真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「いんらん百物語 喜悦絶叫!」(2022/制作:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督:山内大輔/特殊メイクアップ&造形:土肥良成/撮影監督:中尾正人/録音:西岡正巳・大塚学/編集:山内大輔/音楽project T&K/効果・整音:AKASAKA音効/ラインプロデューサー:江尻大/助監督:谷口恒平/制作進行:菊嶌稔章/撮影助手:戸羽正憲・梅田さかえ/河童&蛇神イラスト:土肥良成/特殊メイク&造形スタッフ:大森敦史・山岡英則・大塚汐莉・川口怜/ポスター:本田あきら/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:宝田もなみ・きみと歩実・岬あずさ・川瀬陽太・森羅万象・安藤ヒロキオ・豊岡んみ・西山真来・赤羽一真・折笠慎也・小林節彦)。
 まづ最初に、気づくと2021年は空いてゐたので、再起動後恒例の、大蔵怪談映画の系譜を改めて掻い摘んでみると。恐らく映画を本気で信じてゐる渡邊元嗣が、「おねだり狂艶 色情いうれい」(2012/脚本:山崎浩治/主演:大槻ひびき)でルネサンスの火蓋を華々しく切つたのも、何だか何時しか遠い昔。金田一や座頭市は出て来る、後藤大輔の「愛欲霊女 潮吹き淫魔」(2013/主演:竹本泰志・北谷静香)が早速ズッ扱けたのが、今にして思へば所謂パンドラの箱。画だけは綺麗な加藤義一の「怪談 女霊とろけ腰」(2014/脚本:鎌田一利/撮影監督:創優和/主演:水樹りさ)と、ツッコミの余地ならば無駄にデカい竹洞哲也の「色欲絵巻 千年の狂恋」(2015/脚本:当方ボーカル=小松公典/主演:伊東紅)。名はまだしも、結局実は全く取れなかつたハレ君事件の誘爆を受け、水野朝陽にとつて事実上最初で最後の映画出演となつた、荒木太郎の「色慾怪談 ヌルッと入ります」(2016/主演:南真菜果)で死屍累々の四連敗。実に尺の1/3を費やす長大なアバンで度肝を抜いた、山内大輔の「女いうれい 美乳の怨み」(2017/主演:佐倉絆)が負けはしない程度に連敗を辛くも四で止めつつ、高説は御尤もなこの御仁が、面白い映画を撮つてゐるのを個人的に観た覚えのない。佐々木浩久の「情欲怪談 呪ひの赤襦袢」(2018/主演:浜崎真緒)で一旦、通算成績は一勝五敗一分け。再び山内大輔の「変態怪談 し放題され放題」(2019/主演:星川凛々花)が甘目に見て引き分けにせよ、ある意味最大の問題作、翌年古澤健の「怪談 回春荘 こんな私に入居して」(2020/主演:石川雄也)に至つては、凡そ一切のあやかしなんて登場しやしない、そもそも怪談映画ですらない大概な羊頭狗肉。都合、一勝五敗二分け一没収試合といふのが、当サイト調べでの大雑把な戦禍、もとい戦果である。つか、今年も怪談やつてないのね。降霊もとい、恒例ではなくなつたのかも知れない。
 閑話休題、おどろおどろしい河童の看板で水難事故を注意喚起する河辺に、山咲小春(ex.山崎瞳)を令和ver.にブラッシュアップしたかのやうな三番手が佇む。アイリ(岬)と落ち合つたミツル(赤羽)は、純粋に金欠なのか釣つた魚に餌を与へる気がないのか、そゝくさホテルに直行。跨ぎで突入する、岬あずさのお胸のみならず御々尻も大変麗しい絡み初戦を、轟然と大完遂。事後、依然デートらしいデートをする気のまるでない、クソ彼氏に対し泣き出したリンカを、ミツルは曰くたゞで入れてホラー映画よりも面白いとかいふ、病院廃墟に連れて行く。こゝで、廃病院と来れば「変態怪談」と同じロケ先かと思ひきや、より廃墟みを増した全くの別物件、八潮市元病院スタジオとのこと。各々の幽霊カミングアウトで結果的には木に竹を接ぎがてら、二人は猫の捨てられてゐた痕跡も窺へる、屋内を右往左往。既視感を覚えるメソッドのみで造形された、ガチ幽霊(西山真来のゼロ役目)にアイリ・ミツルの順で闇の中に引き摺り込まれて一転。一応宗教画風の蛇神イラストに三本柱と、山内大輔をクレジットしてタイトル・イン、男優部三本柱までタイトルバックは続く。
 明けて胡瓜を常食する、不思議な雰囲気の転校生・ナツメ(豊岡)の高校時代の思ひでを、安藤ヒロキオが振り返る。のは、「ミサワ心霊研究所」所長・三沢武雄(森羅)が主宰する百物語の一環。参加するのは前職はIT系サラリーマンであつた江口(安藤)のほか、害虫駆除業者の吉井由人(川瀬)。
 配役残り、きみと歩実は江口の妻・マリカ。といふ次第で、きみと歩実(ex.きみの歩美)のマリカ・サーガ第四作。それ以外があるのかよ、なくもないんだな。百物語の舞台ともなる、件の廃墟は神宮寺病院跡地。江口が、あるいは江口は齢をとる割と根本的な疑問を等閑視すると、驚愕のオチに辿り着く江口の話を経て、吉井が神宮寺病院の元院長宅に入つたエピソードを語り始める。ビリング頭にして実に四十分もの長きに亘り温存される宝田もなみが、吉井が仕事で訪れる神宮寺家の、家事手伝ひ・リンカ、漢字は凛花。寝たきり状態にある神宮寺善三(小林)の、義理の娘にあたる。この乳娘、ならぬ父娘。公式のアナウンスはないが榊英雄で封印されたにさうゐない、角屋拓海の「唄へ!裸舞ソング ふれてGコード」(2021/主演:川上奈々美/二番手)に続き宝田もなみが実は二作目。地味にフィルモグラフィの途切れない小林節彦は、竹洞哲也2019年第五作「不倫、変態、悶々弔問」(脚本:当方ボーカル/主演:高瀬智香)ぶり。左肩甲骨の辺りに蛇の墨を入れた看護師、兼神宮寺の愛人・田中フジコは宝田もなみの二役目。堕胎を迫られたフジコが素頓狂なスローモーションでスーサイドする一方、リンカの同じ位置には、蛇の鱗状の痣があつた。西山真来は神宮寺の妻・幸子、リンカの母。それでは何故(なにゆゑ)に、神宮寺がリンカの実父ではないのか。折笠慎也が若かりし三沢、幸子がクロスカウンタ式の浮気に走つた、当時勤務医の三沢がリンカの父親。フジコの死後心身を壊した神宮寺のリタイア乃至クラッシュ後、病院の実権を掌握する野心に走り間男を無下に捨てた幸子を、心中を図り三沢が殺害。自身は死に損なつたといふのが、三沢の来し方。とこ、ろで。劇中百物語の当事者が三人であるにも関らず、並べられた椅子は四脚。吉井が訝しむ四つ目は、怪異譚を百語り終へたのち、降りて来る物の怪をお迎へするための椅子。となると、森羅万象が超絶のモノローグを静かに爆裂させる、三沢の告白含め江口が口を開くまでに、九十七は既に消化済みである旨、踏まへる段取りを設けてゐて別に罰はあたらなかつたのではあるまいか。
 2022年はあれだけ重用されてゐた山内大輔ですら一本きりに止(とゞ)まる、前述した「女いうれい」(2017)と「変態怪談」(2019)に続く三本目の怪談映画。三度目の正直や、果たして如何に。
 兎にも、角にも。大山の如き見事な爆乳を誇る主演女優以下、オッパイを三枚並べた上でなほかつ、電撃の四番手をも飛び込んで来る豪勢通り越して豪快な布陣を、山内大輔の的確な作家性が持て余しや出し惜しみする訳が勿論なく。中尾正人の鋭角な画作りにも加速され、裸映画的には文句なく充実する、ウッハウハに満ち足りる。その、上で。プロローグを半分は回収する江口パートと、本丸に突入する吉井篇。そして三沢がそもそもの謎を明かす、強靭にして完璧な構成を経て。対偶人魚型着包みの大概なプリミティブさは棚に置くと、三沢が彼岸に謝罪を請ふ美しい物語が遂に完成。「色情いうれい」を猛然とパシュートする一撃必殺の感動作が、十年の時を隔て漸く現れた。と、諸手を挙げ、感激しかけたのも正しく束の間。「貴方はまだ嘘をつくのね」の殺し文句こそ切れ味鋭く決まるものの、即座に卓袱台を床板ごと引つ剥(ぺが)す蛇女に劣るとも勝らずショボい猫娘で、折角綺麗に構築された映画が逆の意味で見事に木端微塵。要は多分大蔵から与へられた妖怪映画の御題に愚直か健気に従つた結果、セコい特殊造形とメイクに底を抜かれた割と壮絶な一作。良くも悪くも大勢に影響しない河童は兎も角、猫娘さへ出て来なければ、確かに勝ててゐた筈なのに。寧ろ殺させておけば据わりもよくなつたミツルはまだしも、虚空に浮いたアイリのぞんざいな扱ひには、三番手らしさでもメタ的に酌めばよいのか。猫が化けて出て来た、より直截には出て来てしまつた瞬間の、絶対値は無闇に極大、ベクトルの正負さへさて措けば。
 最終的な各々の去就<リンカは吉井と結婚・マリカは江口に殺害・アイリアバンを駆け抜けゆ・三沢幽霊にズユーッ・江口猫娘に返り討たれカパチョンパ・ナツメはマペトと江口の帰りを待つ>永遠に・ミツユ全裸で逃げゆ・神宮寺顔面騎乗から大蛇にパクーッ


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