真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「入れ喰ひOL ~大人のオモチャ開発課~」(1997/製作:大蔵映画/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:波路遥/プロデューサー:大蔵雅彦/撮影:下元哲/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:榎本敏郎/監督助手:小泉剛/撮影助手:村川聡・山本寛久/照明助手:小田求/玩具協力:ゴジラや/スチール:津田一郎/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/出演:水乃麻亜子・竹村祐佳・木下敦仁・しのざきさとみ・久保新二)。配給とも大蔵映画ではなくオーピー映画提供としたのは、七色と金の王冠ではない、白黒OP開巻に従つた。
 街景を適当に舐めてタイトル・イン、創業六十年の玩具会社「運天堂」にボガーンとかポップな爆発音が轟く。激怒した社長の藤木(久保)に遣はされ専務の星ゆかり(竹村)が向かつた商品開発部では、久保明夫(木下)とケイ(水乃)がイレイザーヘッドに顔は煤けさせる要はドリフの爆破オチ。藤木に厳命された十倍長持ちする充電器の開発に取り組んだ二人は、運天堂を文字通り揺るがす大粗相を通算二度目に仕出かしてゐた。実は藤木とは男女の仲にもあるゆかりに釘を刺されつつ、久保はケイのいぢらしい視線も余所に、美人専務?に手放しの憧憬を捧げる。
 配役残り、ゆかり役が明らかとなつた時点でポジションが全く読めなくなつたしのざきさとみは、久保が暮らす下宿屋の未亡人女将・あけみ。久保チンと竹村祐佳による色々濃い濡れ場初戦を経て、亡夫を偲んでの自慰であけみが飛び込んで来る奇襲は鮮やかに決まる。三番手―主人公が暮らす―未亡人下宿、これ、案外定石たり得てゐてもおかしくない妙手ではなからうか。しのざきさとみの裸を一頻り見せた上で、結局あけみは達する前に、久保の部屋からガンッガン洩れて来るケイの嬌声に遮られる。久保は自己進化するマスコット・ロボット「はまるっち」を自室にて開発中、どう見てもチンコにしか見えないはまるっちがケイの胸元に忍び込み、悪戯をしてゐたものだつた。その他人影は欠片たりとて出て来ないけれど、身を引く形で運天堂を退職したケイが、ウェイトレス募集の貼紙を見て敷居を跨ぐ喫茶店「葡萄の木」の、担当者の名前が榎本と小泉を足して二で割つた榎泉。
 渡邊元嗣1997年第一作は、デビュー十四年目にして、2002年以降、殊に近年はエースとして常駐する大蔵上陸作。因みに残りは二本で新東宝×国映の一般映画に片足突つ込んだくノ一映画と、ENK薔薇族。
 久保を間に挟んだケイとゆかりの三角関係を絡み込みの軸に、未完成のはまるっちを起死回生の新商品にと狙ふ藤木の姦計が発端となる大騒動。あけみが事後久保に授ける積極臭い人間観含め、一応王道娯楽映画的な枠組が出来上がつてゐなくもない。ものの、時折起死回生のエモーションを撃ち抜きながらも長くマッタリしてゐた時期のナベらしく、全般的には漫然とした仕上がり。兎にも角にも、憧れの高嶺の花が竹村祐佳で、気がつくと何時も傍にゐて呉れたヒロインが水乃麻亜子といふキャスティングが如何せん画的に厳しい。しのざきさとみの濃厚な色香と、単騎でシークエンスを如何様にも転がし得る久保チン十八番の大暴れが見所ともいへ、歴史的な位置づけ以外には、正直あまりパッとしない一作ではある。

 ところで、今作の約二週間後に封切られた関根和美の「痴漢電車 即乗りOKスケベ妻」(脚本:関根和美・樹かず・片山圭太/主演:冴月汐)では、即乗りOKスケベ妻の旦那(樹かず)が開発中の携帯ゲーム機―とエンディング曲―として「おさわりっち」が登場、脊髄から折り返してブームに便乗した感が清々しい。
 重ねてところで、ついうつかりフェードしたのかと思ひきや、木下敦仁が本名から木下順介に改名、目下は占ひ師と並行してロシアに活動の拠点を移してゐる現況には軽く驚いた。


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