真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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ONANIE交感不倫/ex.DMM戦
小川欽也
/
2020年05月04日
「
ONANIE交感不倫
」(1993/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画株式会社/監督:小川和久/脚本:池袋高介/撮影:伊東英男/照明:内田清/音楽:OK企画/編集:フィルム・クラフト/助監督:石崎雅幸/撮影助手:郷弘実/照明助手:佐野良介/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/出演:水鳥川彩・藤崎あやか・吉行由美・久須美欽一・杉本まこと・吉岡市郎・栗原一良・姿良三・星川健太)。出演者中、姿良三と星川健太は本篇クレジットのみ。脚本家の名前が、普通の位置にあると何故かドキッとする。
三田家(津田スタ)の寝室、淳次(杉本)の隣で寝てゐる妻の典子(水鳥川)が、起きて夫婦生活のお強請り。水鳥川彩から求められてゐるといふのに、糞バカヤローの杉本まことが明日も早いだ何だ応じずにゐやがると、典子はいぢらしくもワンマンショーを敢行。メロウなギターが鳴り、軽く俯瞰に引いてタイトル・イン。後述する垣内の社長室を除き、例によつて
それらしきロケーションを工面する手間なり袖を惜しんで
新宿の往来。昼飯を済ませた三田と、同僚の栗原一良(ex.熊谷一佳)が歩いて来る。一方、二人の会話を通して軽く投げられた、三田が担当する顧客で危ないと噂されるケーアイ化粧品の社長・垣内(久須美)が、自ら電卓叩いて渋い顔。垣内は融資を無心した、焼け石に水をかけて呉れる仲の宮本(吉岡)と、愛人の真理古(吉行)に持たせたスナック「
摩天楼
」で会ふ。小川和久(現:欽也)の変名である姿良三と石崎雅幸の変名である星川健太が、四人一遍に飛び込んで来る摩天楼のカウンター客とバーテンダー。梃入れが裏目に出たものの違約金が惜しい、三田を介して結んだ契約と、囲ふのも正直苦しいものの、手切れ金が惜しい真理古。目下垣内が抱へる、二つの問題に関して十全に外堀を埋める。そもそも、真面目に経営を改善せんかハゲ社長、とかいふ至極全うなツッコミは野暮は控へない。
三田が真理古に見惚れてゐるのを看て取つた垣内は、真理古と三田細君とのスワップを持ちかける。さりとて三田が典子に切り出せず事態が膠着する中、配役残り栗良が偶然再会する藤崎あやかは、かつて栗良マターの企画で一度仕事したキャンギャル・苑実。出会つたその日に栗良と寝た、セックスが大好きで、しかも誰でもいい。挙句「どうせスルんだもん」と、デートだ何だは時間の無駄とすらいはんばかりの地上に降りた天使。
正直映画の中身なんてこの際どうでもよくとも、水鳥川彩をウットリ眺めてゐるだけでどうにかならなくもない小川和久1993年最終第十作。実も蓋もないのか、あるいは一つの真実に到達したのかは、諸賢の御判断にお任せする。
真理古の色香にチョロ負かされた三田が妄想する裸身を、吉行由美(現:由実)にそのまんまの状況で服だけ脱がせて表現する物理透視ショットは、もしかするとこれこそが特殊撮影技法の到達点たり得るのかも知れない、清々しいほどの開放的なエモーションを結晶化する。先にも述べたが不精か無頓着の結果、栗良絡みのシークエンスは全てそこら辺の往来で処理。一番腰も砕けたのが地下道の出入り口から地上に出て来た三田を、栗良が追ひ駆けて来て社用の重大な電話があつた旨告げる件、君等の会社は地下にあるのか。とか何とか、あるいは兎も角。苑実を三田夫人に偽装する形で、三番手―二番手を、実質三番手と解する―の投入にも全く以て無理も無駄もないなだらかな裸映画が粛々と展開するうちに、何時しか溶解する本題。かと、思ひきや。そもそも垣内も垣内で、約束を違へてゐる点については当然勿論東から昇つた日が西に沈むが如く等閑視。三田との浮気で真理古を捨て、スワッピングの不履行を理由に邪魔臭い契約も破棄した垣内が、返す刀で典子までオトす。久須りん・テイクス・オールな結末にあれよあれよと辿り着く、案外見事なピカレスク・ピンク。考へてみれば三田の相棒は所詮栗良で、垣内はといふと吉岡市郎。ボックス席で茶色い酒を酌み交す久須美欽一と吉岡市郎の画が強過ぎて、その時点で容易に雌雄は決せられてゐたやうにも映る。とこ、ろで。何が互ひに感じ合ふのか全く判らない公開題は、直截に“交換”の誤字としか思へない。
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