真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢電車 ブルセラ隊摘発」(1994/製作・配給:大蔵映画/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:ジミー宮本/編集:㈲フィルム・クラフト/助監督:国沢実/スチール:佐藤初太郎/効果:中村半次郎/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学㈱/出演:吉行由美・藤沢美奈子・美咲江梨子・南悠里・冴木直・《特別出演》港雄一・芳田正浩・中島光司・白都翔一)。
 単なる繋ぎのショットが一々不安定に微動するマンション外景、のつけから火を噴く“大先生”柳田友貴ワークに震撼する。クレジットを端折られた、セカンドに撮らせたのかも知れないけど。先に出勤する姉・小泉美保(吉行)が残した買物メモに、三ヶ月前から二人暮らしする女子高生の妹・さゆり(冴木)が難色を示すとカット変り、電車と劇伴の起動とともにタイトル・イン。混み合ふ車中、さゆりは白都翔一の痴漢に被弾、巧みな指戯に喜悦する。といつてもセット撮影の割に、パンティの上から攻めるに終始止(とど)まり、もう少し羽目を外しても罰は当たらないのではといふ気持ちは残す。電車を降りたさゆりを、「お嬢さん、ちよつと」と呼びとめた白都翔一はジェントルに接触。痴漢しておいて、ジェントルもへつたくれもない点は気にするな。三井ソフト物産代表三井幸之助―光之助とかかも―の名刺を差し出し事業への御意見御協力を乞ふ白都翔一に対し、さゆりがユリコと名乗るのは、グルッと一周してビートが爆裂するへべれけさとしか、この時は思へなかつた。そんなこんなで教室、窓際から時計回りにマイ(藤沢)・美鈴・ユウコ(美咲江梨子と南悠里が特定不能、てんで覚束ないビリング推定だと美咲江梨子が美鈴?)に、さゆりは三井が通販するブルセラの提供を持ちかける。サクサク小金を稼ぎ味を占めたさゆり以下ブルセラ隊―劇中呼称される訳ではない―は、マイと美鈴それぞれの彼氏(芳田正浩と中島光司)も巻き込み、アダルトビデオ出演へと二、三足飛びに加速。一方、帰りが遅いことや妙な羽振りのよさに妹の異変を感じ取つた美保は、半年前に会社を辞めた―美保が貸した金もある―婚約者・大曽根ヒロシ(こちらが本名/白都翔一)に相談してみる。とはいへ話もそこそこ久々に嗅いだ体臭に吉行由美が凄い勢ひで発情、忽ち突入するコッテリした一戦を、打ち合はせで三井ソフト物産を訪ねたさゆりが目撃する。
 今年新作を発表すると監督生活50周年となるリビング・レジェンド・小川欽也を―今上―御大と称するならば、大御大・小林悟の1994年第一作。この年ピンク映画が全九作といふのは一見少なめに思はせて、薔薇族がもう三本あることは忘れる勿れ侮る勿れ。さうはいへ端的な印象としては、裸自体も実は然程満足に見せるでもない、実に漫然とした一作。ブルセラ隊を擁した三井ソフトは、劇中二本のAVを製作。「恵美《17》処女 私、バイブが癖になりさう」(主演:マイ)、「女子高生 友情とフェラと本番」(出演:美鈴・ユウコ・芳田正浩・中島光司)の模様で結構な尺を費やし、吉行由美は対ヒロシ戦で十二分に気を吐きつつ、冴木直の濡れ場―対三井―が挨拶程度で結局終つてしまふのには地味に驚いた。三井を寝取られたと勘違ひしたさゆりは実はこの人は一欠片も悪くない美保と決裂、何時もの買物メモを破り捨てると家を出る。さゆりの名前を餌に教室に誘き出した美保を、芳田正浩に続き―正常位で―陵辱する、中島光司に覆ひ被さつた、マイを芳田正浩が後背位で貫く。一方前方、美保に顔面騎乗したユウコが、最後に文字通りの一列に加はつた美鈴にクンニ。と、最早左腕しか映らない吉行由美が何処に居るのか殆ど判らない、改めて整理すると画面左から右に芳田正浩→マイ→中島光司→美保→ユウコ→美鈴といふ何と総勢六人が連なる怒涛のシークエンスは確かに見応へあるものの、正直画的にはゾンビ映画に近いものがある。要はこの男が諸悪の根源である三井だか元々は大曽根が、さゆりを除いたブルセラ隊に自身と小泉姉妹の何れに与するのか迫る頓珍漢なクライマックスは、幾ら小林悟とて正体不明、あるいは没論理にクラクラ来る。詰まるところさゆりと三井のミーツとDM―メールではなくメモ―を男のポケットに捻じ込む捨て身の販促以外には、ブルセラ隊が悪びれもせずに暴走する本筋に痴漢電車が掠りもしないヤル気なり工夫のなさも、大御大相手に不遜な野暮をいふやうだが大いに頂けない。電車痴漢が起承転結に如何に絡むのかは、たとへば怪獣が出現する理由と同等の、ジャンル映画の雌雄を決する論理的な肝といへるのではなからうか。

 配役残り、木根尚登みたいなグラサンをかけると案外イケメンな国沢実は、三井が「恵美《17》処女 私、バイブが癖になりさう」をプレゼンする卸問屋、但し声はアテレコ。本当に出て来るのか不安にさせられた港雄一は、最終的に何故か和解、二人して電車で出かけた美保とさゆりに、ちよつかいを出す『週刊実話』氏。オーラスまで出し惜しんだ割に、多少尻を撫でるだけで―あの港雄一にしては―何するでもない。

 付記< 美鈴とユウコの配役は、ビリング通りの美咲江梨子と南悠里で確定


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