真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ONANIE一家 ‐バイブ蕾責め‐」(1998/制作:セメントマッチ/配給:大蔵映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/撮影:清水正二・岡宮裕/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏・広瀬寛巳/音楽:大場一魅/スチール:津田一郎/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/出演:吉行由実・小松ひろみ・東麗奈・神戸顕一・佐々木共輔・平賀勘一)。
 “これは、その名の通り、「人の三倍はスキモノ」の三好家一家の物語である。”漢数字かアラビア数字、読点の打ち方が若干異なる以外、後述する第三作とほぼ全く同じ文言の手書きスーパーによる開巻。三好の表札を抜いた上で、昼下がりの津田スタにタイトル・イン。純然たる私的な雑感でしかないのだけれど、配信動画に於いて大蔵映画時代(~2001)の、王冠カンパニー・ロゴを目にすると心なしか郷愁にも似た穏やかな気持ちになる。ヒャヒャヒャーヒャヒャン、何時から使つてゐたものなのかは知らん。
 台所に立つ息子嫁の礼子(吉行)が、義父の徳三(平賀)が爆音で鑑賞するAVにキレる間隙を縫ふかの如く、双子の弟で受験生の椿(佐々木)はテレクラで捕まへた女子大生・奈津美(東)を伴ひシレッと帰宅。玄関でのディープキスから、カット跨ぎで絡み初戦に勢ひを殺さずサクッと突入する。椿あるいは三番手が切る火蓋の完遂を待つて、双子の姉・さくら(小松)も帰宅。何の物の弾みか小松ひろみが全面にフィーチャーされたポスターに、最後まで翻弄されてゐたのは神を宿すのか否か微妙な些末。礼子いはく色の好み具合が徳三似の椿と、優等生のさくらは父親である杉男に似てゐるとする一方、連夜家に仕事を持ち込む当の杉男(神戸)は妻と満足に向き合はうとすらせず、二人の営みは既に三年間なかつた。
 配役残り、さくらは部屋に家人を一切入れない方向なのか、壁の受験勉強時間割―ひろぽん画伯作―に堂々と記載された午前二時のオナニータイム。多分三本所有するバイブにさくらが各々名前をつけてゐる、黒バイブはブラピで白はディカプリオ。もう一人ゐる筈のオナペットは、模造紙が画角に削られ判読不能。そのうち、安ブロンド鬘の一点突破で、さくらが迸らせるイマジンの中に現れるレオ様当人は佐々木共輔の二役、流石に面相は回避してある。完全に再起不能を思はせるほど、一旦昏倒した徳三を往診する医師の、帰りがけの声は池島ゆたか。
 池島ゆたか1998年薔薇族込み第四作は、2001年第五作の「好き者家族 バイブで慰め」(脚本:五代暁子/主演:佐々木麻由子)を三部作の三本目とする「三好家の人々」第一作。第二作の2000年薔薇族込み第五作「奥様 ひそかな悦び」(脚本:五代暁子/原案:たけだまさお/主演:佐々木麻由子)が、現状配信でも見られない何気にアンタッチャブル、あとたけだまさおて誰?足かけ四年、計三本に亘る中キャスティングに変動が見られ、綺麗に皆勤するのは椿役の佐々共のみ。杉男も全作通して神顕ではあるものの、「好き者家族 バイブで慰め」は写真と声だけのカメオ出演。礼子と徳三が、後ろ二本では佐々木麻由子とかわさきひろゆきに後退、もとい交代してゐる。さくらに至つては「奥様 ひそかな悦び」に出て来ないばかりか、河村栞が「奥ひそ」で別の役(礼子の姪・めぐみ)を演じてゐたにも関らず、「好きバイ」で復活したさくらに扮してゐたりするのが実にフリーダム。ex.川崎季如に関して、m@stervision大哥は徳三は久保チンの役と難じておいでだが、平勘もなかなか悪くない。滑つてゐる、より直截には滑り散らかしてゐる風に映るのは、他愛ない脚本が悪い。
 序盤徒に尺を食ふ、クスリとも面白くない下ネタ・ホームコメディには匙を投げかけさせられつつ、三年前に没した形になつてゐる、遺影も用意されない亡母を徳三が押し倒す様をさんざ見せられて来た、杉男が実は御無沙汰云々以前に性自体忌避する人物造形には、逆にこの二人のコンビで、さういふ周到な手数を踏まれると却つて面喰ふ。事が順当に運んだ場合、当然同じタイミングで大学に進学する子供を二人抱へる家計の苦しさと、夫婦のレスをテレクラに直結する力業も、量産型裸映画の下駄を履き案外スムーズに決まる。声で気づかないのかといふプリミティブな疑問を到底否み難い、礼子が椿と、さくらは杉男とテレクラに燃える三好家にて、徳三が長い昼寝感覚で文字通り再起動。何故か番号を知つてゐた、奈津美に直電をかけ参戦する電話性交トリプルクロスは、そもそもの無理筋さへさて措くと、へべれけの極みながらクライマックスに足る賑々しさ、堂々と底を抜いた。二番手のM字絶頂を、寸前で百歩譲つて女優部ならばまだしも、選りにも選つて神戸顕一で遮る一大通り越した極大疑問手は、如何せんさて措けないがな。何はともあれ、殊に横乳が狂ほしいほどエモい爆乳に正しく勝るとも劣らない、劇中礼子に入浴―と睡眠―シークエンスがないゆゑ、吉行由実が正真正銘一秒たりとて外さないウェリントンすれすれの巨大なスクエアが、限りなく唯一にして最大の勝因といへるやうな一作。それがどうした、オッパイの大きな美人の御メガネ、それこそ全て。究極あるいは本質、この地上に於いて最も美しく輝く宝玉である。あゝ人生を厭悪するも厭悪せざるも、誰か美女の眼鏡に遭ふて欣楽せざるものあらむ、透谷か。

 箍のトッ外れた賛美は兎も角、姉弟がそれぞれの自室にて、何者かからの合否通知―椿は棚牡丹の裏口なのに―を銘々携帯で待つ。要は撮影を南酒々井で完結させる横着か安普請が生んだ、イズイズム的な不自然さについてはこの際等閑視してしまへ。とも思つたが、よくよく考へてみるに、礼子が徳三の車椅子を押し、二人で海辺に赴く一幕が設けられてゐたりもする、それは何処で撮つたのよ。


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