真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「団地妻 W ONANIE」(昭和60/製作:U-production/配給:株式会社にっかつ/構成・監督:奥出哲雄/企画:半沢浩/プロデューサー:石川均/撮影:柳晃二/照明:John Macdonald/助監督:高橋秀和/監督助手:長田浩一/製作助手:日比野達郎・旗雄介/現像:東洋現像所/メイク:オフィス・MoMo/Special thanks to HELLO'S “I'm so happy” オムニバスアルバムOlympic《BOX RECORDS》より)。なほ、キャストのクレジットは存在しない。
 開巻即、飛び込んで来る壮絶なビデオ画像に目を覆ふ。斯様な代物をキネコにして小屋にかけてゐたのか、どうかしてやがるぜ買取系。といつてしまへば、十文字そこらで話は終る。大将の奥出哲雄以下、実名登場順に日比野達郎・長田浩一・旗雄介ら―高橋秀和は見切れない―撮影隊が多摩ニュータウンに神崎恭介・真弓夫妻(何れも変名?)を訪問、性生活ドキュメンタリーの撮影に着手する、といつた方便の緩々な劇映画。いはゆるセミドキュメントよりも明確に作為性の薄い、純然たるモキュメンタリーの範疇に殆ど首まで浸かる一作ではある。
 出演者残り恭介が見学に行く撮影現場に、ハーセルフのきさらぎ詩子と相原ユミ、二人とも絵に描いたやうにブスくて草も生えない。真弓に宛がはれる男優にヒムセルフの金箱そうじと、あつてなきが如き物語を粉砕する勢ひで終盤を支配する、名古屋から来た人妻・石川江梨子役が菊池エリ。石川江梨子といふのが、今作限定で適当にでつち上げた変名なのか、菊池エリが当時ほかでも使用してゐた名義であるのかは知らない。小道具を持つて来させられるだけの長田浩一に対し、日比やんはきさらぎ詩子と相原ユミ、申し訳程度の締まらない締めの濡れ場では恭子と、旗雄介―と奥出哲雄―は石川江梨子と絡む。
 今となつては当時のにっかつの疲弊ぶりが偲ばれるとでもいへばいいのか、箸にも棒にもかゝらないキネコ買取系。強ひて気持ちを奮ひ立たせ―最低限の形式的には―映画の中身に相対すると、真弓はそこそこ以上の美人である一方、そのまんま東の劣化レプリカ程度と清々しいほど魅力に乏しく、女優部に総スカンを喰ふ己のことは棚に上げ不平不満ばかり垂れ、挙句態度も妙にデカい恭介の造形が、カットの境目に一々フェードを多用するのも異常に腹が立つ奥出哲雄のレス・ザン・演出力以上だか以下に致命傷。石川江梨子に予想外の尺を費やした結果、神崎夫妻の抱へる微妙な齟齬といふ、本来ならば主要である筈のテーマを軽やかに放り投げて済ますルーズなラストは、ある意味不完全無欠。繰り返すが、幾ら添へ物の買取系とはいへ、どうかしてやがつたとしかいひやうがない。何より、「ミス20才 快感!百合子の本番」(昭和61/ミリオン/監督:細山智明/脚本:鴎街人=細山智明/主演:橋本杏子/未見)と「菊池エリ 巨乳」(昭和61/監督:細山智明/脚本:鴎街人)に先行する、あの菊池エリの銀幕初陣が単に詰まらないのは百万歩譲るにせよ、斯くも無残な画質であるのは歴史的悲劇といふほかないのではなからうか。奥出哲雄前作の「団地妻・ONANIE」もDMMの中にあるにはあるが、とてもわざわざ手を出す気にはなれない。


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