真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「私が愛した下唇」(2000/製作:関根プロダクション/配給:大蔵映画/監督:片山圭太/脚本:関根和美/プロデューサー:関根和美/撮影:中本憲政/助監督:城定秀夫/編集:㈲フィルムクラフト/音楽:ザ・リハビリテーションズ/録音:シネキャビン/スチール:佐藤初太郎/現像:東映化学《株》/出演:里見瑤子・村上ゆう・間宮結・岡田謙一郎・山内健嗣・吉田祐健・飯島大介・小林操・牧修ニ)。
 関根プロ―と多呂プロ―の助監督を経て監督デビューした片山圭太三作目、二本目の「痴漢新妻 たまらず求めて」(1999/脚本:金泥駒=小松公典/主演:麻丘珠里)ならば何度か観てゐるが、デビュー作である「女のイク瞬間《とき》 覗かれた痴態」(同/主演:岡田謙一郎・奈賀毬子)は多分未見。
 掃除夫の誠(里見瑤子/但し熊本輝生のアテレコ)は、武夫(岡田)に道ならぬ恋心を抱く。ある日、武夫が車の中で美しい妻・冴子(村上)と二人でゐるのを目撃した誠は荒れる。ヤケ酒をあふり、思ひ切り空き缶を蹴り飛ばしたところ運悪くヤクザ(飯島)にクリーンヒット、子分(小林操と牧修ニ)も交へ三人に袋叩きにされる。誠が意識を取り戻すと、易者のやうな格好をした不思議な老人(吉田)が。老人は、念じて燃やすと願ひ事が叶ふ、たゞし二度とは元には戻れない、とかいふ黄色いお札を誠に手渡す。誠が念を込め札を燃やし、一夜明け、誠は念願叶ひ女・マコ(いふまでもなく里見瑤子の二役)に変つてゐた。マコは早速武夫の会社に派遣社員として潜り込み、恋のアタックを開始する。
 さういふ変身譚に、武夫の冴子との離婚も絡め物語は進行。関根和美の脚本はまあ兎も角、多分未だ若手の筈の片山圭太の演出は良くいへば手堅い反面、直截にいふならば若々しさには全く欠ける。ラストにふたつあるどんでん返しもひとまづは綺麗に決まり、黙つて見てゐる分には一人溌剌とした里見瑤子の輝く魅力もあり概ね満足して観てゐられるのだが、ひとつ基本設定に不満が残る。誠の願ひ事を叶へて呉れる、要は神様的なポジションの老人が、後にも先にも全く何の脈略もなく、唐突に誠の前に現れてはそんな重要なアイテムをあつさりと手渡してしまふ点。しかも、実はのちにもう一度の計二度も。幾らファンタジーとはいへ、些か都合が良すぎるやうな気もしなくはない。
 山内健嗣は、冴子の浮気相手でホストの浩司。ヴィヴィッドな赤毛の間宮結は、浩司のマジ彼女・綾。

 ところで二年間に三作撮つた片山圭太は、今作以降一本も撮つてゐない。何処かでVシネの助監督―そつち方面まで基本的に手が回らない―でも務めてゐたりするのかも知れないが、果たして今はどうされてゐるのであらうか。


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