真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「見てはいけない母の痴態」(1996『青い性体験 淫らに教へて』の2005年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:岡輝男/企画:中田新太郎/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/助監督:榎本敏郎/出演:青井みずき・風見怜香・林田ちなみ・頂哲夫・樹かず・山本清彦)。
 ともに高三の服部恵利子(青井)が、彼氏の郁夫(頂)とホテホテ歩く。こゝでひとつ特筆しておかねばならないのは、過去に一本出演作を観てゐたのは迂闊にもスッカリ忘れてゐた、青井みずきがイコール相沢知美であるといふ点。改めて整理すると、青井みずきの名前で裸仕事デビュー後、1997年から御馴染み相沢知美、これは子役時代の名義に戻したものらしい。更には、確か二回のブランクも経て、2006年からは会澤ともみとしての活動も見られる、花の命が案外長い。話を戻して、既にサッカーでのスポーツ就職―劇中台詞ママ、実業団チームにでも入るのだらう―を決めた郁夫に対し、医学部への進学を志望する恵利子は、“女が頑張るのは子供を産む時と、いゝ男をゲットする時だけでいゝ”だなどとする、古典的な女性観を伝承する母親と衝突してゐた。郁夫の部屋、先にクレジットが通りつつ、恵理子と郁夫が一戦終へるのを待ちタイトル・イン。
 タイトル明け服部家、ところがそんな恵利子の母・幸子(風見)が、東大医学部の今でいふイケメン・三浦丈典(樹)を、塾にも通はぬ―その外堀を、アバンの会話中で埋めるのは地味に手堅い―娘の家庭教師に招聘してゐた。そこに恵利子帰宅、簡単に互ひの紹介を済ますや、母親が進路を認めて呉れたものと感激した恵利子は、早速三浦の教示を受け自宅学習を始める、幸子の魂胆にも気づかずに。服部母娘と三浦の3ショット、三浦が幸子に向ける視線に大オチの気配を感じ取つたのは、演出のブレでは多分なく単なる当サイトの明後日だか一昨日な見当違ひのやうだ。
 恵利子の受験勉強がとりあへずは捗る中、幸子からの三浦に関する電話報告を事の最中に受ける、後に服部家に入る際にはスーツ姿であつたところをみるに職業婦人と思しき林田ちなみ(a.k.a.本城未織)は、恵利子の姉・優子。満足に台詞も与へられず林田ちなみの介錯役に徹する山本清彦(a.k.a.やまきよ)は、優子のお相手で課長職の銀行員・宏二。但し、宏二は優子にとつて夫でなければ恋人でもなく、旦那は旦那で別にゐることが、後に一言だけ語られる。対立しなくもない恵利子に対し、幸子と優子の仲は良好に見えるものの、さつさと家庭に入つて子供を産みなさいといふ形で、幸子の思想と優子の現況との間に厳密には齟齬が感じられなくもない。他方、幸子は幸子で、遺産を残しさうな男と結婚した、即ち未亡人である旨が、後々同様に一言で片づけられる。それゆゑ、因みに2000年最初の旧作改題時新題は「好きもの未亡人 母娘で乱れる」であるのだが、正直幸子の未亡人属性は清々しく判り辛い。
 母のいふ“女の幸せ”よりも“私の幸せ”とやらを激しく主張する、青井みずきの熱演が一応映える恵利子と幸子の相克を軸とした、終盤木に竹を接ぐ正攻法のホーム・ドラマも決して悪くはないとはいへ、前後の寝取られ未遂やカミングアウト後戦の工夫の欠き具合が展開的にあまりにも自堕落につき、オーラスのサッカー・ボールに書かれたエールまで含め今一つも二つも覚束ない。今作の見所はといへば矢張り、序盤快調に走る幸子の玉の輿大作戦。強精剤にスッポン鍋と、幸子は恵利子を呆れさせる頓珍漢な差し入れを連打。止めは団扇でパタパタ扇ぎ、室外から送り込む媚薬香。異変を察知した恵利子が様子を窺ふと、スッカリ効果を発した幸子が廊下で自慰をフルスイングかましてなんかゐやがるカットは、風見怜香自体のものにも加速された、正しく抱腹絶倒の破壊力を誇る。この件、三浦は異臭を全く感知しなかつたのは、もしかするとひよつとして万が一、遠い遠い遠過ぎる伏線であつたものやも知れない。

 よく判らないのが、「見てはいけない母の痴態」は確かに目下津々浦々を回つてゐるやうなのだが、2005年新版が何で又この期に?といふ疑問は払拭し難い。横着して通算四度目の新版公開に、新々題を使ひ回したといふ寸法なのであらうか。


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )


« 美尻調教 も... 簾越しに、愛... »
 
コメント
 
 
 
Unknown (はる)
2021-09-02 09:09:13
最後のほうの丈典のホモカミングアウトが唐突かな?
樹かずが妥当かと思うけどほうちょっとホモっぽい俳優でも良かったのでは?
実際はホモって言っといたほうが関係が疑われないし、
背徳感があるしね
実際は正しいことしてるのにw
 
 
 
>ホモっぽい俳優でも良かったのでは? (ドロップアウト@管理人)
2021-09-02 20:52:15
 脊髄で折り返した物凄く雑な印象だと、
 この映画、樹かずとやまきよの役が逆でも何の違和感もなく成立しますね、多分
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。