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真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「Eカップ本番」(昭和62/製作?・配給:新東宝映画/監督:渡辺元嗣/脚本:平柳益実/製作:伊能竜/企画:白石俊/撮影:下元哲/照明:佐久間優/編集:酒井正次/助監督:小原忠美/監督助手:横田修一/撮影助手:片山浩/照明助手:高原賢一/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:田中みか・橋本杏子・川奈忍・ジミー土田・山本竜二・石部金吉・新井賢二・池島ゆたか)。製作の伊能竜は向井寛の変名、監督の渡辺元嗣は、勿論現在渡邊元嗣。
 松の湯の煙突と風見鶏を戴いた洋館を抜いて、国立探偵社。池島ゆたかの若い頃の色男な肖像写真挿んで、給料が安く連れ込みにも行けぬと助手の東佐知子(川奈)と西伊智朗(新井)が事務所で逢瀬。濡れ場初戦に、先にクレジットが並走。勢ひ余つた二人がソファーから落ちると、大仰なサイレンと池島ゆたかの笑ひ声、国立探偵社所長・国立松太郎(池島)は事務所の様子を盗聴盗撮してゐた。一転アフリカンなパーカッション起動、グイングイン自らのオッパイを揉みしだく正しくバスト・ショットに、「田中みか・Eカップ本番」のビデオ題でタイトル・イン。改めて国立登場、仕事の依頼は、高校教師・園田憲一(ジミー)の姿を消した元教へ子の妻・未来(田中)捜し。二人の馴初めの、強制援交気味の一戦。助監督が揺らせてゐるのか、クピクピ妙ちくりんなSEとともに、未来のオッパイが感じると自称“嘘みたいに”震へだすのは、あまりにも下らなくて素晴らしい。因みにといふかついでに、国立の読みは園田が期待した“こくりつ”ではなく、“くにたち”といふこの一幕のオチも脱力必至。“POISON”柄の瓶に入れ持ち歩く、国立家特製の野菜ジュースを飲み飲み、国立は仕事に着手。普通に聞き込みして回る中に見切れる、長身の男は渡邊元嗣御当人?
 配役残り橋本杏子は、家を出た未来が転がり込む、ズベ公仲間の渡みゆき、石部金吉(=清水大敬)が二十人ゐるといふみゆきの愛人の一人・田中克雄。サングラスの下はグラムなメイクとまんま渡辺正行みたいな造形の山本竜二は、未来・みゆきの矢張り不良仲間・大塚七郎。大塚が無理矢理破瓜も散らした未来が好きで、片やみゆきが実は大塚が好きといふ三角関係は、一旦橋本杏子の決定力でドラマのもう一本の軸たるかに見せて、残念ながら見事に放棄される。
 昭和62年最終第六作、DMMに潤沢に入つてゐる割に、殆ど見てゐないナベ・クラシックス。第一期ナベ・ゴールデン・エイジ―第二期は2006年以降目下も快進撃中―に近いこともあり、もう少しどころでなくキラキラと輝いてゐるものかと思ひきや、これが全く漫然とした出来。何はともあれ、確かにオッパイだけ抜けばショットとして成立するEカップではあれ、文字通り全体的な印象はとなると直截にいへば浅黒いデブでしかない主演女優がどうにもかうにも致命傷。未来とみゆきが過去にビューティーペアばりのコンビで芸能界を目指してゐた、といふのは今も変らぬアイドル映画の雄・渡邊元嗣の面目躍如と行きたいところが、田中みかと橋本杏子を並べた画が壊滅的に成立しない。物語的にも最初と最後にしか出て来ないジミー土田が暫し退場したまゝの隙に、探偵と調査対象の人妻とがイイ仲になるのはある意味定番の展開とはいへ、未来と国立が仲良くなるきつかけがジョギング。オッパイをブルンブルン揺らして走る、田中みかの爆乳ジョグが当時的にはそれなりにエポック・メイキングであつたりしたのかも知れないが、追走する池島ゆたかが腰まではコントの加トちやんみたいなテキ屋ルックに、パツンパッツンのピンクのパンツといふ扮装は、80年代といふ時代がダサいからなる理由で基本ヘイトな個人的偏向にもよるにせよ、ツッコむ気力も萎える悪い冗談にしか見えない。何ひとつ不足のない夫である園田に尽くされるよりも、誰かに尽くしたかつただなどと贅沢極まりない不平を垂れる未来に対し、国立が季節外れのサンタクロースを気取つて元の鞘に納まるようを促すクライマックスも、シークエンス以前に演者からダサい。渡邊元嗣のベタ足でエモーションを追ひ詰める手法は、案外年代を問はずダサさと親和するやう思へなくないものの、ダサいものはダサい。オーラスの、緑のポロシャツをクッソ中途半端なストレート・ジーンズ―しかも裾捲り、切れよ―にタック・インする新井賢二の腐れファッションには全力で悶絶した。世紀の境目付近を逆の意味での筆頭に、グダグダする際のナベが特段劣化した訳ではなく、昔から外す時は綺麗に外してゐたといふのが概ね唯一の収穫。ビリング頭がビリング頭だけに、初めからの負け戦といつてしまへばそれこそ実も蓋もないけれど。

 締めの濡れ場に際しては、田中みかがパイズリを披露、昭和の時代既に確立してゐたメソッドなのかと軽く驚きつつ勉強になつた。


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 「いたづら天使 乱れ姿七変化」(2015/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/撮影助手:矢澤直子・高橋史弥/照明応援:広瀬寛巳/編集助手:鷹野朋子/協力:榎本敏郎、他二名/応援:関谷和樹/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック/協賛:GARAKU/出演:桜木凛・五十嵐しのぶ・岡田智宏・ケイチャン・津田篤・山口真里《愛情出演》・樹花凜)。出演者中、山口真里は本篇クレジットのみ。狭義のピンク映画に於いて、恐らく自作後初となるウルトラ久し振りに見かけた榎本敏郎の名前に驚いて、クレジット終盤に玉砕する。
 夫・透(岡田)が一人ニッカニッカ時計仕掛けに行動する、香川家の朝。送り出した元部下の妻・千尋(桜木)が、時刻表と生活してゐるみたいと溜息をついたところで、街景のロング・ショットに品のないフォントでドヒャーンと起動するタイトル・イン。何処で売つてゐるのか、ドット柄の凄いワイシャツを着た社内での愛称はドット君ことこちらも元同僚の永山孝夫(津田)が、外回り中と称して千尋を訪ねて来る。壁ドンと胸キュンを経て華麗に濡れ場初戦、ベタだの陳腐だのを欠片も懼れぬ渡邊元嗣の強靭なポップ・センスが、量産型娯楽映画を強くする。事後、不義をやらかした自己嫌悪を抱へて千尋は外出。退屈なOL生活に厭き結婚してはみたものの、専業主婦はもつと退屈だつた。贅沢な悩みを振り回す千尋は、衝動的に世界の消滅を願ふ。他方、薄いパープルのメイド服に身を包んだ、神様(樹)登場、神様!?「だ・れ・に・し・よ・う・か・な」と、自ら正しく神様のいふとほりに神様が飛ばしたメイド靴は千尋を直撃。“神を信じますか?”と手書きしたポケット・ティッシュを手に現れた神様を、当然千尋はチープな小道具もとい勧誘かと完スルー。すると樹花凜が素頓狂な決定力でシレッと叩き込む超絶の名台詞が、

 かう見えて神なのだ。

 確かに神には見えねえ、言ひ得て妙さに十万億土の彼方まで広がる大草原。反面“ダハハハハ”だの“バッハハーイ”だのと一々メソッドが古臭いのは、絶妙に神臭いかも。当たり前だがなほも神を信じない千尋に対し、神様は二人のダンス動画をスマホで撮影。それを千尋が見せられてみると、神様だけターンする毎にクルクル扮装がコスプレ変化するのは、迸るGARAKU(ex.ウィズ)魂とデジタル化の恩恵とを直結させた、ナベシネマならではの麗しい一幕。
 配役残り五十嵐しのぶは、乱れ姿七変化をさういふアプリかと依然納得しない千尋に業を煮やした神の気紛れで、ドット君からドット柄のスカーフを巻いたドットさんにさせられた永山孝子、立ち位置が元同僚から元先輩へと、微妙にシフトしてもゐる。その違和感は、当人始め千尋以外の全人類は共有しない。千尋をAVにスカウトする山口真里(役名はスカウトの女)噛ませて、ケイチャンこと要はけーすけは、千尋を騙くらかす悪徳芸能プロダクション社長・ジョニー北山。二作務めた十日市秀悦の後を継ぐナベシネマ二代目、亜紗美も入れると三代目。十日市秀悦の更に前に、真の初代がゐたならば申し訳ない。
 自身の引退なり復帰も挿みつつ、荒木太郎2010年第三作「恋情乙女 ぐつしよりな薄毛」(監督・脚本・出演:荒木太郎/原題:『夢しか夢がない人のプロレタリア恋愛』)以来まさかの大復帰を遂げた桜木凛を主演に擁した、渡邊元嗣2015年第一作。結論から先走ると、デジタル時代もゴールデン・エイジの第二章を軽快に爆走するナベが、画期的新機軸の女子トークピンクをも押さへ2015年戦線の先頭に飛び込んで来た!ダラけてる人類に神様が定期的に与へる、神の癖に阿弥陀籤で選ぶ今回の試練は、ズバリ日本消滅。そしてそのカタストロフィを回避するための条件は、白羽の矢をたてられた千尋が一ヶ月後二十七歳の誕生日までにトップ・アイドルになること。ファンタ路線のアイドル映画と来た日には、流石俺達のナベだぜと、拍手喝采するのは全然早計。神の与へた試練を回避するために、悪魔に魂を売る。全体樹花凜の絡みはどうするものかと思ひきや、神と悪魔が腐れ縁のセフレ関係。矢継ぎ早に叩き込まれる超展開に、度肝を抜かれるのもそれでも未だ早い。何より圧倒的なのは、千尋のスマホを覗き見た、透が岡田智宏一流の持ち芸でほくそ笑む謎カット。一旦放置されたかに見えた伏線が満を持して火を噴く、アップデートされた現代性も鮮やかな一発大逆転ラスト。悪魔に魂を売るのも千尋の選択にせよ、世界を救ふのは、愛であつて欲しい。神様が僅かに窺はせる真心に、即してゐるのも素晴らしい。五十嵐しのぶに話を戻すと、千尋を溺愛する透が幾ら据ゑられたとはいへ膳を喰ふ不自然ささへさて措けば、神の全能の証明の枠内に、三番手を回収する論理も地味に秀逸。滅ッ茶苦茶に面白い、これ今作の最大の勝因は、絶好調を維持するナベや穴のない強力な俳優部だけでなく、何気に比類ない脚本の強度ではなからうか。普段は控へる二度目の自リンを貼ると、悪魔か神とアイドル、完全に何時か観たやうなオーラスは御愛嬌。この世界に神とか悪魔がゐるのかゐないのかは不信心者につき知らん、ただピンク映画には、渡邊元嗣がゐる。


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 「ピンサロ病院3 ノーパン診察室」(2000/製作・配給:新東宝映画/監督:渡邊元嗣/脚本:中野貴雄/企画:福俵満/撮影:飯岡聖英/照明:東海林毅/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/監督助手:森角威之/撮影助手:岡宮裕/照明助手:小久保亮介/スチール:津田一郎/衣装協賛:《株》ウィズ・中野貴雄/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:黒田詩織・西藤尚・工藤翔子・水野里蘭・奈賀毬子・山信・ジミー土田・十日市秀悦)。
 波止場ショット、テンガロン・ハットに頭陀袋とポップに流れ者扮装の黒田詩織が、ピンサロ「ホットリップス」がホステスを募集するチラシに目を留める。安普請ぶりを回避、しようとする気配すら窺はせないホットリップス店内。店長のドトキン(ジミー土田)がハッスルタイム開戦を宣言、軍艦マーチが起動し嬢の音無由紀(工藤)・リカ(水野)・一瀬レナ(奈賀)が客々を抜く。その場に乱入した赤城政子こと通り名・上州小政(黒田)はドトキンに啖呵を切り、面喰はせる間も与へず自慢の手コキで陥落、強引にホットリップスに加はる。他方、あるいはその後。こちらは、こちらもププッピドゥな扮装で裸足で逃げるモンロー(西藤)と小政がミーツ。矢継ぎ早、勿体ぶる素振りすらみせず「月夜に悪魔と踊つたことがあるか?」と、この当時は最新の決め台詞も披露しつつ当の悪魔・六剣郎(十日市)登場。角の生えた被り物とメイクでバッチリ決まつた首から上と、マントに三叉の槍のオプションとで結構出来上がつてゐるかに思へた六剣郎の造形も、明るいところでよくよく見てみると何ちやない―クラッシャー・バンバン・―ビガロ柄の革ジャンに普通のジーンズ。寧ろロッケンロー寄りの、随分と安つぽい衣装ではある。モンローを巡り六剣郎と争つた小政は半殺しにされながらも、レモン汁を目に浴びせるキュートな毒霧で辛うじて脱出。所改めモンローが小政にキスすると、不思議なことに小政の傷は治つた。本格的な百合に移行、モンローの観音様はハート型と小政いはく“奇抜なデザイン”をしてゐた。モンローも小政に連れられホットリップスに加入、モンローに吹かれた客は加齢なりインポなり、何れにせよ勃たないモノが勃ち、雑誌にも採り上げられ大評判となる。
 配役残り山信は、ギターを抱へた渡り鳥造形でホットリップスに現れるラテンのジョー。潤沢なその他ホットリップス客要員はチンコ方面以外にも目が見えるやうになつたり車椅子から立ち上がつてみたりと台詞も芝居もそれなりにある割に、全員手も足も出ない。いや、車椅子から立ち上がるのは中野貴雄か。
 記念すべき第一作「ピンサロ病院 ノーパン白衣」(1997/監督:的場ちせ=浜野佐知/企画・脚本:福俵満/主演:麻生みゅう)、最高傑作の第二作「ピンサロ病院2 ノーパン女医」(1998/監督:北沢幸雄/企画・脚本:福俵満/主演:倉本梨里)、ピンサロ病院4よりもノーパン白衣3により近い最終作「ピンサロ病院4 ノーパン看護」(2001/監督:的場ちせ/脚本:山邦紀/主演:望月ねね)。ピンサロ病院シリーズ残す第三弾は、渡邊元嗣2000年最終第六作にして明けて正月映画。因みに4が封切られた頃にリリースされたビデオ題が、「新人看護婦 大卍祭 5人の《秘》診療テク」。だから全員ピンサロ嬢で看護婦ではない上に、“大卍祭”なる闇雲な用語は意味が全く判らない。
 よくいへば最大の羽目外し作といふか、要は羊頭を懸けて狗肉を売る一作。m@stervision大哥がリアルタイムでケリをつけられてをられるやうに、“ピンサロ病院”はモンロー景気にドトキンがホットリップスを模様替へしただけで、ピンサロ風の愉快な病院でも何でもない、単なる病院ピンサロである。別に女子高でも修道院でも何でもいい、モチーフのワン・オブ・ゼンに過ぎない。物語的には千年に一度神と人間との契約を仲介する、天使を文字通り悪魔の毒牙が狙ふ。浜野佐知の剛力ピンクに挟まれた間二作が、二作続けて地球か人類の危機を迎へてみせるのもなかなかどころか大概豪快なシリーズ構成とはいへ、脇目もふらず見事電車道を駆け抜けたノーパン女医に対し、今作はとなると一旦大風呂敷を途中まで拡げておいて、中盤は実は男女の仲にある由紀とドトキン、リカ×レナ×ジョーの巴戦と、要は本筋から概ね乖離した濡れ場に暫し終始。素頓狂な不思議ならぬ天使ちやんキャラの枠内から半歩と出でない西藤尚に対し、この面子の中だと案外最も展開の推進力を誇る十日市秀悦が退場してゐる間ストーリーの足が止まるツケの回つた、終盤の詰め込み具合がギューギューも通り越しガッチャガチャの印象は否み難い。組み合はせ自体が無理からな、締めの絡みを何と一時間も跨いで捻じ込むのには結構吃驚した。総尺六十三分弱、相当横紙を破つたものとみえる。豪快なシリーズ構成は兎も角、今作単体の構成は直截に頂けない。鵜呑みにしていいものやら如何なものやら、jmdbの記載頼みでは六年ぶりとなるジミー土田大復帰も正直不発気味のまゝに、見所は悪魔に憑かれた由紀こと工藤翔子の千葉のジャガーばりのハードロックなメイクと、無闇にポテンシャルの高い四番手。水野里蘭がメリハリの利いた容貌と、工藤翔子にも奈賀毬子にも勝るとも劣らない豊かなオッパイを誇る超逸材、ピンク出演が最初で最後なのが猛烈に惜しい。豪華五本柱の後ろ二人が限りなく単なる濡れ場要員でしかない点を本作最大の弱点と看做すならば、正しく諸刃の剣といふほかもないけれど。


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 「初恋のつぼみ ここから先はダメよ♡」(2014/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:宮原かおり・川口諒太郎・梅田裕多/効果:梅沢身知子/タイミング:安斎公一/協賛:GARAKU/出演:つぼみ・伊藤りな・津田篤・Kスケ・山本宗介・山口真里/愛情出演:朝倉まりあ・星優乃・夏井亜美・西藤尚)。
 輝く陽光を身に纏ふ、白い日傘を差した主演女優。景色のいい公園にて、スケッチブックに鉛筆を走らせタイトル・イン。英会話講師の立花丈二(津田)と、買物袋を提げた生徒で人妻の椎名美里(伊藤)に、雨宮奈緒美(つぼみ)がわざとらしく交錯する。何時も通り南酒々井の、丈二が事故死した両親(会話に上るのみ)から継いだ自宅。肉じやが後二人は不倫の逢瀬、伊藤りなが自慢の爆乳をガッツリ堪能させる先制で捥ぎ取つた緒戦の優勢を、結果的には終始維持する。ところが事後、俄然結婚生活を捨てる腹で突つ込んで来る美里に、丈二は引く。美里からの別居した旨のメールを受け取り、いよいよ本格的に頭を抱へる丈二の前に、奈緒美が再び姿を現す。自己紹介を済ませた後、奈緒美は肉じやが呼ばはりした美里をフェードさせる、恋のゲームを丈二に提示。赤い鉢巻で目隠しした丈二を馬に、奈緒美がプレイに興じるところに美里が来宅、首尾よく排除に成功する。その後騒ぎたてられた場合の、丈二の講師としての立場は気にするな。
 配役残りDQN造形が闇雲な山本宗介は、奈緒美がスケッチをダーリンと丈二には紹介する岳。Kスケ(ex.けーすけ)も同様に健吾で、山口真里は健吾の愛人・小春。登場順に夏井亜美と西藤尚は、丈二を飲みに誘ふもフラれる英会話の生徒AとB。朝倉まりあと星優乃は声も聞かせず見切れるばかりの、丈二の女AとB。但し特段絡むでもないゆゑ、生徒と女の別に実質的な意味はない。それはさて措き、御三方の変らず元気な御様子が、地味に琴線に触れるのは年の所為か。
 荒木(太郎)組共々準レギュラーの西藤尚は兎も角、2009年第一作「痴漢電車 しのび指は夢気分」以来となる夏井亜美と朝倉まりあ。2011年第二作「人妻旅行 しつとり乱れ貝」、の後に、竹洞哲也2012年第一作「義父の求愛 やは肌を這ふ舌」(脚本:小松公典・山口大輔/主演:つるのゆう)を挿みもする星優乃。フィルム最終作にこれまで数々の主演作を飾つたナベシネマズ・エンジェルが集つた、渡邊元嗣2014年第四作。要は2010年第二作「牝猫フェロモン 淫猥な唇」(主演:早川瀬里奈)を焼き直した豪快な物語に、息を吹き返して久しい難病ものが絡められる。おとなしく悲恋のまゝ振り抜けばいいものを、幾分でもなく調子のよさが否めないラストなり、無造作なミスリーディングが清々しいほどの齟齬を残す、奈緒美を連れ戻しに来る岳や健吾の造形は剥き出しの穴にせよ、この際些末とさて措くべき。渡邊元嗣の全力は陽気のみならず美しくそよぐ風にも恵まれた記録的に絶好のロケーションの中、主演女優のキュートさをエクストリームに銀幕に刻み込む、正調アイドル映画にあるのかと一旦思ひきや。つぼみ不在のまゝ渾身の真心を込めて撃ち抜かれる、健気な望みの綴られたスケッチブックの件は涙腺決壊必至。いい歳ブッこいたオッサンが、幾人となく涙の海に沈んだにさうゐない。村下孝蔵「初恋」が爆音で脳内再生される回想パートも一撃必殺、粗も見え、あるいは粗をものともせず、誠実に娯楽映画を信じ続けるナベの強さが如何なく発揮された一作。国沢実の愚直な革命映画「特務課の女豹 からみつく陰謀」で気を吐いた伊藤りなが仕掛ける三番手開巻奇襲も鮮やかに、山口真里は論を俟たずつぼみも決して小さいといふことはなく、三枚オッパイが並んだ布陣は当然裸映画的にも強い。


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 「婚活占ひ 浴衣でチラリ」(2014/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:浅倉茉里子・梅田裕多、もう一名/編集助手:鷹野朋子/効果:梅沢身知子/タイミング:安斎公一/協賛:GARAKU/出演:大槻ひびき・月本るい・坂城君・なかみつせいじ・Kスケ・横山みれい/SPECIAL THANKS:山口真里・西藤尚)。実際のビリングは、Kスケ、愛情出演の二人と来て横山みれいがトメ。
 観覧車からパンした先は、山口真里をチラシのモデルに採用した結婚相談所「マリアージュ」。社員AとB(山口真里と西藤尚)がマネージャーの三浦桜子(大槻)を残し先に退社したマリアージュを、桜子の学生時代からの彼氏で、自称小説家のコンビニ店員・宮下将(坂城)が訪ねて来る。鉄扉を叩いたが如き謎の物音を挿んで、宮下が耳元に息を吹きかけると桜子は点火しタイトル・イン。タイトル明けは勿論大槻ひびきの濡れ場、地味に完璧な繋ぎの強度が素晴らしい。
 事後、もう一度謎の物音挿んで、気軽に顔を出したにしては宮下の用件は、桜子へのプロポーズ。宮下が持参した指輪は桜子が望むティファニーどころでなく、百均でも買へようオモチャ。苦学して社会に出た過去もある桜子は完全に臍を曲げ、ドキドキする恋愛よりもセレブな結婚をと、六年来の関係に終りを告げる。一方、CA衣装のサマー(月本)が街に現れ、現地に到着しただのミッションを開始するだの、聞こえよがしな大風呂敷を拡げる。
 配役残り、マリアージュが企画する浴衣で婚活こと“ユカコン”―何だそれ(´・ω・`)―に参加との方便で、劇中現在時制は浴衣で通す横山みれいは、マリアージュの女性会員・大野美雪、因みに二人見切れる貧相な男性会員は演出部。Kスケ(=けーすけ)は新規でマリアージュの門を叩く、年収九億円の楽チン市場社長・白石ヒロト。なかみつせいじは、マリアージュの男性会員・野々村幸太、この人は年収三千万の勤務医。貧乏人考へだが、それだけの収入があるならどうとでもならないか?
 見るから怪しげに飛び込んで来る月本るいが如何にもらしい急展開の火種を担ふ、お盆第二弾の渡邊元嗣2014年第三作。とはいへ、類型的な結婚狂想曲が藪から棒に数百年の時空を超えるのは流石に振り幅が大き過ぎたのか、振り切られたといふか振り回された感もなくはない一作ではある。何れ菖蒲か杜若、申し訳ないが大槻ひびき・横山みれいの2トップと比べると明確に落ちる三番手の絡み―ところでその受胎は、時間法には触れないのか?―で一旦映画がダレるのはある意味オネストにしても、処理を迫られる情報量の無闇に多い展開の中で、大槻ひびきV.S.なかみつせいじ戦で再び始終が停滞するかに映るのは考へもの。反面、夢を諦めないでと二つの指輪の件、一撃必殺のエモーションを二度に亘つて撃ち抜く渾身こそが、表面的なアイドルなりファンタな要素で照れ隠した、ナベシネマのナベシネマたる所以。ところがさうなると、新顔の月本るいの力も借りなくてはならない、ライアン辺りのエクスキューズには如何せんまどろこしさも否めないゆゑ、いつそ悲恋エンドでよかつたのかもといつた気持ちは残る。兎にも角にも、この際瑣末はさて措くべき、今作に於いて重要なのは大槻ひびきの二撃と、横山みれいのオッパイ。改めて振り返つてみるにつけ、2012第年三作「おねだり狂艶 色情いうれい」・第四作「悩殺セールス 癒しのエロ下着」に、2013年第四作「淫Dream まどろむ白衣」。主演に大槻ひびきを擁したナベの、何処からでも倒せる、あるいは観客を泣かせられるぶりが何気に凄まじい。

 もう一点、驚いたのが、その内デビュー二十周年も迎へる西藤尚が超絶変らない。元々好みのタイプでないこともあり、当時は正体不明に思へた人気に馴染めなかつたものだが、この期に及んで西藤尚株が上がつて来た、遅れ馳せるにもほどがある。


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 「未亡人銭湯3 覗いちやつた」(2001/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影:飯岡聖英/照明:岡宮裕/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/監督助手:田中康文/撮影助手:川島周/スチール:佐藤初太郎/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:高橋千菜・西藤尚・ささきまこと・十日市秀悦・山信・工藤翔子)。女湯要員の水原かなえ・間宮ユイ・里見瑤子は狭義の文字クレジットこそないものの、トメの工藤翔子とオーラスの渡邊元嗣との間に、三人揃つてのショットが挿み込まれる。
 七色の余光煌く中、在りし日の夫婦生活。入念に五分消化、霧島か桐島梨子(高橋)の夫(山信の二役)は、達するやポップに腹上死する。チーンと遺影を抜き、梨子の合掌がフェードしてタイトル・イン。ちんここれ股、もといこんちこれまた―デスればいいのにな、俺―下町の銭湯「桜湯」。番台に座る司法試験十浪生・瀬戸健太郎(ささき)に常連客の詩織(西藤)が、店長が夜逃げ―銭湯の経営者を店長ていふのかな?―した件に喰ひつく隙を突いて、婆に扮装した出歯亀の宗田(十日市)が金も払はずに番台を突破。脱衣場にて女湯要員の水原かなえ・間宮ユイ・里見瑤子にちよつかいを出した末に、詩織に発覚、こちらは露出狂泡姫の美帆(工藤)も浴場から参戦し大騒ぎとなる。終にキレた健太郎が辞める辞めないでほのぼのと揉める絶妙なタイミングで、亡夫の実家から桜湯を相続した梨子登場。舞台に集ふバラエティに富んだ面々がイントロダクション代りの愉快な騒動を繰り広げる最中に、掃き溜めに鶴感を身に纏ふヒロインが現れる、この辺り序盤の構成は完璧。話は違ひ、桜湯は物件を売つ払つたとてなほ残る大赤字。一体、何をどう拗らせればそこまで膨らむのか。おまけに来月隣町には健康ランド「神泉の湯」がオープンと、新女将就任早々八方塞がる桜湯に風呂を浴びに来た、亡夫ソックリの全国を渡り歩くアダルトグッズの訪問販売員・折口(山)と出会つた梨子は一目で心を奪はれる。サクサク日曜日のデートの段取りが整ふと、女将さんが色男に口説かれたと詩織は色めきたち、健太郎は気を揉む。うん、中盤の展開も何ら問題ない。
 未亡人銭湯現状全五作をコンプする上で、どうせ各個全然違ふお話なのだから馬鹿正直に順番に見る必要もあるまい。とかいふ次第で2を飛ばして渡邊元嗣2001年第一作、ルーズでフリーダムなDMM戦の愉悦。全く以てm@stervision大哥仰せの通り、エキゾチックなパキパキッとした美貌と、幾分腹周りが緩くはあれ抱き心地のよささうな肢体まではいいとして、噛み合せが悪いやうにも見えないのに主演女優のへべれけな口跡は大いなる御愛嬌。デフォルトの如く傾いた銭湯が、プロフェッショナルたる美帆指南の下、公衆浴場が大絶賛特殊浴場に突入する湯女サービスで盛り返す。新田栄ばりに底の抜けた展開も兎も角、実際にベートーヴェンの交響曲第五番を劇伴に使用する、運命のジャスト・フィットを果たした巨根の折口と巨穴の詩織。そしてここの論理がエクストリームに麗しい、露出狂の美帆と出歯亀の宗田。そしてヒロインと、出し抜けに純情青年ぶる健太郎。と三本柱の恋路が銘々目出度く成就するハッピーでピンクなエンドは磐石、と一旦思はせかけて。あまりの衝撃に堂々と書いてしまふが、結局梨子は桜湯の赤字を健太郎に押しつけ、収支が正常化するまで己は気楽か気儘に旅に出る。だなどと大団円に砂をかけた後足をそのまゝ回して踵を叩き込む、大御大・小林悟をも易々と凌駕する破壊力が爆裂するラストには度肝を抜かれた。確かに、梨子が銭勘定に細かい描写は、何気に積み重ねられてゐるとはいへ。これから見る2で大御大が小林悟の名に懸けて度派手にブッ放して下さらなければ、地味に良作の並ぶシリーズにあつて、恐らく最強の飛び道具といへるのではなからうか。

 もう一点驚かされたのが、湯女サービスに驚喜し桜湯に殺到する助平客要員中、「素敵なサービス有難ね」といふ台詞つきで番台を駆け抜けるニコニコ顔のナベ。少なくともナベシネマでは、初めて見た。


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 「純愛不倫 恍惚のくちづけ」(2014/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:海津真也・佐藤光・岡山佳弘/編集助手:鷹野朋子/協賛:GARAKU/出演:本田莉子・五十嵐しのぶ・なかみつせいじ・野村貴浩・伊藤猛・横山みれい)。クレジット終盤に力尽きる。
 休日の土曜日、単身赴任中の熊本食品開発部部長・竹中慎也(なかみつ)と、熊本食品にSBSスタッフから派遣された倉木葵(本田)の不倫のピクニック。お弁当と、葵は好物の苺を丸ごと入れたスパークリング・ワインに舌鼓を打ち、二人で写メを撮つてタイトル・イン。初戦をコッテリこなすと、葵は翌日旦那を訪ねる本妻を慮りそそくさと慎也宅を退出。それが、慎也と葵の別れとなつた。亭主の―今に始まつた話でもない―浮気を勘付いてゐた絵美(五十嵐)は慎也に開き直られ激昂、果物ナイフを忍ばせ特攻するも、葵は忽然と失踪する。一年後、慎也が葵捜索を依頼した都市伝説好きの女探偵・相川杏子(横山)は、葵が蒸発直前、正体不明の長身の男(伊藤)と会つてゐた事実を突き止める。そんな最中、慎也は酔ひ潰れた葵とソックリの女・平田早希(本田莉子の二役)と遭遇、一旦自宅に担ぎ込み、何もせずタクシー代を貸して帰す。早希も、スパークリング・ワインに苺を入れて飲むのが好きな女だつた。杏子に早希の調査も依頼する一方、漸く離婚を承諾した絵美が、絵美も伊藤猛と接触した後に消息を絶つ。配役残り野村貴浩は、早希の不倫相手・岡島英太。早希に、カミさんと同じ香水を逢瀬のカモフラージュ・ギミックに贈るのはある意味賢明にせよ、普通その悪巧みを女にはいはんよな。
 タイムラインで目を留めたのは昨年十一月下旬、大西裕の「1BR‐ラブホテル」完成時に撮影された、国映勢の集合写真の中での明らかに尋常ではない痩せ方が気になつてはゐつつ、九月の初頭に飛び込んで来た伊藤猛さんの急な訃報には本当に驚かされた。享年五十二歳、当方と十しか違はん。人の死に関してちやうどいい頃合の有無は兎も角、何れにせよどう転んだとて早過ぎる。かういふ結果的な勘繰りが許されたものか否か甚だ疑問ではあれど、死期を悟つたのか、伊藤猛は「熟女淫らに乱れて」(2009/監督:鎮西尚一/脚本:尾上史高)以来五年ぶりに四月中旬公開の今作と、一ヶ月後のいんらんな女神たち第二弾「いんらんな女神たち ‐目覚め‐」(プロデューサー:渡邊元嗣)に於ける永井吾一(=永井卓爾)パートに出演してゐる。伊藤猛にとつてナベシネマは初参戦、キャリアを獅子プロでスタートさせた渡邊元嗣の出自が、現状頼れる伝(つて)であつたのであらうか。伊藤猛の大蔵戦は国沢♪実の「ノーパン若妻 おもちやで失神」(2002/脚本:樫原辰郎/主演:中河原椿)以来、何と十二年ぶり薔薇族入れても五作目。因みにエクセス最終戦は、今岡信治の「高校牝教師 ‐汚された性‐」(2001/主演:仲西さやか)。今回、35mmフィルムに焼きつけられ銀幕に刻み込まれた伊藤猛の姿に話を絞ると、痩躯は冬支度に隠し、台詞は殆どない。着衣のまゝ横山みれいに跨られる濡れ場に際しては、実年齢より十五は急速に老けて見える表情の中で、目だけは異様な迫力を放つてゐた。ノンポリの一観客ながら、衷心より哀悼の意を表します。
 さて映画本体に話を戻すと、微妙なタイミングで忽然と姿を消した不倫相手と、正しく瓜二つの女。美人の癖に浮世離れした女探偵に、謎の男。ミステリアスな渡邊元嗣2014年第二作が、慎也が抱くのは果たして早希なのか、はたまたまさかの葵なのか!?絡み込みである点も素晴らしいクライマックスのシークエンスを、一体如何に畳んでみせるのか固唾を呑んでゐたところ。幾ら杏子に幾らか伏線も蒔かせたとはいへ、衝撃の大風呂敷を拡げて逃げるラストには度肝を抜かれた。ナベがフィニッシュに無茶振りするのは決して珍しいことではないともいへ、過去作を引合にだすと暗黒サイコ・サスペンス「紅い淫臭 花蜜のしたたり」(2005/主演:桜井あみ・愛葉るび)にも匹敵する大概な破壊力。正直、想像に難くない伊藤猛の文字通り決死の覚悟も明後日にスッ飛んでしまつた。寧ろ「どう思ひますこの結末?」、と泉下の伊藤猛さんにお尋ねしてみたいくらゐだ。
 但し、決して忘れてならないのは、本田莉子×横山みれい×五十嵐しのぶ。何処からでもジェット・ストリーム・アタックを撃てる強力な三本柱を揃へ、オッパイ映画としては文句なく安定する。

 衝撃の大風呂敷備忘録< 二十世紀末、“選民”と称される富裕層は環境汚染の進んだ地球を捨て地球と火星の間に建設したスペース・コロニー“楽園”に移住。地上に残されたのは下層階級とパーツ取りのクローン、伊藤猛はクローンの回収人>地球に置いとくとパーツ劣化しね(´・ω・`)?


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 「天女の交はり ぬくもり昇天」(2014/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:海津真也・佐藤光/照明応援:広瀬寛巳/編集助手:鷹野朋子/スチール:津田一郎/録音:シネ・キャビン/現像:東映ラボ・テック/タイミング:安斎公一/協賛:GARAKU/天女衣裳製作:LOVEママ/出演:樹花凜・山口真里・久保田泰也・野村貴浩・眞木あずさ)。
 タイトル開巻、天文オタのコンビニバイト・長内達彦(久保田)が望遠鏡で覗く夜空の妙な星の多さに首を傾げてゐると、階下から下宿の未亡人管理人―劇中他の下宿生の気配はしない―桧山響子(山口)の呼ぶ声が。達彦がちよつとだけ出世したことの、豪勢なお祝ひ。ワインをクーッと一気飲みした響子はザクザク点火、膳を据ゑると料理に箸もつけずに一回戦に突入する。結合部を、響子が空けたグラスで遮る構成美。早々と轟チンした達彦に、響子が「早漏は青春のシンボル」と優しく―もしくは貪欲に―二回戦を要求したタイミングで、二階からボガーンとポップな爆発音。落雷かと慄く響子に対し、隕石かもと色めきたつた達彦が自室に飛び込むと、そこには羽衣を来た天女が、フルバースト・オブ・ナベ。掌を上に、揃へた両手を前に差し出し白鳥志織と名乗つた天女(樹)が、挙句に四十年後からやつて来た未来の恋人と自己紹介し達彦をマキシマムに面食らはせたところで、今度はチャイム音が来訪者を告げる。版権対策か、眞木あずさは微妙に、ゾロ・マスクも着用した野村貴浩は結構距離のある扮装の―うる星の―ラム(眞木)と黒執事(野村)が現れる、ナベのハイマットフルバーストだ。アンドロメダ星雲の惑星・OP69から来たといふラムは達彦に、ラムが先にイカされれば―圧倒的な軍事的優位を誇る―OP69は地球から手を引く。逆に達彦が先にイッてしまへばOP69が地球を征服、地球人は全員OP69星人の性奴隷にといふ対決を要求する。
 御馴染み最寄駅は南酒々井の、津田スタもとい未亡人下宿に未来から来た天女とアンドロメダ星雲からはラムと黒執事が来襲。人類の存亡を賭け、冴えないオタクがアグレッシブなボディのラムちやんとセックスする。

 これぞナベシネマ、

 プリミティブな物語を全力中の大全力で叩き込む、感動の渡邊元嗣2014年第一作。惜しかつた、今作が2013年に発表されてゐれば、セカンドバージンを倒せたかも知れないのに。・・・・いや、それは流石に筆の滑りも過ぎた。チンコ型の母艦の周囲を、何かの蓋程度にしか見えない遼艦が小バエみたいにプカプカ囲む。最早貫禄さへ漂ふチープ特撮に、開き直つた珍作と嘲笑すること勿れ。何でもない風景に涙を零した志織が、存在論の領域に片足突つ込んだかけがへのなさを謳ふ件ではワン・ショット必殺の飯岡聖英のカメラが火を噴き、事前に濡れ場込みで施された、志織の人外の能力で達彦が優勢の最終―でもない―決戦に、黒執事に一目惚れした響子がまさかの乱入。更なる女の裸の投入により、スイングする展開は裸映画的に実に秀逸。そもそも序盤のV.S.響子戦に於いて既に、達彦の早撃ちぶりを投げてゐる周到さも忘れてはなるまい。素頓狂と紙一重の、樹花凜の可憐さは底の抜けたありがちな大河を案外支へ抜き、残念ながら引退した眞木あずさは、豪快な大暴れで花道を自ら飾る。馬鹿馬鹿しい始終の中でもエモーションの要所は押さへ、ホロッと、あるいはホンワカさせる切なくもロマンティックなラスト。渡邊元嗣の信じた娯楽映画の形がここにあり、そして俺はそんなナベシネマを愛する。


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 「淫Dream まどろむ白衣」(2013/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影:飯岡聖英/照明:小川満/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:江尻大/撮影助手:浅倉茉里子/照明助手:八木徹/編集助手:鷹野朋子/スチール:津田一郎/タイミング:安斎公一/現像:東映ラボ・テック/録音:シネ・キャビン/協賛:GARAKU/出演:大槻ひびき・小滝みい菜・岡田智宏・坂城君・津田篤・五十嵐しのぶ)。
 早くも四つ葉のクローバーが覗く、可愛らしいタイトルボードによる開巻。クローバー柄の栞が抜かれる自室にて、風車に溜息混じりの息を吹きかけた須崎加恋(大槻)はボードに留められたスナップ写真を破り、自らの特異を苦悩する。タワーマンション外景を一拍置いて、演出のトーンも一転何処ぞのガラキックな会社。宣材写真の撮影に深夜残業する婿養子で専務の悟郎(津田)に、アイスコーヒーを差し入れ社長の鈴鹿悠子(五十嵐)は先に帰宅。初陣でトメに座り、最終的に三番手にしては比較的以上に重きを成す役も与へられる五十嵐しのぶは、ガサッと譬へると山口真里と瀬戸恵子を足して二で割つた雰囲気、その意味ではナベシネマに自然にフィットする。正直覚束ない口跡は、持ちキャラの圧で寄り切る。悠子が捌けるや、よからぬお店に電話を入れる悟郎は、アイコに一服盛られたらしく激しい睡魔に襲はれる。悟郎の夢に、総務課の派遣OLである加恋が底の抜けた花魁コスで登場、GARAKU魂が迸るぜ。事後、本妻と別れる別れないで加恋は―「いひなり未亡人 後ろ狂ひ」(2010/主演:星優乃)で見覚えのある―巨大鋏を持ち出し、悟郎を阿部サダる。悪夢から悠子に助け起こされた悟郎が夫婦生活を通じ悔い改めるのは、他人の夢の中に入り込む特殊能力を買はれた加恋が、極秘裏に悠子に雇はれての一幕。当人がひけらかす筈のないスペックを、悠子が如何に知るに至つたのかに関してはカッ飛ばされる。それなりの報酬を得つつも失職した加恋は、異能に苦しんだ過去世話になつた、師堂メンタル・クリニックに転がり込む。この人はテレパスでこの人も元患者の看護婦・織部彩(小滝)と、超能力オタクの変人精神科医・師堂隼人(岡田)を巡る恋の鞘当を心中秘かに繰り広げる加恋の周囲に、謎のアンチャン・関本保(坂城)が現れる。適当な変名なり誤植ではなく、下の名前は君と書いて“なお”と読ませる坂城君は、森山翔悟と同じ事務所「シネマクト」所属。問題は、その兄貴分たる森山翔悟のキャリアが四本で止まつてゐる件。配役残り、他人の心が読める彩を苦しめる下卑た短パン二人連れは、空前のクオリティを爆裂させる永井卓爾と江尻大。くどいのと巨大な世話だが、永井卓爾は削る勢ひで絞らないと肥え方がヤバいぞ。
 PG×上野オークラ劇場共同主催の第26回ピンク大賞ではあの城定秀夫の「人妻セカンドバージン 私を襲つて下さい」(主演:七海なな・吉岡睦雄)をも押さへ、最優秀作品賞・脚本賞・主演女優賞の主要三冠と、飯岡聖英の技能賞も舐めた渡邊元嗣2013年第四作。形式的にそのこと自体は、個人的には望ましい結果である。十年ぶりに帰港した黒船に、軒並ノサれてしまふのは面白くないからである。国沢実や荒木太郎の沈滞、竹洞哲也や最早多くを望む気にもなれない加藤義一の伸び悩み、森山茂雄の沈黙等々周囲の状況もあるにせよ、今や大蔵エース格の渡邊元嗣が城定秀夫の前に立ちはだかる構図は頼もしく、痛快であつた。さうはいへ、実際に漸く着弾した淫Dreamの蓋を開けてみたところ、個別的具体性への関心といふ要素を除けば、今作がセカンドバージンを凌駕したとは残念ながら認め難い。
 眠る人間の心の中に侵入する能力者。潜在意識とその先の性的欲望の世界―ジャンル上実に清々しい―と更に奥底の深層心理と、階層化されたインナースペース。無限運動する独楽から風車、現と夢の彼我を区別する小道具の設定。小屋で観る映画以外の情報を一切入れないにしても、クストファー・ノーラン「インセプション」(2010)の翻案である主眼には容易に辿り着けよう。心的世界の表現を、ソフトフォーカスとスモーク、若干のエコーとフニャフニャした劇伴―だけ―で乗り切るローを通り越したノー・バジェット感に関しては、らしさ含めいつても詮ない野暮につき、ここはさて措く。彩と師堂が並べられたベッドに別々に眠る、正体不明のシチュエーションを筆頭に意図的に判りにくく断片を鏤める構成が、全てのピースが揃つたところで滞りなく繋がり流れ始める局面の一気呵成には熟練の地力が唸り、イマジンな理想を語る師堂の姿や、ハートフルなイラストや小物で丁寧に種を蒔く小学生時代の淡い初恋のエピソードは、愚直で一途な情熱―畢竟それは、渡邊元嗣自身のものでもあらう―を撃ち抜く。2012年第三作「おねだり狂艶 色情いうれい」と続く「悩殺セールス 癒しのエロ下着」、ここぞといふ時に大槻ひびきを起用する、渡邊元嗣の本気は大いに窺へる。反面、尺の限界もあつてか淫セp・・・もとい「インセプション」のトレースに結構汲々とする点も兎も角、要は誰かさんのチートな万能ぶりで万事を片付け済ます、豪快な終盤には疑問が残らぬでもない。完成された娯楽映画―別に映画でなくとも構はないが―にのみ許された、圧倒的な劣勢を引つ繰り返すアッと驚く逆転劇ならばまだしも、作劇のこの御都合的な粗さでは、繰り返すが今作がセカンドバージンの超絶を上回つてゐるとは、私には世辞にもどんな酔狂にしても呑み難い。城定秀夫最強論を唱へるつもりは、特にない、森山茂雄友松直之もゐる、松岡邦彦だつて復活するかも判らない。渡邊元嗣には城定秀夫は倒せないといつてゐる訳でも、勿論ない。一撃のエモーションは、ナベが城定秀夫を上回つてゐると思ふ。ただ、同じ2013ナベシネマに限つた上でも、ほかに優れた映画が幾らでもではなくともありさうな気がする。淫Dreamがセカンドバージンを斥け最優秀作品賞を受賞したといふのは、為にする結果でしかないのではあるまいか。


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 「森尾歩衣 聖水折檻」(1993/企画:吉満屋功/プロデューサー:久保新二/配給:新東宝映画/監督:若月美廣/脚本:田辺満・若月美廣/撮影:中本憲政/照明:隅田浩行/音楽:遠藤浩一/編集:酒井正次/助監督:四宮一志/監督助手:森木正己・藤原健一/撮影助手:鬼頭信行・岡宮裕/照明助手:渡部和成/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/効果:東京スクリーンサービス/スチール:田中欣一/協力:モルフェス・川村真一・梅原淑行・佐藤睦・小川純子・劇団『火の鳥』・歩衣ちやんのファン/特殊緊縛:濡木痴夢男/出演:森尾歩衣・伊藤猛・佐野和宏・斉藤桃華・荒木太郎・伊藤舞・遠藤由紀・久保新二《友情出演》・津崎公平・港雄一)。
 森尾歩衣(終に役名は呼称されない)宅をチンピラじみた若い衆(火の鳥の皆さん)がガサ入れし、一味を率ゐる、太陽か大洋運送社長秘書・角田ハルヒコ(伊藤猛)は我関せずとばかりに、花瓶に挿された薔薇を愛でる、トーダイモトクラシー。探し物は見つからず、埒が開かないゆゑ森尾歩衣を拉致、角田は落ちてゐた佐野和宏のスナップ写真を拾ふ。角田がスナップを胸の内ポケットに納めたタイミングで、薔薇の花束にタイトル・イン。そのまゝ、カット跨いで伊藤舞女王様が隷女(遠藤)を薔薇束で打つ一幕に移行する繋ぎ―だけ―は、画期的に洒落てゐる。SMショーを大洋か太陽運送社長・瀬川エイジ(港)と、広瀬隆の『最後の話 死の灰と世紀末』を常時手放さないその息子(荒木)、若い衆が楽しむ席に、遅れて角田も顔を出す。すると瀬川の娘でもある婚約者・ユミ(斉藤)から婚前交渉ヤル気満々の呼び出しの電話―携帯が鬼のやうにデカい―が入り、角田はそこそこに中座。ユミも知つてゐた佐野和宏の正体は、鶴になつた瀬川の元秘書・岸川リョースケ。恋人である岸川が盗んだ裏帳簿の所在を求め、森尾歩衣は囚はれたものだつた。
 配役残り、秋山駿名義でピンク監督作もあるとの津崎公平(1995年没)は、瀬川とよからぬ遣り取りを交す大物国会議員・角丸先生。久保新二はクレーンの現場に目立つ白ジャケット姿で花を添へる、瀬川の太鼓持ち的ポジション。
 早過ぎる急な訃報が強い衝撃と深い悲しみとを呼んだ、伊藤猛を偲んで何か出演作を見るかとDMMを漁つてみた、久保チン御当人のブログによると「ザ・妊婦」(1992/監督:川村真一/脚本:友松直之・川村真一/主演:竹村祐佳)に続くプロデュース第二弾。全く馴染みのない若月美廣といふ名前に関しては同じく、シネマジックを主戦場にSMものを得意とするAV監督とのこと。さうしてみたところ、伊藤猛が何の毒なり闇も含まぬ堅気の役で片翼捥がれた印象が否めないのと、80年代の残滓を色濃く引き摺る、レス・ザン・シャープネスなスーツのダサさは如何ともし難く厳しい。倅に促された角田が、縛られ横たはる森尾歩衣を鞭打つ件。ピンク映画は女優の裸が映つてあればそれで事足りると一面に於いてはいへるものの、荒木太郎には問題ないフレームに伊藤猛の尺が収まりきらず、葛藤してゐる筈のハルヒコの表情が暫し切れる、間抜けな画角の悲運にも見舞はれる。兎にも角にも、もしくはそれどころではなく。要は裏帳簿は何処だの一点張りで女を責める地点から殆ど全く動かない稀薄な物語以前に、今作の致命傷は主演の森尾歩衣。鞭以外にも熱ロウを受けクレーンに吊られ聖水を浴びる、当時的にはそれだけのプレイを実際にこなしてゐれば重宝されたのか、キーキー耳障りな声で泣き喚くのが正しく関の山、貧しいお芝居にはせめてアテレコして呉れよと匙を投げるほかなく、乳も確かにある程度太いとはいへ、腰周りはなほ一層紛ふことなく太い。リアルタイマーならばメモリー補正でまだ見られたのかも知れないが、正直この期に及んで蓋を開けて、あるいは踏んでみる素材ではない。堂々とバレてのけると、角田が変心、息子から森尾歩衣を奪還し逃走する。「どうしてアタシを・・・?」といふ問ひに対して、「俺にだつて判らない」。心配御無用、斉藤桃華と約束された将来を捨て、森尾歩衣を選ぶ行動原理が観客にはなほ一層判らない。挙句に続けて、「ただアンタが美しく見えただけだ」などといふに至つて完全にチェック・メイト。闇献金が露見したにも関らず、瀬川と舞女王様の相変らずな劇中第二戦で締める謎のラストが、全篇を貫くマッタリ乃至モッサリ感を別の意味で完成させる。淀川長治先生いはく、どんな映画にも一箇所くらゐチャーミングなところがある。映画丸ごとチャーミングだとでも思はなければ最早やつてゐられない、お茶目さんな一作ではある。
 タイトルにまで謳ふ聖水折檻―主は瀬川―に際して、さういふ演出でもあるのであらうが普通に嫌々浴びる森尾歩衣よりも、自らもビショ濡れになるのも厭はず森尾歩衣を固定した上に、最終的には尿塗れの顔をベロンベロン舐め回す猛ハッスルを披露する荒木太郎の方が、余程筋金入りの変態に映る。

 結局、全く追悼になつてゐない件。佐々木麻由子と共演した、青シャツに黄色いタイの伊藤猛が本当に実写版ルパンに見えたピンクを探したのだけれど、見当たらなんだ。


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 「女スパイ 太股エロ仕掛け」(2002/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影:飯岡聖英/照明:小川満/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/監督助手:宇野寛之/撮影助手:小宮由紀夫/照明助手:石井拓也/録音:シネキャビン/現像:東映化学/協力:広瀬寛巳・森角威之/衣裳・下着 協賛:《株》ウィズ/出演:デヴィ・ゆき・林由美香・ささきまこと・菅野裕士・秀)。>シネキャの前に元永斉がスチール担当
 ジャーンと銅鑼開巻、障子の向かうでテレテレ踊る影の主は林由美香。風俗目当てで来日したオーピーランド共和国大統領・金玉男(キン・ギョクナン/ささきまこと)と、ホテトル嬢・弥生(林)の一戦。聞くからに偉大なる将軍様を連想させる役名ながら、ターバン姿でアル言葉を操る金の造形は、西方向に大分足を伸ばす。喜び勇んで本番、ところがあまりの短かさと小ささとに挿れられてゐるのに気付かない弥生に動揺した金は、驚異のジョイトイ・ゴールドペニス(以下面倒臭いのでGP)を、要は一物に張形をマルッと被せる形で装着。吹き荒れる目覚まし時計と嵐のSE、カメラはワシワシ動き金色の照明が飛び交ふチープ・スペクタクルな演出の中、弥生を失神とアクメが連続する強烈な快感に叩き込む。事後、コンパクト型の秘密道具で背後のGPを撮影した、実は国際秘密警察の潜入捜査官である弥生は隙を突き由美香キック一閃、GPを奪ふ。逃走する弥生は回転しながら飛んで来る鋼鉄製のブラジャーに被弾、GPを残し脱出する。チャイナドレスの女が、GPを回収する足下を抜いてタイトル・イン。
 世界の平和を守るシャドーズ・エンジェル―他メンバーの存在は不明―の私立探偵・間宮凛(デヴィ)は謎の大富豪・シャドー(声は菅野裕士、本体役は“?”とされる)の一命を帯び、某大国大統領の密命を受け極秘来日した日系人スパイ、ボンドならぬジェームス板東(秀)に接触する、ナベ絶好調だ。何故か浅黒く日焼けしてグラサンを常備する板東のヴィジュアルは、マーチンこと鈴木雅之に掠つてゐる。“接触して目的を探れ”といふ指令を、“セックスしてモッコリを弄れ”と華麗に聞き違へた―断固としてナベ絶好調だ―凛は、結婚式場から逃げ出して来た花嫁に扮して坂東に再接触、迸るウィズ魂が清々しい。何はともあれ、凄腕ボディガード・豹の牙(ゆき)の警護を掻い潜り金からGPを強奪する、「ゴールドピ~作戦」への協力を坂東は凛に要請、シャドーも作戦協力を指示する。
 大体この時期のオーピー作は駅前で順々に詰めて来てゐる筈なのに、抜けてゐたことに気付きDMMで落穂拾ひした渡邊元嗣2002年最終第四作。因みに前作がデヴィ初陣、シリーズ化も決して夢ではなかつたフーテンもとい「昇天の昇子」第一で唯一作「小悪魔デヴィ とろけ湯穴覗き」(脚本:五代暁子)。量的にも質的にも充実した濡れ場の僅かな僅かな隙間で、最終的には類型的ともいへそれなりに凝つたスパイ大作戦を器用に展開する。如何にもナベらしいポップでキュートな娯楽活劇、を狙へてゐて全くおかしくなかつたところが、案外実際の仕上がりはさうでもない。二戦目にして打ち止めのデヴィはキラキラと華のある表情作りも所作も問題ない反面、素頓狂な口跡はどうにも映画の足を地から浮かせる。秀(ex.十日市秀悦)が―セーラー戦士(青)コスの―林由美香とゆき、二戦続けてコッテリと濃厚な絡みを披露した上で、クライマックスの凛V.S.金戦、流れ上デヴィの裸をコメディで消費せざるを得ないのは裸映画的に地味に苦しい。ちぐはぐなオチの切れ味も悪く、よくてそこそこの一作である。

 ところで、意外なやうで未整理も甚だしいシャドーの正体は兎も角、坂東が真に受ける、ゴールドピ~作戦の建前。GPを奪取する目的が、オーピーランド共和国に対する外交カドーと短小でも性生活を謳歌し得るセックス革命といふのは、よく出来た話に聞こえてよくよく考へると疑問も残る。国家元首の醜聞を盾に外交上の切札とするにはGPを表舞台に出す訳には行かず、さうなると大量生産を前提としたセックス革命とは両立しないやうに思へる。


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 「淫乱体験 体が溶けちやふ」(2001『女痴漢捜査官4 とろける下半身』の2014年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:渡邊元嗣/脚本:波路遥/企画:福俵満/撮影:飯岡聖英/照明:小川満/編集:酒井正次/助監督:加藤義一/監督助手:下垣外純/撮影助手:田宮健彦/照明助手:深川寿幸/録音:シネキャビン/現像:東映化学/大人玩具・提供:《株》ウィズ/出演:美波輝海・風間今日子・林由美香・今野元志・十日市秀悦・田嶋謙一・螢雪次朗)。>シネキャの前に元永斉がスチール担当
 女痴漢捜査官の栗田久里子(美波)が、地下鉄車内にて今野元志の痴漢に被弾。一頻り攻めさせた上で、久里子が現行犯逮捕の手錠を取り出すと今野元志はリモコン状のガジェットで応戦、フル稼働を陰部に押しつけられた久里子は悶絶する。この一件で体の一部が麻痺、いはゆる不感症の後遺症を残しながらも現場復帰した久里子に、痴漢捜査課チーフの吉永純一(田嶋)は新たな任務を与へる。次期首相候補と噂される与党大物政治家・亀橋静太郎(十日市)の交際相手―亀橋は目下独身につき―水野恭子(風間)が、ストーカー被害に遭ふ。何故か恭子は警察への通報を拒み、総裁選を控へ事を大袈裟にしたくない亀橋の意向もあり、事件の捜査に際し隠密組織である痴漢捜査課に白羽の矢が立つたものだつた。イントロダクションに一段落ついたところで、スライド・プロジェクターの放つ光がフラッシュ・バックしてタイトル・イン。恭子の尾行を開始した久里子は、恭子が今野元志に襲はれる現場に遭遇。今野元志を撃退し、リモコン・ガジェットを入手する。装置の精巧さに注目した吉永は、保釈中の天才科学者にして超外科医・根久田判二羽留(螢)に捜査協力を求めるやう提案する。どちらがミイラなのか判らないトゥー・マッチ感は無視するとして、恭子の部屋を盗聴する久里子は、恭子と今野元志が、複数機現存するのか件のガジェットその名もビックリX―この辺りは貫禄のセンス・オブ・ナベ―を使用し強烈な情事に及んでゐることに混乱する。そんな久里子に治療と称した純然たる濡れ場を施しつつ、蛇の道は蛇方便の一点張りで、根久田はビックリXを開発したのは、共生病院に勤務する謎の神経外科医・朝雲あきら(今野)である情報を伝へる。
 全くの余談でしかないが今回の第三百四次「前田有楽旅情篇」は新版のジェット・ストリーム・アタックで、未感想作は一本もないのだが、為にする筆でなく本当にウルトラ・スーパー・ハイグレード・デラックス・ゴージャスな座席に生まれ変つた改装新生有楽を味はひたかつたのと、中身に殆ど触れてゐない前感想をいつそ全面的に書き直すかと、こんちこれまた遥々電車に揺られ木戸銭を落として来た次第である。全四作の女痴漢捜査官シリーズに止めを刺した一作、といふのが恐らく一致する衆目で、一度目の旧作改題当時に、小生もさういふ印象を大雑把に持つてゐた。ところが改めて冷静に観返してみたところ、案外満更でもない。主演女優の全方位的にプリミティブな破壊力に目を覆ふなり塞ぐなりするならば、確かにそこで話は終る。仰々しい名義に透けて見えるよくいへばポジティブな自意識は窺へるものの、美波輝海は然程美しくなければ特に輝きもせず、お芝居の方も辛うじて棒つきれではない程度。とはいへ風間今日子と林由美香、近代ピンクはおろか史上最強をも十二分に狙へる三番・五番コンビにおとなしくクライマックスを委ねる賢明な戦略が功を奏し、物語全体の要所はガッチリ締まる。久里子を弄ぶかのやうに、といふか現に弄びながら、根久田が日常と非日常の境界に揺さぶりをかける件も、女痴漢捜査官といふ設定自体を巧みに回収してみせ見応へがある。意図的に、ではなく何時も通りのナベシネマ水準である点はさて措き、チープでキャンプな見映えに一見失笑ものに見せて、オーラスのバッド・テイストは地味に容赦ない。となると、ナベシネマ・オブ・ナベシネマな娯楽活劇の第一作「女痴漢捜査官 お尻で勝負!」(1998/脚本:波路遥/主演:工藤翔子)。痴漢要素は薄いけれども正攻法サイコ・サスペンスの第二作「女痴漢捜査官2 バストで御用!」(1999/脚本:波路遥/主演:工藤翔子)に、m@stervision大哥大絶賛の第三作「女痴漢捜査官3 恥情のテクニック」(2000/脚本:武田浩介/主演:蒼生侑香里)。実は女痴漢捜査官は四打数四安打の、稀有なシリーズであつたといへるのではなからうか。

 ここでいい機会に、美波輝海の全六戦を振り返る。初陣は北沢幸雄の「股がる義母 息子の快感」(2001)で、第二戦が今作。翌年の最高傑作「美人姉妹の愛液」(2002)で短い実働期間を終へたものかと思はせて、五年後「特命シスター ねつとりエロ仕置き」(2007)に大貫あずさ名義で電撃復帰。以降も小山てるみと再び名義を変へ、「喪服の女 熟れ肌のめまひ」(2008)、「愛液ドールズ 悩殺いかせ上手」(2009)と二作に出演する。m@ster大哥はナベが匙を投げたが如く書かれておいでではあるが、これで意外と、美波輝海は渡邊元嗣に可愛がられてゐたのかも知れない。
 地味に容赦ないバッド・テイスト< あきらから切除したマンコを、亀橋の口唇部に移植


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 「痴漢電車 気分は絶頂」(昭和61/製作:獅子プロダクション?/配給:新東宝映画/監督:渡辺元嗣/脚本:平柳益実/製作:伊能竜/撮影:倉本和人/照明:石部肇/編集:酒井正次/助監督:笠井雅裕/監督助手:末田健/撮影助手:栢野直樹・斉藤幸一/照明助手:佐久間栄一/協力:渋谷道頓堀劇場/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:大滝かつ美・風見玲香・清川鮎・藤冴子・池島ゆたか・ジミー土田・渡辺正樹・螢雪次朗)。製作の伊能竜は向井寛の変名。監督の渡辺元嗣は、勿論現在渡邊元嗣。
 宇宙空間にスペースシャトルが無造作に放り投げられ、地球のショット挿み赤く光る彗星。そこそこの特撮を三十秒見せた上で、カメラは地上の東京に、電車噛ませてタイトル・イン。「ジャン!」と自らアタック鳴らしてストリップ小屋「渋谷道頓堀劇場」のサンドイッチマン・丘野松太郎(螢)登場。女(誰か判らん)に痴漢を楽しむ松太郎の画面後方には、ドリフの爆破コントみたいな、といふかそのものの真黒に汚れた顔の少女(大滝)が。電車が揺れ、気付かぬ内に松太郎の痴漢はドリフにスライド。思はず声を洩らしたドリフと顔を見合はせた、松太郎の方が悲鳴を上げる。チンコみたいな、といふかそのものの鼻眼鏡に、銜へタバコでダラダラ歩く松太郎のレス・ザン・モチベーションな仕事ぶりに、労働なんてこんなもんで十分だよなと全力で感動する。一方、大手航空会社「全日航」社長の大空邸。後妻の麗子(風見)と、大空の秘書・雨宮(池島)がベッドの中に。二人は大空からの電話(受話器越しの声も聞かせず)と、十全なラジオ・ニュース(手堅い読み手不明)を通して全日航が受注したスペースシャトルが宇都宮山中に墜落。大空のごり押しで乗り込ませた、一人娘の未来(ミキではなくミライ)が死んだことを知る。
 配役残り、麻生みゅうとは別のベクトルでゴリラによく似た藤冴子―我ながらムチャクチャだ―は、悲しむでもなく寧ろな麗子の寝室を木上から覗くTVリポーター・高橋政子。木の下から政子と共同作業で、未来が死ねば大空の遺産は麗子が総取りするといふ外堀を投げる渡辺正樹は、政子の同僚・寅吉。ゴリラの癖に政子は木から落下、諺のやうな女だ。それを受け止めた寅吉は負傷し、政子の部屋に担ぎ込まれる。そこで二人が情を交すのはカテゴリー上当然の流れとはいへ、部屋には「痴漢電車 いくまで待つて」(昭和60/監督:稲尾実=深町章)のポスターが貼られ、政子がレポーターの前職はポルノ映画に出てゐたといふのは薮蛇な蛇足にしか思へない。百軒店飲食街で一度見付かつた際には振り切つたドリフと、松太郎は道頓堀劇場のゴミ捨て場にて再々会。支配人(片岡脩二)に促され、松太郎はドリフの面倒を見ることに。浮浪児といふ言葉を、久々耳にした気がする。同時進行で大空邸では、死体が発見されず生存の可能性が出て来た未来の始末を麗子が雨宮に指示。ゲーセンでインベーダーゲームの筐体から顔を上げないトレンチコートの人物に、雨宮は接触する。ジミー土田は、ゲーセン氏と同じトレンチを着用する池内。何処からか未来の情報を聞きつけ、道頓堀劇場の周囲に出没する。今でいふ高身長女優の清川鮎は、わざと脱ぎ忘れたパンティで松太郎を釣る、道頓堀劇場の新人踊り子・島田モモコ。
 沈黙して久しい今なほ、伝説にして最強のピンクス・m@stervision大哥。そのm@ster大哥が何と最高傑作と認定されておいでの、渡辺元嗣昭和61年第一作、通算では第八(と1/3)作に当たる。あのm@ster大哥お墨つきのナベ最高傑作、期待はいやが上にも高まらぬ訳がない。してみたところが、尻の青い―ことが許される歳でもないが―節穴にはいまひとつピンと来らなんだ。そもそも、最終的には洗練度の低い主演女優に琴線を擽られない、個人的な嗜好が致命傷ともいへ、ドリフが大空未来であることを松太郎が隣室の政子に教はるのが土壇場も土壇場―但し尺は二分半強跨ぐ―の五十分。展開は始終をよくいへば丁寧に追ひ、未来の―少なくとも劇中―処女性を優先し本格的な濡れ場を温存した諸刃の剣が響かぬ筈もなく、女優部の中で大滝かつ美に渡辺元嗣が殊更に入れ揚げた形跡は案外窺へない。ズームが引くと実は結構なロングであることに驚かされる、街の灯に包まれた感動的なラストにリアルタイムの小屋で直面してゐたらコロッと号泣してゐたやうな気もしつつ、仮に今作がm@ster大哥仰せの通り第一期の頂点であるならば、渡邊元嗣の真の絶頂期は、2006年に幕を開け大絶賛現在進行形の第二期ゴールデン・エイジといへるのではなからうか。
 これだけ逆らつておいて何だどころの話では済まないが、m@ster大哥がナベに捧げたエールは何度読み返しても涙が出る。


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 「過剰性欲 ‐エッチな遊び‐」(1991/製作:獅子プロダクション?/配給:新東宝映画/監督:渡辺元嗣/脚本:双美零/製作:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:田端一/編集:酒井正次/助監督:藤本邦郎/監督助手:所俊輔/撮影助手:片山浩/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化工/出演:山本竜二・ジミー土田・南城千秋・石川恵美・高樹麗・伊藤清美)。製作の伊能竜は向井寛の変名。監督の渡辺元嗣は、勿論現在渡邊元嗣。
 冬の森の中に加工された鳥の鳴き声が響きタイトル・イン。浮気に臍を曲げた彼女・未来ではなく美樹―クレジットに従ふ―を、マンガみたいなモジャモジャ頭の橘桃太郎(ジミー)が探す。その珍奇な髪型の方便は、最終的に明らかとなる。探し当てた美樹が女装したジミー土田であつた悪夢に飛び起きた桃太郎を、義兄、兼高校の野球部先輩でもある花咲渡(山本)が適当に案じる。妻にして桃太郎の姉・梅子(伊藤)も共有する橘家家系の眠り病に、渡は手を焼いてゐた。姉弟の父親・達郎(山本竜二の二役)は死去し、遺言状を管理する弁護士の早乙女昇(南城)が三人を訪ねる。遺産は三人の子供達に平等に分配するとする遺言に、梅子と桃太郎に渡も首を捻る。金髪であるといふ理由で里子に出された第三子・桜に、生前達郎が風俗店で再会してゐたといふのだ。頭数が増えたところでと高を括つた予想に反し、何だかんだで十億あるといふ遺産総額に驚喜した桃太郎と梅子・渡は、それぞれ美樹(石川)と実は渡の愛人・久美(高樹)にパツキンのヅラを被らせ桜発見を主張。何時の間にか家に上がり込んでゐた早乙女が、金髪女二人が睨み合ふ頓珍漢な修羅場に割つて入る。
 ポスターはどうなつてゐるのか知らないが、クレジットされども出て来ない、衝撃の幕開け以降も順調に迷走する石川恵美ルネッサンス企画。第三回は三度目の正直を狙つた渡辺元嗣1991年第一作、ナベなら安心だらう。してみたところが蓋を開けると金髪ウィッグを被つた石川恵美が、簡単に説明すればバービー人形を模したかのやうな扮装で登場するファースト・カットには、二度あることは三度あるのかと頭を抱へた。二人の桜の真偽を、早乙女がエロ対決で判定するグダグダに底の抜けた展開も、肩の力が抜け過ぎなナベ風味。ところがところが、二人桜も宿泊する橘・花咲両家の夜。渡は梅子と順当に夫婦生活劇中通算第二戦、桃太郎は美樹と致す一方、久美は一人爪弾き。真偽判定第二ラウンド後、くたびれてウィッグを外す美樹を目撃した久美が、自身の偽装も白状した上で寂しさを訴へ麗しく咲かせる百合は、力技にせよしつとりと情感のこもつた名濡れ場。結局、第三ラウンド後に意気投合した美樹と久美が手と手を取り桜探しの茶番から降り、始終が橘三姉弟と渡・早乙女に収束する展開は全般的に粗さの目立つ物語の中で何気に素晴らしく秀逸。何が粗いといつて、桃太郎と梅子がともに見る同じ内容の悪夢に関して、思はせぶりに本物の桜まで噛ませておいて丸投げする豪快さには驚いた、開巻の意味がまるで消滅してしまふ。ナルコレプシーが遺伝性疾患なのかどうかはさて措き、桃太郎と梅子が頻繁に発症する眠り病が―第三ラウンドに梅子を欠場させる効果を除けば―カット尻として以外に機能しないのも惜しいともいへ、その分固定されたオチに対しての、山本竜二七色のツッコミでテンポは快調。何より初めて認識したものであるが、山竜とジミー土田のコンビネーションが抱腹絶倒にして豊潤。瑣末な起承転結の検討なんぞは、この際どうでもよくなる。石川恵美目当てで見た映画で山竜とジミー土田に酔ふといふのも、ルネッサンス企画依然難航中といつた気配ではありつつ、面白かつたからよしといふ奴だ。オーラスはB.B.クイーンズの「ギンギラパラダイス」実曲が堂々と起動、薮蛇なハッピー・エンドをミュージカル風に楽しく締め括る、大らかであつた時代のフリーダムさが堪らない。

 今作側面的な見所は、ロケに出るや不用意、といふか最早無防備に近く映り込むあれやこれや。重機の停まる更地にて繰り広げられる真偽判定第三ラウンド、石川恵美が無謀なパイズリも敢行する美樹と渡の野外プレイ―その頃桃太郎が久美と交戦、要はスワップ対決である―の後方を、普通に車や自転車が往き来するのは序の口、ある意味途轍もないのはクライマックスの舞台となるそこら辺の公園。野次馬気味、ですらなくそのものとして見切れる一輪車の女児が、カット跨ぐと二人から三人に増殖するマシーン現象も大概なのだが、最も凄まじいのはその直前。桜の名を呼びながら公園にやつて来た桃太郎と梅子の、引いた画面向かつて右手。公園に下りる階段の脇でチャリンコを停め体操座りしてるオッサンは一体何者なのか、そんなシュールなショット見たことない。


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 「若妻淫熟 ダブル性感帯」(2001『若妻快楽レッスン 虜』の2013年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/脚本・監督:渡辺護/企画:福俵満/製作:深町章/撮影:鈴木志郎/編集:田中修/助監督:佐藤吏/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:里見瑤子・永井努・佐々木ユメカ・かわさきひろゆき・佐倉萌・岡田智宏・門前忍)。出演者中門前忍は、本篇クレジットのみ。
 テレビ局勤務のドキュメンタリー・ディレクターである夫(岡田)の東南アジア出張中、新婚八ヶ月の若妻・工藤舞(里見)は高校時代の親友・洋子(佐々木)がカラオケバーを営む山間の田舎町を訪ねる。舞の欲求不満を看破した洋子は初めてではない百合の花を咲かせ、自身のパトロン・村木(かわさき)も舞に宛がふ。その件、床の中一人で遊ぶ舞が気づくと直ぐそこまで村木が迫つてゐたなどといふシークエンスは、幾ら何でも粗雑に過ぎる。一方、奴隷のやうに洋子に傅く洋子の店のナイーブなバーテンダー・晃(永井)は、洋子が母親に似てゐること、その母親を犯しかけ家出した末に洋子に拾はれたことを、大して面識もない舞に語る。そんなディープな話出し抜けに切り出されても、普通聞く耳持たないよね。
 配役残り佐倉萌は、洋子の店「ちよ PART Ⅲ」のホステス・明美。この名義での監督作もある、渡辺護の変名である門前忍はちよ店内カットに於いて洋子が相手する客、明美が対する二人連れは不明。
 “ピンク映画黎明期を支えた巨匠”―新東宝公式配信頁より―渡辺護十二年ぶりのピンク映画帰還作。今回今作を観たのは八幡の前田有楽で、因みに次作は、先週小倉名画座に新版が来てゐた「義母の秘密 息子愛撫」(2002/主演:相沢ひろみ)。個人的にはピンクを観始めて間もなく、淫タクに一人で熱狂してゐた―今でも一人だが―頃なので、当時の受け取られ方なり何なり雰囲気は全く覚えてゐない。本丸に話を戻すとこれ百合か?無粋なもので申し訳ないが何かの花から自ら股を開き股間を晒す里見瑤子の下半身にオーバーラップする開巻にまづ、清々しいまでのアナクロぶりに苦笑する。里見瑤子は兎も角、佐々木ユメカは正直殆どギャグ感覚の、セーラ服の二人がキャッキャ戯れ合ふ女学生時代の回想パートも、遣り口自体が特殊な訳でも決してない割に、不可思議なほどに古めかしい。そこまでは、微笑ましさの範疇として。髪形が軽いと永井努が結構真央はじめに酷似して見える、晃が振り回す徒な重さで薮蛇な大仰さを醸し出しつつ、これ要は、旦那の出張中に火遊びを楽しんだ人妻が、マキシマムの刃傷沙汰が起こつたにも関らず再び元の日常にケロッと復帰する、如何にも人を喰つた話なのではなからうか。さういふものを誰それ先生のお撮りになつたものだからと有難く押戴く心性は、残念ながら今も昔も持ち合はせない。ルーズなルーチンがグルッと一周してアヴァンギャルドなりパンクの領域に突入しかねない、大御大・小林悟や今上御大・小川欽也、最強の小屋の番組占拠率を誇る無冠の帝王・新田栄らにツッコミツッコミしながらも生温かく接する愉悦を、寧ろ俺は選ぶ。粗雑に総括すると全盛期を知らない不勉強な若輩者にとつては、渡辺護のピンク映画少なくともラスト三作は、他と比較して明らかに重く扱はれる、その名前の大きさを実感させるものでは必ずしもなかつた。

 洋子宅が御馴染み水上荘であることはm@stervision大哥のレビュウを通じて広く知られるところとして、現代的な問題は、水上荘公式サイトのドメインが切れてゐる件。

 以下は再見に際しての付記< 明美が接客する二人連れ、小用に立つのが佐藤吏で、明美を執拗に口説くのは、どうもアテレコ臭く聞こえる福俵満


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