レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

ロマンシエ 山羊の角 チャイルド・コレクター

2016-01-28 13:18:41 | 
クリストフ・メッケル『山羊の角』
 図書館の新着本のドイツ作品。
 14才のミックと10才のソリィはホームレス。ホテルのバーで彼らは、「守護天使のブローカー」と称する変な男ランドルフィに会う。彼はソリィの守護天使を奪ってペーター・ミラーというやつに売り払ったと言う。たわごととして聞き流せばいいはずなのに、ソリィはそれを気にして、ランドルフィやペーターを探し回る旅を始める。呆れながらほっておけずに同行するミック。メルヘンめいた不思議な物語。
 ドイツ映画『ノッキン・オン・ヘヴンズ・ドア』も連想した。


原田マハ『ロマンシエ』 小学館
 「きらら」で連載されていたのを途中から読んだので、まとめて読みたいと思っていた。購入して、読んで、図書館に寄贈。好評貸し出し中(2冊で50人以上の予約者)。
 有名政治家を父に持つ遠明寺美智之輔(ミッチとする)はアーティスト目指してパリに留学。心が乙女のミッチは、カフェでギャルソンのアルバイトをしている。常連客の風変わりな日本人女性と知り合うが、それが、ミッチの大好きな人気ハードボイルドシリーズ『暴れ鮫』の作者だった。
 本誌掲載時には、みずき水脈(みお)さんの挿絵およびマンガによる「前回のあらすじ」がついていて、好きな絵でこれも魅力だった。こういうのが単行本に載ることがめったにないのは遺憾なことである。
 ミッチが『アバザメ』にのめりこむその気持ちが、かつての『エロイカ』への熱狂を思い出させて、不思議な懐かしさを覚えた。



ザビーネ・ティースラー『チャイルド・コレクター 上下巻』 ハヤカワ文庫2008年
 ドイツ産ミステリー。
 男の子が誘拐・監禁・殺害される事件がドイツで3年おきに起こり、数年の間があいて次はイタリアで同様の事件が生じる。
 犯人に対する描きこみも細かく、その生い立ちには確かに同情する点はあるものの、どうやって追い詰められていくのかが気になってひきこまれる展開だった。
 主要人物の一人である女性警視が同性愛者で、レズビアンカップルが養子をもらっているという設定は新鮮だった。
 ラストは、・・・・・・よくやった!ざまあみろ!
 犯人の変質者は、『罪と罰』をバイブルとしている自惚れ屋。
 先日、新刊の『『罪と罰』を読まない』を読んだところだったのでいいタイミングとも言える。これは、岸本佐知子、三浦しをん等4人が『罪と罰』を断片的に読みながら内容を推理する座談会、そして読んでからの感想会の本である。清水義範の『主な登場人物』は、チャンドラーの『さらば愛しき人』を巻頭の「主な登場人物」から筋を推理してみるという趣向だったけど、これをもっとつっこんでやってみた感じである。
 ドストだのラスコだのなれなれしい呼び方が愉快。
 『罪と罰』は3回読んだことがあるのだが、また手を出してみたくなるではないか。
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『見えない傷痕』『お菓子の家』『葦と泥』

2016-01-21 13:46:02 | 
 去年から、「英語圏仏語圏以外のミステリーを読もう」とマイ企画を思いついて、下記のサイトを参考にしている。
「アジアミステリリーグ」
どうせ終わることなんてないので焦るのはばからしい。

 その企画からの3作。

サラ・ブレーデル『見えない傷痕』 ハヤカワミステリ文庫
デンマーク作品。
 コペンハーゲンの女性刑事ルイスのシリーズでこれは2作目だそうだ。
 若い女性がネットで知った相手とデートのあとで強姦され、ほかにも同一犯と思われる事件が生じる。
 地味と言えば地味な物語であるが、ネットの普及による新たな危険、支配したがる親の危険などの問題を含んでいる。(被害者の母親がたいへんうっとうしい)


カリン・イェルハルドセン『お菓子の家』 創元推理文庫
 これはスウェーデン産。舞台はストックホルム。
 幼稚園時代にいじめられていた人が、いじめていた連中を殺していく話・・・とは、序盤ですぐにわかることなので書いてもいいだろう。
 目立つからいじめるという理不尽さはどこでもあるのだ。こういうのを見ると、日本人は狭量だ陰湿だと軽々しく言うことがいかに愚かであるかとしみじみ思う。
 このシリーズはまだ2冊出ているのでいずれ読もう。


レーナ・アヴァンツィーニ『インスブルック葬送曲』 扶桑社ミステリー
 オーストリア産。
 ハンブルク出身でミュンヘンで医学を学ぶヴェラは、インスブルックでピアノにうちこんでいた妹のイザベルが急死したことに不審を抱き、イザを追い詰めたのは誰なのかを調べ始める。イザの死の理由はわりに早く判明するが、ほかの猟奇殺人がこわい。




ブラスコ・イバニエス『葦と泥』
 かつて女子高の図書室で読んだ。あの図書室は、新潮文庫、角川文庫、岩波文庫で別に置いてあったことを思い出す。当時岩波文庫でロルカの『血の婚礼』、カルデロン『人の世は夢 サラメアの駅長』、この『葦と泥』を読んで、スペイン文学は血の気が多くて泥臭いという印象を持ったことは覚えているが、この小説がどんな内容であったのかはまったく覚えていなかった。図書館の市外借り出しで再読。
 20世紀初頭の作品。
 バレンシア近くの水郷の村が舞台。パローマ爺さんは村一番の年寄りの船頭、その息子トーニは妻子を持ってから農夫になる。その息子トネットは父・祖父と違って根が怠惰で、船頭仕事も農夫仕事も嫌って家を飛び出し兵士になった。彼の幼馴染の貧しい孤児のネレータはトネットの許嫁扱いされていたが、村一番の美人になって、金持ちの居酒屋の後妻になる。戦争に勝って帰郷してきたトネットは・・・とくるとあとはもう想像がつく。『カヴァレリア・ルスティカーナ』を思い出すな。四季の風習を背景に、普通の、いそうな人々の生活がリアルに描かれ、そして愚かな悲惨な結末にたどりつく。
 同じ作者の、やはり岩波文庫の『血と砂』が、去年図書館の「新着図書」に出てきたとき(新刊ではない)、勝手に『葦と泥』と見間違えた。読んでみたら、まえに私の「スペインイヤー」の際に読んだものだった。あれは児童向けにかなり短縮してあったのだな。このブログでも言及しているが、あのときは作者名が「イバニエス」になっていた。これについて岩波文庫の解説では:スペイン人の名前は、名前+父方の姓+母方の姓、ただし父方姓だけですませることもある。この作家のフルネームは「ビセンテ・ブラスコ・イバニェス」で、当初は「ビセンテ・ブラスコ」を名乗っていたが、ほかの「ブラスコ」という作家と区別するためにあとから「イバニェス」もつけるようになった。したがって略 するならば「ブラスコ」を使うべきで「イバニェス」は誤りであるーーということであった。
 --で、このブラスコの『血と砂』は、闘牛士の栄光と死の物語である。彼は「魔性の女」たる侯爵の姪と恋をするが、この侯爵の闘牛への熱狂ぶりは短縮版にはなかったかもしれない、しかし重要な要素であろう。
 それにしてもこの本、古いので旧字旧かなが読みにくい。それに、主人公の「あっし」「~でさぁ」なんて言葉が抵抗ある。時代劇のヤクザみたい。もうすこしイキにできないものか。こういうのは光文社古典新訳文庫にいれてもらいたい。スペインといえば闘牛!というイメージはやはり浸透しているし、その点でも興味深いと思う。
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マンガ短編についてまとまらないごちゃごちゃ 居間今。2巻

2016-01-16 13:41:59 | マンガ
 mixiで「短編の名手といえば」という記事が紹介されていた。手塚治虫や高橋留美子などの名前が挙がっている。小説家ならば阿刀田高やチェーホフの名前が出てくるところだ。どう区別するのかなんとなくの目安はあるだろうが、私の感覚では、本1冊にできるほどあれば長編扱いしている。
 ではマンガの場合はどうだろうか。
 「ぱふ」の「ベストテン」では、100ページまでが「短編」部門、ただし一挙掲載は長くても短編扱い、というルールになっていた。すると「読み切り」は「短編」とほぼ重なるということになる。しかし、4コマ雑誌の連載が早々に終わってしまったものはなんだろうか、どちらでもしっくりこない。
 そして、たとえ長期の連載でも、一話完結ものは狭い意味での長編とは違うような気がする。『ベルばら』や『緋色い剣』は長編だが、『エロイカ~』はどうも違う。もっとも、あれも初期には一つの話が1回の読み切りであったし、長いものではコミックス3冊ほどになる。
 逆に、一つの話は読み切りでも、それがシリーズ化しているならば「短編」とは言い切れない。
 ごちゃごちゃ言っているが、ごく、ごく、狭い意味で「長編」と納得できるものは、一つの(複数プロットということもあるが)ストーリーで長く続いているもの。区切りがあっても「第1部」「第2部」とそれぞれが充分に長いもの。「短編」の中の短編とは、本当にその話で完結していて、シリーズ化などはしていないもの。そんな気がしている。
 これはいちおうの私見である、もちろん。

 こういう条件にあてはまる、私の好きな短編を列挙してみると、
川崎苑子『夢のむこう』『スノードロップ』『星の庭から』『野葡萄』等
あずみ椋『カウントダウン』『選ばれし者は独り』『生命の樹』
川原泉『Intolerance・・・--あるいは暮林助教授の逆説』
 ほかに遠藤淑子、桑田乃梨子等の名前が挙がる。
 あ、TONO作品も。『カレンのファスナー』にはいっている『王女さまははだか』は最高(と言いながら、タイトルが正確かどうか自信がない。「お姫様」かもしれない、「さま」か「様」か忘れた)。
 「短編の名作」として挙げるには、話にひねりがあって(または、雰囲気に魅力がある)キャラ萌えに頼らないことが私にとっての条件だということなのであろう。

 私の知る黄金時代の「別冊マーガレット」は、全部読み切り(前後編はあった)という原則があった。看板の美内すずえ、和田慎二はほぼ毎回数十ページの面白い作品を載せていた。それに次ぐ位置に河あきら、市川ジュンがいた。思えばたいへんな時代であったものだ。

 読み切りと連載のどちらに重きをおくかは、雑誌の発刊ペースにもよるだろう。週刊誌ならば1回ぶんの少ない連載が多くなるにしても、短めの連載を面白くまとめられる人材を育てておくべきだと思う。「10回」連載は「不人気打ち切り」の最小単位という感じだけど(そうでなかったら失礼した)、10回でもその中で楽しませる腕は貴重なものではないのか。
 人気があれば引き延ばしという制度を私は憎む。雑誌の一部にそういう枠を設けるにしても、看板以外の中期連載で読者をつかむことだってもっと考えてもいいだろうに。
  (私はジャンプ等を読んでいるわけではなく単に噂で憤慨しているだけなので、実情に合っていない偏見があればおわびします)


 もう二つ。

 先日コンビニで、「人気アニメ・マンガのありえないミス200」というシロモノを発見した。『エロイカ~』も出ていたので買った。
 アニメでのひどい作画崩壊ぶりなども挙げてあってある意味悪趣味な本であるが、傾向変わり過ぎのマンガなどはなかなか笑える。ところで『エロイカ~』の説明にはしょうもないミスがある。少佐の登場は2巻からじゃないよ、第2話からだろ。「クラウス大佐」ってなんだよ、そもそも階級名をファーストネームにつけるなよ。

 先月出た『居間には今外国人がいます。』のレビューを貼っておく。
「居間今。2巻アマゾンレビュー」
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ボルジア本

2016-01-11 12:47:22 | 
 もう去年のことだけど、書店の外国文学の棚で読みたいものを数種類発見した、その一部が『ボルジア家風雲録』byアレクサンドル・デュマだった。
 図書館の市外取り寄せを利用して読んだが、この作家にこの題材ならばもっともっとすごくてよさそうなものという感じ。
(美内すずえがジャンヌ・ダルクを扱った『白ゆりの騎士』が私にとっていまひとつであることと似ているかもしれない)
・通常、無能な弟ホアンとして描かれるガンディア公が、人格者の兄フランチェスコとして出てくることがどうにも違和感がある。単にフィクション?それにしては後述の高木作品でもこれを引き継いでいるのがひっかかる。その後、マリーア・ベロンチの伝記『ルクレツィア・ボルジア』を読むと、なじみのある無能なホアンであった。ではやはりデュマのフィクションということでいいのだろうか。
・チェーザレが悪党なのは別にいいけど、闘牛試合の見物客の中に目をつけた美女をかどわかして慰み者にして殺害というのは鬼畜が過ぎる。ファエンツァのアストール・マンフレディが殺害されたのは事実としても、これまた、美少年を凌辱したあげく・・・なのである。まあそういうBLが出てきそうではあるけど。(どこかのライトノベルで、中大兄x有馬があったっけな)

 あとがきで、少女マンガでのボルジアものについても言及がある。
 先行図書の『幻想書誌学序説』by村上博美(青弓社1993)では様々なボルジアものを紹介しているというので、この本も借りて、未読のものをいろいろと知った。『漫画に現れたボルジア家』では、『イブの息子たち』『妖女伝説』『バビロンまで何マイル?』等が紹介されている。『風雲録』あとがきでは、それよりあとの作品が主に言及、ということは『花冠のマドンナ』『カンタレラ』『チェーザレ』が挙がっている。
 高木彬光『ボルヂア家の毒薬』(『吸血の祭典』に収録)は明らかに上記のデュマ作品に影響を受けている。ただし、チェーザレが腹黒だけでなくて容姿まで悪くしてあるのは・・・シェイクスピアのリチャード三世かっ! オチは独創。 な お。この本には歴史ネタ作品がけっこうある。でもあまり面白いとは思えなかった、残念ながら。地元の図書館にあれば読んでみてもいいかも、という程度の印象。
 同じ本で紹介されて知って読んだ『秘録コロンブス手稿』スティーブン・マーロウ(文芸春秋社1991)はまあまあ。
 桐生操『血塗られた法王一族』は、ホアン殺害をレオナルドが推理する話。

 『幻想~』で紹介されているボルジア本のうち、ここで初めて知ったものが上記の桐生、高木、マーロウ、ベロンチの4種だけだった、私もかなり読んでいるもんだ、覚えているかは別として。

ベロンチの本の巻末の広告で、『イザベッラ・デステ』『ポンパドゥール夫人』『ベアトリーチェ・チェンチ』等の伝記を知った。こうして読みたい本は常に増えていくのである。
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今年も動き出した図書館

2016-01-04 10:44:54 | 
 去年も書いたけど、図書館の仕事は開館して内部で行われていることがあり、今年の開館は明日から、でも今日はすでに動いている。2日にポストに返却したぶんがもう処理されている。「新着図書」も増えている。お疲れ様です。早速、数冊の取り寄せも入れさせて頂いた。


ペトラ・エルカー他『皇帝の魔剣』 扶桑社ミステリー
 別に新刊というわけではない。
 数か月前、ネットで各国のミステリーを列挙したものを見て、珍しくはない英米仏以外のものをあれこれ手を出しているが、ドイツはもちろん優先している。
 市外からの取り寄せ。カール大帝がスルタンに贈った剣が次々と持ち主を替えて災いをもたらしていく、その経過に時代が反映されている。多くのドイツのミステリー作家たちのリレー作品。ドイツは自国の歴史をエンターテインメントにすることが盛んではないという感じを受けるのでこういうのは珍しく見える。
 発売当時も読んだことがあると思う。

 まぎらわしいタイトルの『カエサルの魔剣』という小説もあった。こちらは西ローマ最後の皇帝ロムルスが○○伝説につながっていくという話でイタリアの作品。ここでの「カエサル」はユリウス・カエサルではなくて皇帝を広く指すものであった・・・と思う。そのへんは記憶していない。

 
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あけましておめでとうございます

2016-01-01 06:48:42 | 雑記
 きのうは部屋の片隅を片づけた程度で、結局「大掃除」というものはしないで終わる。お節の手伝いを少々。そばを食べて、紅白もまったく見ることなく、早々に寝た。

 月の始めに投下しておかないと落ち着かないので、まずこれだけ書いて、テンプレート変更をしておこう。


 2日に付記。

 きのうは夜に『相棒 元日SPを半分ほど見て(録画してある)入浴して就寝。
 今日、電車で50分のところにある大手のS川神社に恒例の初詣。もっとも、お参りという意識は乏しく、屋台を楽しみに行くのである。たこ焼きとクレープを食べて、「鶏皮焼き」を買って持ち帰り。
 朝、年末年始に読み終えた図書館の本をブックポストへ入れる。
 帰り、ブックオフで若干の買い物。


 使ったお金メモは、ある程度日記のようなものでもある。
 それに使うノートは、最近の数年間、しばわんこ、ヘタリア、去年は大昔の花ゆめの付録(山口美由紀)。今年はなににしたものか決めていなかった。『セーラームーン』があればいいのにと思うけど持っていない。ヘタリアならばいくつもあるけど。結局、『っポイ!』にした(たぶん付録ではなくて「白泉社キャラストップ」として売っていた品)。1年くらいは使えるだろう。
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