真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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駄楽ひまなときブログ
行きつけのお店のブログ、下戸なのに。しかも閉めたんだけどね
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こびりつき映画記
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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ストッキング暴行魔 一発かませて!/エク動戦
新田栄
/
2021年07月04日
「
連続レイプ 突き破れ!
」(1993『ストッキング暴行魔 一発かませて!』の1996年旧作改題版/製作:新映企画株式会社/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:亀井よしこ/企画:伊能竜/撮影:千葉幸男/照明:石部肇/編集:酒井正次/音楽:レインボーサウンド/助監督:高田宝重/監督助手:広瀬寛巳/撮影助手:片山浩/照明助手:石井克彦/現像:東映化学/録音:銀座サウンド/効果:時田グループ/出演:入江まこ・松本順・遠藤由紀・大川忍・石神一・神坂広志・杉本まこと)。何といふか、新旧問はず、今の時代では到底通り得まいワイルドな公開題に、倒錯した清々しさも禁じ得ない。
午前様を指す時計、右隅にVHSのアイコンだとか、“再生”だの“標準”といつた文字が映り込むある意味壮絶な配信動画、売り物なんだぞ。初端から―映画以前の―結構豪快なツッコミ処は兎も角、新人弁護士の加川ヒトミ(入江まこ/例によつて仲山みゆきのアテレコ)が夫の遅い帰りを待ち侘びがてら、初陣で強姦致傷事件の容疑者弁護を担当する参考に判例にでも目を通さうとして、脊髄で折り返す速さで寝落ちる、大丈夫かこの先生。風呂上がりか就寝前肌着で身支度するヒトミの背中に、ストッキング暴行魔が忍び寄る。「弁護士さん会ひたかつたぜ」の第一声でヒトミに襲ひかゝつたスト暴はナイフで衣服を切り裂き犯し始め、馬乗りになり首を絞めたところでタイトル・イン。激しい攻防戦の末、遂にヒトミが全裸に剥かれたタイミングで、新田栄の名前が入るタイトルバック。かういふ、それなりに計算された一手間を費やす人を最近あまり見ない気がするが、流行らないのかなあ。
挿れられた辺りで悪夢から目覚めたヒトミは、「あゝ吃驚した、
こんな判例よむからだは
」、天真爛漫を突き抜けたヒロイン像に眩暈がする。一方夜道の不細工な三番手―直截すぎる―に単車が迫り、フルフェイス暴行魔が適当に追ひ込んだ繁みの中で犯す。中途で取調べ室、展開がザックザク推移する、粗いスピード感は満更でなくもない。刑事(石神)がイワサキイサム(神坂)に、「お前がやつたんだろ!」と最短距離の内側で詰め寄る。取調べ室にもう一人、電灯をイワサキの顔に当てる手先だけ見切れるのは高田宝重か広瀬寛巳か、流石に識別出来る訳がない。ステレオタイプに横暴な石神刑事(仮名)の剣幕に動じるでなく、イワサキは薄ら笑ひを不遜に浮かべる。
配役残り、最初は外から風呂場を抜いた擦り硝子越しに飛び込んで来る杉本まことが、弁護士夫婦であるヒトミの夫、固有名詞不詳。四年前にもイワサキは二人の女をレイプしてゐた、松本順が当時女子高校生のサクラダアツコで、大川忍は一人住まひのOL・ヤマザキナオミ。更にもう一人、四年前の調査を独自に進めるヒトミが、ナオミ宅に辿り着く過程で話を訊くロングの通行人は新田栄、地味にガチッとした体格が特徴。
エク動が
連月未配信作を飛び込ませて
来た、新田栄1993年第二作。もつと新田栄を見せて呉れ、もつと見せて呉れ。I can't get no satisfaction、熱病か。錯乱はさて措き当初ビリング頭以外は凡そ手も足も出ないかに思へた女優部も、若月美廣の「
森尾歩衣 聖水折檻
」(1993/田辺満と共同脚本/プロデューサー:久保新二)で遠藤由紀、大川忍は西川卓1991年第一作「
朝まで生いぢり
」(脚本:北町一平/主演:伊藤舞)で固定に成功。初見の松本順は消去法、やれば出来るもんだ。
そこそこハードな描写が火を噴きこそすれ、ぼんやりしたビリング頭の脇を森公美子似の三番手が固め、損なふ布陣は比較的一番マシな二番手も普通に可愛い程度で印象は薄く、女優部の訴求力は然程でなく高くはない、大川忍にも言及してやれよ。冤罪犯を弱々しく装ふ、イワサキの小芝居にケロッとチョロ負かされたヒトミが、実は四年前の事件を担当し、恐らく矯正不能なイワサキのレス・ザン・ヒューマニティを知る配偶者と対立する構図は、意図的にかイワサキの真相が不鮮明であるのも怪我の功名的に、僅少の頭数では土台無理のある、関根和美的などんでん返しが床板ごと一切を御破算にしてしまふ、底の抜けたサスペンスの成立も予感、させかけた。もの、の。結局は退路か進路を自ら埋め塞ぎ、ヒトミがまんまと騙されてゐるだけでしたでイワサキに加川家を襲撃させ、一件落着後の夫婦生活でのほゝんと締めてのけるラストは、限定的に掻い摘めば表面的には磐石な割に、腰骨が砕け散る脱力感は矢張り否み難い。軽くクラシックな肌触り、は味はへる一作である。
百万の金が何処から出るのか知らないが、示談に応じた森公美子(仮称)は告訴を取り下げてゐる筈だとすると、公訴提起前であればその時点で2017年―中頃―まで親告罪であつた強姦罪(刑法第177条/現:強制性交等罪)は公訴棄却(刑事訴追法第338条第4号)となり、執行猶予つきとはいへイワサキの有罪判決が確定した点には根本的な齟齬があつたりもするのだが。と腑に落ちずにゐたところ、だからイワサキにかけられた容疑は強姦致傷、一貫して非親告罪である、危ねえ危ねえ。モリクミの告訴取消なり示談の成立は、若干の追ひ風を吹かせるに過ぎない、にしても再犯なんだけど。となると実刑を回避してのけた、ヒトミはあゝ見えて案外有能なのか。
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