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真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢電車 いぢわるな視線」(1999/製作・配給:大蔵映画/監督:渡邊元嗣/脚本:五代暁子/撮影:清水正二/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/監督助手:田中康文/撮影助手:岡宮裕/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:黒田誌織・西藤尚・しのざきさとみ・新崎貢治・やまきよ・十日市秀悦)。
 林の中から制服姿の黒田詩織がプラップラ出て来るけれど、感動的に女子高生には見えない。佐伯明衣(下の名前の読みはメイ/黒田詩織)が幼馴染の太田か大田和巳(新崎)にポップにオーイすると、劇伴起動して初めてのデート。適当にキャッキャウフフする二人に、明衣に横恋慕する体育教師の胡桃沢健二(十日市)と、そんな胡桃沢に岡惚れするこずえ(西藤)が穏やかでない視線を送る。ところで幾らポジショニング的な要請にしても、こずえのヴィジュアルがいはゆる瓶底メガネにマジックでそばかすを描いた、あんまりな造形。和巳がモジモジ告白しては、みたけれど。明衣は和巳が照れ隠しに石を蹴つた川の波紋と、口にした“可愛い”の単語に何故か過剰に反応して昏倒。送られた自宅の津田スタでも、プレゼントの中身が可愛いカタツムリのブローチ―実物蝸牛にリボンをつけただけの代物は、別にも何も全然可愛くはない―で、渦巻模様と“可愛い”の単語に止めを刺された明衣は、アイシャドウもバッキバキに直線的な淫語を乱打する淫乱女に変貌、を通り越して殆ど変身する。兎も角突入する―どうせ和巳も―初体験に、胡桃沢は笛の音で蛇を操り介入、煌びやかなまでの藪蛇ぶりにクラクラ来る。和巳のキンタマに噛みついた蛇を、明衣は引き千切つた電気コードの電流で引き離さうとする、また無茶な娘だ。となると当然、黒焦げアフロで煙を吹くところまで完遂する感電オチ。瓶底×そばかす、アイシャドウで淫乱女、藪蛇な蛇使ひ、そして何も足さなければ何も引かない感電オチ。チープ・ポップの権化たる渡邊元嗣こと我等がナベ怒涛の連打を前に、まだその陳腐の才もとい天賦の才を疑ふものがあるであらうか、いや、ない
 とも、かく。明衣が両親と渡米する出し抜けな別離の五年後、ウィンドウ・ディスプレイの職に就いた和巳と、何時の間にか単身帰国してゐた明衣が背中合はせで電車に揺られるものの、くたびれてるのか和巳は立つたまゝ居眠り。和巳の手荷物から飛び出すマネキンの指先が、器用に明衣の尻にちよつかい。その他乗客が提げるドリキャス―の渦巻―と、中吊り広告に躍る“かはいい”の単語に点火された明衣は、遂には弾みでマネキンの指も折るほど自ら腰を使ふ大ハッスル。降車際に漸く明衣の存在に気づいた和巳は、今は探偵に転職してゐた胡桃沢に明衣捜しを依頼する。
 配役残りしのざきさとみは、明衣に百合の花香らせる隣人・弥生。やまきよは徹頭徹尾明衣に電車痴漢を仕掛けるためにのみ出て来て用が済むと潔く捌ける、純然たる男優部濡れ場要員。その他、明衣を挟んで和巳と胡桃沢が巴戦を展開するところにこずえが介入するラストの痴漢電車に、佐藤吏がさりげなくでもなく見切れる。
 捜査官はまだしもチン機軸の海水浴と、全六作中の半分痴漢づく渡邊元嗣1999年第四作。恐怖の大王、何処吹く風。これてつきり、胡桃沢が車内で痴漢にうつゝを抜かしながら明衣を捜す、兄弟子・滝田洋二郎の黒田一平シリーズに渡邊元嗣が挑んだものかと、思ひきや。二番手の筈の西藤尚が最終盤に至つて漸く導入程度の電車痴漢を被弾するばかりで、脱がない横紙をさりげなく破りつつ、始終は如何にもこの時期のナベと面子から容易に予想し得る水準のグダグダしたコメディに終始。劇中ただ一点明確に弾ける、そこかしこでアコギを爪弾き倒す十日市秀悦によるオリジナル主題歌を完奏して漸く、今作が明衣ならぬ「メリーに首つたけ」のリメイクであつた驚愕の事実が発覚する。これ、途中で気づいた人どれだけゐたんだろ?

 最後まで聴かせないと趣向が成立しないゆゑか、タイトル・インは主題歌を完奏したオーラス中のオーラス。それでも、監督クレジットが出た辺りで、切つてしまふ小屋は容赦なく切つてゐたにさうゐない気もする。


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 「痴漢電車 朝からいかせて」(1992/製作・配給:新東宝映画/監督:渡辺元嗣/脚本:双美零/企画・製作:田中岩夫/撮影:稲吉雅志/照明:柴崎江樹/編集:酒井正次/助監督:今岡信治/監督助手:国分章弘/撮影助手:飯岡聖英/照明助手:広瀬寛巳/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/協力:東陶株式会社・七沢荘/出演:水島川彩・ジミー土田・平賀勘一・石川恵美・南城千秋・小川真実・山本竜二)。監督の渡辺元嗣は、勿論現在渡邊元嗣、協力に飛び込んで来るまさかの大本営に吃驚した。
 「私生まれも育ちも御当地相模、迎へます皆様方とはお初にお目にかゝります」。「三寸下は地獄の賭場に産湯を使ひ、賽子の音も子守唄」。「姓は下賀茂名は純子、通り名を壷振り純子と申します」云々。一通り仁義を切りセーラー服で賽を振る水島川彩が、賭場を俄かに騒がせるパトカーのサイレンにも動じないのは真鮮やかな夢オチ。電車にて痴女行為を仕掛け、最終的には金を巻き上げる姉の竜子(小川)と、一端のスケコマシ気取りが実際には売れないホストの兄・文太(南城)の間を割つて純子が駆け込んだ手洗ひでは、痔持ちの父・浩二(山本)が山竜一流の顔芸を駆使し悶絶してゐた。下賀茂家の家業は、浩二の破門癖もあり今や若い衆に皆去られた暴力団。浩二が振り回す任侠道に文太と竜子は時代遅れと辟易する一方、没母・ルイ(何故か遺影にモザイクがかゝる)の跡目を継ぐ壷振りを目指す純子には、浩二は堅気の人生を望んでゐた。登校する純子が、七沢荘玄関の看板に組の再建を誓つてタイトル・イン。
 配役残りジミー土田は、通勤電車で毎朝見かける純子に、告白も辞さないテンションで想ひを寄せる高倉健太郎。ウォシュレットならぬシャワレットを販売する、衛生陶器メーカー「株式会社シャワレット」社員。石川恵美は、文太の情婦・影子。そしてファースト・カットが普通にカッコいい平賀勘一は、任侠に反し浩二に破門された下賀茂組の代貸・金川信夫、元々影子は信夫の情婦。その他純子が校内で賽を振る賭場に見切れる面々は、特定能はず。
 フと気づくとDMMの中に結構大量に眠る未見作のみでも、三人目となるハンドレッド戦が全然普通に戦へる、渡邊元嗣1992年第一作。深町章と池島ゆたかに関しても、前提は同じものが成立する。あくまで当サイトが本気で狙つてゐるのは、辿り着けるかどうか判らない以上、兎にも角にも全力で突つ込むしかない関根和美
 閑話休題、傾いた組と組の行く末に―少なくとも表面的には―関心を示さない兄姉に対し、母と同じ女賭博師の道に進むことを禁じられる末娘。ヒロインに岡惚れする堅気の純情男と、組に止めを刺さんと蠢動する、出所した代貸。存在するならば教科書通りに登場人物を配し、痴漢電車が徹頭徹尾純子と健太郎がミーツする器に過ぎない点はあまり褒められたものではなく、すつたもんだと切つた張つたの末に目出度く二人が結ばれる。締めの濡れ場が完遂に至らないのは、特に面白くはないけれど完璧な構成に水の一滴も差しつつ、風前の灯の関東下賀茂組が正しく一家で賑々しく再興する大団円が見事な、綺麗な綺麗な娯楽映画。文字通り組の看板を賭けた、純子と信夫の最終決戦。雌雄を決する純子が繰り出した母譲りの秘技が、“賽子化粧壷隠し”。名前だけでサイコロを何処に隠したのか判る馬鹿馬鹿しさが清々しい、寧ろ量産型娯楽映画にとつて、斬新さなんぞ些末か余計な色気とまで開き直つてしまへ。時代の移り変りに応じて、描写は自ずと変らう。完成しきつた予定調和を逸脱するのが、山竜でも平勘でもジミ土でもなく、ダークホース中のダークホース・南城千秋。信夫の出所は秘した上で二人しての出奔を迫る影子に対し、文太が投げる捨て台詞が「俺はジゴロだぞ、女なんて幾らでもゐるんだよ」。骨格に連動し絶妙に湾曲した口跡で俺はジゴロだぞ(笑、南城千秋一世一代の破壊力に腹を抱へた。


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 「特務課の星 蜜乳コスプレ大作戦!」(2016/制作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:増田貴彦/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:宮原かおり・榮穰/照明助手:広瀬寛巳/画面作成:植田浩行/スチール:津田一郎/効果:梅沢身知子/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック/衣装協賛:GARAKU/小道具協力:中野貴雄/出演:星美りか・横山みれい・藤宮櫻花・ケイチャン・なかみつせいじ・竹本泰志)。
 赤いチャイナドレスの主演女優、開巻即火を噴くGARAKU(ex.ウィズ)魂。後を追ふ竹本泰志を一旦は早変りしたオレンジのジョギングパンツ姿で翻弄しつつ、続くザ・シークみたいな頭巾に巫女装束といふ正体不明の変装―占者らしい―は、貸衣装のタグがついてゐたりそもそも巫女装束が後ろ前であつたりとボロボロに見破られる。られながらも、警視庁特務課に配属された新米刑事・木更津真美(星美)に教官の浜口健吾(竹本)はコスプレ審査の第一次試験合格を与へ、続く第二次試験はハニートラップ実技。“必殺五段締め”を真美に伝授すると称し、浜口が五段階に突いてゐるやうにしか見えない絡みを経て、何が何だかか何が何でもな勢ひで二次試験も合格。真美は常識を超えた未知なる犯罪者に変装と寝技とで対抗する、特務課刑事に任命される。正義ならぬ“性戯必勝”、真美が特務課の課訓である「性戯は必ず勝つ!」を三回連呼したところで、突如浜口は自身が誰なのかも失したオネエに変貌。ポップに真美が閉口してタイトル・イン、マンガマンガしたアバンが、座付脚本家変更?の不安も吹き飛ばし絶快調に走る。
 警視庁別館の特務課、クリシェにも満たない帰国子女造形が藪蛇な特務課課長の陣内さくら(横山)は、真美に頻発する浜口同様男がオネエ化する怪事件を説明。浜口がマークしてゐた、ジョイトイ会社「OPエレクト」のセールスマン・沼田陽一(なかみつ)の捜査を命じる。ところで回数・分量とも三番手相当の横山みれいの濡れ場は、真美を奔走させてゐる間に、浜口のオネエを色仕掛けで治さうとして果たせずといふ形で処理される。
 配役残り、風間今日子が山﨑邦紀2007年第三作「変態穴覗き 草むらを嗅げ」(主演:香咲美央)以来の超復活―小川隆史の最初で最後作「社宅妻 ねつとり不倫漬け」(2009/主演:小池絵美子)に映り込んでゐるかも知れないが―を遂げたのかと本気で見紛つたex.眞雪ゆんとかいふ藤宮櫻花は、旦那がオネエ化した隙間を沼田の訪問販売につけ込まれる内藤聡子。新宿二丁目に消えた旦那のスナップが、何故か菊嶌稔章。沼田×聡子戦はマンション管理会社委託の掃除婦コスで覗いてもとい監視した真実は、沼田が事後帰還した万保母病院―院内には永井卓爾やひろぽんがさりげなく見切れる―に今度は看護婦として潜入。ケイチャンは、元々は違法ドラッグのプッシャーであつたものが、沼田との秘薬を求めてのアフリカ放浪後、万保母病院を牛耳るマイク前島。何か獣の頭蓋骨が被りもの、大蛇を巻いた首から下は豹柄の全身タイツと、少なくとも頭蓋は中野貴雄に借りて来たに違ひないカッ飛び過ぎた扮装の怪人物。全体、この人にアフリカで何があつたのか。
 渡邊元嗣2016年第三作は、「特務課の女豹 からみつく陰謀」(2014/監督・脚本:国沢☆実/主演:伊藤りな)に、「特務課の罠 いたぶり牝囚人」(2015/脚本・監督:関根和美/主演:きみと歩実)。今のところ一年に一作づつ続いてゐる特務課シリーズ第三作にして、約二十年続いた山崎浩治とのコンビは解消したのか!?アニメ・特撮畑を主戦場とする増田貴彦が、「未来H日記 いつぱいしようよ」(2001/監督の田尻裕司と共同脚本/主演:川瀬陽太・高梨ゆきえ)以来のピンク電撃復帰を遂げた話題作。因みに増田貴彦は、渡邊元嗣次作の脚本も担当してゐる。
 男をオカマキナ~ゼ―解毒剤はノンケナ~ゼ!―でオネエ化させ、空いた女にジョイトイを売りつける。風を吹かせて桶屋を儲けさせるが如く暗躍する沼田の目的は、最終的にはジョイトイに仕込んだ高濃縮ガス爆弾を時限爆破させ女々を劇中用語ママでエマニエル化、マイク前島が酒池肉林の王国を築かうと目論むその名も東京ハーレム計画。一方、こちらも劇中用語ママで変身刑事たる真美は、観音様に蓄電したバイブの電力を放電するマミー・エレクロト・バイブレーション。何かよく判らんけど、兎にも角にもオッパイからビームを出すハニーならぬマミーフラッシュ。そして、浜口から授けられた必殺五段締めと、必勝の性戯を駆使して悪に立ち向かふ。と、なると。旦々舎よりも安定した、ナベシネマが崩れるのではなからうか。外野の至らん心配も余所に、うん、全ッ然変らないどころか更に加速してるね。デジタルの果実も嬉々と享受する、真美とマイク前島の最終決戦は星美りかの偉大なるオッパイをも超えるスペクタクルの大輪―スライド乱舞するサバンナが、光の彼方に消えるカットのカタルシスも捨て難い―を咲き誇らせ、チンコ型レバーの珍ガジェットは改めて盟友・中野貴雄とともに、ナベが娯楽映画に込めた下らなさがグルッと一周する熱く固いポリシーを叩き込む。締めの一戦は一旦コッテリと真面目に見させるか勃たせた上で、ガビーン★といふSEが聞こえて来さうなオチが軽やかに駆け抜ける。エモーション要素の絶無はひとつだけ気懸りでなくもないものの、素人のチョロい杞憂なんぞ何処吹く風、何時ものナベシネマ以上のナベシネマであつた。と同時に、逆説的にリアルな革命映画で火蓋を切り水のやうな女囚映画が続いて、今回が普段のナベシネマよりもナベシネマ。特務課シリーズが、各作バラエティに富んでゐて案外面白い。何時か特務課が、慰安旅行で伊豆に行かねえかな。清水大敬に任せると、特務課が鮫島組を壊滅させる頂上作戦か、他愛ない与太が尽きない。

 断じて忘れてならないのは、必殺五段締めを被弾、一段締め毎に悶絶する、ケイチャン(ex.けーすけ)のパ行を多用する愉快奇怪な悲鳴込みのエクストリーム顔芸。五段締めよりも、寧ろこのメソッドが必殺に思へる。


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 「好色 花でんしや」(昭和56/製作:ピンクリボン賞映画製作実行委員会/製作協力:現代映像企画/配給:株式会社にっかつ/監督:渡辺護/脚本:藤本義一・小水一男・阿部桂一/原作:藤本義一『好色つれづれ』より/企画:奥村幸士・岩淵輝義/制作:斎藤雅則/撮影:鈴木史郎/照明:近藤兼太郎/編集:田中修/助監督:広木隆一/監督助手:阿部嘉之・佐々木精司/撮影助手:遠藤政史・下元哲/照明助手:森久保雪一・佐久間守正/製作進行:松崎信/記録:立花あけみ/結髪:東律子/宣伝:仁木秀雄・井戸幸一/スチール:田中欣一/音楽:とべないアヒル/効果:原田千昭/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東洋現像所/衣裳:東京衣裳・富士衣裳/撮影協力:阪堺電鉄株式会社、キネマ・ハウス《大阪》、ホテル・ハイプレー《南紀白浜》、ホテル・浦島《南紀勝浦》/出演:鹿沼えり・麻吹淳子・青野梨魔・露乃五郎・橋本智子・立花ジャンプ・堺勝朗・チャンバラトリオ 南方英二・山根伸介・伊吹太郎・結城哲也)。出演者中、橋本智子から堺勝朗までは本篇クレジットのみ。配給に関しては事実上“提供:Xces Film”。
 海沿ひの駅、鹿沼えりのスナップを手に小男が「丸子・・・・」としやがみ込んで、ドーンとした通天閣のローアングルにタイトル・イン。倅の兵太郎(伊吹)が借金を残し蒸発、卒倒した兵助(南方)が兵太郎の嫁・丸子(鹿沼)とグダグダ途方に暮れてゐると、宝島金融の北川(山根)と佐山(結城)がドヤドヤ病室に乗り込んで来る。そのまゝ宝島金融社長・浦島(霧乃)の下に引つ立てられた丸子と兵助は、どさくさしたその場の勢ひで温泉地を白黒ショーでドサ回る羽目に。
 出演者中橋本智子は、北川・佐山に踏み込まれた窮地を意に介するでもなく、病状は大したことない兵太郎をザクザク病室から追ひ出す看護婦。青野梨魔は、兼秘書的な何かかも知れない浦島の情婦・ユリ。丸子と兵助の旅が始まるや自然か勝手に飛び込んで来てた麻吹淳子は、丸子と兵助に、北川&佐山を加へた五人で一座を組む格好のもう一人・みよる。丸子と兵助の前座に、みよる・北川・佐山の三人でコント仕立ての白黒ショー。佐山にビールを振る舞ふ客が、結城哲也との遣り取りを聞くにこの人も芸人と思しき立花ジャンプか。
 有志で金を出し合つて渡辺護に映画を撮らせるといふと、あるいは撮らせたのかと思ひ、十二年ぶりのピンク復帰年を跨いで第二作「義母の秘密 息子愛撫」(2002/脚本:六田耕=太田耕耘キ・樫原辰郎・渡辺護/主演:相沢ひろみ)なり、「色道四十八手 たからぶね」(2014/企画と原案/監督と脚本は井川耕一郎/主演:愛田奈々)に先行する類の話かと連想しかけつつ、伝説のお色気深夜番組「11PM」と連動とのことだけはあり、流石にもう少し大きな企画の渡辺護昭和56年第八作。この年渡辺護は買取系ロマポと新東宝に、今は亡きミリオンまで股にかけ全十五作。常々死んだ子の齢を数へるが如き繰言を蒸し返して恐縮ではあるが、量産型娯楽映画が実際に量産されてゐた、時代の麗しさよ。
 昔はよかつただなどとクズにでもいへるにつき昔の映画と正対すると、ヒロインと義父が白黒ショーでドサ回りといふと結構大概な超展開ながら、全く意味不明な―しかもアップでの―台詞が散見する点をみるに、当時のチャンバラのネタもちらほら織り込まれてゐるのか、一幕一幕妙に尺を喰ふ割に、物語的には掻い摘まうと掻い摘むまいとこの程度。何処ででも煙草が吸へた昭和の猥雑なフリーダムに対する郷愁をさて措けば、チャンバラwith鹿沼えり・麻吹淳子が景勝地をウロウロするばかりの漫然とした御当地映画といつた印象から、大きく羽ばたく飛翔力を有した映画では別にない。正直なところ一旦寝落ちてしまひ、仕方なく三本立てを二周して再度今度はまんじりともせず観たものなのだが、となると最後に残る大問題が、あの顔がフレーム内にあつて気づかない筈がないのに、高橋役とされる堺勝朗が何処に出て来たのか本当に完全に判らない。

 初見の鹿沼えりの溌剌とした容姿に既視感を覚えたのは、さうか、織田真子が平成の鹿沼えりだ。


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 「痴漢電車 濡れるまで待てない」(1998/製作・配給:大蔵映画/監督:渡邊元嗣/脚本:波路遥/撮影:下元哲/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:高田宝重/監督助手:片山圭太/撮影助手:小山田勝治/照明助手:小田求/スチール:佐藤初太郎/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:しのざきさとみ・西藤尚・熊谷孝文・久須美欽一・小西綾花)。
 特に意欲も感じさせない住宅街遠景を噛ませた上で、塚原雅哉・千晶の表札。千晶(西藤)がシャワーを浴び、リストラされた雅哉(熊谷)は求人誌とにらめつこ。風呂上がりの嫁に欲情し、飛びつくも出勤する千晶にケロッとかはされた雅哉が、クローゼットに激突してタイトル・イン。額に間抜けに絆創膏を貼つた雅哉は、まんまと面接に撃沈。雅哉が求人誌を放つた川に、花飾りの添へられた灯籠が流れて来る。流れて来るや辺りは日が暮れたが如く俄かに暗くなり、雅哉が灯籠を川の流れに戻すと、日もまた元に戻つた。そして漸く電車、かと思つたら。家計をイメクラ「ドリーム☆ルームス」で働き支へる千晶と、風俗遊びを経費で落とす常連客・藤崎宏(久須美)の電車痴漢プレイ。一方、雅哉が揺られる本物の電車。雅哉は当時と変らないセーラー服姿の、“故郷の初恋の人”落合真樹(小西)と再会、吸ひ寄せられるやうに軽く絡む。
 配役残りしのざきさとみは、転居の理由が別段見当たらないが何と塚原家の隣に越して来た、藤崎が夜な夜なの直線的な夫婦生活の求めに往生する妻・香織。乗客要員の中に、高田宝重は確認出来ず。
 DMMの新機能に薦められるまゝに、洒落てるのかぞんざいなのかよく判らないタイトルに惹かれて見てみた渡邊元嗣1998年第三作。前年に初上陸を果たしての、大蔵三戦目に当たる。ついでに西藤尚のみに注目すると1998年といふのはルーキーイヤーながら、実はその以前に田中真琴としての活動時期があつたりもする。
 話を戻して、勧められては、みたものの。デビュー当初の第一次と、2006年に火蓋を切つて以来、今なほワン・アンド・オンリーに快走する第二次黄金期。要はその間の大体二十年を、渡邊元嗣が長く概ねマッタリしてゐたイメージの枠内から時には出て呉れて全然構はないのに、出かけて出損なふ漫然とした仕上がり。最初のアップでは左半分をフレーム外に隠した―直前のロングでは、ギッリギリ見切れなくもない―姉妹のスナップを改めて抜き、完全に油断してゐただけなのかも知れないが、全く予想外の世間の狭さが明らかとなつた瞬間。ナベが猛然とアクセルを踏み込んで来る気配は、確かになくはなかつた。とはいへ、あるいはそもそも。吉村すももに劣るとも勝らず、口元から下がぎこちない主演―の筈の―女優のエクセスライクに関しては、いふてもせんないことと一旦さて措くにせよ。土台が想ひ人に姉を抱かせて成仏する妹の気持ちが、光の速さでも何年かゝるか見当もつかないほど理解に遠い。未練を残して死んだ女が兄貴に抱かれてゐたとなると、多分俺なら猛烈に地団駄を踏む。といふか、姉とか兄といふ問題ですらないな。雅哉にとつて千晶の風俗勤めはよもやか何時の間にか既知の事柄で、挙句に成仏したんぢやなかつたのかよ!なキュートでポップな狙ひが、グダッた右往左往にしか帰結しないラスト。そこかしこがボロッボロで、凡そ物語の体を成してゐない。結局最も心が動いたのは、西藤尚でさへなく、まさかのしのざきさとみがど頭に飛び込んで来るビリング。クレジットが最大のチャームポイントといへば、なかなか珍しくはある一作といふのが、当サイトに吹かせられる限りの与太、もとい南風。


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 「めぐる快感 あの日の私とエッチして」(2016/制作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:猪本太久磨・岡村浩代・磯崎秀介/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/効果:梅沢身知子/仕上げ:東映ラボ・テック/協賛:GARAKU/出演:星美りか・里美まゆ・横山みれい・橘秀樹・小滝正大・ケイチャン)。
 モノクロ無声映画風味の開巻、上野の王比伊神社。何時の時代か、浴衣姿で縁結びのお百度参りに励む彩香(星美)に、願ひが叶つて和服の修平(橘)が指輪を贈る。装ひと求婚の風俗との齟齬如きさて措き、威圧的なまでに胸元をいはゆるロケット型に盛り上げる、星美りかのオッパイが凄え。そして現代、UFOは未来人の乗つたタイムマシンだ何だと他愛ないムー話に盛り上がる、彩香と凜香(里美)の片桐姉妹に加へ、大森修平と川島司(小滝)の大蔵大学都市伝説研究部の面々。今はその手のネタも、ミミズバーガーやラジオ体操第4と十把一絡げに都市伝説に括られるのか。因みに小滝正大(ex.小滝正太)は、「熟妻と愛人 絶妙すけべ舌」(2012/監督・脚本:後藤大輔/主演:春日野結衣)から四年ぶりのピンク復帰。彩香の、過去にメールを送るといふ思ひつきにヒントを得た修平は、司が学ランの下に着る白Tにやをら数式を書き殴り始める。アルプス一万尺の二番を手遊び込みでフルコーラス噛ませた上で、夢を追ふ将来を熱く語る修平に彩香がウットリしてタイトル・イン。往々にして渡邊元嗣が仕出かす、下手にデジタルな安つぽいタイトル・インはどうにかならないものか。フィルム時代から、元々頓着ないのか酷い時はスッカスカな手の抜きつぷりに逆の意味で驚かされることもあつたが。
 三年後、普通に就職した彩香に対し、修平は発明と起業の準備期間と称して、姉妹が同居するマンションの一室にどう見ても自堕落に寄生。片や凜香が挙式間近の司は一流企業で順調にコースに乗り、ヒモを抱へ煮詰まる姉とは対照的に妹は玉の輿をゲットしつつあつた。こんな筈ぢやなかつた感を拗らせる彩香のスマホに、“過去の自分にメールを送れるサービス”との「過去ポスト」なる正体不明のアプリが着弾する。戯れに彩香が過去の自分に修平とは付き合はぬやうメールを送つてゐると、世界的なIT起業「リンゴ社」代表取締役のスティーブ・成仏(名刺オチで一切登場せず)に、SNSを介して認められた朗報を持つて修平が現れる。双方感激した流れで突入する絡み初戦、ミッチリ完遂したのち満ち足りた彩香がフと傍らを見やると、隣にゐるのは修平の筈が何と司。事後の軽い後悔がまんまと当たり、彩香が過去ポストで昔のメルアドに送信した忠告メールによつて、現在の歴史が変つてしまつてゐたのだ。
 配役残り、二作続けてトメを譲つた横山みれいは、多分寿退社済みの彩香が愛妻(予)弁当を届けに向かつた司と、見るから怪しげに逢瀬するバツイチ子持ちの先輩・重森紀子。「本気の恋でも潔く身を引くのが年上女の心意気」が、男をオトす必殺の殺し文句。クローゼットの中からラストに文字通り飛び込んで来るケイチャン(ex.けーすけ)は、ドッペルならぬドッピュルゲンガー。斯様な駄中の駄洒落をどさくさ紛れでも何でも形にし得るといふのも、確かにさうさう得難いタレントではある。
 改めて近年ナベシネマを振り返つてみたところ、降順に此岸と彼岸を跨いで全身整形生前の記憶を移植した瓜二つロボット時空を超える女忍者と来て、日本消滅回避を賭けての神と悪魔に板挟み。フィルム最終作にナベシネマズ・エンジェルも大量動員しての処女の難病ものは比較的おとなしいにせよ、相変らず易々と時空を超えてみたり衝撃のディストピア結末を叩き込んだ上に、人類の存亡を巡り天女とセックスどストレートなインセプション既視感もなくはない人造人間悲譚、涙腺を決壊させるみるくの恩返しと、見事に連なる種々雑多に飛び道具を満載したファンタなフィルモグラフィーにはクラクラ来る。完全に日常の地べたに止(とど)まる物語となると、オッパイ姉妹の恋愛ドタバタを描いた2013年第一作「姉妹相姦 いたづらな魔乳」(2013/主演:ティア・眞木あずさ)まで、何と十二作遡らなければならない徹底した軌跡には圧巻の言葉しかなく、更にその前作では相変らず地球壊滅の危機を迎へてゐたりする。ここいらで2009年第一作「しのび指は夢気分」(主演:夏井亜美)以来、エース格といふポジションも踏まへるならばなほさら大概御無沙汰の、ナベ痴漢電車を出発進行してみせるのは如何か、痴漢電車の基礎理論「ベッドの上で起こることは、全て電車の中でも起こる!」を定立したのは渡邊元嗣と山崎浩治のコンビなんだぜ。
 そんなこんなで渡邊元嗣2016年第二作は、送信速度が正しく光速を超えるメールが巻き起こす、四角だか五画だか六角関係。うん、何時も通りのナベだ。要はヒロインの打算が誤算を生む利己的極まりない展開ながら、司と凜香も同じ穴の狢に据ゑ彩香の現金さを薄める方便も有効に、“いまを選ぶのは、未来のわたしぢやない”と彩香に臆面もなく撃ち抜かせるエモーションを、しみじみと爽やかなオーラスで補強し堂々と成立してのけるのが、一途な真心に熟練した技術の伴つたナベシネマの強さ。瑣細はかなぐり捨て、一撃に全てを賭ける凄味には、渡邊元嗣の娯楽映画に対する鉄の信念が透けて見える。時の流れまで含め縦横無尽に入り組むお話を入念に進行する代償に、主演女優でさへ二回、二番手三番手はともに一戦きりと回数こそ確実に少ないものの、その分結構エグく攻める濡れ場は何れも腰から下への訴求力が高く、裸映画的にも遜色なく安定する。一見さうは見えない里美まゆもいはゆる脱いだら凄い系で、巨乳部を三枚揃へた三本柱は眼福眼福。実は修平にも過去ポストが着弾してゐた、馬鹿丁寧なパラドックスよりも、絵馬を通して過去の自分からのメッセージが届く方が寧ろ豪快な力技ともいへ、さういふ些末な野暮はいひない。身勝手な右往左往を無理から美しい帰結に引つこ抜くパワー系の一作を、ドッピュルゲンガーが一旦ガッチャガチャに散らかす如何にもナベシネマらしいラストを、胸に染み入るオーラスで再度締め括る構成は矢張り心憎い。

 唯一の心残りは、脊髄反射で内トラが予想された、凜香に言ひ寄る童貞デブ上司役の永井卓爾の不発。いや、蛇足・オブ・蛇足に過ぎないのは判つてゐる。


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 「武蔵野夫人の唄 淫舞」(昭和53/製作:ユニバースプロ/提供:東映セントラルフィルム株式会社/監督:渡辺護/脚本:高橋伴明/企画・製作:向江寛城/撮影:笹野修司/照明:森久保雪一/音楽:飛べないアヒル/編集:田中修/助監督:成田裕介/監督助手:鈴木敬晴/撮影助手:長井勝人/照明助手:柏城志朗/スチール:田中欣一/録音:東映撮影所録音部/現像:東映化学《株》/出演:北乃魔子・梓流香・椙山拳一郎・鶴岡八郎・下元史朗・永田道子・大塚淳子・東あき・久保今日子・波田夏樹・村上久子・橘美誇・豊島六郎・堺竜次・鈴木英雄・杉佳代子)。出演者中、梓流香・永田道子・大塚淳子・波田夏樹・村上久子・橘美誇・堺竜次・鈴木英雄は本篇クレジットのみで、逆にポスターには名前の載る川口朱里と藤俊介が本クレには見当たらない、誰なんだ藤俊介。更に椙山拳一郎と下元史朗が、ポスターには杉山挙一郎と下元史郎。よくあるパターンともいへ、出入り含めフリーダム過ぎる。企画と製作の向江寛城は向井寛の、出演者中豊島六郎は渡辺護の変名。提供に関しては、実際にはエクセス。
 普通に三角マーク開巻、料亭か何かか、和風の邸宅から川口朱里が出て来る。但し川口朱里の名前は本篇クレジットに見当たらないゆゑ、限りなく確信に近いビリング推定で梓流香といふのが、川口朱里の別名義か。一方、四日間家に帰つて来ない夫・佐藤裕介(椙山)のスナップを前に、ナミコ(北野)が悲嘆に暮れる。ところに、裕介の妹で、客に朝まで捕まつてゐた女子大生ホステスのマリ(梓)が訪ねて来る。ところにところに、警察から裕介が自殺した旨の電話が着弾、ナミコが愕然としてタイトル・イン。
 小田原湯本の現場に入つたナミコは、刑事(豊島)から裕介が心中したことと、女は助かつたこととを聞く。漫然と沈むナミコに、ユリは死に損じたか生き残つた女・タケダユミコ(杉)が水商売の女で、ケロッと店に出てゐる事実を告げる。ナミコは佐々木裕子と名前を偽り、ユミコの店で働き始める。
 配役残り下元史朗は、ユミコの店のバーテン。遅ればせながら今回初めて気がついたのがこの人、調子を外して歌をがなる声が凄くサマになる。鶴岡八郎は客としてマリに垂涎する、裕介生前の上司で営業部長の大林オサム、実はユミコに店を持たせたパトロンでもある。ここから先は火に油を注いで雲を掴むがポスター掲載推定で東あきと久保今日子が、裕介とユミコが心中したホテルの竹村祐佳似の仲居と、交通事故に遭ひ左足を骨折したユミコが入院する玉井病院の、岸辺シロー似の看護婦か、何れが何れかは知らん。残りはホステスが五人もゐたかなあとは疑問を残しつつ、大体ユミコの店の店内要員―ほかには豊島刑事の連れの駐在―だと思ふ。
 東映セントラルフィルム(昭和52‐昭和63)が主に獅子プロ(ex.ユニバースプロ)に外注する形での、成人映画レーベル「東映ナウポルノ」。今年になつてエクセスが回し始めた東映ナウポルノの、第一弾「夜のOL 舌なぶり」(昭和56/監督・脚本:宗豊/主演は朝霧友香でいいの?)は、勿論網を張つてゐたので確か素通りした筈の地元駅前ロマンに、「舌なぶり」が八幡は通称前田有楽に来るのと同じタイミングで―厳密には駅前は二週間番組のため一週早く―着弾した第二弾。因みに渡辺護的には、昭和53年全十四作中第七作。幾度と繰り返した雑感で恐縮でもありつつ、量産型娯楽映画が、本当に量産されてゐた時代が麗しい。
 何気に実に凡そ四十年後ともなる今の目からすると、正直真綿色したシクラメンほど清しくモッサリした主演女優の容姿に連動するかのやうに、サクサク懐に飛び込んでおいて、前半復讐譚の足取りは遅々と特段進みもしない。リベンジャーの相を隠し、ナミコ改め裕子が病室でユミコの介護に当たる辺りから、漸く重い腰を上げ始めるものの、直截な話北乃魔子と杉佳代子がパッと見ではどちらが実年齢が上なのか全く判らない中、少し前の泥酔したユミコを介抱するナミコが、杉佳代子の体を捕まへてこの醜い体と心中罵つてみせるシークエンスは、画面(ゑづら)的に甚だしく成立に難い。ところがモタモタ仕事をしないヒロインに対し、川口朱里が飛び込んで来るどんでん返しが切れ味鋭く決まる。決まつたかに、一旦は思へ。その時点で文字通り十二分余した尺で蛇に足でも付け足す気かよと思ひきや、杉佳代子が点火する二段目のロケットが土壇場で噴射。依然といふか矢張りといふか、相変らずポケーッと気の抜けたラスト・ショットではあれ、鮮やかな幕引きはクリアな後味を残す。


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 「甘い罠」(昭和38/製作:東京企画/配給:宝映/監督:若松孝二/脚本:峰三千雄/撮影:門口友也/照明:磯貝一/出演:睦五郎、香取環、五所怜子、鈴木通人、岡剛、渡辺崇、内海賢二、市川弘子、ジャック・スチュアート、竹田公彦)。脚本の峰三千雄は、少なくとも今回は若松孝二の変名。
 若松孝二(2012年没)の生誕八十年を記念して、デビュー作が公式につべで公開された。但し82分あるらしい元尺に対し、収集家から寄贈された現存するフィルムは―恐らく小屋に切られた後の―54分のみ。
 竹田公彦の目のアップで開巻、街景に劇伴が入る。続けてグラサンの睦五郎登場、雑踏の画と睦五郎を行き来しながらナレーションが起動、したかと思ひきや。早速ナレーションの途中であるにも関らず、ズッタズタ入る鋏に頭を抱へる羽目に。大意で紳士面した悪党による都会の誘惑に御用心といつた、一応結果論的にはアバンで主題を述べたナレーションを早口どころでなく八艘飛び風に駆け抜け、更なる瞬間移動感覚で鈴木通人以降のキャストと監督―だけ―クレジットが高速通過する。よつてそれ以前のビリングは適当である上に脱けがあるやも知れず、もしくは後述する懐刀と警官が各々クレジットされてゐた場合明らかに足りない筈で、そもそもタイトルさへ入らない。先が思ひやられるといふか、三分の一切つてゐるのだからそれも至極当然の話でしかない。
 気を取り直して波打ち際から逆パンすると、チューするカップル。キスすら一旦は拒んだ栗山ヨーコ(五所)は、志村吾郎(竹田)のそれ以上の求めを拒む。結婚するまではといふヨーコに対し、収入が低く安アパートを借りることもまゝならぬ吾郎は臍を曲げる。吾郎のカブにノーヘル二尻で走りだしつつ、結局二人は仲違ひ、ヨーコは一人で歩き始める。一方、白人の外人客を取つた島村カオリ(香取)を要は囲つてあるデラックスなアパート―劇中ママ―を、売春組織のボス(睦)が訪ねる。栗原良似の懐刀(源吉で鈴木通人?)に運転させ女々(一人は市川弘子)を集金して回つたボスは、車の中からヨーコに目をつけるも、その日は身持ちの堅いヨーコにフラれる。ヨーコとカオリはビージーの同僚で、カオリの羽振りのよさに憧れるヨーコは―カオリの―夜の働き先であるバー「あげいん」を覘きに行き、そこでボスと再会する。
 配役残り岡剛と渡辺崇は、一服盛られボスに監禁されたヨーコを、輪姦する子分AとB。あの内海賢二な内海賢二は、吾郎の異常に声のいい友人・田島。外人客とされるジャック・スチュアートが、カオリを抱いた白い方なのか、ヨーコを抱かうとした黒い方なのかが手も足も出ない、出番が多いのは後者。
 ストリップ小屋の表か、裸の看板が抜かれるロングならひとつなくもないものの、この時期の、未だ“ピンク映画”といふ呼称が定着してゐたのか否かも今となつては定かではない時期のピンクで、女優部の乳尻は必ずしも拝めない。今作に関しては精々下着姿でゴロゴロ転がつてゐるのが関の山で、一応最もハードといへばエクストリームな、ヨーコをボスが手篭めにする件。その一部始終ズバリを見せる代りに、ネオンだの電車だの車列だのを妄りに挿み倒して、徒にカットを割つてみせる風情は微笑ましい。これで果たして濡れ場といへるのかといつた感が強いが、昭和38年的には、これでも木戸銭を落とさせた客の下心を満たす煽情性であつたのであらうか。
 本来ならば、あるいは本当は若松孝二自身の激しい警官憎悪に裏打ちされた警官殺しの映画であるらしいのだが、現存する54分を見る限りでは、何処がどう転べば警官殺しの映画に展開するのかといふ以前に、殺すも殺さないも警官自体が出て来ない。さういふ羊頭を懸けもしない代物を捕まへてどうかういふのも如何な話かとも思へ、然れどもあくまでその限りに於いての全般的な印象としては、直截にいふとどうもかうもない。吾郎が本丸に辿り着く辺りの妙は気が利いてゐなくもないが、基本的に都度進行するシークエンスに表面上以上の意味なり意匠なりは特段見当たらず、二言で片付けると清々しいほどに面白くも何ともない、詰まらなくもないほどに何ともない。尤も、全篇を通して断片的にであれ、兎も角あるいは兎に角三分の二のみでも残つてゐるだけ、冒頭数分以外が未だに出て来ないところをみるに、どうやらかどうにもほぼ完全に消滅してしまつた可能性が高い、ピンク映画第一号とされる大御大・小林悟(1930‐2001)の、「肉体の市場」(昭和37/脚本:米谷純一・浅間虹児/主演:香取環)よりは余程マシなのかも知れないけれど。


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 「制服絶叫 いんらんパニック」(1989/製作・配給:新東宝映画/監督:渡辺元嗣/脚本:平柳益実/製作:伊能竜/企画:大橋達男/撮影:稲吉雅志/照明:田端一/編集:酒井正次/助監督:笠井雅裕/監督助手:小原忠美/計測:佐藤和人/撮影助手:西庄久雄/照明助手:金子高士/スチール:津田一郎/美粧:鷹嶋青子/美術協力:佐藤敏宏/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/音楽:西田一隆 主題歌:“ピンク・ポリス・タイフーン”作詞:川上謙一郎・作曲:西田一隆・唄:荻野目翔子・山口麻美・秋本ちえみ/出演:荻野目翔子・山口麻美・秋本ちえみ・北村舞子・外波山文明・ジミー土田・沢田幻士・中谷慎一・間信博・山本竜二・池島ゆたか・橋本杏子)。
 秘密結社のアジト感覚で、地図の掲げられた暗い一室。ボルサリーノな扮装のハシキョンが、煙草を燻らせ部下の報告を受ける。手下AとBとC(特定不能な沢田幻士・中谷慎一・間信博/声は順に軽く声色を変へた外波文・山竜・池島ゆたか)が城南・城東・城北各地区の地上げの完了を報告、但し残る城西地区は、移転構想が中途で頓挫した月見署が邪魔で手をこまねいてゐた。菊の御紋を懼れもしない、女ヤクザの有田かのこ(橋本)が地図上の月見警察署にキスマークをつけると、トーストを咥へた荻野目翔子が婦警の制服を着ながら走る、いはゆる「遅れちやふーッ><」なロングにビデオ題「ピンク・ポリス・タイフーン」でタイトル・イン。クリシェもダサさにも一瞥だに呉れるでなく、ポップなイメージを一直線に叩き込んで来るナベの、多分当人は意識してゐまいダイナミズム。異動初日に遅刻した桜田未来(荻野目)が、建物は案外ちやんとしてゐる月見警察署に到着するや、男の悲鳴と銃声が。作業着のジミ土が逃げて来て、追ふ掃除婦ルックの秋本ちえみはリボルバーを振り回す。未来に署長室を尋ねられた秋本ちえみは、鋭い視線で振り向きざま署長室の札を撃ち抜き、なほ一層未来の度肝を抜く。この秋本ちえみの振り向きざまのズドンが、量産型娯楽映画のそれこそ果てしない試行の果てに紛れ当たつたか弾き出された、嘘みたいにカッコいい奇跡の名カット。署長室に入れば入つてみたで、咥へ煙草の見るからラーメン屋の出前持ちが署長の鬼俵熊八(池島)。そこにかのこが堂々と乗り込んで来た旨を伝へに飛び込んで来た婦警の倉沢ひとみ(山口)も、ウェイトレスの制服。一同安月給だけでは食へずにバイトしてゐる―熊八のバイト先は満珍軒―とかいふ寸法で、秋本ちえみはオールドミスでトリガーハッピーなこれでこの人も婦警の黒鉄操、ジミー土田は月見署のメカニック・佐々木九だつた。
 配役残り外波山文明は、実は賃貸物件である月見署の地権者・大仁好夫。作中一番いいオッパイの北村舞子は、かのこの懐刀で黒マントで平然と外を出歩く小山久美子。腕は確かな殺し屋らしいが、後に逃走する未来・ひとみ・大仁を追跡襲撃する件では、戯画的なトマホーク、トマホーク・オブ・トマホークともいふべき大斧を振り回す、だから黒マントで。御馴染の退行芝居と、恐らく誰か当代のツッパリ系アイドルの口跡を真似たと思しき山本竜二は、熊八からも平さんと一目置かれる月見署刑事・平塚松太郎。
 店子を射んと欲すればまづ大家を射よとばかりに、大仁を狙ふかのこ一派と月見署が激突する形で物語が進行する渡辺元嗣―勿論現:渡邊元嗣―1989年第二作。昨今ではすつかり常態化してゐるともいへ、AV畑のアイドルを主演に擁し、初めからビデオと連動した企画所以の―幾分―潤沢なプロダクションであつたのか、全員―橋本杏子は一人遊びに戯れるのみで絡みはしないにせよ―濡れ場のある女優部が豪華五人態勢。尤も上へ下へと終始ガチャガチャ大騒ぎしてゐる内に、それぞれジミー土田と池島ゆたかとしつかり絡む秋本ちえみと北村舞子以外の三人は、何れもノルマごなしに終つてしまつた感は否めない。とりわけ、何時まで経つても脱ぐ素振りを窺はせなかつた主演女優の温存ぶり、より直截にいへばさんざ出し惜しんだ末の、持ち腐らせぶりは結構考へもの。一見なかなかこれといつた相手役の気配すら見当たらなかつたのが、よくよく考へてみるまでもなく、初期ナベシネマにあつて、未来が結ばれるのは―周囲にさういふ名前の男がゐれば―松太郎と相場は決まつてゐる。さうはいへ、その導入はあまりにも唐突も通り過ぎて粗雑で、そもそも、拉致された大仁とひとみの捜索に未来と松太郎が向かふ。事そこに至る過程も踏まへると、いはゆるバディものの当事者二人が結ばれる展開を目したものなのかも知れないが、それにしては山竜を何時も通りのメソッドで好きに暴れさせ倒した結果、それらしき雰囲気の欠片さへ醸成されない始末。全体的な基調としては如何にもナベ的なチープで雑多な賑々しさでもありつつ、裸映画的にはビリング頭に開いた大穴に、如何せん首を縦には振り難い釈然としない一作ではある。

 最後によく判らないのが、尺がjmdbのデータでは58分とあるのに対し、今回DMMで見たオーラス主題歌が流れるバージョン―別ver.があるのかどうかも知らないが―だと十分弱長い、即ち一時間も優々跨ぐ。節穴の素人目には、58分で収めるには相当ズッタズタに切る羽目になるやうに映る。果たして、平成元年の小屋では“ピンク・ポリス・タイフーン”が聴けたのであらうかなからうか。未来が学生時代は女の子だけでロックバンドを組んでゐた、とひとみに過去を語る件は、PPTへの伏線と思へなくもないものの。


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 「熟☆ギャル☆白書 極楽仁王勃ち」(2016/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:矢澤直子・巽亮人/照明助手:広瀬寛巳/スチール:本田あきら/録音:シネキャビン/効果:梅沢身知子/仕上げ:東映ラボ・テック/協賛:GARAKU/出演:立花はるみ・広瀬うみ・中田暁良・竹本泰志・佐倉萌)。
 街中、キャリーバッグを引いたギャルの野田南(立花)が、背広姿の田嶋涼介(中田)に告白する。カワイコちやんの据膳を頂戴しないとは何事か、整理がつかないだ信じられないだと涼介は逃走。「こんなに可愛くなつて戻つて来たのに」と意味不明の台詞を漏らした南は、所変つて川辺で黄昏る。南が髪を止めた不格好に大きなリボンを解くと、所どころか現世ですらない彼岸の、幽霊活動略して“幽活”面接会場。ドラァグな造形の死神(竹本)が、自身の死を認識してゐない南に幽霊への志望動機を質問する。死人(しびと)臨終履歴で自殺した事実を突きつけられた南は、自死の真相を探る目的で幽霊になることを認められる。万華鏡的なガジェットで自殺当時の状況と、同棲相手とかいふ涼介との一戦を見せられた南が、死神に此岸に放り込まれてタイトル・イン。幽活面接会場、次の順番に見切れる血塗れのデブは当然永井卓爾。全体どんな死に方をしたのかといふ以前に、一体何時まで待たせるのか、早く単独デビューして欲しい。
 仕事を持ち帰らざるを得ない涼介の部屋に、南が現れる。すつたもんだの末に明かされる笑、もとい衝撃の真実。以前の南(佐倉)は“子供の頃から熟女顔”の近年稀にみるレベルの豪快な一点突破で通す元々涼介の幼馴染、兼上京後はルームシェアしてゐた間柄で、涼介に想ひを寄せる南が留学と称して海外で全身整形後、戻つて来たものだつた。帰国当初矢張り涼介に二の足を踏まれ、消沈する南の生気を死神が吸ふ濡れ場噛ませて、相変らず涼介の部屋に南が現れキャピキャピどさくさするところに、三人目の幼馴染にして、兼こちらは元ルームメイトの丸岡翔子(広瀬)が訪ねて来る。何故か翔子には見えない南の存在を確認するべく、翔子が持ち出すギミックがチャーリーチャーリーチャレンジ。映画的に再現が容易である点と、何気な同時代性の両立を果たしてみせたのがさりげなく洒落てゐる。
 立花はるみと竹本泰志の絡みに突入した辺りで気がついたのだが、この期に及んだ気の所為か、シネコンばりにクリアな映像に目を見張つたナベ2016年第一作。御愛嬌な地元駅前ロマンに対して相当いい機材を導入したと思しき我等が旗艦館たる前田有楽。新たにデジタルに移行した、小倉名画座の実力や如何に。
 映画の中身に話を戻すとヒロインが好きな彼氏はあの子が好きで、そんなあの子は百合を咲かせる。ただでさへ一筋縄では行かない上に、トライアングルを四人で構成した挙句三途の川まで跨いだやゝこしいことこの上ない三角関係。渡邊元嗣は山崎浩治とのタッグで複雑極まりない間柄を、観客にさうとは知らせぬお気軽な仕上がりに構築した上で、丹念に繙く。やがて佐倉萌が撃ち抜く、重量級のエモーション「南は翔子のことが大好きだよ」。派手な出オチかと頭を抱へさせた破天荒な配役が、この面子でしかあり得なかつたのだとさへ思はせる超絶の結実を果たすや、あとは照れを隠すかのやうなラストまで一気呵成。今なほ映画の美しさと人の真心とを固く信じて疑はないナベの姿が透けて見える、ポップでキュートな、それでゐて肝心要となるとガッチリ泣かせるナベシネマらしいナベシネマ。デビュー以来の生え抜きといふのもそれは当然判らないではないが、大蔵はOPP+に竹洞哲也も兎も角加藤義一の温過ぎて風邪をひきさうな温泉映画を紛れ込ませるくらゐならば、どうしてナベを連れて行かない、エースだろ?


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 「透明人間 極秘ワイセツ」(1989/製作:株式会社メディアトップ/配給:新東宝映画/監督:渡辺元嗣/脚本:双美零/撮影:志賀葉一/照明:田端一/編集:酒井正次/助監督:橋口卓明/監督助手:小泉玲/色彩計測:中松敏裕/撮影助手:鍋島淳裕/照明助手:小田求・中島清/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:浅野しおり・伊藤清美・川奈忍・石原ゆか・早瀬美奈・南城千秋・秋本ちえみ《友情出演》・皆川衆・山本竜二)。撮影の志賀葉一と監督の渡辺元嗣は、現在清水正二と渡邊元嗣。
 長閑な劇伴とともにイメージ開巻、林の中、揃ひの凄い水玉のハットとワンピースの主演女優が「お父さあん!」と手を振る。駆け寄る様を暫し追ふと、背中をこちらに向け片手を木に突いた男が。背中に抱きついた、浅野しおりの尻を男は撫でる。男は父親ではなく、井沢芯平(皆川)だつた。「何て夢だつたのかしら」と夢オチで目覚めた、婦警の金谷美子(浅野)が濡れてゐるのに困惑すると、街の遠景にビデオ題「透明人間 極秘猥褻 浅野しおり」でタイトル・イン。古くはジミー土田や―それでも少し遠いけど―近年では十日市秀悦、目下長く空位が続く―なかみつせいじでは、チと色男の残滓が残り過ぎる―三枚目主人公の不器用な純情を描くのは、アイドルなりファンタ路線の影に隠れた渡邊元嗣もうひとつの十八番テーマともいへ、華なり色気の欠片もなく、最大限によくて親近感しか湧かない皆川衆は、如何せん一篇の劇映画を背負はせるには些か厳しいか。
 仮称「井沢生花店」、看護婦の早苗(川奈)が買はうとした鉢植ゑを、店員の敬介(南城)は豪快に半値に値引きする。敬介がデレデレ早苗の手を撫でてゐると、婦警志望の女子大生・春子(早瀬)を伴つた美子が芯平を訪ねて来店。今日も芯平は店を敬介に任せ、今日は101を遥かに凌ぐだとかいふスーパー発毛剤の発明に自室兼研究室で没頭してゐた。となると当然とでもいはんばかりの勢ひで、ボガーンとドリフな爆破オチ。その弾みで出て来た、御殿医まで務めた先祖・井沢千白が記したとの巻物を手にした芯平は狂喜する。所変つて時制も飛んで、ズンチャカした劇伴とともに電車。浜野佐知みたいな丸グラサン、小脇にモルモン書を携へ、松田優作の狂人芝居みたいなメソッドの山竜起動。痴漢歴三十年を誇る遠藤龍太郎(山本)は、美子と多分看護学校教師・北島沙也香(石原ゆか/石原ゆりと名前を混同し、混乱してゐたのは内緒だ)に一対二の同時痴漢を仕掛ける。ザクザク点火し脱ぎだした沙也香に、美子の手錠が誤爆する。巻物を繙く芯平が秘薬の完成には女の愛液が必要であることに辿り着く一方、在野発明が盛んな世間らしく、龍太郎も、といふか龍太郎は一足先に“催淫音波発生機”を完成させる。催淫音波発生機!因みにその原理は、①音波が骨盤と共鳴、②マイクロ波が性腺を刺激、③遠赤外線で体内から発熱させる。と、何となくしつかりしてゐる。
 配役残り伊藤清美は芯平が配達を届ける、術後自宅療養中の常連客・ゆりえ。川奈忍と石原ゆかで頭数が足りてゐないでもなく、カメオの意義が微妙な秋本ちえみは、敬介と芯平が各々透明化したのち時間差で忍び込んだ月見町総合病院女子寮、煙草の自動販売機の前にゐる女。
 関孝二の「痴漢透明人間」戦の最中辿り着いた、渡辺元嗣1989年第四作。芯平がゆりえ宅から戻つたところ、大胆なのか単なる底の抜けた粗忽者なのか、恋人関係にある春子と敬介は芯平の部屋にて真最中。事後待てよと立ち止まつた芯平は、クズ籠のチリ紙から春子の愛液を採取する。ところが春子が―当たり前だが―非処女であつたため、本来目指してゐたものとは別なものが出来上がつたのが透明薬で、以来処女の愛液を求め奔走するといふのが本筋。なほ今作が採用した透明人間表現は、無論ナベらしく虚空に何某かがプカプカ浮くプリミティブ特撮を併用しつつも、主には痴漢透明人間同様案外十全な光学合成。但し、痴漢透明人間が潔く諦めたボディ・タッチの不自然さを最も工夫を欠いた形で回避しようとした結果、男優部のみならず女優部までもが透けて見える諸刃の剣の直撃を被弾してみせてのけるのは、流石ピンク映画といふべきか、流石ナベシネマといふべきか。そこに何はともあれ独力で催淫音波発生機なる超装置をロールアウトしたとなると、紙一重の両側を併せ持つ怪人の山竜をも飛び込んで来るとあつては、正直手捌きのシャープさには難のある渡邊元嗣ゆゑ、どうしても全体的にトッ散らかるきらひは否めない。反面、ランダムな時間経過で再可視化する痴漢透明人間に対し、射精すると元に戻るといふのは作劇上のメリハリ込みで判り易く、ゆりえの造形を本線に上手く合流させた上で一幕に綺麗なオチをつける、ゆりえが自宅療養してゐた所以はスマートに話がよく出来てゐる。何より素晴らしいのは、敬介が先に気づいて、後々芯平が最終的に確認する。売り物を枯らせてしまふ、何てこともない枝葉としか思へなかつた、さういふ風にしか見せなかつたエピソードが、締めの濡れ場に文字通り花を添へる美しい伏線の結実には、何と洒落た映画なのかと全力で感動した。


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 「愛Robot したたる淫行知能」(2015/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:矢澤直子・樋口覚・船越繰未/スチール:本田あきら/録音:シネキャビン/効果:梅沢身知子/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/タイミング:安斎公一・小荷田康利/撮影機材:有限会社アシスト/協賛:GARAKU/出演:彩城ゆりな・夏希みなみ・横山みれい・津田篤・山本宗介)。
 生活感・仕事場臭ともに欠く部屋にて、彩城ゆりなが―古臭い絵柄の―マンガの下書き中。机上には原稿用紙と画材のほかに、銀紙で折られた折り鶴がちらほら。津田篤とのスナップ抜いて当の真弥(津田)が、自身が担当編集を務めるマンガ家の霞(彩城)に紅茶を淹れる。真弥発案のロボットと人間が恋に落ちる企画の資料を渡しがてら、二人は新連載が起動に乗つた折の、結婚を約束する間柄にもあつた。開巻速攻婚前交渉もオッ始めかねないラブラブな雰囲気から一転、遠目の路上で、何事か霞と真弥が激しく諍ふ。霞がフレーム左袖に捌けるや、聞こえよがしに車が暴走、何かしらを撥ねるSE。車道に散乱する原稿用紙、暗転ならぬ赤転してタイトル・イン。アバンは今回のナベシネマが、シリアス路線である旨を告げる。
 明けて一ヶ月後、頭には包帯を巻いた霞が自宅で目覚めると、傍らには白衣の山本宗介が。同じく白衣の津田篤を伴つた、真弥の学友にして、往診医との尾崎(山本)は衝撃的な事実を告げる。真弥は交通事故で死亡、白衣の津田篤は霞の治療目的に真弥の記憶をインストールしたセラピー・ロボット、オリジナルではないといふ塩梅でダッシュだといふのだ。何時の間に、あるいは何処から一人の人間の記憶をデータ化したのかよ、とかいふ疑問は脊髄で折り返して体外に排出せれ。ひとまづ、霞が我儘を振り回すダッシュとの生活。霞に笑はないのを指摘されたダッシュが近所の公園でぎこちなく笑顔の練習をしてゐる様子を、久美子(横山)がオッカナイ形相で凝視する。
 配役残り、デジエク第五弾「女と女のラブゲーム 男達を犯せ!」(2014/監督:松岡邦彦/脚本:今西守/主演:水希杏)の二番手から年と会社跨いで主演に昇格した彩城ゆりな同様、いまおかしんじ電撃大蔵上陸作―次はないのかな?―「帰れない三人 快感は終はらない」(涼川絢音・工藤翔子とトリプル主演)に続きピンク第二戦の夏希みなみは、ダッシュが機能を停止した濡れ場込みのどさくさの末にGARAKU魂を爆裂させるメイド衣装で飛び込んで来る、三年前に死別した尾崎亡妻の姿にカスタマイズされた、この人?もメイド型ロボット・恵。だから妻と同じ外見のロボットにメイド服を着させる、尾崎の嗜好に入れるツッコミは脊髄で折り返せつてば。
 エースにしては案外少ない、渡邊元嗣2015年最終第三作。ど直球な公開題ながらロボット三原則が欠片たりとて参照されるでなく、寸分違はぬ外装のロボットが人間と共存する世界観といふ以外にはアシモフとも、ウィル・スミス主演の映画版(2004/米/監督:アレックス・プロヤス)とも特段関係はなからう。寧ろ直近では2013年第三作「愛液まみれの花嫁」(主演:樹花凜)以来となるロボナベは、先に登場する三番手が上手い具合に隠された真相の存在を予感させる、サスペンスに一旦は主眼が置かれる。折り鶴を折る真弥は、口癖のやうにかう繰り返し投げる「祈りを込めて折れば、想ひはきつと通じる」。祈りを込めて撮れば、想ひはきつと通じる。さう言ひ換へるならばそのまゝナベシネマの信念と受け取れる文言ともいへ、十字に交差するどんでん返しが火花を散らす謎明かしは、片側が結構無理が大きいのもあり、この手のお話か幽霊譚にありがちな予想可能性を、必ずしも捻じ伏せるものではない。据ゑられた膳は喰つておいて、尾崎は恵に鳴海昌平ばりの捨て台詞を投げる。2009年第三作「愛液ドールズ 悩殺いかせ上手」(主演:クリス・小澤)に於いては映画の奇跡で美しく昇華する、作られし者の悲劇なり、作る側の傲慢さが掘り下げられるでもない。女優の裸を美しく押さへることに全振りする、デジタルのクリアな果実は見所とはいへ反面始終は薄味であるものの、ピンク映画的には主要モチーフでもある喪装の投入含め、無常観と表裏一体のある意味永遠の思慕が叩き込まれるラストは、雌雄は決したと高を括つた早とちりを覆す、それなりに深い余韻を残す。理に落ちた展開に足を引かれ、祈りを込めて撮つたからといつて想ひがきつと通じたとは行かないまでも、最後の最後に粘りを見せる一作ではある。
 備忘録< 本妻と別れろ別れられないの痴話喧嘩の最中に、久美子の車に轢かれ霞死亡。以来自身をロボットと思ひ込み精神を閉ざした真弥を治療する目的の、霞がダッシュ>>オーラスは真弥の没後百年、尾崎は五十年の墓参に各々喪装で訪れた二体のロボットが交錯


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 「女同士の痴戯 むせび泣き」(1995『濃密愛撫 とろける舌ざはり』の2007年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:渡邊元嗣/脚本:五代暁子/企画:中田新太郎/撮影:清水正二/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:羅門ナカ/監督助手:菅沼隆/撮影助手:長谷川卓矢/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/出演:林由美香・吉行由実・貴奈子・橋本杏子・山ノ手ぐり子・しのざきさとみ)。久し振りにつきいはずもがなを、助監督の羅門ナカは、いまおかしんじの変名。撮影助手の長谷川卓也ではなく卓矢は、本篇クレジットまゝ。出演者中、山ノ手ぐり子は本篇クレジットのみ。
 タイトルはオーラスに、田舎駅、風見まりえ(林)が降り立つ。線路をホテホテ歩き始めたまりえは、一旦追ひ抜いた女・曾根崎透子(しのざき)と、暗めの風情に入水を図つたものかと観客目線では思ひかけながら、透子が川に帽子を落とし窮してゐるところに再会する。宿を取つた二人は本格的な百合を開花、互ひにビアンである旨をカミングアウトする。心臓を患つたまりえの姉・忍(橋本)が、裸は見せずに顔だけ見せる―まりえの―短い帰省を経て帰京したまりえと透子は、まりえは絵本作家、透子はダンサー。各々の夢を追ひ駆けられてゐることを条件に、三ヶ月後の再会を約し別れる。
 配役残り吉行由実が、まりえにはスポンサーなりマネージャーと言葉を濁す、透子のパートナー・由香里。実際には婚約者に裏切られボロボロになつてゐたのを救つた縁だか恩とやらで、透子をレズビアン・バーでストリップさせる。その際の扮装がいはゆる「愛の嵐」のアレなのは、当時的には仕方なさの範疇にギリギリ納まるのかも知れないにせよ、この期に及んだ今の目からすると正直いい加減こそばゆい。それはさて措き透子と由香里が咲き誇らせる、巨山が四峰並んだ大輪の百合は圧巻。ボーイッシュな造形がこちらもむず痒い貴奈子は、こちらはまりえの同棲相手・久美。イコール五代暁子の山ノ手ぐり子は、まりえが絵本を持ち込む編集者・葉月。
 本数自体からマッタリしてゐた時代、渡邊元嗣1995年最終第三作と―残りは新東宝とENK薔薇族―この期に及んで駅前にて邂逅。何だかんだで結局約束の日の一年後に漸く、まりえと透子が再々会を果たすまでの物語。何よりユニークなのが絡みは全て百合畑に回収し、劇中男が見切れもしない点、正しく百合族映画といつた趣がある。それは兎も角、キレを失したナベにとつてベタな展開は容易に平板なダルさに堕し、三十路前にして不思議なほど美しく輝き始める林由美香も未だリファインに遠い。の真似事を禁じられたお姫様が、月明りの下動物たちにダンスを披露する。まりえが透子をイメージして描いた劇中童話『おひめさまのダンス』の件は渡邊元嗣らしい渾身のエモーションを撃ち抜きかけつつ、全般的にはモッサリした印象に尽きる一作。まりえと久美の組み合はせで濡れ場を締めた後に、諸々の顛末込みともいへまりえと透子の再々会で正直漫然と尺を喰ふ、工夫を欠いた構成も裸映画的には地味に厳しい。


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 「女忍者 潮吹き忍法帖」(2015/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:波路遥/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:宮原かおり・小西楊太・樋口覚/編集助手:鷹野朋子/スチール:津田一郎/効果:梅沢身知子/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック/タイミング:安斎公一・阿久津亮太/協力:株式会社アシスト/協賛:GARAKU/出演:つぼみ・五十嵐しのぶ・津田篤・ケイチャン・西藤尚《愛情出演》・横山みれい)。
 何処ぞの山奥、蜩牛一族の里。くノ一・伊武(つぼみ)と、師匠・蜩牛珍宝斉(ケイチャン/a.k.a.けーすけ)の―普通の―忍術の修行。一汗かいた後、夜の稽古の支度を言ひ渡された伊武が、溜息ひとつついてタイトル・イン。珍宝斉が到着するのを待ちきれない伊武が秘裂に宛がつた横笛を破砕すらする、お定まりのくノ一夜の稽古。“もみ”と“ツボ”のチープな応酬を経て伊武が達するや、地震の如く周囲は轟き里の山を紫色の光芒が貫いた。チンコ型の道祖神上空に出現した、マンコ風の時空の裂け目を前に珍宝斉が「また現れよつた」と固唾を呑む一方、数百年の時を越え二十一世紀に彷徨ひ込んだ伊武は、消えゆく風景をカメラに収める、本多雅人(津田)と出会ふ。蜩牛の山は、デベロッパーである雅人の父親が仕掛ける再開発によつて、消滅の危機に瀕してゐた。
 配役残り、2013年第四作「淫Dream まどろむ白衣」(主演:大槻ひびき)から、ぼちぼちしたペースでキャリアを積み重ねるピンク第四戦の五十嵐しのぶは、後妻の雅人義母・ゆたか。考古学者といふ設定にかつて蜩牛が忍者の里であつた歴史を投げる意味しかないのはいいとして、下手にプロにしてしまつた以上、山で見つけた道祖神を自宅に持ち帰つてゐるのが地味に藪蛇な大問題。今やトメの座が完全にサマになる横山みれいは、本多開発の社長秘書にして、社長即ち雅人の父・与志郎(珍宝斉と遺伝情報を共有する所以は軽やかにスッ飛ばして済ますケイチャンの二役)の浮気相手・山川あかね。結構際どい衣装で登場する西藤尚は、おてもやんなメイクで出オチを滑らせるデリヘル嬢。
 渡邊元嗣2015年第二作は、手間がかゝるのかそもそも安普請が通さない無理なのか、案外珍しいくノ一ピンク。ここで近年の女忍者ものの歴史を今世紀分からザックリ振り返つてみると、PINK‐Xプロジェクト第三弾「につぽん淫欲伝 姫狩り」(2002/監督・脚本:藤原健一/主演:西村萌)には、舞台は戦国時代なれど厳密あるいは明確には忍びの者は出て来ない。した場合最新もしくは事実上最後の本格時代劇「好色くノ一 愛液責め」(2003/監督:かわさきひろゆき/脚本:かわさきりぼん/主演:麻白)以外となると、今作同様くノ一が時空を超えて飛び込んで来る現代劇、「くノ一淫法! おつぴろげ桜貝」(2004/監督:国沢実/脚本:樫原辰郎/主演:美咲江梨)くらゐしか見当たらない。あともう一本、純然たるピンクよりは幾分バジェットも大きいと思しき、艶剣客第二作「艶剣客2 くノ一色洗脳」(2011/監督:藤原健一/脚本:能登秀美/主演:吉沢明歩)も一応書き添へておく。
 一度目の現代行は夢で片付けた上で、珍宝斉の命を受けた伊武は一族の存亡を賭け、雅人の待つ蜩牛の山を目指し改めて時空の裂け目を潜り抜ける。如何にもな大人のジュブナイルが最も弾け―かけ―るのは、与志郎の所在を求め雅人があかね宅に突入するパート。あかねが自ら下着をチラ見させながらの―社長は―「秘書の秘所が大好き」なる駄ギャグに、雅人があかねのワインに蜩牛秘伝の自白剤を仕込む隙を生じさせる地味な妙手と、伊武が雅人に渡したのが自白剤ではなく媚薬で、あかねが口を割るどころかみるみる悶え始める、つぼみにテヘペロさせないのが寧ろ不思議なほどのジャスティス展開には、一旦ナベの天才を確信しかけた。ところが、デジタル化の恩恵が、今回は諸刃の剣。あかね籠絡のために雅人をアシストする伊武が、蜩牛流忍法と称した要は種々の淫技を繰り出す毎に、テッテレー♪と判り易く鳴るアタック音自体は必ずしもデジタル化自体とは関係ないとしても、一々わざとらしく入るテロップが完全にテレビ感覚で、残念ながら履き違へたポップ・センスの限界に興を削がれる。そもそも代り映えしない物語は以降もGARAKU魂が迸る以外には一欠片の捻りにも工夫にも欠き、演出部と撮影部と主演女優が三位一体で一撃必殺の可憐さを撃ち抜くラスト・シーンで大幅に持ち直すものの、ゴールデン・エイジの第二章を長く軽快に走り続ける渡邊元嗣にしては、この程度で首を縦には振りかねる単調な一作である。

 凄いスパンの返り咲きづいてゐる2015年ピンクにあつて、当初誤植かと目を疑つた脚本の波路遥は、女痴漢捜査官シリーズ最終作「女痴漢捜査官4 とろける下半身」(2001/主演:美波輝海/a.k.a.大貫あずさ・小山てるみ)以来のこれまた結構な超復帰。他の脚本家との併用で1997年から四年間のナベシネマ脚本の約半分を担当、目下長く座付を務める山崎浩治のデビュー二作「痴漢海水浴 ビキニ泥棒」(1999/主演:黒田詩織)・「派遣OL 深夜の不倫」(2000/主演:黒田詩織)に際しては共同脚本の形で支へた波路遥といふのは、この期に及ぶのもほどがありつつ渡邊元嗣の変名?


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 「入れ喰ひOL ~大人のオモチャ開発課~」(1997/製作:大蔵映画/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:波路遥/プロデューサー:大蔵雅彦/撮影:下元哲/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:榎本敏郎/監督助手:小泉剛/撮影助手:村川聡・山本寛久/照明助手:小田求/玩具協力:ゴジラや/スチール:津田一郎/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/出演:水乃麻亜子・竹村祐佳・木下敦仁・しのざきさとみ・久保新二)。配給とも大蔵映画ではなくオーピー映画提供としたのは、七色と金の王冠ではない、白黒OP開巻に従つた。
 街景を適当に舐めてタイトル・イン、創業六十年の玩具会社「運天堂」にボガーンとかポップな爆発音が轟く。激怒した社長の藤木(久保)に遣はされ専務の星ゆかり(竹村)が向かつた商品開発部では、久保明夫(木下)とケイ(水乃)がイレイザーヘッドに顔は煤けさせる要はドリフの爆破オチ。藤木に厳命された十倍長持ちする充電器の開発に取り組んだ二人は、運天堂を文字通り揺るがす大粗相を通算二度目に仕出かしてゐた。実は藤木とは男女の仲にもあるゆかりに釘を刺されつつ、久保はケイのいぢらしい視線も余所に、美人専務?に手放しの憧憬を捧げる。
 配役残り、ゆかり役が明らかとなつた時点でポジションが全く読めなくなつたしのざきさとみは、久保が暮らす下宿屋の未亡人女将・あけみ。久保チンと竹村祐佳による色々濃い濡れ場初戦を経て、亡夫を偲んでの自慰であけみが飛び込んで来る奇襲は鮮やかに決まる。三番手―主人公が暮らす―未亡人下宿、これ、案外定石たり得てゐてもおかしくない妙手ではなからうか。しのざきさとみの裸を一頻り見せた上で、結局あけみは達する前に、久保の部屋からガンッガン洩れて来るケイの嬌声に遮られる。久保は自己進化するマスコット・ロボット「はまるっち」を自室にて開発中、どう見てもチンコにしか見えないはまるっちがケイの胸元に忍び込み、悪戯をしてゐたものだつた。その他人影は欠片たりとて出て来ないけれど、身を引く形で運天堂を退職したケイが、ウェイトレス募集の貼紙を見て敷居を跨ぐ喫茶店「葡萄の木」の、担当者の名前が榎本と小泉を足して二で割つた榎泉。
 渡邊元嗣1997年第一作は、デビュー十四年目にして、2002年以降、殊に近年はエースとして常駐する大蔵上陸作。因みに残りは二本で新東宝×国映の一般映画に片足突つ込んだくノ一映画と、ENK薔薇族。
 久保を間に挟んだケイとゆかりの三角関係を絡み込みの軸に、未完成のはまるっちを起死回生の新商品にと狙ふ藤木の姦計が発端となる大騒動。あけみが事後久保に授ける積極臭い人間観含め、一応王道娯楽映画的な枠組が出来上がつてゐなくもない。ものの、時折起死回生のエモーションを撃ち抜きながらも長くマッタリしてゐた時期のナベらしく、全般的には漫然とした仕上がり。兎にも角にも、憧れの高嶺の花が竹村祐佳で、気がつくと何時も傍にゐて呉れたヒロインが水乃麻亜子といふキャスティングが如何せん画的に厳しい。しのざきさとみの濃厚な色香と、単騎でシークエンスを如何様にも転がし得る久保チン十八番の大暴れが見所ともいへ、歴史的な位置づけ以外には、正直あまりパッとしない一作ではある。

 ところで、今作の約二週間後に封切られた関根和美の「痴漢電車 即乗りOKスケベ妻」(脚本:関根和美・樹かず・片山圭太/主演:冴月汐)では、即乗りOKスケベ妻の旦那(樹かず)が開発中の携帯ゲーム機―とエンディング曲―として「おさわりっち」が登場、脊髄から折り返してブームに便乗した感が清々しい。
 重ねてところで、ついうつかりフェードしたのかと思ひきや、木下敦仁が本名から木下順介に改名、目下は占ひ師と並行してロシアに活動の拠点を移してゐる現況には軽く驚いた。


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