真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「団鬼六 縄責め」(昭和59/製作・配給:株式会社にっかつ/監督:関本郁夫/脚本:志村正浩/プロデューサー:奥村幸土/企画:人尋哲哉/原作:団鬼六/撮影:野田悌男/照明:木村誠作/美術:金田克美/編集:鍋島惇/録音:細井正次/選曲:伊藤晴康/助監督:池田賢一/製作担当:鶴英次/スチール:目黒祐司/出演:高倉美貴・高橋かおり・仙波和之・井上はじめ・益富信孝・西山直樹・森美貴・中山あずさ・尾崎八重/緊縛指導:浦戸宏)。配給に関しては事実上“提供:Xces Film”か。緊縛指導の浦戸宏が最後に来る順序は、本篇クレジットまま。
 豪奢な寝室、初老の男がブランデーを舐めながら、絵に描いたやうな高圧的な態度で若く美しい妻を虐げつつ一方的な事に及ぶ。圭子(高倉)は東都銀行何処やら支店支店長の小林雄三(仙波)と、実家への融資を盾に後妻として結婚する。前妻と別れた理由は語られない小林の求めるものは偏に子宝のみで、豊かではあるものの愛の無い生活に、圭子は疲れてゐた。小林が店を持たせるだのどうだのと、銀座のホステス・ルミ(高橋)とこれまたステレオタイプ感が爆裂する愛人関係に戯れる一方、ある日作成しよう、もといある日一人でフラりと海岸に遊びに出た圭子は、海岸を清掃する城北大学生・野崎(井上)と出会ふ。年も近い野崎と火遊びによろめいてしまつた圭子が潤ひを取り戻したのも束の間、二人の逢瀬は、何者かによつて写真に捉へられてゐた。五百万の金を要求された圭子は、さりとて百万しか掻き集めることが出来ず、受け渡し場所に指定された喫茶店に現れたルミに、場末のバーへと誘(いざな)はれる。そこに待ち構へてゐたサディスト・土田(益富)と、ルミに加へルミの護衛機―スレイブ―格のマリとフミ(中山あずさと尾崎八重)まで交へて、不足分は体で払へと、ダイレクトにお定まりな淫獄に圭子は堕ちる。
 いはずと知れたロマンポルノの一作といふことで、いふまでもなく画面自体の基本的な分厚さが、流石にピンクとは比較にならないほどに違ふ。つらつら眺めてゐるだけで昭和の時代の日本映画を観てゐるといふ快感に浸れはするものの、開巻とオーラスの正対照を成す逆転以外には、特に壊れもしない代りに新味も全く欠いた展開の始終は正しく、文字通りプログラミングされた印象に留まる。かつて和製オリビア・ハッセーと謳はれた高倉美貴の美しさは確かに時代を越えた決定力を有しもするが、映画全体のグレードが高いだけに、それだけではどうしても物足りなさが残つてしまふ感も禁じ得ない。叶はぬ与太言と承知の上でなほいふが、ここは寧ろ、ピンク映画の安普請の中に放り込んでみた方が、より一層高倉美貴が際立ちもしたのではあるまいか、などと思はぬでもない。
 配役中、黒川と由加とある西山直樹と森美貴がよく判らないが、残る候補は小林家の老家政婦と、結婚式当日回想ショットに見切れる、圭子父親辺りか。

 主に圭子の寂寥を表現する為とオーラスを綺麗に締め括る用途で、“赤いほうせん花 お庭に咲いたよ”との歌詞から始まる、加藤登紀子の「鳳仙花」が劇中歌としてガンガン使用されはするのだが、クレジットには一切載らない。大らかな時代の名残、さういふ風にでも、呑気に解釈すればよいのであらうか。


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