レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

石田寺ノート

2006-04-23 13:02:40 | 新選組
私は中学生になるあたりから新選組にはまり始め、2年の春(’78年)に東京に引越し、そのころから新人物往来社の新選組本をせっせと読むようになった。その中の『土方歳三の世界』という本に、「石田寺ノート」という章があった。歳三の生家は東京都下日野市の石田、その近くの石田寺(せきでんじ)に(お骨はなくても)お墓がある。その墓前ノートに、訪れたファンたちが思いをつづっていくのであり、そういうノートから一部が本に収録されていた。私はそれにたいへん興味を持ち、自分でも出かけていった。お墓の傍らに小さな本棚が置かれ、そこには数十冊のノートがあった。めいめいが自分のノートを置き、そこで、情報交換や作品発表、交流がなされていた。自分で描いた作品、サークル活動の本もあった(当時はまだ、同人誌という言い方はさほど定着していなかった)。私も、自分のノートを置いたり、ほかのノートにせっせと書いたりして、様々な新選組語りに熱をあげていた。(これ、いまネットでしてることと変わらんな) そうやってできた友人でいまもお付き合いのある人もいる。
 しかし数年後、台風で墓前の本棚が壊れてノート類が飛散した。これをきっかけに、そろそろ収拾がつかなくなっていたこともあり、ノートは一度に1冊だけ、と決められ、ひところのような百花繚乱のありさまはなくなった。
 確かに、お墓はそもそもお参りをするところであり、長々と居座ることは場違いであろう。社交の場になるのも不謹慎かもしれない。しかし、やはりあの様々な、持ち主の個性も現れたノートの世界は楽しかった。
 もう長いこと石田寺には行っていないが、いまも1冊は墓前ノートがあるのだろうか。訪れる人々は代替わりしているに違いないが、気質は変わっているだろうか。
コメント
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