真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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美尻愛欲めぐり/ex.DMM戦
さ行
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2019年06月28日
「
美尻愛欲めぐり
」(1998/制作:大敬オフィス/配給:大蔵映画/制作・脚本・監督・出演:清水大敬/撮影:小山田勝治/照明:瀬尾進/美術:清水正子/編集:酒井正次/音楽:サウンド・キッズ/助監督:大越朗/撮影助手:新井毅/照明助手:谷盛正幸/編集助手:井戸田秀行/演出助手:児玉隆博/スチール:相沢さとる/録音:シネキャビン/現像:東映化学/タイトル:道川昭/出演:麻間美紀・槇原めぐみ・浅利まこ・原田なつみ《友情出演》・中村京子・山科薫・土門丈・水海信一郎・大浜直樹・村中豚也・文京周平・花巻五郎・大越朗・児玉隆博・中退みつる・相沢さとる・石部金吉・大海昇造・大谷満・神戸顕一・羽田勝博)。未だ解けない謎が、かつて清水大敬が使用してゐた名義である石部金吉を、継いだのは全体誰なのか。
大敬オフィスのクレジットに続いて即、清水大敬病発症、仕掛けが早い。“これからは、落ち着いて心穏やかに愛する家族と共に生きていかう・・・”、とか明朝体で大書。テーマを文字情報にするのなら、それで事済むならば映画撮る意味ねえだろ!といふのと、全体この時、清水大敬の心境や如何に。あの清大も偶さか草臥れてゐたのか、何か枯れてないか?閑話休題、都庁から直接ティルト出来る新宿中央公園を、山口泰三(神戸)がぐるぐるジョギングする。妻の裕子(麻間)がスヌーピーのダサいエプロンで登場、朝御飯よと呼びかける。長閑だなあ、東京。とこ、ろが。流石生き馬の目をレーシックするコンクリート・ジャングル、妻の下に駆け寄らうとした山口は、バナナを食べてゐた大木凡人風(大絶賛不明)が無造作に捨てた皮で足を滑らせ、縁石で後頭部を強打。卒倒する山口の、グラグラする視界が暗転してタイトル・イン。バナナの皮で足を滑らせるスーパーポップなシークエンスを、両手を万歳した山口が一旦近づいた裕子から後退する形であれよあれよと20メートルは離れて行く、不自然極まりないカットで表現する清水大敬があまりにも画期的すぎて、アバンで既に切つた身銭の元は取れる。お買得!自棄なのかよ。
その夜、己の馘どころか、会社ごとの存亡を賭けた大取引を翌日に控へ、緊張を隠せない山口に裕子がビールを勧める。乾杯もそこらに、山口は「ねえ、セックスしたら少しは落ち着くかな」。“ねえ”ぢやねえよ、斯くもどストレートな濡れ場の導入初めて見た。清水大敬は矢張り大天才にさうゐない、だから自棄なのかよ。
手が届く限りの配役残り、妙に高いビリング推定で恐らく土門丈が、当日朝、心配して山口家に電話を寄こす大山部長。部下に任せてゐないで、手前が行けといふ話である。山科薫と大浜直樹以下計六人は、新宿駅南口に棲息する、古典的な共産主義を標榜するルンペン。清水大敬にしては皮肉が利いてゐる、のかなあ。プレゼンを反芻しいしい歩いてゐたところ、山科薫が楽しみにしてゐた弁当を踏んづけてしまつたため、追ひ駆け回された末山口は上着とスラックスと、持ち金を奪はれる。時に清大をも凌駕する破壊力を誇る漢の中の漢・羽田勝博は、これ見よがしに吊るしてあるスーツを、拝借しようとした山口を捕獲するヤクザ、ネズミ捕りのチーズか。キリスト教はまだしも、イタリア映画「自転車泥棒」(1948/伊)を狂信する途方もない造形。中村京子は、ヤクザの情婦。そして大将の清水大敬と浅利まこが、山口が向かはなければならない商談先・鮫島商事社長の鮫島と、秘書としか呼ばれない秘書、兼愛人。槇原めぐみと水海信一郎に浅利まこの二役目と更にもう一人は、ワイシャツにトランクス一丁で鮫島商事を目指す山口が新宿昭和館(2002年閉館)の表で交錯する、二役目でヒムセルフの清水大敬組スタッフ。槇原めぐみと水海信一郎は、ポジション不明のゼムセルフ。浅利まこはぶつかつた山口が怪我をさせてしまふ女優部で、もう一人は男優部のトマホーク。原田なつみは、代りの女優探しを強ひられた山口が連れて来る、新宿のど真ん中を、洗面器片手に銭湯に行かうとしてゐたハーセルフ、一々細部が斬新でクラクラ来る。大越朗は、清水組助監督のヒムセルフ。貧相な外見が、トマホークと被るのは大越朗は悪くない。
当サイトが脊髄で折り返して釣られ続ける、バラ売りex.DMMに新着した清水大敬1998年第二作。過去に残すは、次作「制服凌辱 狙はれた巨乳」(1998/主演:椎名みずき)のみ。
元ネタが何某かあるのか、大事な要件を抱へた男が、諸々の災難に見舞はれ続けどうしても辿り着けないスラップスティック。兎にも角にも、新宿が気違ひしか住んでゐない街かの如く、共産主義的ルンペンと、キリスト教と自転車泥棒を振り回す羽田勝博が圧巻。
カサベてた頃の
清水大敬に久々で触れるのを楽しみにしてゐたものだが、清大がカサベてるに寧ろ不可欠な俳優部に於ける主力兵装たる、羽田勝博のブチ切れた存在感が尋常でない。面積から広いアクの強い強面と、箆棒な上段から叩きつける大仰な口跡が絶品。山口を情婦に紹介して、「神に見放されたイカレ野郎だ」、お前は神―悪魔かも―に祝福されたイカレ野郎だ。目をヒン剥いた羽田勝博に、「自転車泥棒」監督のヴィットリオ・デ・シーカの名前を教へて貰つた山口は、暫し「ヴィットリオ・デ・シーカ、ヴィットリオ・デ・シーカ」と復唱しながら繁華街を奔走。何時、あるいは何処で山口がドッコイショと言ひだしはしないかと、割と本気で心配した。逆に、羽勝が序盤にして全部カッ浚つてしまつたきらひも決して否めなくはない。元々壊れてゐる劇映画はこの際兎も角、裸映画的には闇雲に清水大敬。壁に照明の影を無防備に映しもする、主演女優は素の表情から硬く、最も印象は薄い。中村京子は羽田勝博を追走し得るキレ具合と貫禄の爆乳を披露し、オッパイもお尻もプリップリの浅利まこは、こちらも表情は乏しいものの、清水大敬相手にコッテコテかつヌッルヌルの一大見せ場を展開。そして何はなくとも、何が何でもなエモーションを刻み込む、槇原めぐみ(a.k.a.槙原めぐみ)の絶対巨乳。甚だ雑な繋ぎは今なほ改善されぬ難点ともいへ、チンコで見る分には申し分ない。眼(まなこ)は兎も角、清大を観るなり見るのに頭なんて要らん。結局開巻に回帰する、昏睡オチは斯くも破壊の限りを尽くした始終に比すと随分おとなしくもあれ、メタな方向に軽く振れてみせる大オチ。粗忽な清水大敬が一瞬フライングしてしまふのが、逆の意味で完璧。何か映画雑誌の企画で、ヴィットリオ・デ・シーカの霊を降ろしたイタコに、この映画見させて感想を訊いて欲しいね。
一点正方向に目についたのは、編集後残つただけでも、新宿界隈を相当な距離走り回らせられる神戸顕一が、かといつて然程ですらなく呼吸を乱してゐるやうにも見えない点。体躯からはとてもさうは見えない割に、神顕ああ見えて結構スタミナあるのかな。それか、単なるアフレコによる錯覚か。
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