12章③ 翌日、3月15日。「夢を見ました。悪い夢でした。私が…」「私も夢を見た。私は天に昇っていく、遠く逮く、きらめく光に包まれて。ユピテルが雲の上で私に向かってきて、私の手を取り、一緒に地上を見下ろそうとして」
「私は貴方の遺体が倒れているのを見ました、黒い血が口から流れていまた」"カエサルの口元は微笑んだ、しかし目は冷たいままだった:「ではほとんど同じ夢だ一一細かいところは違うが」「もう一度言います:いらっしゃらないほうが私は嬉しいのです」「占い師たちは君と同意見だ。今日の予兆はまった<良くない。こういう条件ならぱあるいは…」 カエサルはアトリウムの池の水面から葉を拾い上げる。「この葉は金のモザイク画の石のほうに見える。まるで釜から落ちたようだ。こんな小さい石では、大きなモザイク画がなにを表しているのかはほとんどわからない。私たちがすべての石を個々に知っていたとしても、その絵を知ることはない」 「そしてすべての石がその位置にあるときでさえ」、カルプルニアは答えた、「モザイクをわかっているということにはなりません。大きなモザイクを理解するにはあまり近くにいすぎるということがよくありますから」… 「今目の会議は中止すべきかもしれん。大神祇官が神々の報せに敬意を払うのは・・・」 ここでデキムス・ブルートゥスがとぴこんできて説得します。 カル「行かないで下さい、悪い夢を見たのです」… ”カエサルは相変わらずカルプルニアに背を向けていた。彼は池の澄んだ水の上の葉を見ていた、首をふって言った:「波の上で小さな葉が揺れている、全<孤独に!」
「あれはモザイクから落ちた葉ではありません」ようやくカエサルは彼女のほうを向いた、、「そうだ。しかし、だからこそ無意味でもある。あれがモザイクの中の一片であれば、私たちはそれがどこのものかわかっている。それならば意味がある。あれはただの水面の葉にすぎない」「私たちは両方とも、モザイクの意味を知ることが難しいとわかりました。貴方は、世界はただ一つの意味しかないという考えを改めるべきかもしれません、世界がモザイクの 石のようによく調和しているならば」「私はこの葉のようなものだろうか?ローマとはひとつのモザイクだ、そして私はその中の一つの石だ、金の石であったとしても。モザイクなしではカエサルはカエサルではない」「カエサルがただのモザイクの石ですって?カエサルは自らがモザイクなのです、その絵がしまいにはどうしあがるのかまだ長いことわからないのです」 "彼女は夫に対して一歩踏み出した、少しためらって、手を彼の手に伸ぱした。カエサルは腕を上げ、妻の手を握ろうとしたようだった、そのときアルビヌスが彼の肘をつかみ 、言った:「行きましょう、時間です」 カエサルはうなずき、アルビヌスと腕をくんで出ロヘ向かった。
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このあとは暗殺の場面、そして遺体がカルプルニアのもとへ運ぱれてきて終わります。
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「彼の体を、たくさんの赤い染みのある白い布を見ていた。血のついた穴を数えることを、12まででやめた。再ぴ覆いをかけた。そしてストラを肩にかけて扉へ向かった。遺体は残しておいた。じきに誰かが引き取りに來るだろう。死者はまだ必要とされていた。」 完
断片的なこと
・カルプルニアは、ほっそりして長身という設定、クレオパトラはふくよか型。
・この小説では、いちばん普通の女はフルヴィアだと思います。夫を出世させたくて躍起になったり、でも不倫はしていたり(相手はドラベラ)。アントニウスをセクシーだと思ってはいるけど、マッチョを誇示するとバカに見えるのでやめて欲しいと思ってる。このアントニウスは、かなりバカ、でもヤな奴という感じは受けませんでした。
・カエサルはバイだと思われている。フルヴィアは、「彼は確かに多くのローマの婦人たちを征服したけど、実は男のほうが好き」だと思ってるし、カルプルニアも、「若い男と、あるいはセルウィーリアか女王と一緒のところに出くわすかもしれない」という思いから、夫の私室に近づかなかったということだし。こういう描きかたしてるので、もしオクタヴィアヌスを美少年にするとそれが理由で養子にしたように取られるから描かなかったのか、と好意的解釈をしておきます。
・このカルプルニアは、夫が権力者であることにも恬淡として、一人の時間を大切にする、心が自立している。私はこういう人たいへん好きです。
ひとまず紹介はこれで終わりにしておきます。読んでくださってありがとうございました。この先も、断片的にローマ小説に言及することはあります。
「私は貴方の遺体が倒れているのを見ました、黒い血が口から流れていまた」"カエサルの口元は微笑んだ、しかし目は冷たいままだった:「ではほとんど同じ夢だ一一細かいところは違うが」「もう一度言います:いらっしゃらないほうが私は嬉しいのです」「占い師たちは君と同意見だ。今日の予兆はまった<良くない。こういう条件ならぱあるいは…」 カエサルはアトリウムの池の水面から葉を拾い上げる。「この葉は金のモザイク画の石のほうに見える。まるで釜から落ちたようだ。こんな小さい石では、大きなモザイク画がなにを表しているのかはほとんどわからない。私たちがすべての石を個々に知っていたとしても、その絵を知ることはない」 「そしてすべての石がその位置にあるときでさえ」、カルプルニアは答えた、「モザイクをわかっているということにはなりません。大きなモザイクを理解するにはあまり近くにいすぎるということがよくありますから」… 「今目の会議は中止すべきかもしれん。大神祇官が神々の報せに敬意を払うのは・・・」 ここでデキムス・ブルートゥスがとぴこんできて説得します。 カル「行かないで下さい、悪い夢を見たのです」… ”カエサルは相変わらずカルプルニアに背を向けていた。彼は池の澄んだ水の上の葉を見ていた、首をふって言った:「波の上で小さな葉が揺れている、全<孤独に!」
「あれはモザイクから落ちた葉ではありません」ようやくカエサルは彼女のほうを向いた、、「そうだ。しかし、だからこそ無意味でもある。あれがモザイクの中の一片であれば、私たちはそれがどこのものかわかっている。それならば意味がある。あれはただの水面の葉にすぎない」「私たちは両方とも、モザイクの意味を知ることが難しいとわかりました。貴方は、世界はただ一つの意味しかないという考えを改めるべきかもしれません、世界がモザイクの 石のようによく調和しているならば」「私はこの葉のようなものだろうか?ローマとはひとつのモザイクだ、そして私はその中の一つの石だ、金の石であったとしても。モザイクなしではカエサルはカエサルではない」「カエサルがただのモザイクの石ですって?カエサルは自らがモザイクなのです、その絵がしまいにはどうしあがるのかまだ長いことわからないのです」 "彼女は夫に対して一歩踏み出した、少しためらって、手を彼の手に伸ぱした。カエサルは腕を上げ、妻の手を握ろうとしたようだった、そのときアルビヌスが彼の肘をつかみ 、言った:「行きましょう、時間です」 カエサルはうなずき、アルビヌスと腕をくんで出ロヘ向かった。
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このあとは暗殺の場面、そして遺体がカルプルニアのもとへ運ぱれてきて終わります。
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「彼の体を、たくさんの赤い染みのある白い布を見ていた。血のついた穴を数えることを、12まででやめた。再ぴ覆いをかけた。そしてストラを肩にかけて扉へ向かった。遺体は残しておいた。じきに誰かが引き取りに來るだろう。死者はまだ必要とされていた。」 完
断片的なこと
・カルプルニアは、ほっそりして長身という設定、クレオパトラはふくよか型。
・この小説では、いちばん普通の女はフルヴィアだと思います。夫を出世させたくて躍起になったり、でも不倫はしていたり(相手はドラベラ)。アントニウスをセクシーだと思ってはいるけど、マッチョを誇示するとバカに見えるのでやめて欲しいと思ってる。このアントニウスは、かなりバカ、でもヤな奴という感じは受けませんでした。
・カエサルはバイだと思われている。フルヴィアは、「彼は確かに多くのローマの婦人たちを征服したけど、実は男のほうが好き」だと思ってるし、カルプルニアも、「若い男と、あるいはセルウィーリアか女王と一緒のところに出くわすかもしれない」という思いから、夫の私室に近づかなかったということだし。こういう描きかたしてるので、もしオクタヴィアヌスを美少年にするとそれが理由で養子にしたように取られるから描かなかったのか、と好意的解釈をしておきます。
・このカルプルニアは、夫が権力者であることにも恬淡として、一人の時間を大切にする、心が自立している。私はこういう人たいへん好きです。
ひとまず紹介はこれで終わりにしておきます。読んでくださってありがとうございました。この先も、断片的にローマ小説に言及することはあります。