真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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色情家族/若松プロVOD戦
主に渡邊元嗣と、わ行
/
2020年05月18日
「
色情家族
」(昭和46/製作・配給:国映株式会社/監督:若松孝二/脚本:出口出/企画・制作:矢元一行/撮影:伊東英男/照明:磯貝一/編集:宮田二三夫/助監督:吉積め組・斉藤高五/撮影助手:高間賢治・福井通雄/照明助手:北村一雄/効果:創音社/録音:目黒スタジオ/現像:東映化学/出演:香取環・林美樹・武藤洋子・宮下順子・市村譲二・矢島宏・島たけし・今泉洋)。
確か配給もした際に使用する、燃え盛る国映ロゴ。一度か二度見覚えもあるけれど、最後に使つたのは何の時になるのかな。帰宅した自衛隊要職に就く嵯峨栄(今泉)が、妾に産ませた三姉妹の三女・春子(宮下)に帽子と上着を渡す。和服に着替へた栄は、家の様子を春子に尋ねがてら“何時ものやうに”机上に半裸で横たはらせた娘を弄る。手前花で腰から下を隠した別室、長男で司法関係と思しき晴一(市村譲二/a.k.a.市村譲)が三姉妹長女の秋子(林)を抱き、更に別室次男でカメラマンの康二(矢島)も、三姉妹次女の夏子(武藤)を抱く。栄に対する春子の報告が再三再四リフレインされる、「何も変りありません」。秋子らも、変らない日常に揃つて諦念を滲ませる。一方、兄弟の母親、即ち栄の正妻・えつ(香取)が乳も放り出して激しく苦悶し、傍らでは三男の昭三(島)が、詰襟で立ち尽くす。追ひ討つ薬を飲ませられた、えつは終に事切れる。退室した昭三が廊下で、春子と鉢合はせてタイトル・イン。ところで今作、香取環が轟然と飛び込んで来るカットの跨ぎ以降、暫し画面が色彩を失するパートカラー。それと、後に昭三が秋子・夏子を指して義姉さんとしてゐる点を窺ふに、各々晴一・康二と結婚してゐる模様。と一旦思ひかけたが、腹違ひでも姉さんはあくまで姉さんである以上、最終的に婚姻の有無―三姉妹が戸籍の上では父親の欄が空白な婚外子につき、出した届は一旦通る―は矢張り不明。
斎場から秋子が出て来るロングに、起動するクレジットが凄まじい。“作つた人達”の一括りで矢元一行・出口出・伊東英男の順に、個人・団体問はず俳優部通過して若松孝二までを、数も含め所々入る中点でアクセントをつけつつ、それぞれの担当は端折つてズラーッと一列。“作つた人達”とかいふ子供相手のやうな十把一絡げにも腰が砕けるが、斯くも画期的かプリミティブなクレジットにもさうさうお目にかゝれまい。実際の塩梅―は縦に並ぶ―を併記すると、“作つた人達 矢元一行・出口出・・伊東英男 磯貝一 宮田二三夫 吉積め組 斉藤高五 高間賢治 福井通雄 北村一雄・創音社 目黒スタジオ 東映化学・・・香取環 林美樹 武藤洋子 宮下順子 市村譲二 矢島宏 島たけし 今泉洋・・・・若松孝二”となる。えつの葬儀には出なかつた康二―jmdbには健二とあるが、劇中では康二―が家系図を書き殴り、“妾の娘を三人また妾に”した父親から、払ひ下げられた女と兄弟が“ごしごしセックスに明け暮れ”た末に、母が狂死した嵯峨家の現状を整理する。呼び出されその場に現れた秋子を、康二は犯す。
基本的に残らない配役残り、何某かの―非合法な―政治活動に身を投じてゐた夏子の同士の若い男と、康二がヌードを撮影する、ナンシー・アレンみたいなパーマ頭のモデルは、クレジットに通り過ぎられては手も足も出しやうがない。
いはゆる期間限定の、
限定具合がへべれけにアバウトな
若松プロのVODに絡めた
国映大戦
第三十戦、若松孝二昭和46年第五作。原題らしき「性家族」で登録されてゐるjmdbと、今回配信された動画では尺に五分の開き―当然jmdbの方が長い―があり、「性家族」と「色情家族」がタイトルだけ違ふのか幾許か手を加へてゐるのかが判らないが、現に、あるいは兎にも角にも。話を辛うじて見失ひはしない程度に、全篇そこかしこでブッツブツ飛び倒す。
えつの死を契機に、栄を絶対的な頂点に据ゑた嵯峨家の秩序が揺らぎ始める。権力構造の崩壊、より直截には転覆。支配者に対するレイジといつた主題は、若松孝二の名前から平板に脊髄で折り返せば御家芸にも思へ、時代の空気か単なる当サイトの資質か、2020年のこの期に触れてなかなかおいそれと呑み込める筋合の代物でもない。何はともあれ、無闇な家長の支配力も兎も角、矢鱈な家人の無力感が甚だしく理解に遠い。何か、君等その屋敷出たら、時限発火する爆弾でも体に埋め込まれてゐるのか。寧ろ、嵯峨家を覆す力の源が長兄と次兄に対し、春子を宛がはれなかつた昭三の、ルサンチマン面した要は拗らせた性欲ででもあつて呉れた方が、ピンクである以上尚更しつくり来る。そもそも、若松孝二的にドラマ上はよしんば十八番といへるものであつたにせよ、それと裸映画としての評価は全く別。絡みに費やす、物理的時間自体は決して短くないどころかそれなりに潤沢である割に、真面目に濡れ場を撮らうとする貪欲なり誠実さを殆ど全く窺へさせない。お門違ひ?ふざけるな。女の裸を措いて求めるものなど、ピンク映画にあつて堪るか。秋子を断罪した返す刀で牙を剝いてはみたものの、栄にケロッと手篭めにされる夏子が、自らを奮ひ立たせるべくインターナショナルを歌ひ始めるシークエンスの、壮絶な頓珍漢さには正直頭を抱へた。こんな代物で勃つのかだなどと、いはずもがなはこの期に申さん。仮に当時これはこれで受けたのであれば、それが受けた偶さかに一抹程度の感興ならば覚えながらも、俺には関係ない。
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