真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「制服処女 ザ・ゑじき」(昭和61/製作:獅子プロダクション/提供:にっかつ/監督:佐藤寿保/脚本:渡剛敏/プロデューサー:鶴英次/撮影:斉藤幸一/照明:吉角荘介/音楽:早川創/編集:酒井正次/助監督:橋口卓明/監督助手:五十嵐伸治・瀬々敬久/撮影助手:滝彰志/照明助手:泉田聖/緊縛指導:志摩紫光/スチール:田中欣一/VTR技術:日本VTR/現像:IMAGICA/出演:倉田ひろみ・早瀬めぐみ・相本燿子・松岡愛子・星野小夜子・藤崎卓也・渡剛敏)。録音が見当たらないのは、本篇クレジットまゝ。
 地下街的なロケーション、学生服でキョドる脚本家。渡剛敏のアレな面相―と高校生にしては随分な後退した前髪前線―以前に、キネコの画質が壮絶を吹き散らす。兎も角肩に担ぐサイズのビデオカメラを構へた純(渡)の周囲を斉藤幸一のカメラが360°一回りしてから、純は歩き始める。雑踏にクレジット起動、向かつた先は星修高等学校。純カメラの視点が放送室に辿り着き、暗転してタイトル・イン。放送部の由貴(倉田)がてれんてれん他愛なくすらないストリップを披露するのは、数学の夏期講習中寝落ちた、同じく放送部である純の淫夢。ここで教室に俳優部が、一旦出揃ふ。大卒一年目の新任教師・星野小夜子(ハーセルフ)に当てられた問題に答へられないどころか、純は夢精してしまつてゐた、斯くも残酷な悲劇見たことない。エクストリームな恥辱にその場から逃げ出した純は廊下を激走、放送室に駆け込む。平静を取り戻した純は、全校に張り巡らせた盗撮システムを起動。今しがた逃げて来た3年B組に関しては、カメラを教室の前後に設置するは寄れるはで、割とでなく至れり尽くせり。純がシステムを止め傍らのVHSを再生すると、「3年B組出席番号十六番早瀬めぐみです」と、教室では純から見て十時の方向に座つてゐた早瀬めぐみ(矢張りハーセルフ)が大登場。美術部で油絵の大作に取りかゝつてゐるめぐみを、純が襲撃。しかも描きかけのカンバスにめぐみを大の字に拘束した上で、手当たり次第色んな調味料をWAM的に塗りたくつた末凌辱する。
 配役残り相本燿子は、音楽部で3年B組出席番号二番のだからハーセルフ、一番は哀川翔にさうゐない。ピアノを弾いてゐた燿子を、純が今度は開脚緊縛。まづはリコーダーで尺八を吹かせるのが、さう捉へると斬新。松岡愛子は体操部で3年B組三十六番のハーセルフに決まつてるだろ、藤崎卓也―も体操部―がボーイフレンドのヒムセルフ。たつたナウ気づいたのが、この高校は三年生が何時まで部活をやつてゐるのか、もう夏休みだぞ。
 佐藤寿保昭和61年第四作―通算第五作―は、全三作中二作目となる買取系。尤も買取系は買取系でもロマポではなく、アダルトビデオに対抗してのビデオ撮り×本番路線を採用した毒々しい徒花、もしくは一種の断末魔にも近いロマンXであつた。さうなると現状エクセスが小屋に放り込んででもして呉れなければ触れる手立て―昔VHSは出てゐたらしい―のない、買取系初陣の「人妻コレクター」(昭和60/脚本:丘哲民=片岡修二/主演:小川美那子)も激越に見たくなるところだが、それはさて措き東映セントラルで二本撮つた商業デビュー三本目で、買取系に飛び込んで来た佐藤寿保の戦歴に、残りの三天王とは一味違ふ感興をこの期に覚える。
 始終の流れとしてはめぐみ同様、燿子と愛子に小夜子先生を自己紹介V噛ませ順々に犯したのち、改めて対ビリング頭。目に見えるやうにしか撮れない―少なくとも当時の―ビデオの特性、あるいはフィルムの魔力に頼れない根本的な劣勢にも足を引かれ、マトモに可愛いか美人な女優部が一人もゐない―何故か顎率が妙に高い―布陣は如何せん厳しいものの、ある意味潔い一本調子ながら、めぐみ~小夜子各篇に於ける責めの多彩さもあり、裸映画的な全体の構成は案外磐石。燿子戦の事後、純―といふか渡剛敏―がピアノの鍵盤をチンコで戯れに叩くシークエンスに、「酷え!」と呆れ返つてゐたら続いて、金属バットでガツンガツン丸ごと破壊し始めるのには度肝を抜かれた。彼氏と69型に緊縛した愛子に、卓也クンのガチ眼前後背位。珍しい形の二穴も敢行する愛子戦の事後は、軽く花嫁衣装も着せた愛子と卓也を抱き合はせに縛りあげ、放尿で祝福!劇伴は、適当な演奏の「結婚行進曲」。純―といふか渡剛敏―のプリミティブ且つ破壊的な衝動が、グルッと一周した清々しさに易々と突き抜ける中盤は、形容し難い見応へを爆裂させる。それだけに、いつそ豪快な一点突破オチで片付けて呉れた方がまだしもな、結局死んだのは何れなのかが些か混濁するラストには失速感も否めなくはない、にせよ。今は何処で何をして生きてゐるのか、己は当然の如く例によつて棚の奥底に押し込むと、言葉を選べば凡そ普通の社会生活を送れるやうには見えない―逆に、純の偏執性が演技によるものであつたならば超絶すぎる―渡剛敏の、暴発しかしない物騒なピストルのやうな歪んだエモーションが兎にも角にもなハイライト。闇雲に鳴るノイズに連動して、純―といふか渡剛敏―が痙攣してブッ倒れるカットとか、最高でなかつたら全体何なのか。佐藤寿保のといふよりも、渡剛敏の映画といつた印象が寧ろ強い衝撃作である。


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コメント
 
 
 
Unknown (はる)
2021-10-30 07:08:00
渡剛敏って当時何歳だったんだろう?
初監督がぴあで賞を取ってるので86年で当時26歳位か?
しかし何故白ブリーフだったんだろう?
碓田清司とかもいたけど消えちゃったよね
 
 
 
>渡剛敏って当時何歳だったんだろう? (ドロップアウト@管理人)
2021-11-06 22:06:14
 どうなんですかね、結婚でもして、
 案外普通に暮らしてたりとかするかも知れませんね。
 
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