真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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主婦と性生活/ex.DMM戦
は行
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2022年02月03日
「
主婦と性生活
」(昭和59/製作・配給:株式会社にっかつ/監督:堀内靖博《第一回監督作品》/脚本:一色伸幸・村上修/プロデューサー:桜井潤一/企画:栗原いそみ/撮影:水野尾信正/照明:内田勝成/録音:小野寺修/美術:金田克美/編集:冨田功/助監督:村上修/選曲:杉山篤/色彩計測:福沢正典/現像:東映化学/製作担当:三浦増博/出演:泉じゅん・水木薫・山路和弘・中丸新将・伊藤公子・大滝かつ美《新人》・花上晃・阿部雅彦・内藤忠司・高瀬将嗣)。出演者中、内藤忠司は本篇クレジットのみ。わざわざ、本篇にのみクレジットしたのに。
チャックを閉めて貰ふ背中から、泉じゅんが花嫁衣装の身支度。亡姉の婚約者であつた男との結婚に戸惑ひも隠せない、旧姓木下裕子(泉)を友人・幸子(伊東)の声が励ます。「ピッカピカの花嫁になつていゝの」、は軽やかなポジティブ弾ける名台詞。覚悟を極めた裕子がコクンと頷く、ところでは入れずに、裕子と新郎・高野博(山路)がライスシャワーで送り出されての白転タイトル・イン。若干名背景を賑はす参列者の中に、内藤忠司は紛れ込まない。
仕事ぶりの描写を窺ふに、恐らく建築士辺りと思しき高野が兼仕事場の自宅を構へたのが、都から十万億彼方の埼玉は川越。東武鉄道川越市駅から、歩いてみると更に随分あつた帰途がタイトルバック。トリマーの職を持つ裕子は木金土の三日間、元々東京で開いてゐた「犬の美容室 YOU子の部屋」に通勤、屋号に関しては勘弁してやれ。週三日の営業で、お家賃払へるのといふ素朴な疑問もさて措き、何のプレゼントなのかは通り過ぎる、バークレーのセーターを夫に買つた裕子が東京から帰宅すると、当の高野は酔ひ潰れ轟沈。遊びに来てゐた、高野と亡姉・優美の同級生・田辺文枝(水木)は如何にも事後ぽい風情を窺はせつつ、優美の名を呼びながら、高野が自らを抱いてゐた旨裕子に吹く。
配役残り、高瀬将嗣は「YOU子の部屋」常連のオカマ、飼ひ犬はステレオタイプな愛玩犬。中丸新将は幸子が裕子を連れて行く、レストラン(屋号不明)の三代目店主・小野寺忠夫、ゾイド好き。レストランにもその後三人で遊びに行くディスコにも、内藤忠司の姿はない。花上晃は文枝の不倫相手、唯一の名無し配役。ナベが心底惚れ込んだ所以が当サイトの節穴には未だ理解に遠い、野暮つたくしかない大滝かつ美は別れたての小野寺前妻・サキ。但しこの辺りが絶妙に不鮮明、既に過去形と思はせる小野寺と幸子なり裕子との遣り取りに対し、小野寺が致してゐるサキ宅に現れるマコト(阿部)の口ぶりによれば、必ずしも離婚は成立してゐない模様。その他在りし日のスナップに加へ、同窓会名簿の物故を記した頁まで博が焼却する件、瞬間的に見切れる優美役は流石に識別能はず。
小川真実デビュー作でもある第三作「
看護女子寮 凌された天使
」(昭和62/脚本:加藤正人/主演:瀬川智美)が地元駅前に来た流れで、残り四作全てex.DMMで見られるのを潰して行くか、としたところ。俳優部初仕事の推定ないし可能性が早速潰え、かけたものの、何処に内藤忠司が出てゐたのだかてんで判らない堀内靖博第一回監督作品、日活入社は多分昭和51年。公園のブランコに一人揺られる裕子が見やる、離れたベンチに矢張り一人佇む初老?の男。とかいふ、何がしたかつたのか全く不明な謎のカットがあるにはあれ、背格好が内藤忠司とは異なる、筈。
折角優美が死んだかと思ひきや、好きな高野君を今度は妹の裕子にカッ浚はれる。執拗に横恋慕を拗らせる文枝の讒言に、振り回される新婚夫婦。捏ね繰り回し続けるアンニュイは泉じゅんの硬質な美貌で最低限形になりはする程度で、最終的には表面的。案外シンプルな物語は終ぞ1mmたりとて悪びれない文枝の清々しさ以外、どうかういふほどのドラマチックにも欠く。火蓋のキスまでで七分と、結構のんびりした初戦の夫婦生活に際してなほ、オッパイを影に沈めてみたりと「凌された天使」では力強く花開いた、裸映画的な馬力は甚だ未成熟。二番手の本格的濡れ場を、木に接ぐ竹も厭はず飛び込んで来ては、一幕限りで潔く駆け抜けて行く。即ち男優部に於ける絡み要員(花上晃)に介錯させる、新人離れした奇襲戦法には軽く吃驚したけれど。出奔した家に裕子が戻つて来たかに見せ、カメラが引くと往来から窓ガラスに映り込ませてゐた!演出上の企図は特段見当たらない、穿つた画作りを唸らせる反面、歩道橋にて黄昏る裕子に、三回反復して寄つてのロングは教科書的な微笑ましさ。日比谷野音に土砂降りを降らせる、特機を何台並べたんだといふ御祝儀的な豪勢さは兎も角、敢てしなかつたか要は直截に叶はなかつたのか、二人ぼつちのマジカル・ラバーズ・コンサートを画として提示出来てゐれば起死回生の一撃たり得たのかも知れない、ある意味含みを残す一作ではある。
邪気のないミソジニー以前にロマポを見るか観てゐてしばしば躓くのが、兎にも角にも八十年代の迸るダサさが当サイトには暴力的にしんどい。水木薫を台無しにする、壮絶なパーマ頭には悶絶した、ナンシー・アレンかよ。
付記< 第三作で初めて堀内靖博に触れた際、この人がサラブレッドにしては買取系を撮つてゐる点に関し、間抜けな疑問を呈してゐた、ところが。ロマポ末期の日活では、折角叩き上げた生え抜きが、いざデビューするや社外に放逐されてゐたとのこと。凄まじく周知のやうな気もして羞恥を禁じ得ない
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