真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「人妻 あふれる蜜ツボ」(2005/製作・配給:新東宝映画/脚本・監督:深町章/企画:福俵満/撮影:清水正二/編集:酒井正次/録音:シネキヤビン/助監督:佐藤オサム/監督助手:茂木孝幸/撮影助手:岡部雄二・嘉門雄太・山崎秀治/選曲:梅沢身知子/スチール:津田一郎/現像:東映ラボ・テツク/出演:里見瑤子・吉沢明歩・佐々木ユメカ・千葉尚之・川瀬陽太・岡田智宏)。脚本に関しては後述する。
 昭和二十二年、亡き夫の遺影を胸に抱き、戦犯として囚はれた義弟の帰りを待つ元華族の旧家の妻とその友人の、二人の女の姿を描いた物語である。
 正田瑞穂(里見)は夫の元義(岡田)を戦争で喪ひ、BC級戦犯として囚はれた義弟・裕輔の帰りを待ちつつ、女中の久保田まゆみ(吉沢)と二人で家を守る。正田家に、かつては瑞穂と元義を巡り恋の鞘当てを演じた過去もある友人の三橋麗子(佐々木)が、闇市で知り合つたといふアプレ気取りの大学生・太田光男(千葉)を伴ひ訪ねて来る。麗子は、光男と二人情死する死に場所を探し求めてゐた。そして光男は、迫る死への恐怖から気を紛らすためにか、ヒロポンに溺れる。川瀬陽太は、正田家の土地屋敷を買収しに来る、元お抱へ運転手の大河原元。瑞穂には鰾謬もなく断られた大河原は、裕輔の面会に出かけた瑞穂が家を空けた隙に、まゆみを犯す。裕輔は、腰痛持ちの捕虜に灸を据ゑてやつたのが、捕虜虐待と見做され死刑を執行される。情を交した後、光男も麗子を独り正田家に残し姿を消す。何もかも失つたまゝ、新時代にそれでも生きて行く腹を固める二人の女の姿を描いて映画は終る。
 里見瑤子は勿論のこと、わざとダサい髪型にした佐々木ユメカも顔も体も昭和の女に見えて良かつた、口跡は幾分捌け過ぎかとも思つたが。対して吉沢明歩はその意味に於いては論外、終戦直後どころか、90年代以降にしかああいふ女の子は出現しないだらう。ひとつ気になつたのが、回想シーンその他で爆撃機の爆音のSEが入るのだが、ピンク上映館の決して上等でない音響設備では、ああいふ重低音は凡そキレイには出まい、籠るか割れるかするのが関の山である。当然そこまで見越しておくべきかとも思はれるので、ここは音響設計上のミスといへよう。

 脚本に関する後述< 今作の脚本は、監督である深町章の手によるものである、と公式にはされてゐる。が公開当時、これまで感想も書いてゐる中では「美人女将のナマ足 奥までしたたる」(1997/監督:中村和愛)脚本の武田浩介氏より、今作の脚本は以前に深町章に渡し没にされた武田氏の脚本の、無断盗用であるとの告発がなされてゐる。何れも物証はないものの、武田氏に近しい脚本家である樫原辰郎氏からも、武田氏から当該脚本を見せられたことがある、との証言もある。事の真偽を測る術は持たない上で、さういふ疑惑の煙が立つてゐることを、一言書き添へておく。


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