真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「お元気クリニック 立つて貰ひます」(昭和63/製作:獅子プロダクション/提供:にっかつ/監督:渡辺元嗣/脚本:平柳益実/原作:乾はるか 秋田書店刊 プレイコミック “お元気クリニック”より/企画:角田豊/撮影:志賀葉一/照明:田端功/編集:酒井正次/助監督:橋口卓明/監督助手:小原忠美・瀬々敬久/計測:宮本良博/撮影助手:中松敏裕/照明助手:金子高士/スチール:津田一郎/美術協力:佐藤敏宏/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:滝川真子・螢雪次朗・水野さおり・秋本ちえみ・黒沢ひとみ・川奈忍・ルパン鈴木・ジミー土田・橋本杏子・下元史朗)。
 原作準拠ならばもう仕方もないが、何の意味があるのか全く判らない平安開巻。竹取の翁(下元史朗のゼロ役目)が竹林に入ると、凄まじい流れ星が間近に着弾。光り輝く竹を切つてみたところ、中から金太郎ルックのキューピーが現れる。迸る、何が何だか感。産声代りに金太郎キューピーが大射精、満月は赤く発光する。暗転して昭和末期の東京、“現代に於ける性の悩みは”云々と最短距離のイントロダクションを通過して、都内某所にあるセックスクリニック「お元気クリニック」。三ヶ月分溜めた家賃を取り立てに来た大家の美留野緒奈(黒沢)を、院長の御毛栗触(螢)と看護婦の多々瀬ルコ(滝川)があれよあれよと診察椅子に座らせての、正直グッダグダに火蓋を切る巴戦にクレジット起動。とりあへず完遂、これでまた三ヶ月とか高を括る御毛栗に、ルコが同調して乾はるかのイラストを使用したタイトル・イン。へべれけなアバンに、激しく覚えた危惧は残念ながら外れない。
 半ば白旗を揚げるかの如く配役残り、橋本杏子はタイトル明け診察を受ける、大巨根の夫(一切スルー)に先立たれて以来、絶頂知らずの“イカず後家”・タミコ。イカず後家といふのは劇中用語ママ、あんまりだろ。マンガでは、真央元のやうなチンコそつくりの頭といふ設定になつてゐる御毛栗と、所謂スカルファックを豪快な模型を用ゐて敢行する。何時まであつた小屋なのか、新宿にっかつから「矢張りにっかつ映画は勉強になるは」だなどと、ある意味外様ならではなのかな自画自賛を爆裂させ出て来るルコに、石田(ルパン)と篠崎(ジミー)の義兄弟が目をつける。アイドルのスカウトと称して連れ出したルコを、鉄橋下にて二人がかりで手篭めにしようとする現場に、トレンチをキメた松平政雄(下元)が介入。折角カッチョよく登場したにも関らず、松平が「うーやーたー」の掛け声でスーパーマンと金太郎を足して二で割つた意匠の、キンタマンに変身する始末、下元史朗に何をやらせよんなら。兎も角ルコが松平に心奪はれるお元クリに、まさかの当人が来院。実は童貞の松平が巡らせる、雑なイメージだか回想。セーラー服の秋本ちえみが学校の間の聖子で、バニーガールの川奈忍がクラブの間の宇佐子に、修道服の水野さおりが教会の間の真里亜。兎も角、あるいは改めて橋本杏子が、女王の間に鎮座するマドンナお京。
 渡辺元嗣昭和63年第三作は、買取系最終第三作。といふか、同年ロマポ自体が終焉する。乾はるかの出世作『お元気クリニック』の映画版、となると如何にも「コミック・エロス」的な企画にも思へ、必ずしもさう謳はれてゐる訳ではない。ピンナップ・ガールばりのスーパー通り越したエクストリームにグラマラスな女が、乾はるかの常にして主兵装ではあれ、それが滝川真子かよ!といふ脊髄で折り返したツッコミは、強ひて呑み込む。ツイッターを窺ふに、AVをレンタル開始が待てなくてDVDで買ふほどの乾はるかが、自身の生み出したヒロインを滝川真子が演じることに対して当時如何に捉へてゐたのか、尋ねてみたくなくもない。
 一旦は凄まじい裸要員三連撃かと見紛はせた、水野さおり×秋本ちえみ×川奈忍が手短に駆け抜けるジェット・ストリーム・アタックを象徴的に、少なくとも獅子プロ的にはオールスター的な布陣を構へてゐながら、前半は雑然としかしてゐない。寧ろ最初から十全に語つておかない構成が不可解な、郊外の高台にある特殊浴場「エロチック・マウンテン」で極度の早漏をマドンナお京以下四名の嬢に嘲笑された松平が、ルコとの特訓を経て哀しい過去の克服に挑む。後半漸く本筋が起動すると物語は求心力を取り戻し、ルコ・御毛栗を伴ひ再度エロチック・マウンテンに乗り込んだ松平が聖子から順々に撃破して行く展開は、安い美術には目を瞑れば釣瓶撃たれる濡れ場のテンションは何れも高く、少年誌のバトル漫画を、大人の量産型娯楽映画で形にした風情と興奮に溢れはする。尤も、マンガ映画なんだから、こんなもんでいいんだよ。さう開き直つてしまへばそれまでともいへ、そこかしこといふか要は逐一のチャチさと雑さは如何ともし難く、2020年視点で触れる分には、結局ナベが滝田洋二郎にはなれなかつた、限界なり壁のやうなものが透けて見えて来るのも否めない。折角二人が揃つてゐる割に、螢雪次朗と盟友であるルパン鈴木が、同じフレームに納まるカットが設けられないのも矢張り寂しい。ついでといつては何だが、何処からでも主演を狙へる、何気でなく超攻撃的な女優部。滝川真子とともに本篇の最初と最後を飾る黒沢ひとみの働きを見るに、水野さおりから川奈忍までの、完全にランダムとしか思へないビリングには軽く疑問を残す。

 そんな中、明後日か一昨日なハイライトは、松平のエロマリベンジ戦に於ける教会の間。自在にコントロールするに至つた―しかもロングレンジ―射精の狙ひ撃ちで、松平が祭壇の蝋燭を消すのに続きキリスト像にぶつかけると、十字を切つた御毛栗が「ザーメン」。バチカン激おこ、だからそんな映画撮つててどうなつても知らんからな。


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