真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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色欲怪談 江戸の淫霊/ex.DMM戦
さ行
/
2019年10月03日
「
色欲怪談 江戸の淫霊
」(1997/製作:オフィス・ユリカ/配給:大蔵映画/監督:酒井信人/脚本:山田誠二/撮影:渡辺伸人・後藤善春/照明:土野利雄・上野山健・尾関陸/制作:山田誠二・島賢八/音楽:西嶋康倫/美術:石田香苗/録音:山本研一/調音:上伝三郎/効果:藤原喜太之介・波平/編集:石谷憲一/衣裳:松本明美/スクリプター:平林美夏/スチール:冨士谷隆/現像:東映化学/協力:幻の怪談映画を追つて《洋泉社刊》・シネマ自由区・佐竹則迪/出演:浦野蓮・陳黛英・ちょみ・平井靖・福山龍次)。
最初に重大な外堀を埋めておくと、どうせjmdbにでも引き摺られたのであらうが、配役に関して陳黛英―も、周知の陳薫英ではない―が娘でちょみがおまき役であるとする資料ないし記述は、全部誤り。横浜生まれの華僑三代目で、肢体はいい感じに色気のある陳黛英がおまき役である。スタッフロールに関してもチョコチョコなくはないが、人を呪はば二穴責めといふ奴でさて措く、案外意味が変らない。
王冠開巻から、幽霊画噛ませてタイトル・イン。ズンドコ鳴る劇伴に覚えた危惧が、轟然と、あるいは臆面もなく飛び込んで来る市川―崑―式クレジットで確信に。夏の最中、江戸の長屋。蚊取線香と団扇を舐めて、素浪人・笹山兵十郎(浦野)と情婦・おまき(陳)の情交。首から上はプレーンであれ、寧ろそれ込みで絶妙に生々しく抱き心地のよささうな陳黛英は兎も角、浦野蓮は大根の癖にお芝居しすぎ。裸映画の客は何を観に来てゐるのか、畑の違ふ酒井信人は案の定理解してゐない。風鈴のカット挿んで雑に対面座位へと移行するのは頂けず、そこそこの熱戦を展開してゐながら、綺麗に完遂させないのも大いに理解に苦しむ。事後おまきが金貸しの金兵衛が明日来る旨告げると、兵十郎は「利息代りに抱かれろよ」。シュッとしてゐるとそれなりに色男で、体躯も精悍さを感じさせるものの、浦野蓮の棒よりも硬い口跡に頭を抱へる。金兵衛の稼業といふほどでもない唯一の収入源は、番人(福山)が夜鳴き蕎麦の屋台を出してゐる間の、晒場夜番代行、要はバイト。この福山龍次も福山龍次で、端役かつ与へられた所作なり造形に後ろから撃たれた可能性も留保しつつ、へッべれけに酷い。晒された父親の首を回収しに来た娘(ちょみ)を、三日間体を任せれば首を渡す条件で、兵十郎は水揚げする。だからちょみもちょみ、その変哲ないボサッとしたショートカットはどうにかならんのか。ウエストの細さは、低劣な下心に触れるけれども。限りなく殆ど唯一、満足に時代劇を担ひ得る平井靖が、全財産を胴巻に持ち歩く金兵衛。ラストちょみが引き連れる、白装束の僧?三人組はベールと白塗りで顔を隠し、手も足も出せずに不明。
今もテレビ時代劇を主戦場に大絶賛現役の酒井信人を外部招聘しての、少なくとも今回視聴した動画中では明示されないが大蔵映画五十周年記念作品、らしい。金に窮した兵十郎が、胴巻を狙ひ殺害する金兵衛、ではなく。その場のグッダグダな物の弾みで殺してしまつた娘が、「首を返して下さい」と化けて出る趣向は、ひとまづ酌める。さうは、いへ。要は現:東映ラボ・テックの東化以外は全員初見の名前ばかりの本職隊を揃へ、不在の結髪に目を瞑れば、然程どころでなく頓着ない門外漢の節穴に映る限りでは、ひとまづ形にならなくもない江戸時代を舞台とした物語も、ボッロボロの俳優部が見事なほど水泡に帰す。殊に、浦野蓮とちょみと福山龍次が何れも致命傷、過半数超えてんぢやねえか。ついでにちょみは一見可愛げに見せて、よくよく注視すると火野正平フェイス。逆の意味で感心する、よくぞこれだけの馬の骨を集めた。女の裸の見せ方が根本的に異なり中途半端に映画に寄つた裸映画を、その割にぞんざいな劇伴が一円も二円も安くする。豪快なスローモーションが火を噴く、黒ならぬ白い三連星のジェット・ストリーム・アタックは一応のクライマックスに足るスペクタクルを醸すにせよ、工夫はおろか作為さへ感じさせない、漫然としたフレーミングも散見される。挙句に噴飯ものなのが、都合二度ダサいフォントで清水大敬病を拗らせる、“首が飛んでも動いてみせるは”の清々しくキマらない決め台詞、動かねえし。半世紀の周年に、何でまた時代劇は―ある程度―判つてゐても、裸映画を知らない外様を連れて来たのか、といふ以前に。大蔵が夏の伝統に自認する怪談映画が、改めて振り返るに、満足な出来の代物がナベが麗しく再起動させた、「
おねだり狂艶 色情いうれい
」(2012/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/主演:大槻ひびき・川瀬陽太)くらゐしか俄かにも何も思ひ浮かばない、そもそも鬼門企画であつたのではなからうかとの、根本的な疑問に遂に達する一作である。
狭義の色欲怪談で大御大の「
色欲怪談 発情女いうれい
」(1995/監督:小林悟/脚本:如月吹雪・小林悟/主演:冴島奈緒)が先行するのは兎も角、欲が旧字体の「
色慾怪談 ヌルッと入ります
」(2016/監督・脚本・出演:荒木太郎/原作:瞿宗吉『牡丹燈記』・三遊亭円朝『怪談 牡丹燈籠』/主演:南真菜果)は、個人的にはうつかりすると忘れかけてゐた。
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