真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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痴漢電車 素肌にタッチ/ex.DMM戦
深町章
/
2021年05月06日
「
痴漢電車 素肌にタッチ
」(1991/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/製作:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:柴崎江樹/編集:酒井正次/助監督:広瀬寛己/監督助手:渋谷一平/撮影助手:佐久間栄一/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/ナレーター:芳田正浩/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演 パート1“テレパシー”:橋本杏子・荒木太郎・川崎浩幸/パート2“予知能力”:小泉あかね・南城千秋/パート3“霊能者”:石川恵美・池島ゆたか・山本竜二)。助監督の寛巳でなく広瀬寛己は、本篇クレジットまゝ。
手前に戸建の密集を置いた団地ロングに、「世の中には色々な能力を持つた人間がゐる」。芳田正浩のナレーションが、地味に手堅い。「常識では理解出来ない特殊な能力を持つた者もゐる」、といふ流れで津田スタ床の間に目覚まし時計が鳴り、轟渉(荒木)が止める。轟の特殊能力とは、人の心が判るテレパシー。尤も日々周囲の雑多な思念に煩はされ、轟は自身の精神感応を持て余してゐた。「聞きたくもない他人の本心ほど」、「やかましいものはないかも知れない」と一旦まとめてタイトル・イン。通勤電車の車中、轟はハシキョンの「あゝゝ、誰か痴漢して呉れないかしら」なる心を読み、お任せ下さいといはんばかりに実行する。ヨシマサレーション曰く「とまあ、こんな時は超能力の威力を発揮する」、随分な“とまあ”感が清々しい。そんな轟に、部長(川崎浩幸)が縁談を持ちかける。外から抜ける喫茶店「CARRY」で紹介された江藤倫子(橋本)は、その日の朝轟が意を汲んで痴漢した女だつた、また箆棒に仕掛けの早い見合だな。その後二人がぶらぶらするのを、デパートの店内的なロケーションで撮つてゐるのにも軽く衝撃を受ける。
予知能力を持つOL・望となると苗字は恐らく高井(小泉)は、プリディクションした通り南城千秋の電車痴漢を被弾する。劇中一切呼称されない南城千秋の固有名詞に関しては、定石を消去法で攻めると本命が野沢俊介、対抗は岩淵竜也か達也といつた辺りか。ところでひとつ不思議なのが、2020年新版ポスターに―俳優部として―紛れ込む渋谷一平の名前。パート3に一人如実に映り込むその他乗客がゐるにはゐるにせよ、髪が未だフッサフサといふかモッジャモジャの、ひろぽんに見えるのだけれど。
石川恵美に痴漢した園山、と来れば下の名前は高志にさうゐない池島ゆたかは霊能力者で、矢張り津田スタの自宅に、交通事故死した四回戦ボーイ・佐伯(初代林家三平みたいな髪型の山本竜二)の幽霊が現れる、恭司だな。佐伯が園山の前に化けて出た用件はズバリ文句、園山が手を出した悦子(石川)は、佐伯の恋人だつた、苗字は絶対に黒崎。
この御仁は三篇オムニバスを全体何十本撮つてゐるのか、深町章1991年第八作。深町章に限らず近年あまり見ないが、女優部三本柱で話を三つに割るといふのは、テンポなり各パートの連関なり、上手くハマれば戦略的な手法であるやうにも思へる。
ロケ特性を活かした、真実を知つた轟こと荒木太郎が見せる恨めし気な表情が絶品なパート1は、ある程度綺麗にオトす、尺的にもほぼほぼ三等分。尺から短いパート2は甚だぞんざいな出来で、プリップリにキュートな小泉あかねを、逆の意味で見事に飼ひ殺す。良くも悪くも問題なのがパート3、経験の豊富な園山が、要は初心者幽霊である佐伯を鼻であしらふ様から斬新で、「ゴースト」よろしく自分の想ひを伝へて欲しいといふ要求を面倒臭がる園山に、佐伯が“一生のお願ひ”とかいひだすと、脊髄で折り返して「お前にはなあ、もう一生はないんだよ!バカ」とツッコむのには普通に声が出た、確かにねえ。兎も角佐伯―の霊―を伴ひ園山は悦子に会ふものの、常人ゆゑ佐伯が見えない悦子は園山が代弁者でなく佐伯の生まれ変りであると思ひ込み、山竜一流のメソッドで地団太を踏む佐伯の眼前、園山が悦子を抱く。即ち今風にいふならば、NTR幽霊譚とでもいふべき画期的な構成には、量産型娯楽映画の大山に埋もれた隠れた逸品に遭遇、したものかと一旦はときめいたのに。汽車がキタところで、一時間に十分弱余してゐるにも関らず、大オチも設けずザクッと畳んでしまふ最早一種のストイシズムですらあるのかも知れない、豪放磊落な終劇には何て粗い映画なのかと吃驚した。
改めて近年のオムニバス作を何があつたかいなと探してみたところ、2018年第二四半期に連続して封切られた、池島ゆたか2018年第一作「
だまされてペロペロ わかれて貰ひます
」(二話構成/脚本:五代暁子/主演:神咲詩織)に、髙原秀和の十三年ぶりピンク復帰作にして大蔵上陸作「
フェチづくし 痴情の虜
」(三話構成/原作:坂井希久子『フェティッシュ』/主演:涼南佳奈・NIMO・榎本美咲)。の前となると、オーピーが総勢六人の監督をデビューさせておきながら、結局一人も残らなかつたか残さなかつた、「
いんらんな女神たち
」(四話構成/2014/監督:金沢勇大・中川大資・矢野泰寛=北川帯寛・江尻大/主演:佳苗るか・森ななこ・円城ひとみ・上原亜衣)、「
いんらんな女神たち ~目覚め~
」(二話構成/同/監督:小山悟・永井吾一=永井卓爾/主演:友田彩也香)まで遡る。いんらんな女神たちはそもそも、全く別個のコンセプトだろ。
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