レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

希望のかたわれ その他

2015-10-24 13:05:03 | 
メヒティルト・ボルマン『希望のかたわれ』
 チェルノブイリ原発事件に遭遇した女がかつての住居あとを訪れて過去を回想する。
 その娘はドイツへ留学するといって旅立つが行方不明、裏には人身売買組織が関わっている。
 デュッセルドルフ近郊の農場経営者の老人と、彼が助けた娘との関わり、さらには死んだ妻の身の上とも絡んできて苦しい過去とつながる。
 社会問題+ミステリー。

ゾラ『オリヴィエ・ベカイユの死 / 呪われた家』 光文社新訳文庫
 表題作の『オリヴィエ~』は、新婚の妻と共にパリに来たけどあっけなく死んでしまった青年の声が語り手。意識はあって生霊のように周囲が見えているのに、死んだと思われて埋葬されてしまいそう、そして妻に近づく男の存在にも苛立っている。埋められたあとで体に意識が戻ってなんとか出てきたけど・・・。悲喜劇。
 『ナンタス』 野心はあるけど運に恵まれずにいる青年ナンタス、未婚で妊娠してしまったあるお嬢様の名目上の婿になる話が持ち込まれる。それにのって、才覚を表して出世していくが、妻の態度は冷たいまま。
 『シャーブル氏の貝』
 若い妻を迎えたシャーブル氏、どうしても子供が欲しくて保養地へ、そこで出会った色男・・・とくればもう予想できることは決まっている。
 5つの短編が収録。マンガになりそうな話が多い。

プリーモ・レーヴィ『天使の蝶』 光文社新訳文庫
 新刊ではない。
 とぼけた味がかえって怖さを感じさせる、SF風味もある短編集。


 買ってあるけどまだ読んでいない本、『二つの祖国に生きて』『不良妻権』『「絶筆」で人間を読む』 『スパイ学校の新任教官』
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「これも学習マンガだ!」

2015-10-18 06:52:41 | マンガ
「これも学習マンガだ!」という企画がある。

「これも学習マンガだ!」

 この選定に関して奇妙に思う点はもちろんある。

 この数年の世間でのヒット作のうち私が指示する・した5作品は『ヘタリア』『聖おにいさん』『テルマエ・ロマエ』『大奥』『チェーザレ』であるが、ほとんど入っている。『聖おにいさん』だけ抜けている。なにか釈然としない。まさか、過激派に狙われることを警戒しているわけでもあるまい。

 学ぶことに結びつきやすいということならば、『エロイカより愛をこめて』が断然推薦できる。(冷戦後の再開に反対だったことはされおいて) 


 これらは、「小学生からOK」とついているものとそうでないものがある。

 私が(一部でも)読んだ23本のうちでは、

「OK」としてある:

テルマエ・ロマエ  「坊ちゃん」の時代  あさきゆめみし  風雲児たち  ブラックジャック  キャプテン  リアル  イグアナの娘  エースをねらえ!  ヘタリア

「OK」がついていない:

陰陽師  はだしのゲン  チェーザレ  日出処の天子  SWAN  よちよち文芸部  大奥  はみだしっ子  ニューヨーク・ニュ^ヨーク  アドルフに告ぐ  風と木の詩  ベルサイユのばら  天上の虹


 『キャプテン』『エース~』はOKでなにも反論はない。

 『大奥』は、ふつうの日本史を頭に入れてからのほうがよかろう。

 『ベルばら』がOKでないことは納得できない。連載当時、小学生も読むという想定で描かれたのに。推薦コメントの、「ロベス・ピエール」という表記がマヌケである。「・」は要らん。


 「下書き」に入れておいた、mixiで紹介されていた記事からのコピー。このごろ少女マンガ原作の映画が多いという内容。どこの記事だったのかわからんけど、この際引用しておく。


 目立つところだけでも、15年は9本も公開されてるようだ。なぜ映画業界はこれほどまでに少女マンガの実写映画化が好きなのだろうか?

「まず人気作なら、原作ファンの動員が最低限期待できること。加えて、少女マンガの“恋愛”“青春”といったテーマは、SFやアクションが必要になることが多い少年マンガに比べると実写化しやすいんです。それに今、映画業界を支えているのは女性ですから。その女性をターゲットに絞れる少女マンガ原作は、企画が通りやすい。少女マンガに多い学園ものなら、若手中心になるから、役者へのギャラも、撮影にもお金がかかりませんからね」(映画誌ライター)


引用終わり。

 ・・・「半径50メートル」ならば低予算で済むってのかい。身近な話が悪いとは言わん、小さな話を丁寧に描くという良さも当然ある、「等身大」の世界を求めることもあるだろうよ。しかし、はるかな世界への憧れ、異世界の疑似体験、そういうものだって大きな魅力のはずだろうに。『リボンの騎士』以来の華麗なコスプレという伝統、水野英子が継承して、『ベルばら』で復活したグランドロマン、最盛期の美内すずえや和田慎二が繰り広げた波乱万丈の物語群、そういう大きな世界だって少女マンガの魅力の大切な柱だろうが。

 少女マンガなめるな!


 いつこのコピーを使おうかと思っていたが、「学習マンガ」100の趣旨で、「新しい世界を発見できるマンガや学びにつながるマンガ」と書いてあったので、これと関わらせて引用したしだいである。
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やはりカレンダー

2015-10-15 10:46:39 | 雑記
 10月、書店にはカレンダーが並ぶので、毎年恒例、この話題。

 もらうこと確実なのは、
・訪問販売に来るヤクルトの品  今年(15年)は、各地の風習がハナマルキ(?)のような素朴な画風で描かれている。
・行きつけ美容院の、正確にはその夫のやっている自動車修理工場の品。無難な風景写真。
・ドイツ語教科書の郁文堂。ただ数字だけ。
の3つ。買い物のタイミングでもらう可能性のあるところは少し。
 やはり柴犬は一つ買っておかないと気が済まない。
 母の趣味で星野富弘製品は購入してある。

 手帳は、今回はダイソーで気に入る品があったので安く済んだ。
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サンドラさんオーサさん

2015-10-10 12:54:15 | 地理
 まえに、日本と異国の比較・出会いを扱ったエッセイマンガを「マンガ」よりも「地理」に含めて言及したので、今回もそうする。

「小顔」って日本ではホメ言葉なんだ!? ドイツ人が驚く日本の「日常」  原作:サンドラ・ヘフェリン 漫画:流水りんこ  KKベストセラーズ

 同じコンビで『満員電車は観光名所(クールジャパン)!?』を読んだ。サンドラさん原作のエッセイマンガは数種類読んだけど、流水りんこさんがいちばん絵がうまい。(「あすかミステリーDX」で『斬る!』を読んだ。濃い絵はあまり好みでなかったけど面白かった)
 この本はドイツ人特化版。なるほど~とか、そうそう、とか、えっそうなの?はたくさんあるけど、一部を書くと、
・「日本人が国内旅行好きなことに驚く。ドイツ人は嫌い。地元愛が強いこと、大昔国内で戦争があったことの名残? 休暇で国内旅行したなんて言ったらダサイと言われる」(「 」は、この本に書いてあったことの要約・引用と思って下さい)
ーーーとはいえ、ドイツ人が国内旅行しないというわけではもちろんない、国内の旅行ガイドだって当然のように出ているし、どこに行ってもドイツ語話す観光客だっている(オーストリアやスイスということはありうるけど)。国内はダサイと思う人々も多数いる、ということなのだろうか。
 過去の国内戦争ならば、日本だって400年まえには盛んにやっていたし、ほんの150年まえにも大きいのがあった。むしろドイツよりも近い時代である。
 日本とは、外国に行くのに海を越えなくてはならないか、陸続きで簡単に行けるかどうかが大きな違いだろう。
(日本だって、韓国や台湾は北海道よりも安く行けるらしいけどね)
・「ドイツ人ビジネスマンが日本人に親近感を持つこと:メールの挨拶が長いこと」
ーーへ~意外!
・「ドイツ人は裸になることに抵抗がない。ちょっと前にイタリアのビーチで全裸で日焼けするドイツ人が警察沙汰に!」
ーー逆のほうが想像しやすいんだけどね、あははは。でも公園のベンチで半裸でころがるのは私も目撃した。日光に対しての飢餓感が北の人々のほうが強いということなのだろうか。 少佐の「脱衣嫌悪症」はかなりの変人扱いされるだろうな。外国にわざわざ旅行しようなんて思わないだろうし。
・「ドイツ人は悪口や批判がネガティブではなくそれが楽しそう。前向き発言ばかりでは頭悪いと思われてしまう。そんなドイツ人がいちばん苦手なタイプはアメリカ的ポジティブ感」
ーーあはははは。kritischということが重んじられるのは知っている。テキストを読むに際しても、疑問を抱いてあたる態度が尊重される。
・満員電車の中で周囲の日本人を観察しているドイツ人が、「あの新聞の折り方はどうなっているのだ!?」「す・・・すごいぞ日本人!!こんな中で複数の事柄をこなす!なんと合理的な!」--これ、すご~くルシウスみたい!「おそるべし平たい顔族!」を連想してしかたない。


北欧女子オーサが見つけた日本の不思議 2  オーサ・イェークストロム  KADOKAWA
 
・笑えて考えさせられたのは、著者の同国人の男性知人が日本のプールで、水泳帽なしで注意されてしまった、でも頭は剃っていて胸毛やすね毛で首から下のほうがずっと毛が生えているのに~~!という不満の話題。ううむ。
・「敬語は苦手?」「スウェーデンにはないからね。昔はあったけど50年前に全部廃止された」「60年代に消えてしまいました。でも最近(略)お客さんに対して「君」よりも丁寧な「あなた」みたいな言葉を使う習慣が復活しているとききました」
ーー「60年代」というのは、よく言われる「68年」の学生運動? ドイツ語の現代語では友人・家族等で使う言葉とそれ以外とで2人称が分かれるけど、スウェーデン語でも同様であった、それが廃止されていま少し復活、ということ?
・「『少女革命ウテナ』の日本語字幕の英語では「さん」「さま」「ちゃん」は全部Missになっていた」ーー『セーラームーン』ドイツ語版では、そういうのはほぼばっさり切り捨てられている。セリフの流れとして無視できない場合、「衛さま」は、koenigliche Hoheit「国王陛下」なんてものものしい言葉になっていた。ほかのアニメで英語訳を見ると、そういう部分は無視しているか、ローマ字でsan, sama, chanなんて書くか。「殿」「御屋形様」はmy Lordになっていた。敬称の訳し方は興味深い。
・『セーラームーン』アニメでオカマのゾイサイトはドイツで女設定になっているが、スウェーデンでも同様らしい。『Crystal』ではオカマではなかったのでそういう変更とは無縁ですむのだろうか。
・スウェーデンで『セーラームーン』アニメは「暴力的」という理由で何度も放送中止になったので、オタクが結束して投書をしまくって再開にこぎつけたという。
・「小顔」がほめ言葉であることに対する違和感はこちらでも描かれている。
・「まえの本が売れたのは、日本人は外国人にどう見られているか興味があるから」--確かに、外国人の目を気にする傾向が強いらしいとは『エロイカ~』にハマリ始めのころ、舞台になった国についてとともに日本人論も読みまくった際にもきいたこと。でも、『北欧女子~』が売れたのは、「わっ、可愛い絵!」が最大の理由だと思う。
 これからも少女マンガ愛を主張して下さい。
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ゲルマニア 風のかたみ 悪女は自殺しない

2015-10-05 08:56:22 | 
ハラルト・ギルバース『ゲルマニア』  集英社文庫

 1944年夏のベルリン。
 オッペンハイマーは元刑事。ユダヤ系だが妻がドイツ人なのでさしあたって無事でいるという身の上、それが突然親衛隊に連れ出され、猟奇殺人事件の捜査を命じられる。解決したところで無事が約束されるわけでもなく、そしてドイツからの脱出計画もまた進められている。臨時に上司となっている親衛隊のフォーグラー大尉とともに、とあるカラ屋敷に捜査のために行った際折あしく爆撃にあってしまい、防空壕に閉じ込められる。気晴らしにレコードをかけてみたら『三文オペラ』--左翼作家ブレヒトの戯曲で作曲家はユダヤ系なので二重に発禁ものーー、しかし初耳だった大尉はけっこう気に入ってしまう、という場面はちょっと皮肉で面白い。
 筋の進行中にパリ解放の知らせもある。もう少しだ、がんばれ、という気持ちになる。続編も出ているというが、オッペンハイマーはどこにいるのだろうか。


ネレ・ノイハウス『悪女は自殺しない』

 創元推理文庫から出ているオリヴァー&ピアのシリーズはこれで3作目だけど、邦訳は必ずしも原書の順番とは限らず、本書が第1作目。舞台は現代ドイツ、フランクフルト近郊のホーフハイム。
 女の死体が発見され、獣医の妻イザベルと判明。美貌だがエゴイストで夫を含む周囲の人々にひどく嫌われていたらしい。その事件に続いて上級検事の自殺が報じられた。
 これまで意識していなかったが、オリヴァー・フォン・ボーデンシュタインの実家は城で、商売熱心な弟が行楽地として売り出していることがここでは出てくる。貴族なんて別世界の存在なので、フィクションに出てくるぶんには楽しい。
 それにしても、この被害者にはまるで同情なんかわいてこない、ざまあみろという感情だけである。嫌な奴はほかにもいて、そいつにもけっこう酷い罰が下っている。


福永武彦『風のかたみ』  河出文庫の新刊

 平安時代。信濃の長者の息子の次郎は、かつて叔母を愛妾として連れかえった中納言のつてを頼って都へ上る。その道中で、高名な笛師、謎の法師と知り合う。実直な次郎は、中納言の屋敷で、従妹にあたる美しい萩姫に恋するが、姫はすでに入内が決まっており、しかし一夜忍んできた左大臣の息子に心を奪われていた。そして盗賊の頭もまた萩姫を狙っていた。
 ・・・怪しい法師は陰陽使いでもあり、気まぐれで次郎たちにお節介をするが、人々の心が錯綜して狙いは大いに外れる。
 華やかさと妖しさの彩る恋絵巻、これは少女マンガにもなる。・・・けど、○○がxxだったという設定(途中でもしやと思ったけど)は、ビジュアルで表現しにくいところだ。
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新・映像の世紀

2015-10-01 06:04:37 | 歴史
『映像の世紀』はもう何度も再放送されたしDVDも出ている。私はいちおうビデオに全部録画したのちに、全11回のうち1~5、7をDVDに移したものを持っていた。ちなみに、1が第1次大戦前、2が大戦、3が1次と2次の間のアメリカ、4がナチス台頭、5が第2次大戦、7が大戦後から朝鮮戦争まで。私が最も何度も見ているのは7『勝者の世界分割』である。クライマックスで、出征する兵士が、まだゆっくりと走る列車から飛び降りてまた恋人と抱き合っているのは笑ってしまう。この二人は再会できたのだろうか。・・・それにしても、こうして泣いたり抱き合ったりをおおっぴらにできたのは別世界のように見えるよ、日本人にとっては。
 (ついでに言えば、『路面電車で行く 世界各街停車の旅』で、アメリカのとある町、海軍基地のあるところで港の近くに立つ銅像が、兵士と女の子がキスしている像、・・・これも日本では考えられん)

 また再放送があったらまとめてブルーレイディスクに入れておこう、と思っていたのに、先月の再放送に気づいたのはもう4回目まで過ぎたあとだった、ちょっと悔しい。ま、4まではそろっているからいいか。

 今月から「新」が始まるので宣伝しておく。なにももらってないけど。

「新・映像の世紀」
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