真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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黒髪マダムレズ -三十路妻と四十路熟女-
さ行
/
2007年09月11日
「
黒髪マダムレズ -三十路妻と四十路熟女-
」(2007/製作:シネマアーク/提供:Xces Film/監督:下元哲/脚本:関根和美・水上晃太/企画:亀井戸粋人・奥田幸一/撮影:下元哲/照明:代田橋男/編集:酒井正次/助監督:高田宝重/監督助手:伊藤拓也/撮影助手:浅倉茉里子/照明助手:塚本宣威/協力:報映産業、東映ラボ・テック/出演:鏡麗子・しのざきさとみ・佐々木基子・なかみつせいじ・牧村耕次)。
サンタナの「哀愁のヨーロッパ」ばりの、泣きのギターにて開巻。客(後姿しか見せないが多分、高田宝重)の前に和服を自ら紐解き、蚊帳越しにド迫力のストリップを展開する鏡麗子。振り返つてみるならば、ここで既に今作下元哲が立てた戦略は明らかであつた。
日本庭園の手入れに勤しむ金城幸江(鏡)と、夫の和哉(なかみつ)は縁側で呑気に釣竿を覘く。幸江は築地で高級料亭を営む金城家に嫁入りし、女将として手腕を揮つてゐた。幸江は、和哉にも料亭の経営を手伝つて呉れるやう望んだが、和哉は料亭の切り盛りは女将、即ち女の仕事と相場は決まつてゐる、と飲む打つ買ふの三拍子揃つた放蕩三昧に耽つてゐた。ある日幸江に、見に覚えの全くない高利貸しからの電話がかゝつて来る、和哉がギャンブルで巨額の借金を作つたといふのだ。和哉は、前夜から姿を消してゐた。拉致されるかのやうに、幸江は高利貸しの社長・森島麗香(しのざき)の下へと向かふ。因みに森島邸は、例によつて
御馴染みの洋館
。料亭も、既に担保に入れられてゐた。不足分は体で払へ、お約束の淫獄に、幸江は囚はれてしまふ。
どうせ元々分厚くもなかつたであらう関根和美から渡された脚本を、下元哲は更に大胆に簡略し、加速した潔さを炸裂させる。舞台を手短にあつらへると、後は本来この手の“囚はれた令夫人もの”必須とならう幸江の抵抗も逡巡も、後に一応は用意された夫との思はぬ形での再会すら殆ど何処吹く風。淫獄の先輩にIT企業社長夫人であつたとかいふ猪瀬紗織(佐々木)を指南役として登場させると、客々の下に向かつては威力絶大のビアンな白黒ショウを手を替へ品を替へ延々繰り広げる、だけの、重量感溢れる極彩色のエロ万華にひたすらに特化。幾らピンクとはいへ一本の劇映画としては画期的とすらいへる内容の希薄さを、濡れ場の破壊力の一点突破で堂々と押し切るエクセス十八番の重戦車ピンク。これはこれで、天晴であるとでもしか最早いひやうもない。
牧村耕次は、麗香部下の北村邦弘。ギャングを気取るビートたけしばりの渋味を炸裂させるものの、退場の呆気なさには驚嘆させられる。今作に際して下元哲が採用した取捨選択が、ここにもよく表れてゐよう。幸江と紗織のビアン白黒ショウの客として、三組計四人登場。二組目の中年、あるいは初老の一人客は、現場にも参加した関根和美。幸江が紗織と初めて客前に立たされる際の中年客と、三組目の和哉の連れの若い男―伊藤拓也ではなく、水上晃太か?―は、何れも誰なのか不明。
なかなか判り辛いのは、“三十路妻”といふのは鏡麗子を指すものだとして、“四十路熟女”といふのは。しのざきさとみと佐々木基子と、一体どちらのことなのか。もうどうでもいいよ、さうですか、さうデスね。ひとつ忘れてならないのは、各人の着物の着付けが何れも超絶に完璧。これは日舞を嗜むといふ、しのざきさとみの手によるものに違ひあるまい。
以下は再見に際しての付記< 幸江が紗織と初めて客の前に立たされる際の中年客は下元哲。
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