レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

『ファルコ』新刊

2006-04-29 13:25:37 | ローマ
 リンゼイ・デイヴィスの『密偵ファルコ』の12冊め、『亡者を哀れむ詩』、今月の新刊。1世紀のローマ、ウェスパシアヌス帝の時代、密偵といいつつその実は結構なんでも屋に見えるマルクス・ディディウス・ファルコが、ケチな皇帝に使われて東奔西走するミステリー。ファルコは最初の巻で30才になり、この巻12巻で35才と言っている。親父は昔家出して商売やっていて時々登場する。たくましい母や姉妹たち、山ほどいる甥姪たちに悩まされつつ貧乏暮らしするファルコが、元老院議員のお嬢様で出戻り未亡人ヘレナ・ユスティナと恋におちて、いろいろあっていまは一女もあり。むこうが身分を落として結婚したけど、今回ファルコが騎士階級に昇格したということなのでとりあえずめでたいのだろうな。ヘレナの父上がボロ家を訪ねたとき、娘が自らペンキ塗りしてるので仰天するけど本人はけろりとしているシーンは楽しい。きれいで勝気なヘレナと毒舌の応酬することをファルコは楽しんでいて、そしてメロメロなのもよくわかるのは微笑ましい。
 フィクションに描かれるローマというと、とかく退廃・悪徳のほうが誇張されがちだけど、特権階級だけでなく市井の人々の生活も出てくる点がいい。出番少ないけど皇帝も働いている感じがあるし。
 この巻、物書きのシュミもあるファルコに自費出版の話が持ちかけられるけど、その業者が殺されてしまい、作家たちが容疑者にあがっているーーという話。本作りの様子や、原稿を関係者が批評する場面など興味深かった。
 マエケナスの名前は出てきましたよ、「倒錯者」ともろに言われている・・・。史的根拠はあったのでしょうかね、それとも単にフィクションでのデフォルトなのか。リウィアも言及されます、50ページです。

 ところでこのタイトル、私はいまだに「密偵」より先に「修道士」と出てきてしまう。青池保子ファンでもないのに、シャクだ。
『密偵ファルコ』 1世紀ローマ
『修道士ファルコ』 14世紀ドイツ
『修道士カドフェル』 11世紀イングランド
混乱する人はきっといるだろうな。
コメント (3)
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