に注射されたい(*´Д`*)」と心中秘かに身悶えるのは、アッタマ悪いけどその分琴線にフルコンする名カット。量産型娯楽映画といふ奴は、そのくらゐでちやうどよいと当サイトは常々考へる。ダサさなり馬鹿さ加減の内側に、臆することなく飛び込んで来る瑞々しく弾けるポップ・センス。いよいよ以て、加藤義一がかつての輝きを取り戻しに来てゐるのは否み難いのでは。そして、ロマポの座敷童・コミタマこと小見山玉樹と並ぶピンク映画の妖精・広瀬寛巳が、右足を骨折した往診患者・横田、下の名前は彰司?絵を嗜み、モデルに応じる形で桜木優希音が色んなポーズの裸を大量に披露するサービス乃至ボーナスタイムに貢献。小滝正大は、この男もこの男で絵里が帰宅すると家に上がり込んでゐた、良絵の不倫相手で結局離婚した森潤一。何れにしても見切れる程度の役にせよ、名あり配役となるとピンク限定では何と“ジャスティス”四郎の「痴漢暴行バス しごく」(1998/脚本・出演・監督:荒木太郎/主演:河名麻衣)まで遡る―その後2002年に薔薇族の「天使が僕に恋をした」(脚本:後藤大輔/主演:今泉浩一)を挿む―小林徹哉は、栄太郎の旅館を営む父親・龍次。
 国沢組で精力的な大暴れを展開する桜木優希音が、初めて外征した加藤義一2018年第二作。至極当たり前の話でしかないのかも知れないが、監督が変れば印象もガラリと変るもので、ドヤァ!と威圧的な国沢実映画からは一転、フォクシーなおメガネもエクストリームに、晩熟で不器用なある意味恋愛映画の王道ヒロインに大変身。傍若無人な姉―と森―に業を煮やし、一晩転がり込んだ正岡旅館(大絶賛仮称)にて途方もない深酒を浴びてなほ、一升瓶を縫ひ包みのやうに抱へて離さない桜木優希音が、キュートでキュートであまりにキュートで死ぬかと思つた。良絵が最初に形作るひとつも恋が実らない姉と、恋ひとつしたことない妹の魅力的な物語は、公称Gカップのオッパイと―親の―財力とで藤村を籠絡する亜弓に地団太を踏む絵里に、栄太郎は気が気でない四角関係へと華麗にハッテンもとい発展。非現実的に底の抜けたシークエンスでさへ、妖精性を如何なく発揮したひろぽんが撃ち抜く確かなファンタジーで猛も通り越した爆加速。桜木優希音がメガネをかけてゐた方が数段可愛い、一旦平板か怠惰に嵌つたかに見せかけた最大の難点をも力技で挽回してみせる、かつ櫻井拓也でなければ形にし得まい、画期的にダサい告白からカット跨いで絡みに突入する繋ぎが兎にも角にも超絶完璧。麗しく大完遂したのちも尺を惜しまず、美しい劇伴の鳴る中チュッチュチュッチュ接吻を交し続ける二人。これよこれ、これが締めの濡れ場といふ奴だろ。濡れ場にエモーションの頂点を持つて来る、ピンクで映画なピンク映画の最も然るべき姿を、今回加藤義一は見事にものにしてのけた。2019年は九年ぶり三度目の新春痴漢電車も任された、加藤義一の復調傾向依然堅調。“しなりお”だとか肩書を穿つた脚本家がウザいか何か知らんが、冗談ぢやないぜ、全体何時まで名前で映画を観てゐたら気が済むんだ。


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 「巨乳発情ナース」(2000/製作・配給:大蔵映画/監督:渡邊元嗣/脚本:波路遥/撮影:飯岡聖英/照明:守利賢一/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/監督助手:森角威之・下垣外純/撮影助手:黒田大介・比護富昭/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:神崎優・林由美香・西藤尚・佐々木共輔・ささきまこと・螢雪次朗)。
 ファースト・カットは馬鹿デカいビニール製のリボン、そんな代物何処で売つてゐるんだ。手毬で遊ぶ闇雲に幼児設定の神崎優に、要は志村けんの変なおじさんのエピゴーネンの佐々木共輔(a.k.a.佐々木恭輔)が、「オジサンが毬遊びよりも面白いことを教へてあげようか」。全く以て正体不明のシークエンスながら、神崎優のオッパイを弄びながらの「大きな毬が二つもほらほら」には、紛れもない天才の煌きも感じざるを得ない。何時しか佐々共の体が無闇な本数のコードで何某か計測器ぽいものに繋がれた上で、大絶賛騎乗位に突入。警報が鳴るどころかモックモック白煙まであがる中、カウントダウン・ゼロと同時に二人が絶頂に達するや、ボガーンとドリフ爆破、はせずにタイトル・イン。この時期の、貧相極まりないタイトル画面も、ぼちぼちグルッと一周したノスタルジアを獲得するのかしないのか。知らんがな(´・ω・`)
 閑話休題、二人が致してゐたのは「川崎快感クリニック」、看護婦の花園つぼみ(神崎)が、計測したデータを川崎(佐々木)に手渡す。曰く“人間の性行為に於ける固有の快感を絶対的に数値化することに成功”した川崎が、医学的実験と称して“快感指数”とやらを測定してゐたとかいふ寸法。如何にもピンク映画らしい、かつ見事に底の抜けた大風呂敷ではあるものの、終に濡れ場―の方便―を超えて機能する訳でもない。さうかうしてゐるところに現れた海野珊瑚(林)を、川崎とつぼみはすは重症だベッドの用意だと二人かがりでザクザク手篭め、もといあくまで治療、断じて治療。ところが珊瑚は患者ではなく、不能を拗らせ引きこもる、内縁の夫の相談に訪れたものだつた。
 俳優部残り、90年代後半以降、比較的チョイチョイ薔薇族含むピンクに出てゐた螢雪次朗が、問題の珊瑚内縁の夫・鳳学。往診したつぼみとの一戦を完遂した直後、「貴方があの青空組の組長!?」、一言の台詞で急旋回する展開が堪らない。組長の一人娘とデキたチンピラの学は、二代目を襲名する大出世。ところが兄貴分の妬みを買つた学は身を引く形で出奔、その後娘が継いだ青空組は解散寸前の状態に陥り、責任を学に押しつけた幹部連は暗殺命令を発する。逃亡生活の最中、学は深夜の公園にて暴力ヒモから逃げ出して来た珊瑚とミーツ。似た者同士が忽ち結ばれ、慎ましくも幸せに暮らしてゐたある日。見るから怪し気に尾行するささきまことの姿を目撃した学は、以来津田スタに籠つてゐた。多分佐藤吏でなければ、森角威之とも体格が異なるグラサンの黒服を従へ川崎快感クリニックに日参する西藤尚は、川崎目当ての蜘蛛の巣マダム・青空翔子。
 余程林由美香と螢雪次朗のパートが琴線に触れたのか絆されたのか、m@stervision大哥が妙に褒めておいでの渡邊元嗣2000年第一作。尤も、流石にそこの一点突破で是とするには、如何せん厳しい一作。出し抜けなつぼみのガンスリンガー造形に劣るとも勝らない、ささきまことのおとなしく珊瑚のDVヒモにしておけばいいのにな藪蛇配役にも阻まれ、ガチャガチャな始終はガッチャガチャなりに勢ひ―だけは―よく駆け抜けて行く反面、珊瑚と学のエモーションは最終的な結実には些か遠い。間に川崎を挟んだつぼみと翔子が織り成すトライアングルも、絡みの動因として以上に熟成されることもない。文字通り「ドヒャー☆」と振り逃げるラストは如何にもナベシネマ、この上なくナベシネマ、正真正銘生粋のナベシネマ、とはいへ。既に一般のフィールドで名を上げた螢雪次朗さんが、斯様に纏まりのないドタバタによくぞ快く、そこまで卑屈になる必要もなからう。寧ろ最たる見所は平素のキレを欠いたアイドル芝居でなく、m@ster大哥仰せの通りソリッドな毒婦役で予想外の輝きを放つ西藤尚なのではないかといふのと、もう一点。今をときめかない荒木太郎作でも見覚えのある、頓珍漢な筆致の経絡図の初出は全体何処なのか。更にもしかして、あれは林由美香画?

 ところで、螢雪次朗の現時点でのピンク最終戦は、矢張りナベシネマの2004年第一作「コスプレ新妻 後ろから求めて」(脚本:山崎浩治/主演:桜井あみ)。いや別に、今から大帰還を遂げて貰つて全然構はないんだぜ、つり合ひのとれる女優部は存在しないかも知れないけれど。


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 「べつぴん教師 吐息の愛撫」(2004/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影:飯岡聖英/照明:小川満/編集:酒井正次/助監督:小川隆史/撮影助手:田宮健彦/照明助手:八木徹/現場応援:広瀬寛巳/下着協賛:ウィズ・コレクション/出演:桜井あみ・橘こなつ・瀬戸恵子・白土勝功・西岡秀記・なかみつせいじ)。落としたのではなく、監督助手クレジットはなし。
 英会話講師の小池唯(桜井)は、ルームメイトの森村葉月(橘)を訪ねて来たエリートサラリーマン?な工藤大輔(西岡)を、葉月の不在をいいことに誘惑するやコロッと寝取る。寝取つてはおきながら、唯は一度寝た男には途端に関心を失ふ、始末に終へぬ女であつた。唯は自分は凶暴なヤクザの情婦だ何だのと、工夫に欠ける強弁を持ち出し工藤を追ひ出す。四の五のしつつ葉月には案の定発覚し、当然二人は諍ひになる。葉月は貪欲に玉の輿を探し求めては何時も騙されてばかりで、一方唯は―アメリカ―西海岸かぶれの、男女の仲をゲームに模した華麗なラブ・アフェアーを信条としてゐた。男絡みのお痛の後には、唯は決まつて写真が趣味のアロマテラピスト・持田尚人(白土)の下を訪れる。尚人は高校時代、唯に無理矢理言ひ寄られて以来ゲイ―劇中用語では“ホモ”―になつてしまひ、その所為か、唯は尚人の前では心を許してリラックス出来るのであつた。
 そもそも、何でまたそこまで正反対な二人が同居してゐるのか判らないといへばいへなくもない、全く対照的な恋愛観を持つ二人の女を、殆ど一方向からのみ描いた一作。あちらこちらに不足が目につきもするがまづ形式的に目立つのは、とりあへずの顛末は描かれるものの、最終的には渡邊元嗣の目が橘こなつ(現:向夏)の方には殆ど向いてゐない点。対照が対照として十全に活きて来ない分、最後まで再転向も容易に予想される改心なんぞしてみせないのは天晴だが、唯の唯なりの言ひ分といふものが深まらず、軽やかにともいへ終始上滑る感は否めない。そして最も大きな疑問を残すのが、終盤の構成。尚人の告白が意外性まで含めハイライトたり得る強度を有してゐただけに、最後は唯が尚人の下へと戻つて来ることの前フリといふ段取りも酌めぬではないが、後述するなかみつせいじとの濡れ場など挿まずに、そのまま一息に映画を畳んでよかつたのではなからうか。ゲイ・ボーイと来ればで何時もの横須賀正一ではなく、尚人役に白土勝功を配した正攻法は綺麗に形になつてゐるゆゑ、実際観てゐた際には、「ここでこのまゝ一気に行かないのかよ!?」と、意外を通り越して驚かされすらした。
 尤も、とか何とかいひつつも今作、少なくとも桜井あみのポップでキュートなポートレート映画としては、全き完成をみてもゐる。杓子定規な劇映画としては不用意ともいへ丹念に織り込まれた唯のイメージ・ショットは、何れも力強く映えてゐる。さうしたならば渡邊元嗣が頑強に志向するアイドル映画といふ側面からは、全く磐石であるとも一方からはいへようか。その上でも、本篇オーラスの文字通りのラスト・ショットよりも、エンド・クレジットを彩る写真の方が可愛くないか?といふ無粋な疑問はなほ残れど。
 なかみつせいじは、唯が講師を務める英会話教室「HEBA」の生徒・宮嶋。ビジネス英語を求めて HEBAの門を叩いたにしては、教はるのは夜の英会話ばかり。宮嶋が例によつて事後の唯の翻意に翻弄される件には、場内のそこかしこからも笑ひが起つてゐた。唯の非道な手の平返しも兎も角、それを受けるなかみつせいじのガチョーン演技が素晴らしい。そして明後日方面での今作のポイント・ゲッター瀬戸恵子は、尚人の上得意・坪井美希。マッサージを受けながら夫(一切登場せず)とのセックスレスの悩みをお為ごかしに打ち明けつつ、美希が炸裂させる、瀬戸恵子一流の底の抜け具合に超絶にフィットした、まるでアテ書きされたかのやうな―実際したのかも知れないが―名ならぬ迷台詞、「女はね、一年ハメハメしないと処女に戻るの」、それなんてエロゲ?男でも最長で五年日照りが続くと、チェリー回帰するらしいが。因みに美希の台詞には続きがあり、二年しないと女でなくなつてしまふとのこと、げに忙しい生き物である。

 女教師属性といふことで一応はかけさせたメガネに、渡邊元嗣がまるで執着しないどころか軽視気味ですらある点には脊髄反射で大いに残念と嘆きかけたが、よくよく冷静に検討してみると、桜井あみ(現:夏井亜美)にはあまりメガネが似合はないので、別に構はないのかとも思へた。それにせよ、直ぐに外させるくらゐなら初めからかけさせなくてもいいではないかとも、メガネ愛好者としてはあへて問ひたい。
 ところで、尚人の仕事部屋に貼られてある下手糞なヌード画の人体ツボ経絡図を、確か荒木太郎の映画でも観たやうな気がしたのだが、何の映画だつたか俄かには思ひ出せない。


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