真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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いんらん家族 花嫁は発情期/DMM戦
深町章
/
2017年12月07日
「
いんらん家族 花嫁は発情期
」(1992/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/企画:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:本多英生/撮影助手:斉藤博/照明助手:小田求/現像:東映化学/録音:銀座サウンド/スチール:津田一郎/出演:桜井あつみ・摩子・しのざきさとみ・神戸顕一・荒木太郎・池島ゆたか)。脚本の周知安と企画の伊能竜は、それぞれ片岡修二と向井寛の変名。
タイトル開巻、住宅街のロングにプップカプーとコンバット風な劇伴。巫女装束におどろおどろしい白塗りの霊媒師・愛子(摩子)が、こんちこれまた津田一郎の自宅に到着する。愛子を出迎へたといふか招いたのは、当家・園山家に半年前に入つた明子(桜井)。家内をムームー唸りつつ見回した愛子が、やをら奇声を発し大麻(おほあさ)を乱舞した上での一言が、「間違ひない!」。まあ、それは間違ひないんだろねと思はせるに足る妙な説得力はさて措き、明子が訴へた通り、園山家には淫乱の霊が取り憑いてゐるといふのだ。上司の薦める縁談で異性との交際経験すらないまゝ見合結婚した明子に、夫の渉(神戸)は諸々の過剰な性交渉を強要。同居する義父の高志(池島)に窮状を訴へてはみたものの、高志にも犯されるに及んで、明子は週刊誌で知つた愛子を頼つたものだつた。既視感?少し待つててね。
配役残りしのざきさとみは、明子がゐるにも関らず、渉が家に連れ込むホステス・悦子。荒木太郎は愛子の除霊の過程で現れた、既に故人である高志の母の、祝言直後に出征し戦死した前夫。何処かで聞いた話?だからもう少し待つててね。
深町章1992年第七作は、十三年間に全七作が製作された「いんらん家族」シリーズの第三作。改題後の偽「いんらん家族」に関しては、あるとしても知らん。改めて沿革をまとめておくと、1991年第一作「
いんらん家族 義母の寝室
」(脚本:周知安/主演:井上真愉見)と第七作の「
いんらん家族 姉さんの下着
」(脚本:周知安/主演:浅野桃里)が、「いんらん家族」シリーズ第一作と第二作。今作挿んで、第四作が1993年第五作の「
いんらん家族 若妻・絶倫・熟女
」(脚本:深町章/主演:石川恵美)、第五作の1994年第五作「超いんらん家族 性欲全開」(脚本:双美零/主演:林田ちなみ)は未見であるが、DMMの中にあるのでその内見る。第六作が少し間を空けて、1997年第八作「
いんらん家族 好色不倫未亡人
」(脚本:深町章/主演:槇原めぐみ)。正直、2003年第五作「
いんらん家族計画 発情母娘
」(脚本:岡輝男/主演:麻白)をシリーズ最終第七作にカウントするのは、我ながら些か無理があるやも。
初心な新妻が見舞はれた桃色の悲劇は悲しい真実を経て、ケロッと喉元過ぎた喜劇に帰結する。幼さも残す容貌と、可憐さと絶妙な肉感性とを併せ持つ肢体とのスレッスレの隔離が堪らない桜井あつみを主演に据ゑ、脇を固めるのも全盛期のしのざきさとみに、いはずと知れた絶対美人の摩子。一級の三本柱を擁し何れも訴求力の高い濡れ場の連打が、尺自体五十三分チョイと一目散に大オチ目指して駆け抜ける。手堅く仕上げられた佳品寄りの小品と、手放しで褒め称へて済まされたならどんなによかつたらうに。
日本ビデオ販売の「Viva Pinks!」レーベルを、見られるだけ網羅すべく展開中の殲滅戦。初戦で見た1991年第二作「
ザ・夫婦交換 欲しがる妻たち
」(脚本:周知安/主演:川奈忍)が、1998年第七作「
隣の女房 濡れた白い太股
」(1998/主演:久保新二)と全く同じ映画。より直截には、深町章が周知安(=片岡修二)に書かせた脚本を自脚本と称して再利用してゐる事実に、ブチ当たつた己の妙な引きの強さに感心しかけたのは、引きの強さどころか、
単なる確率の高さに過ぎなかつた
。今回も今回で、2005年第五作「
変態家族 新妻淫乱責め
」(主演:山口玲子)が、差異の方が余程少ないリサイクル映画。差異といふか、殆ど誤差だ。苗字が違ふだけで役名まで同じ、ウーヨーキーゲンレーホーウーヨーミナーと、要は南無妙法蓮華経を引つ繰り返した愛子が唱へる呪文も同じ。明子が訴へる園山家の異常度を、段々と度を越すに従つて相撲の番付に譬へるのも一緒。何より悔しかつたのが、先に「変態家族 新妻淫乱責め」を観て佐々木ユメカにアテ書きしたかのやうな名台詞だと感動した、「アタシとヤッていいつて誰が決めたのよ?」が前後の遣り取りまで含めそのまんま。何がアテ書きか、アホか、俺は道化か。異なるのは舞台が津田スタから今をときめく伊豆映画の聖地・花宴に移つてゐるのと、渉と高志のアドリブ気味の舌先三寸に、大きくは渉が高志の眼前で明子を嬲るシチュエーションくらゐ。あ、あと愛子が明子の話を聞くのが、「新妻淫乱責め」ではパイプ椅子を置いただけの海岸といふ画面(ゑづら)がシュールな安普請。唯一の救ひは元映画に挙句派手に劣るトナマタに対し、「新妻淫乱責め」は互角に戦へはする点か。何れにせよ、一言で片付けるならば、随分だな、深町とでもいつたところである。とかくこの調子だと、誰も気づいてゐないことはあるまいが又か程度に騒ぎだてしないだけで、まだまだ出て来る気がする。
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