真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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駄楽ひまなときブログ
行きつけのお店のブログ、下戸なのに。しかも閉めたんだけどね
ツイッタ
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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売春グループ 欲情する人妻/ex.DMM戦
な行
/
2021年05月30日
「
売春グループ 欲情する人妻
」(昭和54/製作:ワタナベプロダクション/配給:株式会社にっかつ/監督:中村幻児/脚本:奥出映/製作:真湖道代/企画:渡辺忠/撮影:久我剛/照明:石部肇/助監督:岡孝通/編集:竹村編集室/音楽:多摩住人/記録:平侑子/演出助手:広木隆一/撮影助手:宮本勇/照明助手:佐々木哲/効果:ムービー・エイジ/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東洋現像所/出演:渚りな・笹木ルミ・豪田路也留・泉ユリ・浜恵子・今泉洋・市村譲・松浦康・岩手太郎・日高進也・土居三郎・矢野健・鶴岡修)。出演者中、路世留でなく豪田路也留は本篇クレジットまゝ、そしてポスターには括弧新人特記。泉ユリと市村譲、岩手太郎・日高進也に矢野健は本篇クレジットのみ。逆に吃驚するのが、ポスター限定で―劇中見当たらない―川口朱里の名前が載る、何故
この人の扱ひは斯くも自由
なのか。
ベッドの上にタイトル開巻、カメラはもぞもぞ動きつつも、痒いところに手を届かせない暗さまで含め意図的に俳優部の個別的具体性を排した、人妻売春の模様がタイトルバック。明けておしぼり業者「TTオシボリ」のシンイチ(鶴岡)に、スナック「窓」の店主(松浦)がタオルに縮れ毛がついてゐた云々と因縁をつける。ゴリゴリ攻撃的に押すなり圧して来る硬だけでなく、ねちねち粘着質に絡む軟のメソッドも松浦康は持ち合はせるといふのが、今回の発見。のちに抜かれる、機材車に貧相なテープ貼りで屋号を施した「TTオシボリ」配送車のセコい美術は情けない―岡孝通か広木隆一ヤル気出せ―反面、挨拶代りの他愛ないシークエンスに於いてさへ、逐一画が深い。シンイチが赤電話から陰毛の件会社に報告を入れてゐると、隣で電話をかけてゐた女・ヨーコ(笹木)が赤い手帳を忘れて行く。レス・ザン・防壁で電話機が並ぶ光景に、今の若い子達は隔世の衝撃を覚えるのかも知れないが、君等だつて公衆の面前平然と通話してゐるではないか。ちなみに当サイトは、生誕半世紀も目前にして未だかつてモバイルを所有したことがない、事実上占有する業端ならある。一番の理由は一度も欲しくならなかつたからで、二番目以降は特になく零番目が、みんな持つてゐるからだ。疾風怒涛の閑話休題、チヅル(渚)は彼氏であるシンイチの反対を押し切りピンクサロン「日の丸」で働き始めるのと並行して、半年間のセックスレスを一方的に通告、シンイチを激しくやきもきさせる。
えゝいまゝよと突つ込んでみた藪の中から、案の定抜けられなかつた配役残り。確実なところから出て来る順に詰めて行くと、監督業に鞍替へ後はPaint It,Blackな画面で上映中の場内を漆黒の闇に沈めた―にさうゐない―市村譲は、車椅子の身ながら、余所の男と寝て来たヨーコを荒々しく責める配偶者。照明も劇伴もおどろおどろしく、車椅子が飛び込んで来た瞬間の映画が一筋縄で行かない悪寒、もとい予感は堪らない。多分今作がデビュー作となるあくまで本クレ準拠で豪田路也留―JALかよ―は、最初はシンイチが普通に手帳をヨーコに返すつもりで接触する、中に電話番号の書かれてあつた村上夫人。今泉洋は「日の丸」でのチヅル贔屓客、公開題的に、恐らくピンク映画と思しき「女のまよひみち」―表記は適当―を一本撮つて馘になり、ブルーフィルムを目下の稼業とする模様。「日の丸」にてチヅルを口説いての、要はアフターで撮影をといふのが破天荒すぎる。四位といふ高ビリングにしてはポスター不掲載が解せない泉ユリは、シンイチが村上夫人経由で辿り着く人妻売春グループの元締め、美容院「ベラミ」の女主人。消去法で浜恵子は泉ユリにあしらはれたシンイチを、「ベラミ」を抜けてのフリー商売を目論み捕獲する白ワンピの団地妻か、ナオちやん(男児)のお母さん。最大の難問が、その他男優部のうち唯一ポスターに居並ぶ土居三郎。シンイチが矢張り手帳経由で接触する、村上夫人と懇意でもある細川かと豪田路也留と一戦こなす推定で最初は思つたが、後半今泉カントク(仮名)が8mmを回す、ブルーフィルムでチヅルがケンちやんと絡み始めるに及んで完全に万事休す。そのほかそれらしき登場人物は、「日の丸」店長にラストでシンイチを最低半分は殺す二人組。既に一人分名前が不足する―子役入れると二人分―のに加へ、主に「日の丸」と「ベラミ」についでで「窓」にも、総計ざつと二三十人はノンクレ大部隊が投入される、もうどうしやうもない。
量産型娯楽映画相手に数をこなせてゐないのもあり、今一つでなく如何に評価したものか正直定まつてゐない、中村幻児昭和54年第九作。手帳を拾つた男は持ち主捜しと、女は金を稼ぐのに各々奔走する、拾つた訳では別にないか。寧ろある種のオネスティをも漂はせなくもない、如何にも変名臭い奥出映の正体に関しては知らないし見当もつかない―ついでに読めない―が、結構あゝだかうだ足を棒にしておいて、結局シンイチが歩道橋で偶々ヨーコと擦れ違ふ、純然たるラック頼みの展開には十二分に腰も砕ける。ブルーフィルムにヨーコが出演してゐた件なんて、女の裸を差し引けば純粋無垢な、最早清々しいほどの木に接いだ竹。火に油を注ぐそれ以前の致命傷が、兎にも角にも碌でなさしか感じさせないシンイチのクソ造形。徹頭徹尾自堕落にして浅墓、手前勝手で無軌道なシンイチの姿がかといつて中途半端な鶴岡修のハンサムにも足を引かれてか、たとへばアメリカン・ニューシネマ的なダメ人間はダメ人間なりの逆説的な、あるいは首の皮一枚繋がつた限界のカッコよさに通ずるでなく。チヅルのある意味健気さも理解ないし感情移入に甚だしく遠く難いどころか、そもそもこんなゴミ男の何処に惚れたのかそこから腑に落ちない惨憺たるザマ。といふか、その外堀を埋めきれてないのは、演出部のチョンボぢやろ。安定期といふ言葉を知らない、腐れシンイチが二人組に虫けらの如くブチ殺されでもして呉れれば作劇的には少々へべれけでも、幾許かの強引なカタルシスもあつたものを。痛めつけるだけ痛めつけておいて、奪はれた端金を奪還しないのも意味不明。挙句に一見颯爽と街行く女のカットで印象的に切り取つたかに見せて、その実漫然と茶を濁すか奥歯に物を挟んだラストは、実は何も完結してゐないにも関らず、唐突極まりなく叩き込まれる“完”に唖然とさせられる始末。五本柱に全員主演女優を狙へさうな面子を並べた割には、濡れ場も決して強くはない。「TTオシボリ」を電話一本で辞めた筈なのに、シンイチは何時まで営業車を乗り回してゐるのかといつたキレを欠くツッコミ処を見るにつけ、いつそ珠瑠美くらゐ派手にブッ壊れて貰つた方がまだマシにすら思へる、最終的には全く以て漫然とした一作である。改めて直截にいふ、中村幻児がよく判らん。
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