閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

十六夜

2009-10-04 22:59:32 | 日々
月は、昨夜よりずっと高いところにあるように見える。
星は西のほうにぽつんとひとつきり。
空全体があかるいので、飛行機雲がはっきり見える。
飛行機から月を見たら、どんなふうに見えるだろう。



録画した映画を見ていた。
珊瑚が外から帰ってきたのに気づかなかった。

台所から、ぱったん、とってん、と断続的な物音が聞こえる。
きなこがマットで遊んでいる音だろうと、気にも留めなかった。

しばらくして…ふと廊下のほうに目をやった。
真鈴が敷居ぎわにすわって、じいっと台所をのぞきこんでいる。
なぜ中に入らないの? 何を見ているの?
そこでようやく異変に気づいた。

台所の床に散乱している薄茶がかったグレイの毛。
素早く物陰に移動した黒い奴は、たしかにうちの珊瑚だが、
うなっている声は低く、まるで黒ヒョウのようだ。
その足元に、猫のものではない耳が見える。
うさぎ。
まだ柔らかい。
離さないのを、無理やり取り上げ、そのまま外に埋めに行く。
月明かりだ。

野うさぎのおとなの大きさではないが、そう小さくもない。
くわえて運ぶにしても、大部分はひきずることになる。
どこで獲ったんだろう。
猫穴の入り口まで、どうやってひっぱり上げたんだろう。

戻ってきたら、テーブルの下で、珊瑚はすでにくつろいでいた。
さすがに相当疲れたようだ。
「さんちゃん」
声をかけたが、次に言うべき言葉がない。
「ほめないからね」
「いいよ、べつに」
やや反抗的な目のまま、長々と身体をのばした。


コメント
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