真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「したがる先生 濡れて教へて」(2002/制作:国映株式会社/配給:新東宝映画/監督:今岡信治/脚本:今岡信治・星川運送/企画:朝倉大介/音楽:gaou/撮影:鈴木一博/助監督:坂本礼・伊藤一平/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/撮影助手:清水慎司・川又太治/監督助手:松本唯史・白石香織/タイトル:道川タイトル/現像:東映化学/出演:高野まりえ・吉岡睦雄・小倉あずき・松島圭二朗・米倉あや・土橋大輔・羅門ナカ・イッペイ・理佐ライオン・岩越留美)。共同脚本の、星川運送なる人を食つた名義の正体は不明、星川隆宣?
 国映のみクレジットした上でタイトル開巻、「よーい、スタート」。第一声から早速覚束ない口跡で、校名も担当科目も不詳の高校教師・藤沢紀子(高野)が、土でなくタータンのトラックを戯れにダッシュする。ミニスカと踵の高いブーツで危なかしく走る紀子を、遠く盛岡から編入して来た、中村圭介(土橋)が校舎の窓から見やる。視線に気づいた紀子が二年二組の教室を覘いてみると、驚く勿れ中村はフルチン、時々日に当てないと“暴走”するらしい。その癖、中盤絵のモデルを乞ひ中村が紀子を招く、一人暮らしの自宅は眩しいを方便に、ヤバいバイブスで窓を塞いでゐたりもした。閑話休題校庭の中まで紀子をチャリンコで迎へに来た、漫画喫茶アルバイト店員の彼氏・城山耕一(吉岡)との事後。耕一が紀子の顔を跨ぐ、その所作はもう少しどうにかならんのかと重疑問がバクチクするのは兎も角。兎に角跨いだ弾みで、紀子は耕一が火遊びした女・チサト(一切登場せず)が、耕一の足の裏に連絡先を書き残してゐる火種を見つける。
 配役残り、イコール今岡信治の羅門ナカは主に紀子が入り浸る勢ひで使ふ、安くしないと客が来て呉れないのに、安くても来ない悲しい店「gina」の店長。本厚木のレストランバーである「gina」と、紀子が暮らす「伽羅ハイツ」(世田谷区北烏山)は二十余年の歳月に耐へ現存する。小倉あずきは紀子の同僚・脇坂智美で、松島圭二朗が智美の彼氏、兼漫喫の多分社員・石本正人。元々耕一含め、四人で何時もつるんでゐる仲、合コンでもしたのかな。米倉あやは耕一がコインランドリーで出会ふ浪人生・大河内孝子、今度はイコール伊藤一平のイッペイは、催した孝子が二尻のチャリを停めさせた、ゲーセンの表にて。その場に通りがかり孝子がヤリマンである旨、耕一に告げる輩・崎山。美紀が「gina」で事実上の自棄酒を呷つてゐると、智美と石本が来店。耕一の不在を尋ねられた、美紀がスッ惚ける「オラシラネー」。痴話喧嘩がてら幅広の畦道を並走する、紀子と耕一のママチャリ。袖にされた耕一が、田圃に突つ込むカット。そして、 例によつてウェーイな造形を宛がはれた伊藤一平の、「あいつ、ヤリマンな」。何処で観たのかは忘れたけれど、端々を結構覚えてゐた。そ、れと。大勢に影響を及ぼす大問題でもなくはあれ、そこかしこぼちぼち見切れる頭数のうち、理佐ライオンと岩越留美がどの二人を指すのかが全ッ然判らん。理佐ライオンて、ラジャ・ライオンにかけた訳ではあるまいな。
 エクセスから買取拒否を喰らつた案件を、国映経由で新東宝に救済して貰つた。リアルタイムでm@stervision大哥が大胆な憶測を展開してをられる、所詮関係者が口を割つて呉れない限り、真偽のほどが定かにならない疑惑は一旦さて措き。端役とはいへ当時既にテレビアニメでのレギュラーも持つてゐた、声優の米倉あやが変名を用ゐもせず、堂々と脱いで絡んでゐる今岡信治通算第九作で国映大戦第五十九戦。全くの門外漢につき、声優界に於けるこの人のネームバリューについては清々しく与り知らないけれど、高野まりえと小倉あずきが共倒れ、もとい共々面相から難も否めない一方、三番手ながら米倉あやが一番可愛く撮られてある。といふ評価も十二分に成立する布陣につきクラスタ諸氏は必見、とだけは間違ひなく断言し得よう。耕一が移す心に納得といふ形で感情移入の容易な、イチャイチャいやらしく且つ愛ほしく。体のみならず心も重なる対面座位の濡れ場などは、裸で映画の裸映画として普通に素晴らしい。あ、あと忘れてゐたのが今作、吉岡睦雄のピンク初陣でもあつた。素頓狂な発声等々よくいへば既に出来上がつてゐて、悪くいふと初々しさとは無縁。
 エクセス買取拒否の件に関しては、前貼りを貼るのが面倒臭かつたのか、あるいは劇中季節ないし撮影時期が冬―ちなみに封切りは六月中旬―であるのを踏まへた、些末なリアリズムか。結合した下半身が基本布団の中から出て来ない点と、各々の絶頂を概ね無造作に端折る、あるいはより積極的に描かうとはしない。頑なか小癪な態度にさへ目を瞑れば、女の裸ナメてんのかと腹は立たないあるいは、もしも仮に万が一、元々対エクセスの代物であつたとしても、辛うじて頷けはする程度。寧ろビリング頭二人のキャスティング自体に、何処から連れて来たんだなエクセスライクをより強く感じつつ、何れにせよ、映画を見ただけでは何ともいひかねる。
 実は手洗にカメラが仕掛けてあつた、紀子が敷居を跨いだ中村拓ならぬ中村宅には、中村が描いたヒバリの絵が。曰くヒバリは死んだ人間の魂を肩に乗せ、地上に運んで来るのです。この目の見えないヒバリは、地上に未練を残した人間の魂が、痛ましくて堪りません。拗れ倒す紀子と耕一の恋路に、試しにググッてみても何も出て来ないゆゑ、恐らく中村発案によるヒバリの伝承が木に竹を接ぐ。美紀に突き飛ばされ球体噴水を被弾した耕一が、何も全裸になることはない、コインランドリの乾燥機で濡れた衣服を乾かしてゐて孝子とミーツ。近しくなつた二人が「gina」に行き、紀子ら三人と鉢合はせる。土台無茶なシークエンスに不自然をもう一手被せそれなりに不時着させる、クロスカウンター的な展開はグルッと一周して鮮やかにキマる。予め現し世に居場所を持たずに生まれて来たかのやうな、中村の歪んだエモーションも歪んだものは歪んだまゝに、なほ高い純度で起動しなくはない。尤も、地味にアキレス腱たる松島圭二朗の壊滅的な薄ッぺらさに加へ、箸が転べば「gina」で話が進行する、手数を欠いたロケーションの限界は終盤流石に食傷も禁じ難い。何より土橋大輔は確かに撃ち抜けたヒバリ云々を、改めて心許ない、主演女優の口跡は持て余しすらし損ねる。中村クンの魂を運んで来る、ヒバリなんて飛んでゐないショボ暮れた冬空の試合終了ぶりが象徴的な、大魚を釣り逃がした感なら漂ふ最終的には貧しい一作。特に相好を崩しもせず、用意した衣装に着替へる紀子の映像を、中村が録画しつつ同時視聴する無表情な至福。死後紀子に送りつけられて来た自身の盗撮VHSは、未だ中村が家族の皆から愛されてゐた、幸福な幼少期のホームビデオに上書きされたものだつた。確かに必殺が、一撃どころか二撃あるにはあるの。惜しいのね、凄まじく惜しいのよ。不完全なればこそ、なほこの映画が好きで好きで仕方ないといふ声に対しては、当サイトは異を唱へない。


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