真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「揉めよドラゴン 爆乳乱れ咲き」(2020/制作:映像集団マムス/提供:オーピー映画/監督・脚本:佐々木浩久/撮影:鏡早智/録音・整音:臼井勝/編集:大永昌弘/スチール:宮沢豪/VFX協力:大木円盤/音楽:広本晋/音楽協力:すずらん風太郎・こばゆみ・hadarecords/助監督:島崎真人/監督助手:山崎源太/間宮悦子キャラクター造形:高橋洋/劇中使用曲:オーピー映画 『絶倫謝肉祭』『呪ひの赤襦袢』『悦楽クリニック 凛子の淫らな冒険』より《作曲 ゲイリー芦屋》/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:優月まりな・西田カリナ・西村ニーナ・野田博史・折笠慎也・石川雄也・佐々木浩久《円盤の声も》・加藤賢崇・しじみ・吉行由実)。出演者中、佐々木浩久は本篇クレジットのみ。
 普通の天候には恵まれた波打ち際、顔の右半分を仮面で隠した司祭服の男・柿沼(野田)と、倉橋三姉妹の三女で、爆乳すぎてデッサンが最早狂ひ気味の里美(優月)が破局を迎へる。一方倉橋家、次女・かおり(西田)と長姉のちなみ(西村)は、些か醤油が濃さうにも見えるすき焼きに舌鼓を打つ。ところに、悄然と帰還した里美が失恋のハートブレイクも忽ち何処吹く風、脊髄で折り返した現金さで肉々しく肉を口に運ぶ、有無をいはさぬ説得力。は、さて措き。アバンから逆の意味で順調にグッダグダした末、柿沼を指し“三姉妹はこの男に騙されてゐたのである”とスーパーで基本設定を強引に提示、早速禁じ手とは。領銜主演の三人に加へ、きちんと抜いてのクレジットが施される吉行由実としじみのほか、折笠慎也と石川雄也もフライングで見切れるタイトルバックに一応勇壮なテーマ曲が流れ、佐々木浩久も導演だとか香港映画に気触れた小癪なタイトル・イン。それでゐて甚だ気の抜けたフォントが、怒火“レイジング・ファイア”に油を注ぐ。
 海岸からの帰途里美が出会つた、“少女老子”の異名を誇る占師・間宮悦子(吉行)が助手の当麻(折笠)を伴ひ倉橋家を急襲。何が何だかか何が何でもな自堕落さで、柿沼から呪はれてゐたとの三人はリベンジするべく、恋も夢も希望も捨て、非情の掟に命を賭ける破目に。あのさ、自分の頭の中にはあるイメージなりテーマを、観客も諒解可能な形のシークエンスに仕上げて提示するのは、映画監督にとつて割とでなく基本的に要求されるスキルだよね。
 兎も角、より直截には仕方なく配役残り、しじみはサカモトにかけたつもりの間違ひ電話を倉橋家に寄こした結果、間宮らが子機から念を送る霊的逆探知が誤爆、ジョーカー面に発狂する女。白石雅彦が本職俳優部に映りかねない佐々木浩久は、砂浜でキャッキャウフフする柿沼と若かりし悦子に、戦争が起こつた旨告げる素人。と、リフレッシュ光線で悦子とミサイルの爆風で死んだらしい柿沼を合体させる、古典的なアダムスキー型UFOの声。U.F.O.とはいへ、ユニバーサル・ファイティングアーツ・オーガニゼーションではない、誰も覚えてねえよ。ちなみとかおりを返り討つた柿沼が、二人を攫ふ地中に倒立する死亡ならぬ“希望の塔”。石川雄也は単身乗り込んだ里美と最初に対峙する、秘伝ヨガ拳法の名人・ダルシム、とりあへず腕が伸びる。次なる刺客が加藤賢崇、少林寺の哲学僧・ポー、禅問答に擬して催眠術をかける。とこ、ろで。ダルシムは鋏で無造作に阿部定、ポーは土手つ腹に大穴を開けられ、何気に何れも確実に絶命してゐる。
 言葉を選ぶと映画がどんなゴミでもクソでも劇場に人を呼べるほど、佐々木浩久の名前に果たして集客力があるのか。画期的にピンと来ない身には、斯くも惨憺たる代物をOPP+に流す、大蔵の正気も疑ひたくなる佐々木浩久ピンク映画第五作。
 同じ男に弄ばれた確かに全然似てはゐない三姉妹が、復讐を期し秘術を会得する特訓に挑む。如何にもそれらしき物語、の名に値しない精々体裁程度ならばなくもない、ものの。初土俵のビリング頭始め、所々覚束ない俳優部の口跡を満足に拾へないお粗末な録音を、ちつとも伴ひやしない劇伴ばかりラウドに鳴らす、頓珍漢な整音が逆噴射で加速。そこかしこで台詞が聞こえないのがつゝがない進行を妨げ、もしなかつたんだな、これが。テンプレ展開を藪蛇な世界観なり、木に竹も接ぎ損なふいはゆる“衝撃の真実”が場当たり的に右往左往。一回何年間か、作劇に於ける記憶操作を国際条約で全面的に禁止して呉れないかな、何でもアリぢやろ。豪快さにも乏しい他愛ない支離滅裂を、やつゝけたキャラクター造形で更にトッ散らかした挙句。アナーキーと称するには根本的に迫力不足のショボ暮れた混沌を、威勢よく飛び込んでは来る機械仕掛けの飛び道具で強制終了してのけるぞんざいな始終は、揃ひのセラムン風コスに身を包んだ上、横一列に並んだメイン女優部が中腰でディルドーに跨る。要はタイトルバックでしか機能しないともいへ、一撃必殺のショットを叩き出しておきながら、寧ろドラスティックなほど面白くも何ともない、詰まらなくさへない。ニュージーランドで起きたモスク銃撃事件犯の固有名詞と同じく、今作に形容詞は不要である。全盛期の大御大・小林悟をも鼻差で凌駕する―当サイト比―珠瑠美にすら、劣るとも勝らない大概な破壊力。重ねて、あるいは止めを刺すのが。端からそつち方面に振つてはゐないと思しき、良くも悪くもニュートラルな撮影にも足を引かれるか後ろから撃たれ、尺の大半も大半、相当な比率で画面にオッパイが載つてゐる筈といふか現に載つてゐるにも関らず、不可思議なレス・ザン・煽情性が致命傷。大御大にせよ女御大にせよ、裸映画といふ絶対の本義を疎かには決してしなかつた。小屋に木戸銭を落とした客の、棹は勃たせて帰らせた。佐々木浩久は何をしたいのか、否、佐々木浩久には何が出来るのか。曖昧模糊とした甚だしい不分明を恥ぢもせず、少なくとも当サイトは知らない。先に触れた、正面からのロングが欲しかつた三姉妹の特訓ショットを除けば、数少ない見所はまさかの美乳も開陳―但し欠片もエロくはない―する、しじみの鮮やかな弾けぷりくらゐ。あんな御仁やこんな御仁やそんな御仁同様、佐々木浩久はゴルフ界でいふところのレッスンプロ的な立ち位置にゐる模様ではあれ、予算なり日程の管理といつた実務的な事柄以外、全体この人が何を教へてゐるといふのだらうか。

 今回得た気づきで、事実上カミングアウト以降の氷川きよしに酷似する―順序が逆だろ―吉行由美が、「これが限界」と花柄のワンピース水着姿を大披露。するに止(とど)まらず、水着の下に手を突つ込みお胸を荒々しく揉みしだく、正しく限界突破を超披露。だからその“限界”とやらは、何処の馬の骨が吐かした境なら。まだまだ、なんて滅相もない。素面でイケる、余裕でイケる、全ッ然イケる。不幸にして荒木太郎のみならず山﨑邦紀も戦線から姿を消した中、濡れ場も碌に撮れない外様作で無駄脱ぎ―申し訳ないけど、友達とかさういふの心底どうでもいゝ―してゐないで、吉行由美には御自身の監督作に敢然と参戦、艶やかな大輪を咲かせションベン臭い三本柱を蹴散らすアクションを切に望む。本当に望む、マジのガチで心から望む。
 備忘録<衝撃の真実は間宮と柿沼のリフレ合体と、間宮が三姉妹を掻き集めた育ての親


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )


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コメント
 
 
 
>限界突破を超披露 (通りすがり)
2022-02-01 22:23:22
サトウトシキの『悶絶本番 ぶちこむ』で、
オッパイをブルンブルン揺らして本多菊次郎とセックス
する吉行由実が一番エロいです(鼻血ブー ←古い)。
今夜だけ都合のいい女になってあげる、とかそんな事も言っちゃって、もうホントにエロい女(役)です。

ピンク四天王も捨てたもんじゃないな、と思いましたw
 
 
 
>吉行由実が一番エロい (ドロップアウト@管理人)
2022-02-02 21:35:49
 寧ろ、何の映画の吉行由実が最強にエロいか、なる議論に実はほとんど意味がなくて、
 誰のどんな映画であれ、自身の濡れ場の間は偶さかにせよ束の間にせよ、ストロングスタイルのどエロ裸映画と成す。
 その百発百中にして一撃必殺の決定力こそ、吉行由実が偉大なる所以なのであります!(ドンッ   >机を強く叩く音
 
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