真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ロリータ・バイブ責め」(昭和62/製作:獅子プロダクション/提供:にっかつ/監督:佐藤寿保/脚本:夢野史郎/企画:作田貴志/撮影:瓜生敏彦/照明:加藤博美/編集:酒井正次/音楽:早川創/助監督:橋口卓明/監督助手:小原忠美・五十嵐伸治/撮影助手:茂呂高志・渡辺たけし/照明助手:森下徹/スチール:石原宏一/劇中写真:小野幸生/車輌:天貝一男/効果:サウンドボックス/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:木村さやか・梁川りお・伊藤清美・池島ゆたか《友情出演》・須和野裕子・富山綾子・伊藤猛)。出演者中、木村さやかにポスターではNo.13のロマン子クラブ特記があり、逆に、池島ゆたかがカメオである旨は本篇クレジットのみ。
 この仏頂面した男の子は全体誰なのか、写真を白黒コピーした、SEEKING“尋ね人”の手製チラシ。撮影隊(ゼムセルフか)を連れたTVリポーター(池島)が、SEEKINGチラシを繁華街に貼つて歩く北条梢(木村)に取材するものの、殆ど相手にされない。片や、愛探偵社主任井田光晴の名刺を裏返すと、調査全般格安実費制の文言と“愛は世界を照らす”。探偵を称する井田(伊藤)も、梢に興味を持つ。要は治したのか、歯がガッチャガチャの伊藤猛に軽く衝撃を受ける。そしてどうやら、伊藤猛にとつて今作が映画デビュー作となる模様。濡れ場に於ける太股の途方もない長さに、改めてビビる。私服の梢が同世代の二人(須和野裕子と富山綾子/特定不能)と深夜のファーストフード店から出て来たりなんかして、ビデオ撮りのバイブにタイトル・イン。割と唐突か雑然とした、アバンではある。
 父親と二人暮らしする家―母親が住む実家は別にちやんとある―に梢が帰宅すると、驚愕もとい共学のヨシムラ学園の同級生・野口和美(梁川)が制服で遊びの誘ひに来る。チラシ貼りを趣味の一言でぞんざいに片付ける和美に対し、梢は大概危なかしくキレる。梢からSEEKINGの彼・サカグチヤスシ捜しを請け負つた井田は、バイブレーターで犯した伊藤清美を最終的には血を噴いて悶死する毒殺。その様子を写真に収めた上で、遺体は恐らく強い酸で溶かす。梢が井田にひとまづ依頼する件の正しく抜けるやうな青空の下から、何がどうなつてゐるのかまるで判らない底の抜けた闇の中にカットが繋がる瞬間の、さあ火蓋が切られたぞ感。
 配役残り、アバンをサクッと駆け抜ける池島ゆたかの代りに、終盤もう一人登場するリポーターはクレジットレスで飛び込んで来る片岡修二、もしくは周知安。留守電に収録されたメッセージのみそれぞれ聞かせる、梢両親の声の主なんて知るもんか。
 四天王中唯一買取系ながらロマンポルノを三本撮つてゐる佐藤寿保の、昭和62年第二作が最後の三本目。ポスターに何かもうヤケクソ気味に躍る、“超過激<電動>エクスタシー!!”なるカッ飛んだ惹句が微笑ましい。
 手製SEEKINGを貼り歩く少女、一面に死体写真が貼り巡らされる、海の底を気取つたスタジオサブマリン。ジョイトイで凌辱した、より正確にはジョイトイでしか凌辱出来ない女を、毒で殺す男。少女の友達は学校で苛められ、給食の味噌汁に殺虫剤を噴霧する。ノイズだかハードコアだか、おどろおどろしく鳴り倒す攻撃的な選曲。元々心許ない録音レベルと伊藤猛のエクストリームに朴訥とした口跡とで、ヘッドフォンでもよく聞き取れない会話あるいは、初めから交はらない一方通行の散文詩。偶さか引き寄せられ、かける狂気と、無表情な暴力。これまで佐藤寿保に関しては、新東宝で思ふがまゝ撮つてゐた観念論ピンクよりも、エクセスの要請ないし束縛に粛々と従つた、案外実直かつ矢張りソリッドな裸映画をこそ、寧ろ高く評価してゐるものであつた。撮らうと思へば、別に佐藤寿保は普通に撮れる。単純な技術論で比較すると佐野和宏の三千倍、サトウトシキでも千五百倍。今なほ好きなやうに撮らせると尺の箍が外れる瀬々よりも、佐藤寿保の方が上手いと思つてゐた。それ、なのに。よもやまさか、新東宝に輪をかけて日活で好き放題カマしてゐやがらうとは。ヤッちやんについての事実が詳らかになつたところで一旦安堵したのは、到底通る相談のない早とちり。広げた風呂敷に火を点け風に飛ばし、結構な焼野原を残すが如き一作。女の裸も決してなくはないにせよ、ドッロドロに汚して最後は苦悶の末に血塗れ。兎に角特異な意匠が狂ひ咲けば、作家性の発露と言祝ぐ御仁にはこの手の映画が大好物なのかも知れないが、少なくとも、当サイトは斯様な代物で勃ちはしない。意思の稀薄さすら漂はせる薄目のルックスから、脱ぐと案外凄い梁川りおのオッパイとか猛烈に悩ましい筈なのに、何故大人しく撮らん。せめて、梢の解毒剤?くらゐは説明しておいて貰へまいか。起死回生か苦肉の策のロマンXも行き詰まり、翌年レーベルごと潰へるのもありロマポは既に末期症状を来してゐたのか、この時買取り拒否の選択肢はなかつたのかといつた、如何にも素人的な雑感も否み難い。


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