真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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義母と娘 羞恥くらべ
新田栄
/
2007年09月20日
「
どすけべ家族 義母も娘も色情狂
」(1999『義母と娘 羞恥くらべ』の2007年旧作改題版/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:岡輝男/企画:稲山悌二/撮影:千葉幸男/照明:高原賢一/編集:酒井正次/助監督:加藤義一/音楽:レインボー・サウンド/監督助手:北村隆/撮影助手:池宮直弘/照明助手:原康二/効果:中村半次郎/出演:浅野京子・林由美香・水原かなえ・かわさきひろゆき・山内健嗣・杉本まこと)。
内科医・宮坂啓一(杉本)との再婚を控へた美沙(浅野)は、探偵崩れの堀江史樹(かわさき)から望まぬ来訪を受けると、何か弱味でも握られてゐるのか、体を奪はれる。一方宮坂家、早くに妻と離婚して以来、男手ひとつで育てて来た一人娘の雛子(水原)は典型的なお父さん子で、妙齢となつた今でも、父親と一緒に風呂にも入る仲である。入浴中だといふことで陰毛の映り込みにも目こぼしを受けた風呂場での杉本まことと、瑞々しく若い水原かなえとの文字通りの濡れ場。大らかなエロチシズムが、ときめく幸福感とともに充満する。早くも結論を出してしまふが今作拾へるのはこの件と、後に登場する純然たる裸要員といへる林由美香の、銀幕を撃ち抜いてキラキラと輝く永遠の美しさのみ。
話を戻すと、さういふファザコン娘の居る家に、後妻として訳アリ女が嫁いで来るといふ物語である。遡つて考へてみるならば、そもそも後妻、即ち義母が、互ひにレズビアンですらない娘しか居ない家に嫁いで来たところで、一体そこから何がどう転がるといふのか。図らずも同時に上映された下元哲の「
和服義母の貞操帯 -肉締まり-
」同様、ジャンル・ムービーの基本的な理解に全く欠いてしまつてゐる。主演の浅野京子も例によつて、デビル雅美とジャガー横田を足して二で割つた如きの、いはゆるエクセス
不
美人。柄にもないシリアス路線はいい加減の斜め下を行く脚本に到底体を為さず、取り付く島の欠片もない清々しい凡作である。
後妻として宮坂家に迎へられた次の日、美沙は早くも堀江の来襲を受ける。弱味を握られ半ば手篭めにされるやうに抱かれる痴態を、忘れた財布を取りに戻つた雛子に目撃される。その夜父親を奪はれヤキモキする雛子はあつさりと美沙の不貞を暴露してしまひ、家庭は秒殺で崩壊する。それまでそんなことなどなかつたのに、宮坂は無断で家を出たきり戻つて来ない。二人きりの居間で、雛子はプレステ(ワン)に荒れる。因みに、このシーンで流れるゲーム音も、
ここで使はれてゐるもの
と同一である。ゲーム・オーバーに癇癪を起こして、「あんたの所為で、家の中は滅茶苦茶よ!」とリセット・ボタンを連打する雛子に対し、美沙は「人生の、リセット・ボタンは押せないは」と戒める。何ヌカしてやがる、何が“人生のリセット・ボタン”だ。糞みたいな文句で、平然と名台詞を書いたかのやうな気になつてみせる岡輝男が本気で腹立たしい。大体が、美沙が堀江に握られた弱味の中身といふ奴があんまりにも程がある。一度は結婚して子を設けながらも、身分の違ひとやらから、美沙は前夫とは別れさせられ、娘も奪はれてゐた。奪はれた幼子への恋しさから、
美沙は他人の幼女を誘拐してしまふ
のである。堀江には、幼女を親元へとこつそり返す後始末を依頼したものだつた・・・・・
それ普通に犯罪でしかないだろ
。“人生のリセット・ボタン”もへつたくれもあつたものではない、さういふ説教は、罪を償つてからいへ。結局、母のない雛子と娘のない美沙は和解し、何だカンだで宮坂も家に戻る。堀江は別口から御用となり家族は新しい平穏を取り戻す、といふので一件落着となるのだが。それ、パクられた堀江は、まづ当然に美沙の過去の罪に関しても口を割るぢやろ。略取誘拐といふ重罪ともなると、公訴時効もさうさう早々に迎へられるものではない。脚本の、釦を掛け違へるにも限度があるのである。
今作のオアシス林由美香は、宮坂の医院の看護婦・水原知花。特に体調でも良かつたのか、救ひのない映画の中で殊更に際立つ美しさを輝かせる。久し振りに観ると意外に男前であつた山内健嗣は、知花の彼氏・岡本将志。
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