ニーナ・ブラジョーン『獣の記憶』
創元推理文庫。去年出た本。文庫新刊リストで、ドイツものは注意しているけど見落としたようである。
舞台は18世紀、ルイ15世の時代のフランス。
実在した「ジェヴォーダンの獣」事件ーーフランス中央部のジェヴォーダン地方で狼に似た獣が女子供を襲い100人以上の死傷者が出て、王命で大掛かりな狩りまで行われたが、最終的には地元の漁師が仕留めて終結したとされるーーを題材としている。
博物学者の卵であるブルジョワの若者トマは、成り上がりをもくろむ父から、貴族令嬢との結婚を強いられているが気乗りしない状態で、謎の野獣を追う一行と共に調査に向かう。野獣に襲われたが助かった侯爵の妹イザベルに出会い魅かれあう。野獣の正体を探求する過程で、怪しい人間たちも浮かんでくる。
トマには死んだ兄がいて、父はこの兄を偏愛していたが、兄に虐められていたトマはいまだにその呪縛を感じ続けている。
イサベルは、美しく聡明で、驕らない心の持ち主であるが、実は出自に秘密があった。
主人公カップルのキャラクターが好ましく、ほかにも、意地悪に見えたけど公正で力になってくれた法律官(役職名忘れた)とか、思えばいろいろな不幸の元だったけどイザベルにとって貴重な教えを残してくれてい先代侯爵とか、味のある人物像が出てくる。トマに親切にしてくれるさばけた美女ジャンヌは、のちのーー。
ダニエラ・コマストリ=モンタナーリ『剣闘士に薔薇を』 国書刊行会
イタリア産ミステリーのリストで知った。舞台は4代目皇帝クラウディウスの時代。
イタリアですでに17冊出ているアウレリウスシリーズの4作目ということである。
アウレリウスは、40代初めの元老院議員、富豪で美男で教養ある男。美女、美食、哲学書等を愛好し、剣闘士試合などは趣味ではないのだが、立場上見物していたら、花形剣闘士が試合前にいきなり倒れて死亡、毒殺されたらしい。
アウレリウスはかつて、まだ一族から冷遇されていたころのクラウディウスからエトルリア語を習っていたという旧知の仲であり、その皇帝直々の命令によって事件を調査、悪徳弁護士(?)と対決していく。
アウレリウスの手足となるのが、アレクサンドリア出身の元泥棒の解放奴隷カストル。
古代ローマ喜劇では、知恵のまわる奴隷が若旦那の恋のために奔走するというのがパターンであり、切れる従僕という設定は伝統となり、英国の「ジーヴス」もその流れーーと思っていたら、解説にもしっかりそれが書いてあった。
皇帝を訪ねた時に会った、ヘタな歌をうたっていた小太りの男の子は、もちろんアレである。皇帝になったってつまんないと言っているのは苦笑ものである。
もっと訳されてもらいたい。
ところで、上記の2冊はいずれも去年出たもので、市内の図書館にはなかったので、市外からの取り寄せを依頼した。すると、『獣の記憶』はじきに借り出されたのに対し、『剣闘士~』は「検討中」からほどなく「購入待ち」になり、けっこう早々と購入されてしまった。値段は倍するのに。ほかにも希望があったのか?私の次にも人が待っている。
創元推理文庫。去年出た本。文庫新刊リストで、ドイツものは注意しているけど見落としたようである。
舞台は18世紀、ルイ15世の時代のフランス。
実在した「ジェヴォーダンの獣」事件ーーフランス中央部のジェヴォーダン地方で狼に似た獣が女子供を襲い100人以上の死傷者が出て、王命で大掛かりな狩りまで行われたが、最終的には地元の漁師が仕留めて終結したとされるーーを題材としている。
博物学者の卵であるブルジョワの若者トマは、成り上がりをもくろむ父から、貴族令嬢との結婚を強いられているが気乗りしない状態で、謎の野獣を追う一行と共に調査に向かう。野獣に襲われたが助かった侯爵の妹イザベルに出会い魅かれあう。野獣の正体を探求する過程で、怪しい人間たちも浮かんでくる。
トマには死んだ兄がいて、父はこの兄を偏愛していたが、兄に虐められていたトマはいまだにその呪縛を感じ続けている。
イサベルは、美しく聡明で、驕らない心の持ち主であるが、実は出自に秘密があった。
主人公カップルのキャラクターが好ましく、ほかにも、意地悪に見えたけど公正で力になってくれた法律官(役職名忘れた)とか、思えばいろいろな不幸の元だったけどイザベルにとって貴重な教えを残してくれてい先代侯爵とか、味のある人物像が出てくる。トマに親切にしてくれるさばけた美女ジャンヌは、のちのーー。
ダニエラ・コマストリ=モンタナーリ『剣闘士に薔薇を』 国書刊行会
イタリア産ミステリーのリストで知った。舞台は4代目皇帝クラウディウスの時代。
イタリアですでに17冊出ているアウレリウスシリーズの4作目ということである。
アウレリウスは、40代初めの元老院議員、富豪で美男で教養ある男。美女、美食、哲学書等を愛好し、剣闘士試合などは趣味ではないのだが、立場上見物していたら、花形剣闘士が試合前にいきなり倒れて死亡、毒殺されたらしい。
アウレリウスはかつて、まだ一族から冷遇されていたころのクラウディウスからエトルリア語を習っていたという旧知の仲であり、その皇帝直々の命令によって事件を調査、悪徳弁護士(?)と対決していく。
アウレリウスの手足となるのが、アレクサンドリア出身の元泥棒の解放奴隷カストル。
古代ローマ喜劇では、知恵のまわる奴隷が若旦那の恋のために奔走するというのがパターンであり、切れる従僕という設定は伝統となり、英国の「ジーヴス」もその流れーーと思っていたら、解説にもしっかりそれが書いてあった。
皇帝を訪ねた時に会った、ヘタな歌をうたっていた小太りの男の子は、もちろんアレである。皇帝になったってつまんないと言っているのは苦笑ものである。
もっと訳されてもらいたい。
ところで、上記の2冊はいずれも去年出たもので、市内の図書館にはなかったので、市外からの取り寄せを依頼した。すると、『獣の記憶』はじきに借り出されたのに対し、『剣闘士~』は「検討中」からほどなく「購入待ち」になり、けっこう早々と購入されてしまった。値段は倍するのに。ほかにも希望があったのか?私の次にも人が待っている。