真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ピンク・ゾーン2 淫乱と円盤」(2018/制作:フリーク・アウト/提供:オーピー映画/監督:国沢実/脚本:切通理作/撮影:藍河兼一/照明:赤羽一真/助監督:菊嶌稔章・粟野智之/美術協力:いちろう、H・H/スチール:本田あきら/編集:酒井編集室/音楽:與語一平/録音:小林徹哉/整音:Pink-Noise/特殊造形:土肥良成・李華曦/タイトル:小関裕次郎/仕上げ:東映ラボ・テック/カラリスト:如月生雄/協力:はきだめ造形・Abukawa corporation LLC.・白石雅彦/出演:南梨央奈・佐倉絆・瀬戸すみれ・山本宗介・早乙女バッハ・白石雅彦・小滝正大、他二十名)。出演者中、他二十名は本篇クレジットのみなのと、逆に切通理作の名前がポスターにのみ載る。
 川辺の公園、切通理作の『失恋論』(2006)を読む真船昭彦ならぬ昭比古(山本)の下に、ラブレターを受け取つた幼馴染の波川久美(南)が現れる。久美が真船の求愛はやんはり断りつつ、二人各々なりたいものになる旨誓ふ、指きり交してタイトル・イン。南梨央奈は、この人こんなに顎が尖つてたかな?
 時は経て、ちんこまたこれ。間違へた、こんちこれまた城南大学の理学部に進んだ真船は、地下アイドルとして活動する久美を追ひ駆けるのと並行し、研究に勤しむ日々。今日も今日とて、研究室にて真船が久美の動画を見ながらゴーゴーレッツゴーしてゐると、何者かが入つて来る気配が。身を潜める真船の眼前、後輩の城野えり(佐倉)と、担当教授?・一の谷(小滝)が不倫の逢瀬。だから濡れ場に、大した芸にもならぬ半端なメソッドなど要らんと、何度口を酸つぱくしたら判るのだ。観客が求めてゐるのは、男優部の些末な自意識などではない、女の裸である。演者が至らないか履き違えへてゐるのであれば、所作を指導するのが演出部の仕事ではないのか。国沢実相手に、野暮をいふやうだが。
 配役残り他二十名は、真船が観に行つた波川久美のクリスマス・ライブ、確か俺は小屋にピンクを観に来た筈なのに、まるで鏡でも見てゐるかのやうに醜悪、もといリアルなアイドリアン部。オケまで作つてゐるにも関らず、南梨央奈のボーカルを頑なに入れないのが果てしなく謎な終演後、波川久美のシングル「ハートブレイク銀河系」の手売りサイン会。早乙女バッハは真船を剥がすマネージャー・尾形明で、姿出しの切通理作が次の人。音声情報だけではよく判らないが、切通理作はイクサンダル星人の声も担当してゐるらしい。硬く見える止め画よりも、動いてゐる方がたをやかに輝く瀬戸すみれは、博士号を取得した真船を、ある日訪ねて来る妻・桂子、いきなりでしかも初対面の妻が訪ねて来るの!?それはさて措き、オッパイのたぷんたぷんさが素晴らしい。何をいつてゐやがるのか、知らねえよ。白石雅彦は、カラミス星人の侵攻を受けての、人類今際の間際を伝へるアナウンサー。話を戻して早乙女バッハが、俳優部最大最悪のアキレス腱。口跡すらまゝならないのに加へ、文字通りの全体的に壊れてゐて満足に動けもしない、こんな活性酸素の塊一体何処から連れて来た。馬の骨はおろか豚骨にも劣る、見苦しいこと甚だしい。
 思ひもしない名前が飛び込んで来た寺西徹で豪快に火蓋を切り、更なる爆加速を見せた町田政則と、清大に後れをとりもしたGAICHI(ex.幸野賀一)。一応山科薫に、実に十二年ぶりのたんぽぽおさむと続いた、近年ファンタ路線に於ける恒例企画・ベテラン俳優部サルベージが今回は不発。代りにと捉へるのが妥当なのか否かは知らないが、薔薇族含めた最短でも二十二年ぶり、ピンク限定だと池島ゆたか1993年第四作―薔薇族入れると一本増える―「新痴漢電車 指師で開きます!」(五代響子と共同脚本/主演:木戸原留美)以来、何と四半世紀ぶりともなる脚本の切通理作を大復活させた、国沢実2018年第三作。因みに一旦小休止したベテラン俳優部サルベージも、次作の2019年第一作に於いて、渡邊元嗣2010年第二作「牝猫フェロモン 淫猥な唇」(脚本:山崎浩治/主演:早川瀬里奈)以来九年ぶりの横須賀正一で再起動。とこ、ろで。ピンク・ゾーン無印第一作の「地球に落ちてきた裸女」(2017/脚本:高橋祐太/主演:阿部乃みく)とは、宇宙規模の物語といふ力の限りアバウトな共通点以外、一ッ欠片の連関も最早清々しいまでにない。
 現代ピンク最強の男前・山宗こと山本宗介が華麗に非モテ研究者に扮する、ダメ男ないしキモ男が何処までも内向的に煮染まる国沢実のある意味十八番とする展開は、やがてロケーションの貧しさから顕著な、外部からの侵略者なり保護者をも交へた、地球の存亡を巡る戦ひへと藪から棒にオッ拡がる。真船が劣等感を拗らせる弱者のミニマムなエモーションに関しては、国沢実が脆弱さと紙一重の繊細な真骨頂を覘かせる、ものの。ただでさへの超風呂敷が挙句二転三転する終盤は、始終を満足に理解しないまゝ国沢実は撮つてゐたのではあるまいかと思へるくらゐ、支離滅裂か木端微塵にトッ散らかる。直截にいつて、要はバジェットなり国沢実の身の丈を切通理作が一切弁へず、好き勝手に書いた脚本が最大の敗因。負け戦を何とか精一杯どうにかして誤魔化さうとする工夫を何ひとつ感じさせないで、無様に玉と砕ける国沢実も確かに悪いにしても。全篇正しく隈なく鏤められた、特撮かアニメか切通理作の小ネタに一々律儀に釣られる向きもあるやうだが、朽ちた幹が折れてゐるのに枝葉だけ繁らせてどうする。ペダンティックどころか、映画ペッタンコぢやねえか。脊髄で折り返して断言すると、ここ数年、もう少し具体的にいへば☆をパージしての無印時代に突入する二作前、ほぼほぼグルッと一周しかけた2014年第二作。逆説的にリアルな革命映画「特務課の女豹 からみつく陰謀」(国沢☆実名義/主演:伊藤りな)で転機を迎へて以降、ブッ千切りで一番酷い、詰まらないのも通り越して酷い。問題なのが国沢実は次回も、今作同様切通理作と組み、性懲りもなくどうやらやらかしてゐる模様。


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